FC2ブログ

運命の人 -新月 後編

この記事を閲覧するにはパスワードが必要です
パスワード入力
スポンサーサイト



リナリアの女 11

その探偵、恋は専門外につき
-リナリアの女-
11



明日はスニちゃんとデート。

だがそれどころではない。

チャンミンが俺を睨み付け、出ていってしまった。

「さよなら」なんて。
チャンミンと交わすことは一生ないはずの言葉。

「チャンミン……」

俺はチャンミンの部屋で、壁に掛けられた写真に呼びかけた。

チャンミンが居ない部屋では、ミモザのドライフラワーが色褪せて見える。

何がいけなかったんだ。

チャンミンが持っていた情報誌を改めて読んでみた。品のない記事が多いと分かっただけで、泣くようなものはなかった。


『さよなら、ユノ』


嫌だ。
絶対に嫌だ。
なんだよ、さよならって。

チャンミンを取り戻すにはどうしたらいい?

俺は、チャンミンの枕を抱き締めた。

チャンミンに会いたい。話したい。
今すぐ抱き締めて、チャンミンの心を知りたい。

涙の意味を教えて欲しい。

でも、知るのが怖い。
本気で嫌われていたら、チャンミンが生まれてからの20年が砕けてしまう。

「チャンミン……チャンミン……」

俺は枕を抱き締めたまま、動き出せなかった。





上の空でカフェでのバイトを終わらせ、僕はキルスの家に走った。

「明日デートしなきゃいけないのに!もうユノの顔なんて見たくない!」

「デート?」

明日スニとしてデートすることになっている話をするとキルスは一瞬にやけたが、すぐ真面目な顔に戻った。

「……なんだその展開。」

「みんな面白がってるんだ!僕がどんな気持ちでスニとしてユノと接してるか、誰も分かってくれない!」

キルスは背中をさすってなだめてくれた。

「じゃあ明日が最初で最後のスニとのデートなんだな。ユノも哀れな男だ。」

「………」

「チャンミンに出て行かれ、スニにはフラレるとは。」

「………」

「明日はユノの厄日だな。」

「だって……僕にいっぱいチューして翻弄するくせに、自分は女性とデートしてエッチなことしようとしてるんだよ?酷くない?」

「そんなに嫌ならデートを断れば良かったじゃないか。ユノだって、騙されて可哀想じゃないのか?」


キルスはとても優しく、でも冷静な大人だ。

僕の倍近く生きている憧れのギターの神様は、僕を茶化すことも、ユノをバカにすることもなかった。

キルスの言う通りだった。
僕だってユノの気持ちを弄んでいる。

あんなに必死に、スニに思いを寄せているのに。

「今夜はここに居ていいから、落ち着いて考えてごらん。デートはデートだ。チャンミンが受けたんだから、責任取りなさい。」


僕は1人防音室に入り、ギターを奏でた。

ユノが泣いている気がした。




次の日、キルスに見送られてカフェのバイトに向かった。
いたたまれなくて、家には戻らなかった。


ユノとのデートは夕方から。昼過ぎにはバイトを上がって、スニになることになっている。

嫌だと言いながら、ちゃっかりバッグに入っているデート服。

自分が恥ずかしくなった。



ランチの時間からシンドンさんとモモちゃんはカフェに来て、ファッション雑誌片手に僕のメイクをどうするか議論している。

下睫毛にマスカラを塗るかどうか悩んでいるらしい。そんなとこまで気にしなくていいのに。
楽しんでいるとしても、僕のために時間を使ってくれている。

「はい。お2人に。今日は僕の奢りです。」

ランチプレートを出すと、シンドンさんは目を潤ませて喜んだ。

「見てよモモ。チャンミンの瞳。塗りたくらなくても、充分潤んで可愛いでしょう?上の睫毛だけにしましょう。」

「そうね……その方がエロ可愛いかも。」

モモちゃんは僕の瞳を覗きこみ、睫毛を指で確認する。



「きゃっ!」

突然、窓際のお客様が悲鳴をあげた。
何事かと、お客様の方へ歩を進めた僕の視界に入った変質者。

「ぎゃっ!」

今度は僕が悲鳴をあげた。


窓にへばりついてこちらを凝視するイケメン。いや、顔がガラスで潰れてイケメンが台無し。

「やだユノさんじゃない。何してんのあれ。」



僕は店の外に駆け出した。
好きな人とは言え、人前で恥ずかしい姿を晒されて苛立った。

「ユノ!営業妨害やめてください!」

ユノはガラスに押し付けたせいで汗で額にへばりついた前髪をかきあげ、僕を睨んだ。


「チャンミン。俺は認めないぞ。」

「何を?」

「モモちゃんは駄目だ!キルスだけじゃ飽き足らず、いつの間にモモちゃんとも仲良くなったんだ!尻の軽い女と付き合うなんて許さん!」

「ふ、ふ、ふざけるな!」


キルスの助言は頭から弾け飛んだ。
同情の余地なし。

モモちゃんは応援してくれてるのに。
キルスはユノを心配してたのに。
モモちゃんとキスしてたのはそっちだろ。
夜の女とのデート前に何言ってやがる。


アホ!

おたんこなす!!

うすらとんかち!!!

バカユノ!!!!

バカバカバカバカ!!!!!




鈍い音と、痺れる痛みで我に返った。


「チャ、チャンミン……」

左頬を押さえるユノ。

拳がじんじんする。

僕はユノをグーで殴っていた。


「あ……ごめ……」

「ひ、酷い!父さんにも殴られたことないのに!」

ユノは頬を押さえて走り去った。

「ユノっ!」


なんてことをしてしまったんだ。
大好きなユノを殴るなんて。

これじゃ僕が本当に不良みたいじゃないか。

どうしよう。

何もかも、僕の思っていない方に進む。
こんなはずじゃなかった。
ユノとの普通の生活に戻りたかった。

ユノが僕に微笑みかけてくれる。
抱き締めてチューしてくれる。

それだけで良かったのに。
十分過ぎたのに。


「バカは僕だ。どうしようもない……」


シンドンさんが横に立っていた。

「ユノ……ユノ……」

名前を呼んでもユノはいない。
涙が溢れそうで、震える僕をシンドンさんが抱き締めてくれる。

「シンドンさん、僕はユノが好きなだけなのに、どうしてこんな……」

シンドンさんが優しく頭を撫でた。

「チャンミン。あなたは辛い恋をしてる。男で、兄弟みたいに育った人に恋をしてるの。辛くて当たり前。泣いていいのよ。」

シンドンさんの豊満な胸がふわふわで、僕は母に抱かれた子供みたいに泣いた。


「チャンミンは不良のろくでなしです。ユノを傷付けてばっかり。シンドンさん、僕を最高に可愛いスニにしてください。僕、ちゃんとデートしてユノを笑顔にします。」

モモちゃんも僕につられて泣いていた。

「大丈夫よ。王子の可愛さに勝てる人なんて、セレナシティのどこにも居ないわ。スニちゃんとデートできるユノさんは幸せ者よ。」

「そうよ。世界一可愛いわ。さあ!準備に取り掛かりましょう!」


僕らは、見つめ合って、頷いた。




15320051370.jpeg

続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

運命の人 -新月 中編

この記事を閲覧するにはパスワードが必要です
パスワード入力

リナリアの女 10

その探偵、恋は専門外につき
-リナリアの女-
10



明日に迫ったデートに備え、僕は脳内でシミュレーションを繰り返した。

こちらのシナリオは出来ているが、問題はユノのデートプランだ。
会っていきなり振るわけにもいかない。


ユノはスニとのデートのことを僕に一切告げない。

内緒にされたら、デートプランを聞き出すことができないじゃないか。僕がべらんめえ口調でキレたのを気にしているのか?

スニから聞いたことにして、それとなく探りを入れてみようか。
でも何だか癪だ。

迷っているうちに、ユノは唐突にチューを繰り出し、走り去ってしまった。

さっきのチューは何だったんだ。

僕の右頬が熱を持つ。



キッチンで洗い物をしていたら、突然僕のエプロンを引っ張って振り向かせたユノ。

泡だらけの手を上げたまま固まった僕の腰に手を添えて、行ってきますも言わずにチューをした。

いつもなら0.5秒に満たないチュー。
確実に1.5秒は触れていた。

しかも若干吸われ、僕は右方向に卒倒しかけた。

唇を離すやいなや、ユノは走り去った。
いつも逃げ足が速すぎる。

床に全ての泡が落ちきるまで、僕はオペ前のドクターみたいに手を上げたまま固まっていた。



はっ。
もしかして、スニとのデートの練習か?

むかつく。むかつく。むかつく!

僕の気持ちを弄び続けるユノめ。

明日は絶対にこっぴどく振ってやる!
スニの存在など、思い出すのも嫌にさせてやる!

拳を握り決意を強固にした。


何かデートプランのヒントになるものはないだろうか。

僕はユノの部屋に入った。

枕元に置かれたセレナシティの情報誌。

『真夏のデート 大特集!
意中の彼女をその気にさせる必殺デート』

「なにこれ……」

そのあからさまなタイトルに呆れつつページをめくる。

数件のバーが紹介されていた。
角が折られたページを開くと、見慣れたドンヘさんのバーの写真。

『ホテル街に佇む隠れ家バー。燃え上がる夜の始まりをカクテルで演出。
今夜は帰さない!大人の魅力で彼女はメロメロ。』

なんだこの卑猥な紹介は。

明日ドンヘさんのバーに行くって、そういうこと?

僕の脳内に、ユノが女性とラブホテルの破廉恥なベッドでイチャイチャしている映像が生々しく再生される。


最悪……。

考えないようにしてたのに。

心が何十本もの針で刺されたように痛い。







「困った……」

俺は車に乗り込んで急発進し、テミンのアパートの前まで無我夢中で走った。

明日はスニちゃんとのデートだというのに、何のプランも浮かばない。

店が紹介されたからとドンヘに貰った『真夏のデート 大特集!』と題した情報誌をめくってはみたが、どうもピンと来なかった。

それより、ストライプ柄のエプロン姿で洗い物をしているチャンミンを見て、衝動が抑えきれなくなってしまった。


俺との生活費のためにバイトするチャンミン。

調査を手伝って、テミンのことを聞き出してくれるチャンミン。

お弁当箱を差し出した時の、俯いて恥じらうチャンミン。

普段から可愛いが、エプロン姿は格別だ。

愛しい。
愛しくて仕方ない。


気付いたら、チャンミンの頬にキスしていた。
あれはチューじゃない。
俺の愛が溢れてしまったキス……。

あんなキスをしてしまって、変に思われてないだろうか。

チャンミンがほんのり頬を染めてうつむく姿を描き、俺はハンドルをガバッと抱き締めた。


「チャンミン!ラブ!」


暫くラブリーチャンミンを抱き締める妄想に浸った後、顔をあげるとアパートに入っていくテミンの姿があった。

いつもとは違う大きなバッグ。

昨夜テミンはアパートに帰って来なかった。
どこかで1泊してきたのだろう。
シジマさんの疑惑は的中しているのかもしれない。

1ヶ月に1回だけ逢瀬を重ねる相手がいる?

来月まで待たずに確認する方法はないものか。
やはりチャンミンの聞き込みに頼ろうか。

昨夜も明け方まで張り込んでいたので、今日はテミンの外泊が確認できただけで良しとし、俺は帰ることにした。

チャンミンは昼からカフェでバイトだ。
今すぐ帰れば、1時間は一緒に居られる。

少しでも長く、チャンミンのそばに居たかった。



急いでアパートに戻るも、静まりかえった我が家。もうバイトに行ってしまったのか?

がっかりして部屋に入ると、ベッドサイドに人影があった。

「ぎゃ!あ……チャンミンか。何してるの?」

チャンミンは情報誌を片手に、突っ立っている。

「チャンミン?」

俺は肩に手を置いて顔を覗き込んだ。


チャンミンは、泣いていた。


「どうした!?何があった!」

チャンミンは下を向いて、首を何度も横に振った。唇を噛み締めて、ぎゅっと閉じた瞳から落ちる雫。

「チャンミン!おい!どうしたんだよ!」

俺はチャンミンを抱き締めた。
派手な音がして情報誌が床に落ちる。


ハンドルチャンミンと違う。
俺が抱き締めたかったのはラブリーチャンミン。こんなに悲しそうなチャンミンを抱き締めたかったんじゃない。

チャンミンは顔を背け、両手で俺の身体を押しやった。

「チャンミンなんで?何があったの!?」

「なんでもない!」

「だったらなんで泣いてるんだよ!」

「なんでもないったら!」

チャンミンが目を見開いて俺を睨んだ。
心臓がえぐられた。

こんな目で俺を見るなんて。
憎いものを見るかのように。



俯いて俺から離れたチャンミンは、自室に入ると大きな鞄を抱えて出てきた。

「どこに行く気だ。」

「暫く実家に帰らせていただきます。」

「だ、ダメだそんな遠く!チャンミンが帰るなら俺も帰る!」

「……嘘です。バイトが終わったら今夜はキルスの家に泊まります。」

「キルスはもっと駄目だ!お、襲われたらどうするんだ!!」

チャンミンは口をぽかんと開けた。

とっさに俺が掴んだ手に視線を投げ、ふっと息を吐くと、絵に描いたような作り笑いを浮かべた。


「さよなら。ユノ。」


チャンミンは出て行ってしまった。
俺の叫びを無視して。


「チャンミン……!俺のチャンミーーーン!!」




15345242810.jpeg

続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

運命の人 -新月 前編

この記事を閲覧するにはパスワードが必要です
パスワード入力

リナリアの女 9

その探偵、恋は専門外につき
-リナリアの女-
9



シンドンさんに早めに来るようにと呼び出され、僕は次の日、カフェのバイトからクラブシャインへ直行した。


やたらと丈の短い赤いワンピース。

ビラビラのフリルシャツにこれまたヒラヒラしたピンクのスカート。

肩口の開いた淡いブルーのサマーニットにホットパンツ。

ロッカールームに並べられたデート服候補たち。



「正気ですか?」

「正気なんてもんじゃないわよ。超マジよ。女装家の友達と真剣に相談したんだから。」

シンドンさんは僕を睨んだ。

「シンドンさん。僕の身長でこのワンピースを着たら、パンツ丸見えです。」

「それがいいんじゃない。」

「露出狂か!却下。」

「ピンクのスカートならパンチラの心配はないわよ。」

シンドンさんが手に持ったスカートを僕の腰にあてる。

「フリルなんて勘弁してください。このスカートもスースーしそうです。風が吹いたらパンチラの危険性は残ります。却下。」

残る選択肢は論外だ。

「ホットパンツとか意味分かりません。毛を全部剃れと?」

「いいじゃない。生足攻撃よ。」


駄目だ。目的の不一致。
僕はこのデートでユノを振らなくてはいけないのだから。

「このサマーニットだけお借りします。下はジーンズでいいです。」

不服顔のシンドンさんを無視し、僕はバイトの準備に取り掛かった。



どんなに悲しい思いをしても、僕はユノのそばで、支えになりたい。調査の手伝いだと思えば、クラブシャインでバイトすることにした自分のバカな判断も肯定的に捉えられる。

僕の癒しのテミンさんのことだって、濡れ衣を晴らしたい。

テミンさんの調査を依頼したシジマさんは、きっと何か勘違いしているんだ。そもそも、お客様と付き合っているなんて信じられない。

テミンさんのためにも、本当のことを調べよう。


「シンドンさん、今日はテミンさんは?」

「テミンちゃんは毎月15日はお休みなの。お出掛けする用事があるんですって。」

お出掛け……か。

「テミンさんて、生まれはセレナシティなんでしょうか。」

「シティの生まれではないと思うわよ。ダンサーを夢見て、1人で出てきたって言ってたもの。」

夜のバイトを休んで出掛けるなんて、1日がかり?実家に帰るとかだろうか。

「うーん。どこに行ってるのかまでは聞いたことないのよ。なあに、スニちゃん。テミンちゃんのことやたら聞くじゃない。」

「ええ……まあ。素敵な人だなあって。」

「ほんと、頑張り屋さんよね。私も大好きよ。でも、なんだか影のある子よね。」


確かに。
まだ若いのに、どこか憂いを帯びているテミンさん。

僕は、もっとテミンさんのことを知りたくなった。



バイトを終えてビルを出ると、ユノの車があった。すぐに僕に気づいて、にっこり笑うユノ。

厨房で働いているという嘘をすっかり信じたユノに、今日の報告をする。

「テミンさんは今日休みだった。毎月15日は休むみたい。」

「ダンス関係で何かあるのかな。調べてみるよ。」

「シジマさんは、店に行ったのに会えない日があったって言ってたんだよね。多分それ15日なんじゃない?」

「そうだな。だとするとダンス関係じゃないな。ダンスのことはよく話していると言ってたし、俺にも話してたくらいだ。シジマさんに伝えない理由がない。」

普通の調査の時は頭の回転が速いのに、どうしてスニのことは気づかないのか、不思議だ。

ユノの脳内を1度でいいから覗いてみたい。



「チャンミンその袋は?」

あ、シンドンさんに借りたサマーニット……。

「着替え。暑いから、カフェから移動した時に着替えた。」

どんどん嘘が増えていく。
早く嘘の連鎖を断ち切りたい。

下を向いた僕を、ユノは不思議そうに見つめていた。

テミンさんが休みなら意味がないなと、ユノは僕をアパートまで送ってくれた。


「テミンの家の様子をちらっと見てくるから、先に寝てて。」

そう言うと、ユノはまた出掛けてしまった。



僕は部屋に1人ぼっちで寝つけなかった。

サマーニットを取り出して、ジーンズを履いてみる。ニットの丈が長くて、お尻まで隠れるから丁度いい。

男物のジーンズでもバレなさそう。

しかし、これでホットパンツと合わせてたら、ぱっと見、ミニスカじゃないか。

シンドンさんのセンスに恐怖を覚える。


デスクに鏡を置いて、デートの時の表情を練習した。
僕は何事も準備を万全にする性格なのだ。

今回のスニ事件は、押し倒されたい願望が招いたミスだ。心の準備ができていなかったから対応しきれなかった。


これまでは気づいてくれないことにショックを受けていたけど、ここに来て、絶対バレてはいけない状況になった。

万全を期して臨もう……。



スマホの点滅に気づき、メッセージを開く。

『チャンミン元気?今週水曜の夜暇だろ?ドンヘさんのバーに集合な!』

カイからだった。

水曜はデート。とても行けそうにない。

『今週は無理なんだ。ごめん。』

カイからすぐ返信が来た。

『ユノさんも来るよ。』

はあ?
待て……。
デートはどうなった。

メッセージは続く。

『夜の女連れてくるって、ドンヘさんに約束したらしい。どんな女か、見ておくべきじゃない?』


僕は天を仰いだ。

まずい。僕的な修羅場だ。
何としても、バーに行くのは避けなければ。

女装してバイトしてるなんて、カイにバレたら一生笑い者にされる。笑い者にされるだけならまだしも、常時女装させられそうだ。


『とにかく水曜はムリ』

返信し、僕はデスクに突っ伏して唸った。

どんどんハードルが高くなる。



「チャンミンはできる子。大丈夫!バーに行くまでにユノを振って、逃げ帰る!」


僕は自分に言い聞かせた。




15320051370.jpeg

続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

運命の人 -残月 後編

この記事を閲覧するにはパスワードが必要です
パスワード入力

リナリアの女 8

その探偵、恋は専門外につき
-リナリアの女-
8



「ちょっとチャンミン、大丈夫?」

「駄目です!もう嫌だ!!」

ユノが僕の顔を凝視しても気付いてくれず、しかも生まれて初めての気持ちなんですと言って捨て犬みたいな顔でデートの申し込みをしてきて、僕は混沌の中で受け入れてしまった。


終業後、ロッカールームで涙が止まらなくなった僕。

テミンさんとシンドンさんが驚いて僕を座らせた。

「何があったの。ユノさんのせい?」

「テミンさん……。実はあの人、僕の幼馴染みの同居人です。」

「へぇ……ええ!?ちょっと待って。ユノさん、スニちゃんのこと女だと思ってるよね?」

「はい。女性と恋愛のことに関しては、頭おかしいんです。アホなんです!脳細胞がイカれてるんです!!うすらとんかちなんです!!!
気付いてくれません!」

「ちょっと何の話よ!」

テミンさんが、今日のデート申し込みの件をシンドンさんに説明してくれる。

「まあ。あの人がチャンミンの……確かに噂通りの超絶イケメン……」

シンドンさんは何やらニヤニヤし出した。

「私に任せて!素敵なデートにするわ!」


それを望んでいるわけではなく……と言う隙も与えず、シンドンさんは電話をかけ、誰かと打ち合わせた。

「チャンミン、明日の4時、カフェで待ち合わせよ。」




ユノと僕が住んでいるマノン地区は、古い街並みの残る旧市街。大学も密集するエリアで、平日は学生で溢れるが、日曜日は人が少ない。
カフェも落ち着いてバイトができる。

クラブシャインでバイトを始めてからと言うもの、僕の生活は完全に乱されてしまった。

久しぶりに心が落ち着き、日常に戻った感覚にほっとする。


ティータイムのお客様が帰り始め、僕のバイトが終了する夕方、生活を乱すきっかけとなった張本人とシンドンさんがやってきた。


「ミン王子、予想を遥かに越える成果をあげてるって聞いたわよ。」

僕は、甘い話に乗る気力を完全に失っていた。

「モモちゃん。僕はもうクラブシャインのバイトは辞めます。スニの存在は、ユノの前から消したい。」

「チャンミン。とても傷付いたのね……。可哀想に。」

話し方はそのままだけど、クラブでのメイド姿からは想像もつかない、シックな出で立ちのシンドンさん。

「辞めなくたっていいじゃない。どうせ短期なんだし。ユノさんがデートを申し込むなんて、余程のことでしょう?王子の魅力にやられたってことじゃない?」

「知りませんよ!ユノが女性と今までどんな恋愛をしてきたかなんて、僕は見てませんから!」

僕は苛立って声を荒らげた。

しゅんとしてしまったモモちゃん。
全力で応援してくれているのに、申し訳ない気持ちになる。

「でもチャンミン、デートはどうするの?」

心配そうに見つめるシンドンさん。
うつ向いたモモちゃん。

約束してしまったユノとのデート。
あの時のユノの嬉しそうな顔。

いたたまれない。


「約束は約束ですから、デートはします。でも、それで終わりです。」

モモちゃんはぱっと顔を上げた。
満面の笑顔。

くそ。騙された。
これだから女は怖い。

「そうと決まれば、当日は最高に可愛いスニちゃんを作るわよ!もう一気に押し倒されちゃえばいいのよ!」

僕の身長に合う服をシンドンさんが探し、メイクは当日モモちゃんが。

僕は釈然としないまま、着々と段取られていくデートの準備を、他人事のように聞いていた。

今日の夕飯は何を作ろうか。
頭の半分は、そんなことを考えていた。



ユノは出掛けているのか、静まり返った我が家。冷蔵庫に入っている食材を確認し、メニューを考えながらソファに腰掛けた。

僕は疲れていた。

もともと外に出るのは嫌いだ。家で読書でもしたい。ゆっくりする時間が足りていない。

クラブのバイトなんて向いてなかったのに、調子に乗った僕が悪い。謝って辞めさせて貰おう。僕が居なくたって、大した影響はなさそうだし。

僕は辞める決心をした。



テーブルに置かれたユノのファイル。クラブシャインの誰かを調査していると言っていた。

僕は、それを開いた。


「テミンさん……」

そこには、クラブシャインに入店する、スーパーに行く、ダンスのトレーニングに向かう、道端で猫に話しかける、テミンさんの日常の写真があった。

「テミンさんが何をしたって言うの?」




「お帰りチャンミン。」

ユノがリビングのドアの前に立っていた。

「え。居たの?」

「部屋でぼーっとしてた。チャンミン……、テミンのことどうして知ってるの?」

まずい。聞かれてた。

「チャンミン、俺に何か隠してることない?」

答えられずにいる僕をそのままに、ユノは続ける。

「ダイニングバーでバイトしてるなんて嘘だろ。」

あ、どうしよう。
ユノの目が僕を捕まえる。

「クラブシャインでバイトしてるんだろ……」

スニのことがバレた。そう思った。


「俺に嘘つくなんて、酷いぞ。どんな仕事?厨房?掃除とか?」


なんてことだ。この期に及んで、まだ気づいてないのか?

このおたんこなす!

「チャンミンに嘘つかれたのも、クラブでバイトってのもショックなんだけど、ちょっと助かるんだよね。
今テミンの浮気調査依頼されてて、チャンミン手伝ってもらえない?俺、店に通うお金ないし。」

困った。
ユノの仕事は手伝いたい。
もうバイトは辞めると決めたのに。



「そうそう!そう言えば、新人のスニちゃんて居るだろ?どんな子?」

唐突にすっとぼけた顔でユノが質問した。

僕は分かってるぞ。
そのわざとらしい表情。

目線を合わせないまま、唇をムニムニ動かしてる。

「なぜ?」

僕は敢えて聞き返した。
どす黒い感情に心が支配された。

「調査の一環だよ!あの子テミンとよく一緒にいるだろ。」

話の内容にそぐわない、ユノの爽やかさを全面に押し出した笑顔。

まさに、にっこり。


ぷちん。
僕の脳内で音がした。

キレた。


「知らねぇよ。厨房の中に居るから、大して接点ねーっすから。女のことは、てめえで調べろ。」

「チャ、チャンミンっ」

僕のべらんめえ口調に戦慄したユノの目が潤む。

「いつからそんな不良になっちゃったんだー!戻ってきて!俺の可愛いチャンミン!!!」

ユノは泣きながら僕をぎゅうぎゅう抱き締めた。

震えるユノの唇が僕の首にあたる。


あん……。
首はまずい。

息子が反応のきざし。


「わ、わ、分かったから!手伝うから!離して!!」


僕はバイトを辞められなくなってしまった。




15320051370.jpeg

続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

運命の人 -残月 中編

この記事を閲覧するにはパスワードが必要です
パスワード入力

リナリアの女 7

その探偵、恋は専門外につき
-リナリアの女-
7



助手席でチャンミンは、抱えたリュックに顎を乗せて外を見ている。
瞳が上下左右に頼りなく動く。

何か必死に考えているな。
やはりバイトは嘘か。

こんなに可愛いチャンミンが、夜な夜なアナ地区で遊んでいるかと思うと、ハンドルを握る手に力が入る。


「クラブシャインって、ユノ、お店に入って調査するの?」

「いや。今日は張り込み。」

「そう……。なんの調査?」

「いつもの浮気調査だよ。」

会話はそれだけだった。



ビルの前に着くと、チャンミンはリュックから、綺麗な花柄の包みをおずおずと差し出した。

「これ。お総菜詰めただけなんだけど。お弁当。良かったら、食べて。」


か、か、可愛い!

俺は喜びの叫びをあげそうになって口を押さえた。

冷たいお茶の水筒までついている。

こんなに可愛く、気のきく不良が世の中に存在するとは!

チャンミンは俺の目を見ることなく、そそくさとビルに入っていった。

30分凝視していたが、それきり出てこない。


どういうことだ。
やはりこのビルでバイトしているのだろうか。

エレベーターフロアの奥にある外階段は、各フロアの通用口に繋がっていた。

外階段の1階部分には隣のビルが迫っていて奥には出られない。エントランスを通らずに道に出るとしても、ビルの横の隙間は道路側に伸びている。

結局俺が観察している表側に出る以外ないはず。


店の名前を間違えた?
まさか。

雑居ビルに入る他の店は、寂れたスナックと雀荘。
チャンミンがバイトなんてあり得ない。バイトの募集があるとも思えない。



テミンが歩いてくるのが目に入った。

ジーンズにTシャツの簡素な姿でも、チャンミンとは異なる種類の花がある。

何日か日中の行動を尾行してみたが、クラブで働く以外はダンスの練習に明け暮れる生活。

同伴はしていない。

先日クラブでテミン本人が語った生活そのまま。


依頼者のシジマさんは、テミンがクラブで着る衣装代を支援していた。それ以外にも支援を申し出たが、受け取ってくれないと言う。

テミンの生活は質素そのものだった。

シジマさん以外の人から、何か貰っているようには見えない。


自宅はアナ地区の外れにある安いアパート。
移動は地下鉄。
近くのスーパーで買い物。


歩いている時も、時折手でダンスの振り付けをおさらいしていた。
頭の中は、ダンスでいっぱいなんだろう。


テミンが店に入ってから、ドレスアップしたホステスが何人も入っていった。
同伴出勤のホステスや客も何組か。


今日はスニちゃんは休みだろうか。
そう言えば、1度も入店するところを見たことがない。

あれほど可憐な人だ。
きっと誰よりも早く出勤して、お店のテーブルを磨いたりしているんだろう。

あの細い指に、布巾は似合わないな。
彼女に似合うのは、そう、こんな花柄のハンカチ。


チャンミンが作ってくれたお弁当の包みを膝に置き、俺は相容れない2つの感情に苦しんだ。


チャンミン……愛してる。

スニちゃん……ときめく。


駄目だ。
どっちも好きだ。


「ああ~!ユノ!お前はなんて情けない男なんだ!」

ハンドルに頭を打ち付けて叫んでいる俺を、道行くカップルがヒソヒソ言いながら見ている。

打ちどころを誤ってクラクションが派手に鳴ってしまった。
カップルは走って逃げた。



クラブシャインの営業時間中は暇なので、俺は今一度チャンミンの自称バイト先に足を運んだ。

ジュース1杯だけ注文し、持ってきた女の子にチャンミンの写真を見せた。


俺は自慢のラブリーチャンミンフォルダ、略してラブちゃんにチャンミンの写真を溜め込んでいる。
張り込みで疲れた時に見ると、力がみなぎる。

今まで寝込みの盗撮写真しか持っていなかったが、さっきキッチンに立つ姿を盗撮しておいて良かった。


「この子、バイトしてます?」

「こんな可愛いイケメンうちにはいませんよー。」


分からない。

チャンミンはどこに消えてしまったんだ。
念のため他の階も覗いたが、チャンミンは居なかった。


失意の中、お弁当を平らげた。

どんなに胸が苦しくても、チャンミンが作ってくれたものを残せるはずがない。

チャンミンが詰めてくれたと言うだけで、スーパーの惣菜は料亭の味になる。米粒一つ一つが輝く。


チャンミンは意味もなく嘘をつく人じゃない。

シャーロック・ホームズは言ってたな。

『どんなに起こりそうもないことでも残ったものが真実だ』

残る可能性は1つ。
信じたくはないが、チャンミンのバイト先は、クラブシャインか?


俺は財布の中身を確認した。

5630円。

駄目だ。
今夜は潜入は控えよう。



チャンミンのことばかり考えていた俺の両目に、客を見送るテミンとスニちゃんの姿が飛び込んできた。

タクシーを見送ったスニちゃんが、俺の車の方をちらっと見た。

目があった。
間違いなく、目があった。
俺は飛び出した。



「スニちゃん!」

エレベーターを待っていた彼女は、あからさまに後ずさりした。

テミンが俺とスニちゃんの間に割って入り、営業スマイルで話しかける。

「あらユノさん!今夜も来てくださったんですか?」

「あ、いえ、ちょっと通りかかって。」


テミンの肩越しにスニちゃんを見詰めるが、目を合わせてくれない。
うつ向く姿が可憐だ。

衝動が抑えられない。

俺は彼女の手を取り、ぎゅっと握った。

「デートして貰えませんか?」

彼女はびくっと身体を震わせた。

「無理です。」

か細い声。

「1度でいいから!」

「ユノさん、申し訳ありませんけど、スニちゃんが無理って言ってますし……。」

テミンが困り果てた様子で俺をたしなめる。

諦めてなるものか。
俺は必死だった。

「こんな気持ち生まれて初めてなんです。どうか、お願いします。」


スニちゃんが、俺の顔を見た。
初めて視線を合わせた。

美しく潤んだ瞳。
どことなくチャンミンを思い出す。

俺はこの手の瞳に弱いんだな。
自分の好みのタイプを、今更ながら理解した。

しばらく見つめ合った後、スニちゃんはふっと息を吐いた。

「……1度だけなら。」



神様ありがとう!!!!!

スニちゃんと待ち合わせ場所を決め、俺は調査もそこそこに、ドンヘのバーに急行した。


「デートすることになった!」

「あ?」

「スニちゃんとデートすることになった!」

「へー。それはまた。急展開だな。同伴じゃなくて?」

「来週水曜、仕事が休みだからって!これは本気のデートだ!」



ドンヘは面白そうな話に、首を突っ込んでみることにした。

「是非うちの店に連れてこい。品定めしてやる。」

「綺麗すぎて驚くぞ!」



ユノめ。鼻の下伸ばして。
少しは痛い目に遭わせてやろう。

ドンヘはユノが帰ると、カイくんにメッセージを入れた。

『面白いことになってきた。来週水曜チャンミンと店に来て!チャンミンのライバルに会えるぞ。』



15345242810.jpeg


続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

コールドブリュー

Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR