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運命の人 -十六夜月 後編

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運命の人 -十六夜月 中編

運命の人
- 十六夜月 中編



ユノの制止を無視し、歩いて帰ると言い張った。

コートを返そうとしたけど、それは許さないと言われ、もう何も考えたくなくて、ただユノの手を振り切って歩いた。

ユノは、それ以上追って来なかった。



僕はモデルに向いてない。

下を向いてばかりの僕が、服を魅力的に見せるなんてできるはずなかったんだ。

僕なんかより、あの服に相応しい人なんてたくさん居るだろ。

D&Eのミューズだって?
勘違いだよ。
彼らにとってそんなに大切な存在なら、なおさら僕じゃ駄目だ。


肌寒いパリの街を、ひたすら歩く。


コートからユノの香りがして、彼に包まれた感覚を嫌でも思い出す。


夢、ブランド。

そんな話は僕を虚しくさせた。

ただ愛されたくて、一晩でいいから抱かれたいと願った自分が、どうしようもなくユノとかけ離れた人間に思える。




ホテルに辿り着いた時には、もう太陽は西に傾き始めていた。


窓辺に座ってコーヒーを飲みながら、シトロエンにもたれるユノを思い出す。

たった3回しか会ってないユノ。

忘れよう。
住む世界が違う。

月が綺麗すぎて、幻想の世界に迷いこんだだけ。

僕は少し眠った。



チャイムの音がして、怠い身体をひきずりドアの隙間から覗くと、ウニョクさんが立っていた。


「ごめんね。押し掛けて。」

「パーティー、何時からなんですか。ウニョクさんが出ないと……」

「えへへ。もう始まる。ユノは激怒してるだろうね。」

かわいい人だ。
窓辺に2人で腰掛けた。

「今朝はごめんね。突然すぎて驚くよね。」

「いえ、もういいんです。」

ウニョクさんは、光を放ち始めた十六夜月に目をやる。

「今朝ユノの部屋に行ったら、ユノがチャンミンさんをモデルにするのは嫌だって言い出したんだ。」

「え?」

「自分でミューズを見つけたって連絡してきたくせに、意味分からないでしょ。」

混乱する。

「やっぱり人前に晒すのは勘弁してとか。みんなのものにはしたくないとか。」

身体が火照る。
ウニョクさんは頬を染めた僕を見つめて、穏やかな表情で続けた。

「ユノはずっと十六夜月を探してた。僕らのブランドのためってのはあるけど、もう10年も探してたからさ、ユノ自身の求めるものでもあったのかも。」

ユノが求めるもの。

『俺のもの』って。

人前に出したくないなんて。

ユノは葛藤してた?


「実物のチャンミンさんを見たら興奮しちゃって。ユノの気持ちも、チャンミンさんの気持ちも尊重せずに盛り上がってごめんね。」

いや、憧れのデザイナーさんにそんなこと言われて光栄だ。
信じられないだけで……


「気まぐれで我が儘な僕とドンヘのためにずっと尽くしてくれてたユノが、僕らより自分の欲求を優先したがったのに。
あんまりチャンミンさんが綺麗だから、また暴走しちゃったよ。」





僕は唇が震えて、言葉を発することができない。


月の光が道路を照らす。

滑走路のように伸びる道。


あの時空港で、チケットを変更したのは、僕。
ユノの隣のシートに座ることを選んだのは、僕。

強引なキスを受け入れたのは、僕。
ユノに、もっともっと、と求めたのは、僕。

モデル事務所に入ったのも、パリでの研修を受け入れたのも、結局選んだのは僕じゃないか。


僕は自分で選択したんだ。
全部自分が選んだ道で、その先にユノがいた。

月の光に惑わされたんじゃない。
僕は自分で……


「ウニョクさん。パーティーにはまだ間に合いますか?僕を連れて行ってください。」




月が照らす街を、猛スピードで走るタクシー。ウニョクさんは運転手にユーロ紙幣を握らせ、もっとスピードを出せと煽る。

かわいい顔に似合わず、どすのきいたフランス語。

ユノのコートにくるまれて、襟元に顔を埋めている僕に時折目をやり、ウニョクさんは微笑んだ。


何度か対向車にクラクションを鳴らされ、1度歩道のゴミ箱をはねはしたが、タクシーは無事、店舗の裏口に着いた。


部屋着で来てしまった僕をそのまま会場に入れるわけに行かず、倉庫から服をピックアップする。


僕はコートの匂いを鼻腔いっぱいに吸い込んで、心を決めた。

「あの……あの服を。あれを、着せて貰えないでしょうか。」

ウニョクさんが目を見開く。

「着て、くれるの?」


ウニョクさんは別の部屋に走って行き、大切そうにあの服を抱えて戻ってきた。


紫がかったネイビーのジャケット。光によって色の印象が異なる。

金の縁取り糸は、目を凝らさないと見えないほど細いのに、全体に高貴な印象をもたらしている。

ジャケットの下には黒のセットアップ。身体のラインを美しく見せる緻密なパターン。

首元まで覆っているのに、人をセクシーに見せてくれる。

計算され尽くした、魔法。
僕の体型にぴったりフィットする。

服をまとった僕を見て、ウニョクさんは泣いた。

止まらない涙をそのままに、髪を上げてセットし、薄くメイクを施す。


2階から会場に入ると、柱の影に立たせ、
「ちょっと待っててね。」
と階段を下りていく。


1階はたくさんの花と人で溢れている。

パーティーは終わりに近づき、白いスーツを纏ったユノが、挨拶しようとしていた。

ウニョクさんはステージに上がり、ユノからマイクを奪う。

「ウニョク、お前っ…」

ユノは口をあんぐり開け、その隣でドンヘさんがワクワクした顔をしている。


ウニョクさんはステージの真ん中に立った。


「最後にもう1着。私たちの10年の集大成をご覧下さい。今までのD&Eのラストルックであり、これから世界に羽ばたくD&Eのファーストルック。」


階段の下まで歩を進めると、ウニョクさんは僕に微笑んで、頷いた。



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次回、最終回です。

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ジャンル : 小説・文学

運命の人 -十六夜月 前編

運命の人
- 十六夜月 前編



誰かの笑い声で目が覚めた。
隣のリビングが、小学校さながらの騒がしさ。

身体に力が入らず起き上がれない。


バタンとドアが開いて、雑誌でしか見たことのなかった綺麗な男性2人がひょこっと顔を出す。

「おいっ!入るなって!」

ユノの制止を無視し、D&Eこと、ドンヘさんとウニョクさんが飛び込んできた。

シーツ1枚しか隠れるものがなくて、僕はあたふたとしたが、バスローブを手に持ったユノが走って来て、僕にかけた。

「ユノ!すごいよ!イメージ通り!」

「かわいい!かっこいい!香り立つ!」

騒ぐ2人を部屋から押し出し、ユノは申し訳なさそうに枕元に腰掛け、キスした。

「ごめん。あいつら勝手に部屋に押し掛けてきてさ。」

ポカンとしたままの僕。

「身体大丈夫?立てそう?」

ユノに支えられてリビングに行くと、ドンヘさんとウニョクさんは目をキラキラさせていた。

ウニョクさんが美しいジャケットを僕の前で広げた。

「わぁ…」思わず感嘆。

「今夜のオープニングパーティーを飾る大切な服なんだ。D&Eの理想を形にした。」

ドンヘさんが誇らしそうに言い、ウニョクさんが僕の肩にジャケットをかけた。

「あの。え?」

「これをチャンミンさんに着て欲しいんです。」

僕には状況が全く理解できない。

「パリに来るまでにこの服に相応しいモデルが見つからなくて、拗ねてたんだよこいつら。」

ユノが補足説明した。

「そしたらユノがミューズを見つけたって言うからさ。写真見て、ウニョク引っ張り出して飛んできたよ。」

「うん。ほんとに部屋から引っ張り出された。」

笑い合う2人。
僕の意思を無視して進む会話。

「写真では色気が物足りないかなーと思ったけど、さすがユノだね。でもさ、やり過ぎでしょ。チャンミンさんに何かあったらどうすんだよ!」

ドンヘさんの言葉に、昨夜のユノが浮かぶ。

『大切にしないといけない』
『チャンミンの身体が壊れたら困る』

そういうこと?

モデル探し?

『俺のもの』って、そういう意味?

色気が足りないから抱いたってわけ?


幸せに浸った自分が情けない。
所詮落ちこぼれのモデルの卵。

こんな大人が、本気で惚れるわけないか。

「僕なんかには無理です。」

「チャンミン……」

「ユノさん、僕の服はどこですか?」


ドンヘさんとウニョクさんはあからさまに「ガーン」と言う顔をして項垂れた。

ユノは僕を見つめ、そして視線を逸らす。

「チャンミン、突然のことで驚いたとは思うけど、こいつらの願い、叶えてやってもらえないかな。何ヵ月もかけて仕立てたんだ。」

パーティーのために、ね。

勘違いして浮かれていた自分が哀れだ。

羞恥から、涙が溢れた。

「返せ……早く僕の服を返せ!!」

ユノは、僕の腰に添えていた手を離した。


クリーニングに出してしまったからと、ユノはD&Eの白いシャツとオレンジに染められたジーンズを出した。

着替えた僕を見て、ウニョクさんは涙を溜めてドンヘさんにしがみついた。

僕はユノに手首を掴まれて部屋を出た。


「やっぱり彼だよ!彼が僕らの……」

ウニョクさんの叫び声が聞こえたけど、ドアが閉まって何を言っているかは分からない。

タクシーで帰ると言う僕を引っ張って、車に乗せたユノ。
沈黙の中、車はパリを行く。

パリは今日も美しい。
アジアの都市とは違う、派手な色のない街並みは、灰色に染まった僕の心に馴染む。


セーヌ川クルーズの船場で、ユノは車を停めた。

「少しだけ俺の話を聞いて。」

そう告げておりていく。

セーヌ川を渡る風は冷たくて、ユノは着ていたコートを僕にかけた。

「あいつらと俺は10代の頃からの馴染みでね。世界一のブランドになってやるって、今日まで走ってきた。二人はデザイナー、俺はMD(マーチャンダイザー)として、D&Eのブランドを築いてきたんだ。」

空を見上げるユノの横顔が美しくて、僕は目を背けた。

「今夜は十六夜月だよ。ねぇチャンミン、なんで "いざよい"って言うか知ってる?」

突然の質問に首を横に振る。

「満月の次の日、十六夜月は前日より1時間近く遅れて出てくる。その様子を、月がためらっていると見立てて、なかなか前に進まないことを表す "いざよい" って読むんだって。」

ユノは、欄干に置かれた僕の右手を握ろうとしたが、触れるか触れないかの距離に左手を置いた。

「十六夜月は、満月と変わらずに美しい。ためらう必要なんてないんだ。悩んで前に進めずにいる人が、僕らの服で一歩進める、前向きになれる。そんな服を作ることが、D&Eの夢なんだ。」

ボートが通り、水面にさざ波が寄せる。

「D&Eには専属モデルが居ない。理想とする十六夜月のイメージにぴったりなミューズが見つからなかった。ブランドを立ち上げて10年、ずっと探し続けてた。」

ユノが僕を見つめている。
僕はユノを見ることができず、ただ揺れる水面だけを見ていた。

「パリへの出店が決まって、世界一になるための足掛かりができた時、今度こそ理想のモデルを探し出すって豪語したんだけど。全く見つからなくて……」

ユノは躊躇っていた左手を、僕の右手にのせた。逃げようとするのを許さず、ぐっと力を入れる。

「あの日飛行機に乗ってチャンミンを見た時、運命だと思ったよ。

可愛くてキラキラ輝きを放っているのに儚げで、窓から月を見つめてたお前の笑顔は女神みたいに美しいのに、瞳は自信なさそうに潤んでた。」

ユノは泣きそうな顔で僕の頬に触れた。



「俺は、十六夜月を見つけたんだ。」



ノートルダムの鐘の音が聴こえる。複数の鐘が幾重にも重なり、パリの街に広がっていく。

「チャンミン。今夜のパーティーには来なくてもいい。あの服は、チャンミンが着ないなら誰にも着せない。」

ユノは突然、ふふっと笑った。

「でも覚悟して。俺は絶対にお前を捕まえる。どこに逃げても、隠れても。」


心臓が、身体中が軋む。

僕はユノから逃げた。




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運命の人 -満月

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運命の人 -上弦の月

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Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

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