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運命の人 farside編 最終話

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運命の人 farside編 18

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farside編 18
- 虹の入江 前編 -


行為が激しければ激しいほど、僕が幸せを感じてしまうバスタイム。
今夜も至福の時間はユノの腕の中で実現する。

今後の仕事の予定を楽しそうに話すユノの声が、お湯の蒸気と壁の反響で普段より柔らかく聞こえて、心地好い。

「スーツの新作発表パーティー開催が決まったよ。」

「どこで?」

「東京でやる。」

「えっ?店舗もないのに?」

「スーツ置いてくれるセレクトショップが見つかったんだ。銀座の人気店だよ。その近くのイベント会場を借りた。」

「凄い!銀座って、僕が撮影したとこだよ。目抜通り沿いにガラス張りのオシャレなブティックがたくさんあって、見てるだけでドキドキしたなぁ……。」

「百貨店が並んでる通りだろ?その1本奥の通りのショップ。」

「そんなところ、いつの間に探してたの?」

「チャンミンが撮影で行った時、ドンへとウニョクに頼んでね。エリーのMVに使われるのが分かってたから、話が早かった。」

「ユノ……それがあったから同行許したの?」

「あはは。俺が単なる付き添いに2人も行かせると思うか?チャンミンなら1人でも出来るだろ。」

「……まったくユノは……。」

もう驚く素振りは見せまい。
ユノは僕の恋人だけど、仕事上はやり手社長だから。
こんなの当たり前……。

「驚くなよチャンミン。なんとパーティーにエリーが来てくれるんだ。チャンミンとランウェイ歩いてもらうから。」

「ええっ!」

驚かないと思ったそばから驚かされた。

「チャンミンのおかげだよ。斎藤さんて事務所の方も協力してくれた。新曲のプロモーション兼ねて盛大にやるから、メディアもたくさん来るぞ。」

ユノは明るい声のトーンを落として、「でも」とため息混じりで僕の首筋にキスした。

「俺、準備で今月は東京ばっかりになる。1ヶ月は向こうで暮らす。」

「……僕……仕事たくさん入っちゃってるよ……?一緒に行けない……。」

「ああ。今回はチャンミンと同行ってわけにいかないけど……。でも、時間できたら帰ってくるから。」

「うん……。」

ユノに時間なんてできないだろう。
やるとなったらとことん突き詰める人だから。
ソウルから指示すればできる仕事でも、直接目で見て肌で感じて判断したいんだ。

「なに?寂しい?」

「……うん……。」

「チャンミン……そんな可愛いこと……。行きたくなくなるな。」

「ねえ!僕が空いてる日は東京に行っていい?1泊……日帰りでもいいから!!」

振り返った僕の目を、パチパチ瞬きして見つめ返し、ユノはごくりと唾をのんだ。

自分でも驚いてる。
こんなに甘えた言葉が口をつくなんて。

「チャンミン……。」

僕をぎゅっと抱き締めた二の腕の収縮した筋肉が、ユノの興奮と喜びを如実に伝える。

「会いに来てチャンミン……。待ってる。」

「うん。飛んでいく。」

約束通り、ユノが日本で仕事している間、僕は毎週東京に飛んで行った。

どんなに疲れていても、ユノは空港までタクシーで迎えに来て、ホテルまで僕の手を握って離さない。

ホテルに着くなり抱く日もあれば、ベッドに入るなり泥のように眠ってしまう日もある。

でも、タクシーの中でユノの指がきゅっと絡まる瞬間だけで、日本まで飛んでくる価値があると僕には思えた。

「どんだけ好きなんだろ……ふふ……。」

安心しきった顔で眠るユノの寝息を聞いていると、凪いだ海の浜辺で寝転んでいる気になる。
僕が隣にいることでユノがぐっすり眠れるなら、毎晩だって飛んできたい。

パーティーの進行の打ち合わせに同行した時、久しぶりに会った斎藤さんは呆れていた。
ユノは毎晩寝る暇も惜しんで働いてると。

「社長なのに腰が低くて真面目で……。ちょっと心配になるくらいです。」

「ユノは自信がつくまで準備して、努力する人なんです。でも何でも自分でやっちゃうから、ほんとは会社のためにならない」

「……手厳しいなチャンミン。」

ユノは進行表にメモをとりながら唇を尖らせた。

「あはは。皆さん仲がいいですよね。ドンヘさんとウニョクさんも気さくな方だし。」

「D&Eでは社長が誰より虐げられてますよ……。あ、ここ、エリーさんが登場するところの演出なんですけどね……。」

仕事中のユノはカッコいい。
次々と指示を出し、周りを動かす。

こんなユノが、僕がソウルに帰る時には抱きついて離れない駄々っ子になるんだから、虜にならないわけがない。

ずっとそばに居てあげたいって、思わせる。

僕はパーティーが待ち遠しかった。

本当なら緊張しそうなのに、その日を指折り数えて楽しみにするなんて、僕らしくない。
これもユノが変えたことなのかと思うと、心がじんわり温かくなった。




パーティー当日、ユノはグレンチェックのスリーピーススーツを着ていた。重くなりそうな濃いグレーの生地でも、桜色のチェックのラインが春を感じさせる。

ウニョクさんが今日のためだけに作った僕のスーツは、エリーが着る予定のドレスと同じ薄墨桜色の生地で、ユノのスーツともマッチする。

「チャンミン。今日も誰より綺麗だよ。」

こっそり耳元で囁いて、僕をにやけさせるユノも、誰より綺麗。

パーティー会場は、桜並木をイメージした装飾が施されて、中央のランウェイには銀座の目抜通りがプロジェクションマッピングで映し出される。

D&Eのスーツを着て、街を闊歩したい。
そう思える演出だ。

人工的に作られた環境だけど、リアルなイメージと直結する空間。スーツで勝負をかけたユノらしいアイデアだった。

「チャンミンさん、また今日は雰囲気が違うね!なんと言うか……一段と……。」

「美しいでしょ?」

エリーと一緒に会場入りした斎藤さんにユノが答えて、僕は真っ赤になった。

僕が買ってきたシルバーのピアスをしているユノの顔を凝視して斎藤さんも顔を赤らめた。

「……ユノさんがチャンミンさんの……。」

「わっ……ちょっ……それは内緒!」

「あら。何の話?」

ずいっと顔を寄せたエリーは、春の妖精みたいに可愛かった。

「エリーさん。やっとお目にかかることができました。今日はよろしくお願いします。」

挨拶したユノに、エリーは目をぱちくりさせた。

「何なのD&Eって。デザイナーも社長もイケメンだなんて!うちの事務所にもこんなハンサムな人がいたらなあ……。」

「おじさんですみませんね!!」

拗ねた斎藤さんにみんな大笑い。

楽しい……。
パーティーが始まる前から心が弾む。

ユノと仕事できることが楽しくて仕方ない。

「ね、ユノ。今夜は、最高の夜になるね。」

「当たり前だ。」

ユノは僕の肩を抱いて耳打ちした。

「俺とチャンミンのパーティーは朝まで終わらないからね。」

「……あっ。」

顔を離す瞬間、軽く耳に触れたユノの唇。

僕はもう、パーティーよりその後が楽しみになってしまった。
楽しみが次から次へと増えていく。



何百人もの招待客が見守る中、ショーが始まる。

次々とランウェイを歩くモデル達の凛々しくも美しいスーツ姿にみんな目をキラキラさせて見惚れている。

僕の出番は最後。
エリーをエスコートして登場した時の会場からの割れんばかりの拍手と、誇らしげなユノの笑顔。

エリーの歩幅に合わせてゆっくり歩き、ターンして振り返ったら、D&Eのスーツ姿のモデル達がずらりと並んでいて、目が潤んだ。

天井から舞い落ちる桜の花びらのコンフェッティ。

そうだ。
ここは春爛漫の目抜通り。

緊張の面持ちの新入社員にも、徹夜明けの中堅社員にも、初恋のセンチメンタルを抱えたスターにも、誰にも平等に訪れる春。

D&Eのスーツを纏えば、誰もが背筋を伸ばして闊歩したくなる人生のランウェイ。




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テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

運命の人 farside編 17

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運命の人 farside編 16

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farside編 16
- 賢者の海 前編 -



僕らはベッドの上でイチャイチャして過ごした。

「ねぇ。ユノって、日本のこともよく知ってるの?」

ユノが折に触れて使う『十六夜月』という言葉をためらいがちで美しいと解釈するのは、日本の昔からの考え方だ。
僕がそれを知ったのは、最初にユノに言われた後に調べてから。

どうしてユノがそんな表現を知っているのか気になっていた。

「……目標だったからね。D&Eを世界に羽ばたかせようと思ったら、まず日本だろ。でも、上手くいかなくて。先にヨーロッパで人気が出たんだ。」

「もしかして、だからウニョクさんとドンヘさんて日本に馴染みがあるの?久しぶりだって言ってたけど……。」

「そうだよ。もうかなり前のことだけど、間借りして店舗も出したことがある。でも、D&Eは安くないし、大人が着るコンセプトの服ばかりだから、韓国のブランドってだけで苦戦して……。」

「じゃあ……エリーさんのMVって大きなチャンスじゃない!日本でも売れるきっかけにできるんじゃない!?」

「ああ……だから、断れなかった。モデル以外の仕事なんて話があった時点で断りたかったけど、できなかった。」

「だったら最初からそう言ってくれれば………。」

僕は口をつぐんで、ふふっと笑ってしまった。

そんなこと聞いていたら、僕のプレッシャーはもっと大きかっただろう。

ユノは僕に選択権をくれた。
あれは僕がやると、自分で決めた仕事。
選択した僕の負担になるようなこと、ユノは一言も言わない。

僕を信じて、敢えて陰で支えることに徹してくれた。僕には考えも及ばないくらい、大人で配慮のできる人。

シウォンさんと悪ふざけする浅はかなユノも、思慮深くてカッコいいユノも、どちらもユノなんだ。

「昨日は腹が立ったけど、ユノにもバカなとこあるって分かって良かった……かな。裏側を見た気分。」

「裏側……かな……?裏も表も意識したことないけど……。無意識にチャンミンには隠してたかも。バカな俺のこと。」

それは、僕も同じだよ。
ユノに一途な僕も、以前の僕も、どちらもシム・チャンミン。

人には色んな面があって、見る方向が違えば見える姿も違う。十六夜月も、裏側から見たら、案外ふてぶてしい姿だったりして。

「月の表面には色んな海とか山とかあって模様に見えるけど、裏側ってどんなだろう……。十六夜月の裏側を見ても、ユノは僕を幻滅しない?」

ユノは首を大きく横に振った。

「月の裏側は表とは全然違うんだ。」

「そうなの?」

「ああ。前に写真を見た。表みたいに海がたくさんないから、全体的に凸凹の丸って感じ。」

「凸凹か丸かどっち……。」

「ははっ!それがさ、写真によって全然印象が違うんだよ。陰影の影響や距離で見た目なんて変わるものだろ。」

「写真によってモデルも服も見た目はがらっと変わるもんね。」

「そうだろ……。もし月の裏側が地球の方向いてたら、ツルツルの球体に見えるんじゃないかな。凄く綺麗な……。」

ユノは裏側を晒して浮かぶ月を眺めるみたいな遠い目をしていた。

「俺も実際は大バカヤローなのに、チャンミンに一夜限りでも抱かれたいと思われたんなら、ラッキーだったな……。」

「ふふ。僕もラッキーだった。実際は淫乱なのに、ユノには奥ゆかしいって思われてたんだもんね。」

「騙されてたなぁ。」

「僕も騙されてたなぁ。」

僕らは鼻をこすり合わせてクスクス笑った。

「でも、やっぱりチャンミンは奥ゆかしくて賢明で美しい人だよ。」

「ユノにとっての僕がそうなら、それが本当ってことにしておいて。僕にとってのユノも、やっぱりカッコよくて頼れる大人ってことにしとく。」

「あ、1つ肝心なの忘れてた。チャンミンは……エロい。」

「ユノも、どエロでしょ。」

「異議なし。」

「ふふふ。僕も異議ありません。」

お互いエロいけど、その日は封印して、ただ抱き合って過ごした。

様子を見にきたドクターとシウォンさんにこの世の終わりみたいな顔をされても、僕はユノの隣に居座ってベタベタしていた。


愛は人を愚かにするけど、人を愛する気持ちは尊い。

愛があるから、過ちを許せる。
許すほどに、愛が深まる。

騙したことも、泣かせたことも、許してあげる。


なーんて、僕が慈悲深く思っていられたのは次の日の朝までだった。

嵐をもたらした低気圧が去った後、再開された撮影で、ユノの切れ長の目はどんどん細くなり、遂には線になった。

非難めいたその視線は、シウォンさんと並んでカメラに収まる僕に向けられている。

「……まさかと思うけど不機嫌?」

休憩の合図と共に尋ねた僕を、ユノは豹みたいな鋭い目で睨んだ。

「当たり前だ。シウォンと目を合わせるなって最初から言ってたのに全然言うこときかずに!さっきの上目遣いはなんだ!!あんな顔してたら襲われるぞ!!」

「はぁあ!?」

「気づいてないとは言わせない!シウォンと俺の趣味は似てるんだ。あいつはチャンミンに惚れてんだから!」

「ユノ……。いい加減にして……。」

自分のしたことを棚に置いて、よくもまあ。

人は甘やかされると増長するのだ。
僕が甘かった。
簡単に許すべきじゃなかった。
これは、教育的指導が必要だ。




「チャンミン。もうそろそろ……。」

「ダメなものはダメ。」

「もう何日してないと思ってる。チャンミンだってしたいだろ。我慢は身体に良くないぞ。」

我ながら情けない話ではあるが、ユノへのお仕置きをどうしてやろうか思案した結果、導き出されたのはお預けを食らわすことくらい。

「僕を傷つけた人に、鳴かされるなんて嫌だね。」

「いい声で鳴かせるからさぁ。な?とことん優しくするって。チャンミンがして欲しいこと何でもする。」

「…………。」

「下僕のように尽くすよ。とろける快楽欲しくない?」

「…………。」

「天国にお連れします。王子様。」

「…………却下。」

「お、お姫様?」

「却下!!」

危なかった。

フランスから戻って、はや5日。
身体を合わせることのない日々は、今日で10日目を迎える。

セックスどころか、抱き締めることすら許していない毎日は葛藤の連続だ。

僕だって我慢している。
お仕置きは僕にとっても苦行。

「なんて強情な姫だ……。」

「じゃ、僕はパックして寝ます。」

「チャンミン!!頼むから抱き締めるだけでも!」

「おやすみなさい!」

僕は自室のドアをきっちり閉めて鍵をかけた。
ユノと同じベッドでなんて寝たらすぐ襲ってくるから、僕のアパートそのままに荷物が持ち込まれたこの部屋で暮らしている。

洒落っけも色気もない白いシーリングライトの下でパックして、ベッドに腰掛けても両目はつい扉を凝視する。

高級なマットに慣れてしまった背中は、横になりたがらない。

あの扉の向こうの廊下を挟んだ寝室には両手を広げてもシーツにしか触れない大きなベッドがある。

寝室の間接照明が壁で上映してくれる影絵は1日の終わりをしっとりと演出する。
ユノの影が僕の影にキスするシーンは、何度見ても胸をきゅんとさせる。

あそこで眠りに落ちたい。

「……ダメだぞ。僕は教育中なんだから。」

先生って疲れる仕事だ。
しつけする親って大変だな。
お仕置きされる方も辛いけど、する側の方がしんどい。

「はあ………。」

眠れそうになかった。

一杯だけ強いお酒を飲んで、脳を鈍らせて寝てしまおうと思い、僕はブランケットを肩に巻いて部屋を出た。

寝室の扉の前で中の様子を窺うが、人の気配もしないほど静かだ。
ユノはもう寝てしまったんだろう。

ヒタヒタと廊下を歩いてリビングのドアを開けると、真っ暗な中にぼんやりと小さな明かり。

ユノはソファにぽつんと座っていた。




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ジャンル : 小説・文学

運命の人 farside編 15

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farside編 15
- 東の海 -


「こんな天気の中、1時間以上外に居たって?正気の沙汰じゃありませんよ。しかも、中国の着物羽織ってただけで?」

「……日本です……。」

「いくら健康な男性でも、体温が奪われれば身体は機能しなくなるんです。アルコールを飲んだ後と言うのも良くない。」

年配のドクターは、「ふう……」とため息を吐いて聴診器を外した。

「低体温症ですね。対応が早くて軽度ですんだのは良かった。体温は上がってきていますし、心配ないと思いますが……。こんな無茶、もう絶対にしないでくださいよ!」

「すみません……。」

悪いのはユノのはずなのだけど、怒られて僕は項垂れた。


温室で倒れたきりユノが全く動かなくなって、僕は我に返り、屋敷に駆け込んで助けを求めた。

シウォンさんとドンヘさん、使用人がユノを担ぎ上げて運び、ウニョクさんがユノの濡れて冷えきった身体を乾かして毛布でぐるぐる巻きにした。

僕はずっとユノの名前を泣き叫んでいたらしい。正直あまり記憶がない。

全部後でドンヘさんに聞いたことだ。

シウォンさんの家の馴染みのドクターが来た時には、僕は毛布にくるまったユノを抱き締めてい泣いていた。

「このまましっかり温めてください。明日また様子を見に来ます。」

「はい……。夜分にご迷惑おかけしました。」

ドクターに続いてみんなが部屋を出て、シウォンさんだけが残った。

「チャンミナ……俺の顔なんて見たくないだろうけど、ユノのこと、勘違いしてるとこもあるだろうから伝えたくて。」

シウォンさんは謝罪し、ユノから離れない僕にちょっと微笑んだ。

「ユノに久々に会って、やたらと自慢されたよ。チャンミナはどんな時も期待を超える人で、恋人って以上に、信頼できるパートナーだとかのろけてさ。」

「そんな……。」

僕には思いもよらない。
いつも仕事中は不安でたまらないし、ユノが褒めてくれて、初めて安心する情けないやつだ。

「その割には、いつも心配そうに僕の仕事監視してますけどね。」

「それは違うよチャンミナ。どんなことするか、何を考えてるか、見逃したくなくて困るって。どんなチャンミナも見ていたいけど、そうもいかないのが悩みだとさ。」

「は……。」

僕は赤面してしまい、恥ずかしさを隠そうと怒った顔を作った。

「だ、だとしても、信頼してる恋人を騙すなんて、酷いじゃないですか……。」

「それはさ……ほんとに、俺も申し訳ない。あんまりユノが自慢するから、俺が言い寄ったら靡くんじゃないかなんて冗談半分にからかったから……。躍起になっちゃったんだよこいつ。」

シウォンさんはため息を吐いて、呆れ顔で眠っているユノを覗きこんだ。

「ユノはさ……チャンミナは身体で解決なんてしないって豪語してたよ。無理難題に直面しても、ちゃんと上手く乗り越えようとするに違いないって。賢くて強い人だから。」

「は……。」

「今日の件はお仕置きとか言ってたけど、俺に見せつけようとしたんだよユノは。チャンミナがどんなに素敵な人か。」

「買い被り過ぎですよ……。僕、ユノが思ってるほど真面目ながんばり屋じゃないです……。正直ちょっと……考えちゃいましたし。」

「だろ!?俺もユノがあんまり自信満々だからムカついたよ。」

シウォンさんはクスクス笑い出した。

「でも、さっきのユノ……ふふ……。本当は不安だったんだろうなぁ。淫乱な子なんじゃないかとか言っちゃってさ。俺には自信満々なフリしてたくせに。ははは。」

「ふふ……。」

つい笑った僕の髪に手を伸ばそうとして、シウォンさんは真剣な顔になって拳を握った。

「キスしたこと……俺は謝らない。キスしたいくらい魅力的な人だよ君は。」

「シウォンさん……。」

「ほんとに……ユノの恋人なのが憎らしい。」

「あ……。」

シウォンさんは僕の手をぐいっと掴んで甲にキスして、「おやすみ」と部屋を出て行った。


やだな。
本気なんじゃないかと勘違いしちゃうじゃないか。

僕はしばらく1人で赤面していた。
心なしかユノの頬も赤い。

「ユノ……?もしかして……起きてる?」

僕の呼びかけに睫毛がぴくりと動き、ユノはゆっくり目を開けた。

「ユノ!!」

毛布でぐるぐる巻きのユノは、僕に大人しく抱きつかれて神妙な顔をしている。

「……ごめんチャンミン。」

「もう、ほんとに色々勘弁して……。」

「すまなかった……。許してくれなんて言えないことだよな。」

「今はその話はいいから……。」

「ずっと……抱き締めててくれる?」

「仕方ないから……温めててあげるよ。でも、ちょっと毛布が邪魔。」

僕は裸になってユノと一緒に毛布の中にくるまった。ユノと僕の皮膚を通して熱が移動し、同じ体温になっていく。

「チャンミンの身体って、温かいな。」

ユノが甘えて僕の胸にすり寄るのが可愛く、いとおしい。

僕を騙したことは許せないけど、でも、ユノの身に何かあったらと考えたら、今はもう、息をしてくれるだけで良かった。

生きててくれれば。
それだけで。


ユノの胸が上下して呼吸する。
その動きにすらじーんとする僕は、何をされてもユノから離れられない。

ユノだってそうでしょう。
僕はユノが万が一浮気したら逃げるタイプだけど、ユノは謝りながらも、地の果てまで追いかけて来そう。

それで無理矢理キスして押し倒されたら、僕はきっと抱かれてしまうんだ。

だって僕、淫乱だからね。

「ねぇユノ。ユノの勘は間違ってない。僕ね、割と誰とでもやれちゃうタイプだったよ。」

「だっ……!」

ユノは絶句した。

「ユノに初めて抱かれた時も、パリの一夜の思い出でいいと思ってた。」

ユノの切れ長の目は真ん丸になった。
そんなに驚かなくてもいいじゃないか。

「そんな刹那的な恋しかしたことなかったから。何故か年上の男性によく誘われるんだよね。学生の頃からそうでさ。モデルになったばかりの頃もよくカメラマンさんに……。」

「チャンミンやめてくれ。聞かせるな。」

「ううん。聞いて。ユノに飛行機でキスされた時だって、D&Eの社長だから受け入れたのかもしれない。」

「……肩書き……か……?」

「でもそれからの毎日は……。あんなに……あんなにもっ…………胸が締め付けられるような思い……したことなかった!」

ユノに恋した時の気持ちが、僕の身体にまざまざと甦る。

「キスしただけの人のことが忘れられなくて、毎日、毎晩、月の満ち欠けみたいに心が変化して、暗闇になったり、満月になったり……。」

恋の痛みに抉られて、心の表面はざらざらとした凹凸だらけ。

まるで、月の表面みたいに。

「俺は……今でもそうだよ。」

ユノはぽつりと呟いた。

「今でも毎日恋に落ちる。チャンミンが見せてくれる顔が毎日新鮮で、今日もまた好きになった。」

「キレたのに?」

「ああ……。情けなくてカッコ悪い俺を見せてしまったけど、あんなに怒ってくれて、愛されてると痛感したよ。」

ユノは僕の頬に何度もキスして、柔らかく笑っていた。
安心したら、急に睡魔に襲われる。

「眠くなってきちゃった……。色々ありすぎて疲れたのかな。」

「ああ。眠ってチャンミン。」

ユノが腕枕してくれる。
シルクみたいにすべすべの胸に抱かれて、眠りに落ちる直前、ユノは耳元で囁いた。

「やっぱりチャンミンは俺の十六夜月だよ。」

それ……僕にはぴんと来ないんだ……。
でも……なんか……すごく幸せ。



夢も見ない深い眠りから覚めた次の朝、窓の外はまだ雲に覆われ、ビュービュー風が吹いていた。

でも僕の前には、東から昇る太陽があった。

それは目覚めたユノの笑顔。
僕の心に温もりを与える朝日。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本日より、毎晩20:00更新します。

私の感情が高ぶって書き足さない限り、金曜日に最終話の予定です。

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コールドブリュー

Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

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