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祓い屋リノベーション おわりに

祓い屋リノベーション
-おわりに-



和風ファンタジーと銘打った割に、ふわふわ感のうっすいお話に長々とお付き合いいただき、ありがとうございました!

元々は伊勢神宮に行った時に「ああ……若チャンミンが巫女姿になったらどんなに可愛いかしらん。」と極めて不謹慎な妄想をしたのが「祓い屋リノベーション」のスタート。

とんだ参拝客です。
信心深さとか持ち合わせていない不届きものですんません。
信じているのは東方の神のみ←おい。
(あ、でも全ての宗教に敬意は持ってます。)


その後、「Love Again」をやたらと聞いていた時期にTomorrowが手元に届き、「明日は来るから」を無限ループしていたら、こんなシリアス展開になってしまいました。

リノベーション、再生する2人の愛の物語。

おいおい泣きながら書いたので、スマホがベッタベタになるという惨事を乗り越え、何とか最終話を迎えることができました。


個人的に、若いうちから大切な人の死を経験して、死は身近なものでした。

人の死は避けられない誰にも訪れる必然である以上、残される人は受け入れて生きるしかない。

人の死を幸せなものにするか、不幸にするかは、残された人の生き方次第だと思っています。巫女チャンミンのしたことは、絶対に許されることではないでしょう。

でも、都合が良すぎるかもしれないけど、現実離れしているかもしれないけど、奇跡みたいな存在のユノとチャンミンに、こんな未来があったっていいじゃない?と夢見てみました。

ユノの悲しいシーンが辛くて、こんなもん人様に晒すべきなのかしらと不安でしたが、たくさんの方に読んでいただけて、今は幸せな気持ちでいっぱいです。

チャンミンが可哀想で、ついエロが多くなっちゃいました←書きたいだけだろ。

現世のチャンミンとユノの惹かれ合う様子を、過去を知った上で読み返して貰えたら嬉しいです。


次作は探偵のcase3です。
軽い気持ちでお楽しみいただける内容。
朝8:00投稿です。

夜はたまにエロい話を投稿するかもしれません。

ぶん殴られた後のシウォンさんとか、幽霊が見えるようになったユノとチャンミンの仕事ぶりとか、祓い屋リノベーションの続編も書いてみたいなぁ、なんて思ってます。


改めて、「祓い屋リノベーション」のご愛読、本当にありがとうございました。

全ての皆様に、意味のある今日と、幸せな明日が来ることを祈っています。




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祓い屋リノベーション 41

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祓い屋リノベーション 40

祓い屋リノベーション
40



「チャンミン!弟よ!頼むから目を覚ましてくれ!兄さんはチャンミンがいないと死んでしまう!」

あー、もう。
なんだ。
うるさいな。

「兄さんがこんな仕事引き受けたせいだ!チャンミンのことは一生俺が守るから!起きてくれ!」

男のくせにおいおい泣きやがって。
シウォンの声か?

悲しい夢を見て感傷に浸っていたのに……。
落差が激しすぎる。

それにチャンミンを守るのは俺だ。
お前じゃない。

「シウォン……うるさい……。」

「ユ、ユノ起きたのか!?……社長を呼び捨てするとは……。」

目を開けると、俺は病院のベッドに寝かされていた。

隣に、愛しい人。

「チャンミン……」

俺はベッドから転げ落ちて、チャンミンの手を握った。

「おいユノ!大丈夫か!先生を呼んでくる!」

シウォン、あ、ここでは社長か。
シウォンさんがバタバタと病室を出て行った。

ああ、2人きりになれたね。

「チャンミン。起きて……。」

俺はチャンミンの美しい顔を撫でた。

「ん……」

チャンミンが眉をしかめる。

「なあ。目を覚ましてくれ。」

可愛い唇。
最期にくちづけた時、吸い付いてやれなくてごめんな。

「愛しい俺の巫女……。」

俺はチャンミンに優しく、甘く、くちづけた。

「あ……ふ……」

チャンミンの吐息が甘い。
こんなくちづけが欲しかったんだろ。
吸い付いて、舌で刺激して、とろけるくちづけ。

「あ……ん……」

くそ可愛いな。

「もう起きてるんだろ。国王の命だ。目を開けろ。」

チャンミンの瞼が震えて、眼球が動く。

「目を開けないと、ここで抱くぞ。」

ばちっとチャンミンの目が開いた。
くりくりの目が、涙で潤んでセクシーだ。

「バカ!!!変態エロ国王!!!」

チャンミンは俺に腕を伸ばした。
俺はその腕を捕まえて抱き起こし、全身全霊で抱き締めた。

「ユノ!会いたかった!!」

まだ半分夢の続きにいるチャンミンの瞳から大粒の涙がこぼれて、俺の肩を濡らす。

「同じ夢、見てた?ごめんな。あんな思いさせて。」

「もう嫌だよ!」

「ほんとごめん。」

ぐちゃぐちゃに濡れてしまったチャンミンの頬を両手で包んで、くちづけた。
涙でしょっぱくなった唇が、甘くとろけるまでじっくりと。

「待たせて悪かった。」

「待たせすぎ……。」

見つめ合って、どちらともなく笑った。

「ねえ。もっとキスしてよ。二千年分、取り戻して。」

「ふはっ。変態どエロ巫女だな。」

2人で濃厚なくちづけを交わしていると、うるさい男が帰って来てしまった。

「いやーーーーー!!!」

「あらら、お取り込み中?」

「あ、クララさん。」


俺達は、1日意識不明だっただけらしい。

「かなりの高さから落ちたのに、奇跡的に怪我は大したことなかったの。こちらのシウォンさんがあまりにギャーギャーうるさいから、特別室に入って貰ったわ。」

「やだな。シウォン。恥ずかしい。」

「チャンミン!今一度、兄さんと呼んでくれ!部屋代は俺が出してるんだぞ!」

なんだかなぁ。
チャンミンとの甘い再会がぶち壊しだ。

「ユノさんは頭と背中を打ってたから、MRI検査したわ。そしたら……」

クララさんはため息を吐いた。
チャンミンが俺の腕の中でびくっと震える。

「全部消えてたの!人類初の症例が!跡形もなく!」

「ああ……良かった……。」

チャンミンがぽすんと俺の胸に顔を預けた。

「あれさ、国王の記憶だったんじゃないかな。記憶が戻って、俺と1つになった感じがするんだ。」

「じゃあ、あれは元々ユノだったんだね。」

クララさんはこそこそ話す俺とチャンミンをじっとりと見つめた。

「何の話よ。やっぱりあなた普通じゃないわ。チャンミンくんも、何か隠してるでしょ!2人ともこのまま暫く入院しなさいよ!じっくり調べさせて!」

「うふふふふ。」

チャンミンは笑い出した。

「確かに俺は普通じゃない。チャンミンに狂ってます。俺はチャンミンから離れられない。」

「僕も離れないよ。何千年でも何億年でも追いかける。」

シウォンさんは仰け反ってふらついた。

「2人ともどうかしてるぞ!!兄さんの前でいちゃつくな!!!」



何の異常もないため入院は3日間だけで、家に帰ることになった。

「1年以上帰ってなかった気がするな。」

「そうだね。久しぶりの我が家って感じ。ねえユノ、神社の楠に寄っていかない?」

「あの楠は、チャンミンが植えたもの?」

「うん。多分……。」

神社の境内を抜けて裏手に回ると、楠の根元に、キュヒョンが立っていた。

チャンミンは駆け出した。

「キュヒョン!!!」

あーあ。そんなにきつく抱き合って。
わー、首に顔埋めちゃって。
気分……悪いな。

ん?チャンミンは幽霊と触れ合えるようになったのか?
ますます気分悪いな。

チャンミンの腕を引くと、口を尖らせて怒られた。

「再会を喜んでるのに、邪魔しないでください!」

なんだかチャンミンが前より怖くなっている気がする。

「キュヒョン。チャンミンのために、色々ありがとう。」

「ユノ、キュヒョンが見えるの?」

「もう見えますよね、ユンホ様。穴に落ちた衝撃で記憶が戻って、才能も回復したはずです。」

「キュヒョンはチャンミンを助けもせずに突っ立ってたな。」

「はは。チャンミンはユンホ様が抱えて落ちたから大丈夫だと思って。ユンホ様にはトヨさんが居るし。記憶を戻すには多少の衝撃も必要なんでね。」

チャンミンが俺の腕をぎゅっと握って睨んだ。

「やっぱりユノが助けてくれたんだね。もうやめてよ!僕のために自分を犠牲にしないで!」

チャンミンは泣き出して、俺にしがみついた。

「もうあんな思いはしたくないよ!ユノに何かあったら生きていけない!」

チャンミン。
よく分かったよ。
痛いほど思い知った。

「死ぬときは一緒に。生まれ変わるときも、一緒に、だな。」

本当にそんなこと可能だろうか。
でも、チャンミンと俺ならできるかも。
そんな気持ちで愛していこう。

キュヒョンは見つめ合う俺達を優しく見守った後、ぽんと手を叩いた。

「さ。俺は仕事をやりきったから、そろそろ行こうかな!お2人のイチャイチャは見飽きてるし。」

「え!キュヒョン……行っちゃうの?」

キュヒョンはくすくす笑いだした。

「俺が今消えたらチャンミンが苦しんで、その後ユンホ様とエロいことするだけだからな。俺はエロのつまみにはならない。それより、新しい楽しみを見つけた。」

「楽しみって何?」

チャンミンはきょとんとしている。

「まさかあの聡明で妖艶だったシウォン新国王が、今生でブラコンアニキになっているとは思わなかった。面白いから、観察する。」

「あはははは!」

俺は思わずばか笑いしてしまった。
確かに、あの変貌は予想外だ。

「あの後、国は平和だったか?」

「はい。ユンホ様。ユンホ様とチャンミンを同時に失って、疫病や天災には見舞われましたが、みんなで切り抜けました。」

「そうか……。家臣のみんなに感謝しないとな。」

ドンヘはまあいいとして、シンドンやウニョク、ヒチョルには悪いことをした。でもあいつらなら、やって行けると分かってた。


「あの遺跡はどうなるのかな?」

チャンミンの問いに、キュヒョンは「さあねぁ」と首を傾けた。

「2人の記憶を戻すためにちょっと無茶したけど、俺はもう悪さはしないよ。」

俺はチャンミンの腰を抱いて引き寄せた。

「なるようになるさ。もうキュヒョンもあそこを離れたんだし、お祓い完了。工事するなり、調査するなり、勝手にすればいい。大切な場所は、ここにある。」

チャンミンは楠とその奥の家を見上げた。

「禊場……。」

「泉の上に俺たちの家があったんだな。」

「ユノ……。」

見つめ合った俺達に咳払いすると、キュヒョンは手をパタパタ振って去っていった。

「またな!ちょっとシウォン様で遊んでくるわ。」

キュヒョンを見送りながら、チャンミンは首を傾げた。

「シウォンは霊感ゼロ人間だけど、キュヒョンのこと気づくのかな?」

「トンバン国のシウォンは敏感なやつだったから、頭でもぶん殴ったら、急に見えるようになったりしてな。」

「うふふ。そうなったら面白いね。」

チャンミンが瞳をくりくりさせて笑う。

俺が手を握ると、チャンミンは指を絡めて恋人繋ぎにし、大きな瞳を潤ませた。

頭上の楠からの木漏れ日が、潤んだ瞳をキラキラと瞬かせる。

満天の星空を広げたようなチャンミンの瞳。
チャンミンは俺の宇宙だな。
時空すら越えて、俺を愛してくれる。

幸せだ。こんなに可愛い奇跡の人に愛されている。

俺はもう、この手を離さない。





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祓い屋リノベーション 39

祓い屋リノベーション
39
~トンバン国~



国は哀しみに包まれていた。

家臣のみんなは僕を心配して、交代でそばに居てくれる。

シウォンさんとドンヘさんが、僕が晴れ乞いをしていた時のユノのことを話してくれた。

「ユンホ様はチャンミンのこととなると、ほんとに子供で、我が儘だったな。俺とドンヘの言うことなんて全く聞かないで。」

「2日目には我慢できなくなってね。馬に飛び乗って、王宮を抜け出してしまったんだ。でもユンホ様は、泉の森に入らなかった。」

「巫女が国民に愛されるように、祈祷の成功を願って、森の外れで祈ってた。」

「いつになったら呼ぶんだってずっとぼやいてたね。」

ドンヘさんは悲痛に歪んだままの頬を少しだけ上げて、ユノの姿を思い浮かべて微笑んだ。
瞳から流れ出しそうになる涙を、すんでのところで何度も拭った。

「4日目の晩に空を見て、いけると。さすがチャンミンだと……。雲が晴れることを分かっていた。祈りながら、巫女の名前をずっと呼んでいた……。」

シウォンさんが天井を見上げて呟く。

祈りと一緒に、僕が空に昇ってしまえば良かった。そうすればこんなことにならなかった。ユノにもう一度抱き締められたいばかりに、生きてしまった。

「ユンホ様が急に走り出した時、止められなかったんだ。弾かれるように飛び出したから。追い付けなくて。」

「ユンホ様を守れなかった……。家臣として恥ずかしい。この命を捧げても、守らなければいけない人だったのに。」

2人はもう我慢することなく男泣きして、僕の手を握ってくれたけど、僕は一輪挿しに生けられた、山茶花の白い花を見ていた。

灰色の世界の中でも、綺麗な白だなって。
ユノの心みたいだ。


僕には巫女としてやらなければならないことがあった。僕の心に伝わるこの思いは、多分ユノの意思だから。

「ジウさんは、どうなりますか?」

僕が久しぶりに発した言葉に、シウォンさんがごくりと唾を飲んだ。

「この国には死刑がないが、死刑にすべきだろう。」

「会えますか?」

「会ってどうするんだ!」

「僕は国王の巫女なので。神である国王の意を伝えます。」


ジウさんは空っぽの武器庫に閉じ込められていた。僕が入ると、彼は泣き腫らした顔を上げた。

本当は、首を絞めて殺してやりたかった。
あらん限りの苦しみを与えてやりたかった。

でもそんなことしたら、巫女失格。
僕はユノの巫女で居られなくなってしまう。

僕は拳を握って耐えた。

「ジウさん。あなたは南の港で、漁民に釣り具や刀を作る技術を伝えてください。それから、港の治安を守る職に就き、トンバン国との貿易を望む渡来人を管理してください。ドンヘさんの指示に従って動いて貰います。」

ジウさんは僕の顔を見つめて呆然としていた。

「これは国王の命です。自害など許されませんよ。命が尽きるまで、全うしてください。」

ドンヘさんが、「ユンホ様らしい。」と呟いた。

僕はジウさんの顔をもう見なかった。
ただ、入り口まで歩いて振り返り、ユノが言おうとしている言葉に唇を委ねた。

「先代からの忠誠に感謝する。達者で。」

言葉を口にした一瞬、ユノが「よく言えたね。ありがとう。」と後ろから抱き締めてくれた気がした。

「ユンホ様!!!」

ジウさんの叫びと泣き声は、王宮に響いて空気が震えた。


僕は武器庫から駆け出して、ユノの亡骸にすがりついた。
それから葬儀の日まで、そばを離れなかった。

冷たく固くなってしまった唇の輪郭。
睫毛。
ほくろ。
指の関節の皺。
足の爪。
触れたことのなかった場所も、全て撫でた。

僕はどこかで期待してずっと待っていた。

ユノが幽霊になって会いに来てくれないかと。
寝ずに待った。
瞬きもほとんどせずに。

でもユノは、何日たっても会いに来てくれなかった。

ひどい人だよ。
愛してるって、離れるなって散々言ったくせに。

僕を残してさっさと行ってしまうなんて。
置いてけぼりをくらうなんて。

幽霊にはならないって?
頑固だよね。



葬儀の前日、僕は家臣のみんなにお願いした。

「ユノの亡骸を、泉の畔に埋めてください。」

「しかし王家の墓が……」

戸惑うドンヘさんを、シウォンさんが止めた。

「分かった。そうしよう。」

ユノの決めた選抜の方式により、シウォンさんが次の国王になると決まっていた。

シウォンさんなら、ユノの意思を継いでくれる。ユノの夢の国作りをしてくれるだろう。

何も言わなくても、大丈夫。

「それと、私はユノの巫女なので、明日でここを出ます。禊場で、ユノの墓と泉の管理をします。」

シウォンさんにも、みんなにも引き留められたけれど、僕は譲らなかった。
僕にはやることがある。

キュヒョンは僕に付き添うと言い張った。

「邪魔しないでよキュヒョン。折角ユノと2人きりで過ごそうと思ったのに。」

「お前が何をしようとしているかなんて、分かってるよ。俺にも、やるべきことがあるんだ。もう決めたから。止めても無駄だよ。」

キュヒョンは悪がきみたいに笑った。


王宮を出る直前に、中庭で泣いているトヨさんに話しかけた。

「役立たずな後継者で申し訳ありませんでした。ユノがもし再生することがあったら、守ってください。僕は生きてユノに出会いたいので、守護霊にはなれません。トヨさんにお願いしたい。」

トヨさんは頷いた。

ユノが望まなくても、守護霊についてもらう。
最初からそうしておけば良かった。
後悔することが、多すぎた。


ヒチョルさんが作った荷車に載せられたユノは、ウニョクさんが仕立てた紺色の着物を着て、町の人達が集めた黄色と白色の野菊の花に囲まれ、とても美しかった。

ユノの周りにだけ、色があった。

2人は、こんなことのために技術を磨いたんじゃないと怒って泣いた。


僕はまた初めて王宮に入った日と同じ正装をして、王宮を出た。
青銅の髪飾りの脇に、山茶花を差した。

家臣のみんなが交代で荷車を引いた。

僕はユノの隣を歩いた。

町の人々は王宮から泉までの道程に並び、僕とユノが通ると膝をついて礼した。みな泣いていた。


泉でユノが土に還る時、僕は少しだけ泣いた。

ユノの美しい顔をしばらく見られないことが辛かったから。
でも、号泣はしなかった。

泣いて力を使うより、僕はユノとまた出会うためだけに力を使うと決めていた。



王宮のみんなと別れ、ユノと、僕と、キュヒョンだけになった泉。

楠の苗を、ユノの亡骸の上に植えた。

この楠がユノの身体を吸い取り、光を浴び、風に吹かれ、ユノを自然の一部にする。

いつか、ユノを作っていた全ての材料がまたひとつになった時、僕と出会う。
絶対に、出会って、また恋をする。

ユノは僕を愛するよ。
僕は当然ユノを愛する。

その祈りを、この楠に託す。

「キュヒョン。僕が死んだら、ユノの隣に埋めて。僕はユノを追いかけて同じ道を辿る。この楠に、僕を吸い取って貰うから。」

「はいはい。分かってるよ。全く。ひどいこと頼むよな。」

「ごめんなさい。」

「いいよ。チャンミンはユンホ様の巫女だから。ユンホ様についていけ。」

キュヒョンは楠のまだ頼りない葉を眺めて、僕の頬を撫でた。

「いつか2人が出会って、まあ、お前とユンホ様のことだから出会ったら勝手に恋には落ちるだろうけど、記憶を失っていたら、俺様が思い出させてやるよ。」

「キュヒョン……。」

「それで、ユンホ様がチャンミンを置いていってしまったせいで、どれだけお前が辛かったか。2度とこんなことするなって、説教してやる。」

「んふふ。ありがと。お願いします。」



それから僕は何日も祈り続けた。

泉の水以外は摂らず、夜も眠らず、命が尽きるまで、祈った。

これは祈りなのかな。
執念かな。

何でもいいや。

僕の命を全て注ぎ込んで、必ず成し遂げる。

僕はユノから離れないよ。
何度でも再生して、ユノの隣に立つ。
だって僕は、ユノだけの巫女だからね。

ユノの隣は、誰にも譲らない。


でもまさか、二千年も待たされるとは思わなかった。

ねえ、キュヒョン。
待たせ過ぎだよね。

気が長いにも程がある。





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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~辛い展開で申し訳ありません。
明日から現代に戻ります!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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祓い屋リノベーション 38

祓い屋リノベーション
38
~トンバン国~



2日目は辛かった。
夜に気温がぐっと下がり、指が震えて樒を何度も落としてしまった。

でも寒さのおかげで見物人の数が減り、泉の浄化作用で空気が澄んだ。

僕は好機と思って一心に祈祷を続けた。
ぬかるんだ地面に何度も膝をついて、白い衣装は見るかげもなく泥にまみれた。

キュヒョンは僕に触れることを許されず、離れて僕を見ていた。キュヒョンはまったく眠らずに、立ち続けていた。


3日目の詳細な記憶はない。

ただ、ユノとの日々を思い出していた。
温かい湯殿にユノと入りたい。
ユノの胸のぬくもりに頬を寄せたい。
雑念だろうと、すがるものはそれしか無かった。
ユノへの執着だけが、僕の祈りを続けさせた。


4日目に、僕はようやく希望を見出だした。

雲の上に、良い気が流れ出している。
これをもう少し下げて、空を覗かせる。

意識は朦朧としていた。
自分の体温が下がっている。

まだ死ねない。
空を見上げて、雨粒を飲んだ。
何も口にしていなかったから、雨さえ甘く感じた。

下半身の感覚は無かった。
もうすぐ指も動かなくなるだろう。

気を抜くと、脳内が白くなって意識が飛ぶ寸前。

あと少し。
もう少し。

明日の朝には期限。
今夜中に雲を晴らす。

この場所で、ユノに抱かれた。
あの東屋で。
あの小道で。
あの森で。

「愛してるよチャンミン。」

あの泉でユノに貰った言葉。

その思い出が、僕の命をかろうじて燃やしていた。


秋の夜の雨は僕の心臓の動きをじわじわと鈍らせる。

キュヒョンがずっと、僕の名前を呼んでいる。
キュヒョンは嗚咽を我慢しなくなった。

飲まず食わずで冷たい雨に打たれ続け、普通でも耐えられない状況。念を送り続けて消耗が激しい。
僕が限界だと、キュヒョンは分かっている。

周囲の人々は、怖いほど静かだ。
僕の耳がおかしいのかな。

何も聞こえない。
皮膚の感覚もないから、雨も感じない。

今何時だろう。
深夜2時か、3時くらいだろうか。

そろそろ呼吸が浅くなってきた。



「チャンミン」

静寂の中に、ユノの声がする。

「チャンミン、諦めるな。」

ああ。
甘い声。
ユノ……会いたい。

「チャンミン。すぐそばにいるから。ほら、一緒に雲を払おう。チャンミンなら、できるよ。」

ユノが一緒ならできるかな。
ユノが大好きだ。
呆れるほど。好きだなぁ。

僕は、ユノへの想いを吐き出すように、最後の念を空中に放った。


突然、静寂の世界を破って男の子の声が耳に届いた。

「どうして巫女様をいじめるの!ユンホ様が愛する人が悪い人なわけないでしょう!?もうやめて!死んじゃうよ!」

男の子はわんわん泣き出した。
人々がすすり泣く声が、次第に大きくなる。


ああ。
ユノ。
あなたが愛する民には、やっぱりその価値がある。

気が変わる。
空に届く。


「星だ……星が見える。」

男の子の父親が呟いた。

男の子は手を叩いた。

「お星様!!!巫女様が雲を晴らしてくれた!!!」

森にどよめきが轟いた。
それは次第に歓声に変わる。


キュヒョンに抱き上げられて東屋に運ばれた僕に、みんなが布をかけてくれる。

でも、もう呼吸がつらいんだ。
羽衣1枚も重いんだよ。

最後にもう1度ユノに抱き締めて欲しかったな。
くちづけて、愛してるって、聞きたかったな。


「ユノ、愛してる……」


僕は呟いた。

呟いた自分を恨むよ。

そんなつもりじゃなかった。




僕の横に立っていた男性が、頭巾を上げた。

「ジウさん……。」

「すまない巫女。先代との約束だ。ユンホ様の血を絶やすわけにいかない。トンバン国の未来のためにはこうするしかないんだ。巫女が生きている限り、ユンホ様は世継を作らないだろう。後生だ。死んでくれ。」

ジウさんが袂から刃を取り出した。
さすが王宮の職人技。
美しく研がれた刃だな、と思った。

美しい光の軌跡が僕の胸に下ろされる。


僕は最期にユノを瞼に描こうと、目を閉じた。

いつまでたっても刃が下ろされず、ゆっくりと瞼を上げた僕の視界には、瞼に描いた通りの、ユノの笑顔があった。


「ああぁ……ユンホ様!!!」

ジウさんが叫んだ。


「チャンミン。もっと早く呼んでよ。4日も会えないなんて、発狂するだろ。会いたかった……。」

「ユノ!どうして!?会いに来てくれたの?」

「ああ。ずっと近くで待ってた。呼ぶの遅すぎ。」

「ユノ!」

抱きついた僕の手に、生暖かくどろりとした感触がして、指が滑った。

「え?」

僕の手の平は、真っ赤だった。

「ごふっ」

ユノが咳をした。
その口の中も、真っ赤だった。

「ああ……チャンミンの顔に……血が………ふっ……なんか………色っぽいな……。」

僕の震える手は、ユノの背中に触れた。

見惚れるほど美しいユノの背中。
僕の大好きなユノの後ろ姿。

そこに、あってはならない物の感触。

僕を突き刺すはずだった刃は、ユノの心臓の上にあった。


「あっ、ああ……いやあああああ!!!」


誰も一言も発しない。
風も吹かない。

静寂の森に、僕の叫び声だけが響いた。


「チャン……ミン……」

ユノが最期の言葉を言おうとしている。

「ユノ!いやだ!!ユノ!!!」

ユノは微笑んだ。
いやだ。
聞きたくない。


「愛してるよ……チャン……ミン……」


「あ……ああ……駄目……!ユノ!!!」


涙でユノが見えない。
ユノが見たい。
ずっとそばで見ていたい。

助けて欲しかったわけじゃないのに。
どうして来たの。

呼んだつもりじゃなかったんだ。
違うんだ。
ただ、ユノに愛を伝えたかっただけなんだ。

こんなことになるなら、呟いたりしなかった。
本当に神様が居るんなら、僕の呟きを消して。

僕が死ぬはずだったのに。
ユノはみんなの希望なのに。

こんなの駄目だ。


ユノは僕の涙を唇で拭った。
それから微笑んだまま目を閉じて、くちづけた。

ユノの唇は温かかった。
ユノが長い息を吐いた。

僕の身体に熱が入ってくる。
命を与えられる。

でも、ユノの唇から伝わるはずの吐息は、それ以上僕にかかってくれなかった。

いつも、ユノのくちづけは甘くて、とろけるのに。

どうして。
どうして、僕の唇に吸い付いてくれないの。

「いや……いやだ………いかないで……ユノ!!」

僕はユノの顔を起こして頬を撫でた。
真っ赤に染まった唇は、微笑んだまま動かなかった。

命をユノに戻さないと。
僕はユノに唇を重ねた。
反応のない唇に、何度も吸い付いた。

「ユノ……ユノっ!起きてよ!!!ねえ!!!」

頬をたたいた。
肩も、腕も。

「ねえ!ユノ!!ねぇ………ユ…ノ……!!」


ユノの身体がずり落ちる。
僕はユノもろとも地面に落ちた。

「ユノ……お願い……いかない……で………」

ユノの身体を泉の冷気が包む。
ユノを連れていってしまう。
僕は叫んだ。

「いかないで!!!!!」


森が泣いている。
キュヒョンの嗚咽。
ジウさんが地面に崩れ落ちている。


「……嘘だと言って…………」


走り込んできたドンヘさんが立ち尽くした。
その後ろでシウォンさんが東屋の柱を叩いた。
町の人達のすすり泣く声。


「ユノ………僕を……置いていかないで…………」


こんなに重いんだね。
人の身体って。

ユノはいつも僕を抱き上げてくれていたから、知らなかったよ。


「ユノ…………」




僕の世界から、ユノが居なくなってしまった。

その時から僕の世界は、色を失った。

太陽も、月も、星も輝かない。
雨も、風も、温度も、湿度も感じない。


ただ、灰色の世界。





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コールドブリュー

Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

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