FC2ブログ

祓い屋リノベーション おわりに

祓い屋リノベーション
-おわりに-



和風ファンタジーと銘打った割に、ふわふわ感のうっすいお話に長々とお付き合いいただき、ありがとうございました!

元々は伊勢神宮に行った時に「ああ……若チャンミンが巫女姿になったらどんなに可愛いかしらん。」と極めて不謹慎な妄想をしたのが「祓い屋リノベーション」のスタート。

とんだ参拝客です。
信心深さとか持ち合わせていない不届きものですんません。
信じているのは東方の神のみ←おい。
(あ、でも全ての宗教に敬意は持ってます。)


その後、「Love Again」をやたらと聞いていた時期にTomorrowが手元に届き、「明日は来るから」を無限ループしていたら、こんなシリアス展開になってしまいました。

リノベーション、再生する2人の愛の物語。

おいおい泣きながら書いたので、スマホがベッタベタになるという惨事を乗り越え、何とか最終話を迎えることができました。


個人的に、若いうちから大切な人の死を経験して、死は身近なものでした。

人の死は避けられない誰にも訪れる必然である以上、残される人は受け入れて生きるしかない。

人の死を幸せなものにするか、不幸にするかは、残された人の生き方次第だと思っています。巫女チャンミンのしたことは、絶対に許されることではないでしょう。

でも、都合が良すぎるかもしれないけど、現実離れしているかもしれないけど、奇跡みたいな存在のユノとチャンミンに、こんな未来があったっていいじゃない?と夢見てみました。

ユノの悲しいシーンが辛くて、こんなもん人様に晒すべきなのかしらと不安でしたが、たくさんの方に読んでいただけて、今は幸せな気持ちでいっぱいです。

チャンミンが可哀想で、ついエロが多くなっちゃいました←書きたいだけだろ。

現世のチャンミンとユノの惹かれ合う様子を、過去を知った上で読み返して貰えたら嬉しいです。


次作は探偵のcase3です。
軽い気持ちでお楽しみいただける内容。
朝8:00投稿です。

夜はたまにエロい話を投稿するかもしれません。

ぶん殴られた後のシウォンさんとか、幽霊が見えるようになったユノとチャンミンの仕事ぶりとか、祓い屋リノベーションの続編も書いてみたいなぁ、なんて思ってます。


改めて、「祓い屋リノベーション」のご愛読、本当にありがとうございました。

全ての皆様に、意味のある今日と、幸せな明日が来ることを祈っています。




15374615500.jpeg

続きを読む

スポンサーサイト



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

祓い屋リノベーション 41

この記事を閲覧するにはパスワードが必要です
パスワード入力

祓い屋リノベーション 40

祓い屋リノベーション
40



「チャンミン!弟よ!頼むから目を覚ましてくれ!兄さんはチャンミンがいないと死んでしまう!」

あー、もう。
なんだ。
うるさいな。

「兄さんがこんな仕事引き受けたせいだ!チャンミンのことは一生俺が守るから!起きてくれ!」

男のくせにおいおい泣きやがって。
シウォンの声か?

悲しい夢を見て感傷に浸っていたのに……。
落差が激しすぎる。

それにチャンミンを守るのは俺だ。
お前じゃない。

「シウォン……うるさい……。」

「ユ、ユノ起きたのか!?……社長を呼び捨てするとは……。」

目を開けると、俺は病院のベッドに寝かされていた。

隣に、愛しい人。

「チャンミン……」

俺はベッドから転げ落ちて、チャンミンの手を握った。

「おいユノ!大丈夫か!先生を呼んでくる!」

シウォン、あ、ここでは社長か。
シウォンさんがバタバタと病室を出て行った。

ああ、2人きりになれたね。

「チャンミン。起きて……。」

俺はチャンミンの美しい顔を撫でた。

「ん……」

チャンミンが眉をしかめる。

「なあ。目を覚ましてくれ。」

可愛い唇。
最期にくちづけた時、吸い付いてやれなくてごめんな。

「愛しい俺の巫女……。」

俺はチャンミンに優しく、甘く、くちづけた。

「あ……ふ……」

チャンミンの吐息が甘い。
こんなくちづけが欲しかったんだろ。
吸い付いて、舌で刺激して、とろけるくちづけ。

「あ……ん……」

くそ可愛いな。

「もう起きてるんだろ。国王の命だ。目を開けろ。」

チャンミンの瞼が震えて、眼球が動く。

「目を開けないと、ここで抱くぞ。」

ばちっとチャンミンの目が開いた。
くりくりの目が、涙で潤んでセクシーだ。

「バカ!!!変態エロ国王!!!」

チャンミンは俺に腕を伸ばした。
俺はその腕を捕まえて抱き起こし、全身全霊で抱き締めた。

「ユノ!会いたかった!!」

まだ半分夢の続きにいるチャンミンの瞳から大粒の涙がこぼれて、俺の肩を濡らす。

「同じ夢、見てた?ごめんな。あんな思いさせて。」

「もう嫌だよ!」

「ほんとごめん。」

ぐちゃぐちゃに濡れてしまったチャンミンの頬を両手で包んで、くちづけた。
涙でしょっぱくなった唇が、甘くとろけるまでじっくりと。

「待たせて悪かった。」

「待たせすぎ……。」

見つめ合って、どちらともなく笑った。

「ねえ。もっとキスしてよ。二千年分、取り戻して。」

「ふはっ。変態どエロ巫女だな。」

2人で濃厚なくちづけを交わしていると、うるさい男が帰って来てしまった。

「いやーーーーー!!!」

「あらら、お取り込み中?」

「あ、クララさん。」


俺達は、1日意識不明だっただけらしい。

「かなりの高さから落ちたのに、奇跡的に怪我は大したことなかったの。こちらのシウォンさんがあまりにギャーギャーうるさいから、特別室に入って貰ったわ。」

「やだな。シウォン。恥ずかしい。」

「チャンミン!今一度、兄さんと呼んでくれ!部屋代は俺が出してるんだぞ!」

なんだかなぁ。
チャンミンとの甘い再会がぶち壊しだ。

「ユノさんは頭と背中を打ってたから、MRI検査したわ。そしたら……」

クララさんはため息を吐いた。
チャンミンが俺の腕の中でびくっと震える。

「全部消えてたの!人類初の症例が!跡形もなく!」

「ああ……良かった……。」

チャンミンがぽすんと俺の胸に顔を預けた。

「あれさ、国王の記憶だったんじゃないかな。記憶が戻って、俺と1つになった感じがするんだ。」

「じゃあ、あれは元々ユノだったんだね。」

クララさんはこそこそ話す俺とチャンミンをじっとりと見つめた。

「何の話よ。やっぱりあなた普通じゃないわ。チャンミンくんも、何か隠してるでしょ!2人ともこのまま暫く入院しなさいよ!じっくり調べさせて!」

「うふふふふ。」

チャンミンは笑い出した。

「確かに俺は普通じゃない。チャンミンに狂ってます。俺はチャンミンから離れられない。」

「僕も離れないよ。何千年でも何億年でも追いかける。」

シウォンさんは仰け反ってふらついた。

「2人ともどうかしてるぞ!!兄さんの前でいちゃつくな!!!」



何の異常もないため入院は3日間だけで、家に帰ることになった。

「1年以上帰ってなかった気がするな。」

「そうだね。久しぶりの我が家って感じ。ねえユノ、神社の楠に寄っていかない?」

「あの楠は、チャンミンが植えたもの?」

「うん。多分……。」

神社の境内を抜けて裏手に回ると、楠の根元に、キュヒョンが立っていた。

チャンミンは駆け出した。

「キュヒョン!!!」

あーあ。そんなにきつく抱き合って。
わー、首に顔埋めちゃって。
気分……悪いな。

ん?チャンミンは幽霊と触れ合えるようになったのか?
ますます気分悪いな。

チャンミンの腕を引くと、口を尖らせて怒られた。

「再会を喜んでるのに、邪魔しないでください!」

なんだかチャンミンが前より怖くなっている気がする。

「キュヒョン。チャンミンのために、色々ありがとう。」

「ユノ、キュヒョンが見えるの?」

「もう見えますよね、ユンホ様。穴に落ちた衝撃で記憶が戻って、才能も回復したはずです。」

「キュヒョンはチャンミンを助けもせずに突っ立ってたな。」

「はは。チャンミンはユンホ様が抱えて落ちたから大丈夫だと思って。ユンホ様にはトヨさんが居るし。記憶を戻すには多少の衝撃も必要なんでね。」

チャンミンが俺の腕をぎゅっと握って睨んだ。

「やっぱりユノが助けてくれたんだね。もうやめてよ!僕のために自分を犠牲にしないで!」

チャンミンは泣き出して、俺にしがみついた。

「もうあんな思いはしたくないよ!ユノに何かあったら生きていけない!」

チャンミン。
よく分かったよ。
痛いほど思い知った。

「死ぬときは一緒に。生まれ変わるときも、一緒に、だな。」

本当にそんなこと可能だろうか。
でも、チャンミンと俺ならできるかも。
そんな気持ちで愛していこう。

キュヒョンは見つめ合う俺達を優しく見守った後、ぽんと手を叩いた。

「さ。俺は仕事をやりきったから、そろそろ行こうかな!お2人のイチャイチャは見飽きてるし。」

「え!キュヒョン……行っちゃうの?」

キュヒョンはくすくす笑いだした。

「俺が今消えたらチャンミンが苦しんで、その後ユンホ様とエロいことするだけだからな。俺はエロのつまみにはならない。それより、新しい楽しみを見つけた。」

「楽しみって何?」

チャンミンはきょとんとしている。

「まさかあの聡明で妖艶だったシウォン新国王が、今生でブラコンアニキになっているとは思わなかった。面白いから、観察する。」

「あはははは!」

俺は思わずばか笑いしてしまった。
確かに、あの変貌は予想外だ。

「あの後、国は平和だったか?」

「はい。ユンホ様。ユンホ様とチャンミンを同時に失って、疫病や天災には見舞われましたが、みんなで切り抜けました。」

「そうか……。家臣のみんなに感謝しないとな。」

ドンヘはまあいいとして、シンドンやウニョク、ヒチョルには悪いことをした。でもあいつらなら、やって行けると分かってた。


「あの遺跡はどうなるのかな?」

チャンミンの問いに、キュヒョンは「さあねぁ」と首を傾けた。

「2人の記憶を戻すためにちょっと無茶したけど、俺はもう悪さはしないよ。」

俺はチャンミンの腰を抱いて引き寄せた。

「なるようになるさ。もうキュヒョンもあそこを離れたんだし、お祓い完了。工事するなり、調査するなり、勝手にすればいい。大切な場所は、ここにある。」

チャンミンは楠とその奥の家を見上げた。

「禊場……。」

「泉の上に俺たちの家があったんだな。」

「ユノ……。」

見つめ合った俺達に咳払いすると、キュヒョンは手をパタパタ振って去っていった。

「またな!ちょっとシウォン様で遊んでくるわ。」

キュヒョンを見送りながら、チャンミンは首を傾げた。

「シウォンは霊感ゼロ人間だけど、キュヒョンのこと気づくのかな?」

「トンバン国のシウォンは敏感なやつだったから、頭でもぶん殴ったら、急に見えるようになったりしてな。」

「うふふ。そうなったら面白いね。」

チャンミンが瞳をくりくりさせて笑う。

俺が手を握ると、チャンミンは指を絡めて恋人繋ぎにし、大きな瞳を潤ませた。

頭上の楠からの木漏れ日が、潤んだ瞳をキラキラと瞬かせる。

満天の星空を広げたようなチャンミンの瞳。
チャンミンは俺の宇宙だな。
時空すら越えて、俺を愛してくれる。

幸せだ。こんなに可愛い奇跡の人に愛されている。

俺はもう、この手を離さない。





2018092313285671c.jpg

続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

祓い屋リノベーション 39

祓い屋リノベーション
39
~トンバン国~



国は哀しみに包まれていた。

家臣のみんなは僕を心配して、交代でそばに居てくれる。

シウォンさんとドンヘさんが、僕が晴れ乞いをしていた時のユノのことを話してくれた。

「ユンホ様はチャンミンのこととなると、ほんとに子供で、我が儘だったな。俺とドンヘの言うことなんて全く聞かないで。」

「2日目には我慢できなくなってね。馬に飛び乗って、王宮を抜け出してしまったんだ。でもユンホ様は、泉の森に入らなかった。」

「巫女が国民に愛されるように、祈祷の成功を願って、森の外れで祈ってた。」

「いつになったら呼ぶんだってずっとぼやいてたね。」

ドンヘさんは悲痛に歪んだままの頬を少しだけ上げて、ユノの姿を思い浮かべて微笑んだ。
瞳から流れ出しそうになる涙を、すんでのところで何度も拭った。

「4日目の晩に空を見て、いけると。さすがチャンミンだと……。雲が晴れることを分かっていた。祈りながら、巫女の名前をずっと呼んでいた……。」

シウォンさんが天井を見上げて呟く。

祈りと一緒に、僕が空に昇ってしまえば良かった。そうすればこんなことにならなかった。ユノにもう一度抱き締められたいばかりに、生きてしまった。

「ユンホ様が急に走り出した時、止められなかったんだ。弾かれるように飛び出したから。追い付けなくて。」

「ユンホ様を守れなかった……。家臣として恥ずかしい。この命を捧げても、守らなければいけない人だったのに。」

2人はもう我慢することなく男泣きして、僕の手を握ってくれたけど、僕は一輪挿しに生けられた、山茶花の白い花を見ていた。

灰色の世界の中でも、綺麗な白だなって。
ユノの心みたいだ。


僕には巫女としてやらなければならないことがあった。僕の心に伝わるこの思いは、多分ユノの意思だから。

「ジウさんは、どうなりますか?」

僕が久しぶりに発した言葉に、シウォンさんがごくりと唾を飲んだ。

「この国には死刑がないが、死刑にすべきだろう。」

「会えますか?」

「会ってどうするんだ!」

「僕は国王の巫女なので。神である国王の意を伝えます。」


ジウさんは空っぽの武器庫に閉じ込められていた。僕が入ると、彼は泣き腫らした顔を上げた。

本当は、首を絞めて殺してやりたかった。
あらん限りの苦しみを与えてやりたかった。

でもそんなことしたら、巫女失格。
僕はユノの巫女で居られなくなってしまう。

僕は拳を握って耐えた。

「ジウさん。あなたは南の港で、漁民に釣り具や刀を作る技術を伝えてください。それから、港の治安を守る職に就き、トンバン国との貿易を望む渡来人を管理してください。ドンヘさんの指示に従って動いて貰います。」

ジウさんは僕の顔を見つめて呆然としていた。

「これは国王の命です。自害など許されませんよ。命が尽きるまで、全うしてください。」

ドンヘさんが、「ユンホ様らしい。」と呟いた。

僕はジウさんの顔をもう見なかった。
ただ、入り口まで歩いて振り返り、ユノが言おうとしている言葉に唇を委ねた。

「先代からの忠誠に感謝する。達者で。」

言葉を口にした一瞬、ユノが「よく言えたね。ありがとう。」と後ろから抱き締めてくれた気がした。

「ユンホ様!!!」

ジウさんの叫びと泣き声は、王宮に響いて空気が震えた。


僕は武器庫から駆け出して、ユノの亡骸にすがりついた。
それから葬儀の日まで、そばを離れなかった。

冷たく固くなってしまった唇の輪郭。
睫毛。
ほくろ。
指の関節の皺。
足の爪。
触れたことのなかった場所も、全て撫でた。

僕はどこかで期待してずっと待っていた。

ユノが幽霊になって会いに来てくれないかと。
寝ずに待った。
瞬きもほとんどせずに。

でもユノは、何日たっても会いに来てくれなかった。

ひどい人だよ。
愛してるって、離れるなって散々言ったくせに。

僕を残してさっさと行ってしまうなんて。
置いてけぼりをくらうなんて。

幽霊にはならないって?
頑固だよね。



葬儀の前日、僕は家臣のみんなにお願いした。

「ユノの亡骸を、泉の畔に埋めてください。」

「しかし王家の墓が……」

戸惑うドンヘさんを、シウォンさんが止めた。

「分かった。そうしよう。」

ユノの決めた選抜の方式により、シウォンさんが次の国王になると決まっていた。

シウォンさんなら、ユノの意思を継いでくれる。ユノの夢の国作りをしてくれるだろう。

何も言わなくても、大丈夫。

「それと、私はユノの巫女なので、明日でここを出ます。禊場で、ユノの墓と泉の管理をします。」

シウォンさんにも、みんなにも引き留められたけれど、僕は譲らなかった。
僕にはやることがある。

キュヒョンは僕に付き添うと言い張った。

「邪魔しないでよキュヒョン。折角ユノと2人きりで過ごそうと思ったのに。」

「お前が何をしようとしているかなんて、分かってるよ。俺にも、やるべきことがあるんだ。もう決めたから。止めても無駄だよ。」

キュヒョンは悪がきみたいに笑った。


王宮を出る直前に、中庭で泣いているトヨさんに話しかけた。

「役立たずな後継者で申し訳ありませんでした。ユノがもし再生することがあったら、守ってください。僕は生きてユノに出会いたいので、守護霊にはなれません。トヨさんにお願いしたい。」

トヨさんは頷いた。

ユノが望まなくても、守護霊についてもらう。
最初からそうしておけば良かった。
後悔することが、多すぎた。


ヒチョルさんが作った荷車に載せられたユノは、ウニョクさんが仕立てた紺色の着物を着て、町の人達が集めた黄色と白色の野菊の花に囲まれ、とても美しかった。

ユノの周りにだけ、色があった。

2人は、こんなことのために技術を磨いたんじゃないと怒って泣いた。


僕はまた初めて王宮に入った日と同じ正装をして、王宮を出た。
青銅の髪飾りの脇に、山茶花を差した。

家臣のみんなが交代で荷車を引いた。

僕はユノの隣を歩いた。

町の人々は王宮から泉までの道程に並び、僕とユノが通ると膝をついて礼した。みな泣いていた。


泉でユノが土に還る時、僕は少しだけ泣いた。

ユノの美しい顔をしばらく見られないことが辛かったから。
でも、号泣はしなかった。

泣いて力を使うより、僕はユノとまた出会うためだけに力を使うと決めていた。



王宮のみんなと別れ、ユノと、僕と、キュヒョンだけになった泉。

楠の苗を、ユノの亡骸の上に植えた。

この楠がユノの身体を吸い取り、光を浴び、風に吹かれ、ユノを自然の一部にする。

いつか、ユノを作っていた全ての材料がまたひとつになった時、僕と出会う。
絶対に、出会って、また恋をする。

ユノは僕を愛するよ。
僕は当然ユノを愛する。

その祈りを、この楠に託す。

「キュヒョン。僕が死んだら、ユノの隣に埋めて。僕はユノを追いかけて同じ道を辿る。この楠に、僕を吸い取って貰うから。」

「はいはい。分かってるよ。全く。ひどいこと頼むよな。」

「ごめんなさい。」

「いいよ。チャンミンはユンホ様の巫女だから。ユンホ様についていけ。」

キュヒョンは楠のまだ頼りない葉を眺めて、僕の頬を撫でた。

「いつか2人が出会って、まあ、お前とユンホ様のことだから出会ったら勝手に恋には落ちるだろうけど、記憶を失っていたら、俺様が思い出させてやるよ。」

「キュヒョン……。」

「それで、ユンホ様がチャンミンを置いていってしまったせいで、どれだけお前が辛かったか。2度とこんなことするなって、説教してやる。」

「んふふ。ありがと。お願いします。」



それから僕は何日も祈り続けた。

泉の水以外は摂らず、夜も眠らず、命が尽きるまで、祈った。

これは祈りなのかな。
執念かな。

何でもいいや。

僕の命を全て注ぎ込んで、必ず成し遂げる。

僕はユノから離れないよ。
何度でも再生して、ユノの隣に立つ。
だって僕は、ユノだけの巫女だからね。

ユノの隣は、誰にも譲らない。


でもまさか、二千年も待たされるとは思わなかった。

ねえ、キュヒョン。
待たせ過ぎだよね。

気が長いにも程がある。





2018092313285671c.jpg


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~辛い展開で申し訳ありません。
明日から現代に戻ります!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

祓い屋リノベーション 38

祓い屋リノベーション
38
~トンバン国~



2日目は辛かった。
夜に気温がぐっと下がり、指が震えて樒を何度も落としてしまった。

でも寒さのおかげで見物人の数が減り、泉の浄化作用で空気が澄んだ。

僕は好機と思って一心に祈祷を続けた。
ぬかるんだ地面に何度も膝をついて、白い衣装は見るかげもなく泥にまみれた。

キュヒョンは僕に触れることを許されず、離れて僕を見ていた。キュヒョンはまったく眠らずに、立ち続けていた。


3日目の詳細な記憶はない。

ただ、ユノとの日々を思い出していた。
温かい湯殿にユノと入りたい。
ユノの胸のぬくもりに頬を寄せたい。
雑念だろうと、すがるものはそれしか無かった。
ユノへの執着だけが、僕の祈りを続けさせた。


4日目に、僕はようやく希望を見出だした。

雲の上に、良い気が流れ出している。
これをもう少し下げて、空を覗かせる。

意識は朦朧としていた。
自分の体温が下がっている。

まだ死ねない。
空を見上げて、雨粒を飲んだ。
何も口にしていなかったから、雨さえ甘く感じた。

下半身の感覚は無かった。
もうすぐ指も動かなくなるだろう。

気を抜くと、脳内が白くなって意識が飛ぶ寸前。

あと少し。
もう少し。

明日の朝には期限。
今夜中に雲を晴らす。

この場所で、ユノに抱かれた。
あの東屋で。
あの小道で。
あの森で。

「愛してるよチャンミン。」

あの泉でユノに貰った言葉。

その思い出が、僕の命をかろうじて燃やしていた。


秋の夜の雨は僕の心臓の動きをじわじわと鈍らせる。

キュヒョンがずっと、僕の名前を呼んでいる。
キュヒョンは嗚咽を我慢しなくなった。

飲まず食わずで冷たい雨に打たれ続け、普通でも耐えられない状況。念を送り続けて消耗が激しい。
僕が限界だと、キュヒョンは分かっている。

周囲の人々は、怖いほど静かだ。
僕の耳がおかしいのかな。

何も聞こえない。
皮膚の感覚もないから、雨も感じない。

今何時だろう。
深夜2時か、3時くらいだろうか。

そろそろ呼吸が浅くなってきた。



「チャンミン」

静寂の中に、ユノの声がする。

「チャンミン、諦めるな。」

ああ。
甘い声。
ユノ……会いたい。

「チャンミン。すぐそばにいるから。ほら、一緒に雲を払おう。チャンミンなら、できるよ。」

ユノが一緒ならできるかな。
ユノが大好きだ。
呆れるほど。好きだなぁ。

僕は、ユノへの想いを吐き出すように、最後の念を空中に放った。


突然、静寂の世界を破って男の子の声が耳に届いた。

「どうして巫女様をいじめるの!ユンホ様が愛する人が悪い人なわけないでしょう!?もうやめて!死んじゃうよ!」

男の子はわんわん泣き出した。
人々がすすり泣く声が、次第に大きくなる。


ああ。
ユノ。
あなたが愛する民には、やっぱりその価値がある。

気が変わる。
空に届く。


「星だ……星が見える。」

男の子の父親が呟いた。

男の子は手を叩いた。

「お星様!!!巫女様が雲を晴らしてくれた!!!」

森にどよめきが轟いた。
それは次第に歓声に変わる。


キュヒョンに抱き上げられて東屋に運ばれた僕に、みんなが布をかけてくれる。

でも、もう呼吸がつらいんだ。
羽衣1枚も重いんだよ。

最後にもう1度ユノに抱き締めて欲しかったな。
くちづけて、愛してるって、聞きたかったな。


「ユノ、愛してる……」


僕は呟いた。

呟いた自分を恨むよ。

そんなつもりじゃなかった。




僕の横に立っていた男性が、頭巾を上げた。

「ジウさん……。」

「すまない巫女。先代との約束だ。ユンホ様の血を絶やすわけにいかない。トンバン国の未来のためにはこうするしかないんだ。巫女が生きている限り、ユンホ様は世継を作らないだろう。後生だ。死んでくれ。」

ジウさんが袂から刃を取り出した。
さすが王宮の職人技。
美しく研がれた刃だな、と思った。

美しい光の軌跡が僕の胸に下ろされる。


僕は最期にユノを瞼に描こうと、目を閉じた。

いつまでたっても刃が下ろされず、ゆっくりと瞼を上げた僕の視界には、瞼に描いた通りの、ユノの笑顔があった。


「ああぁ……ユンホ様!!!」

ジウさんが叫んだ。


「チャンミン。もっと早く呼んでよ。4日も会えないなんて、発狂するだろ。会いたかった……。」

「ユノ!どうして!?会いに来てくれたの?」

「ああ。ずっと近くで待ってた。呼ぶの遅すぎ。」

「ユノ!」

抱きついた僕の手に、生暖かくどろりとした感触がして、指が滑った。

「え?」

僕の手の平は、真っ赤だった。

「ごふっ」

ユノが咳をした。
その口の中も、真っ赤だった。

「ああ……チャンミンの顔に……血が………ふっ……なんか………色っぽいな……。」

僕の震える手は、ユノの背中に触れた。

見惚れるほど美しいユノの背中。
僕の大好きなユノの後ろ姿。

そこに、あってはならない物の感触。

僕を突き刺すはずだった刃は、ユノの心臓の上にあった。


「あっ、ああ……いやあああああ!!!」


誰も一言も発しない。
風も吹かない。

静寂の森に、僕の叫び声だけが響いた。


「チャン……ミン……」

ユノが最期の言葉を言おうとしている。

「ユノ!いやだ!!ユノ!!!」

ユノは微笑んだ。
いやだ。
聞きたくない。


「愛してるよ……チャン……ミン……」


「あ……ああ……駄目……!ユノ!!!」


涙でユノが見えない。
ユノが見たい。
ずっとそばで見ていたい。

助けて欲しかったわけじゃないのに。
どうして来たの。

呼んだつもりじゃなかったんだ。
違うんだ。
ただ、ユノに愛を伝えたかっただけなんだ。

こんなことになるなら、呟いたりしなかった。
本当に神様が居るんなら、僕の呟きを消して。

僕が死ぬはずだったのに。
ユノはみんなの希望なのに。

こんなの駄目だ。


ユノは僕の涙を唇で拭った。
それから微笑んだまま目を閉じて、くちづけた。

ユノの唇は温かかった。
ユノが長い息を吐いた。

僕の身体に熱が入ってくる。
命を与えられる。

でも、ユノの唇から伝わるはずの吐息は、それ以上僕にかかってくれなかった。

いつも、ユノのくちづけは甘くて、とろけるのに。

どうして。
どうして、僕の唇に吸い付いてくれないの。

「いや……いやだ………いかないで……ユノ!!」

僕はユノの顔を起こして頬を撫でた。
真っ赤に染まった唇は、微笑んだまま動かなかった。

命をユノに戻さないと。
僕はユノに唇を重ねた。
反応のない唇に、何度も吸い付いた。

「ユノ……ユノっ!起きてよ!!!ねえ!!!」

頬をたたいた。
肩も、腕も。

「ねえ!ユノ!!ねぇ………ユ…ノ……!!」


ユノの身体がずり落ちる。
僕はユノもろとも地面に落ちた。

「ユノ……お願い……いかない……で………」

ユノの身体を泉の冷気が包む。
ユノを連れていってしまう。
僕は叫んだ。

「いかないで!!!!!」


森が泣いている。
キュヒョンの嗚咽。
ジウさんが地面に崩れ落ちている。


「……嘘だと言って…………」


走り込んできたドンヘさんが立ち尽くした。
その後ろでシウォンさんが東屋の柱を叩いた。
町の人達のすすり泣く声。


「ユノ………僕を……置いていかないで…………」


こんなに重いんだね。
人の身体って。

ユノはいつも僕を抱き上げてくれていたから、知らなかったよ。


「ユノ…………」




僕の世界から、ユノが居なくなってしまった。

その時から僕の世界は、色を失った。

太陽も、月も、星も輝かない。
雨も、風も、温度も、湿度も感じない。


ただ、灰色の世界。





2018092313285671c.jpg

続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

祓い屋リノベーション 37

祓い屋リノベーション
37
~トンバン国~



熱狂の交わりの後は、湯の中でユノに包まれてゆっくり過ごした。

「ねえユノ。例えばの話、もし僕が先に死んだら、幽霊になってそばに居て欲しい?」

「それはどうだろうな……。チャンミンは俺が死んでも、そばに居て欲しいの?」

「やめてよ。ユノが先に死ぬわけないじゃない。僕が守るから。」

「駄目だよ。俺が守る。それと、俺は幽霊にはならないよ。幽霊になったらチャンミンと交われないからな。欲求不満で悪霊になりそうだ。」

「何その理由。淫乱!」

「ふふ。冗談だよ。」

ユノは僕の髪をいじりながら、優しく微笑んでいた。

「俺はさ、生き物は死んだら、身体も魂も自然に還るべきだと思うんだ。何かの糧になって、命を繋いで、巡り巡っていつか奇跡が起きて同じ塊が集まって、この身体に再生することができたら、またチャンミンを愛するよ。」

「ユノ……例えにしても、気長な話だね……。」


あの時、泣いて懇願すれば良かった。
幽霊になって僕のそばに居て欲しいと。
ずっと、離れないで欲しいと。

僕はユノ無しでは、生きていけないんだ。
ユノの居ない世界は、色を失って、全てが灰色なんだよ。

僕は役立たず。

巫女なのに、大切な人の運命一つ予測できなかった。




秋の長雨は、いつまでも降り止まなかった。
もうすぐユノと出会って1年になろうとしていた。

シンドンさんは困り果てていた。

「収穫間近の稲が腐ってしまうと、人々が騒ぎ出しています。ユンホ様、チャンミンに雨が止むように祈祷して貰えませんか。」

「もう既にやっている。あと6日もすれば上がるはずだ。」

「ユンホ様……民の怒りはチャンミンに向いています。忌まわしい巫女のせいで長雨になったのだと誰かが煽動したようで。」

「見当違いな。一体何を言っている!?天気のことを巫女のせいにするなんて正気の沙汰じゃない!それでもチャンミンのおかげで早く上がると言うのに!」

「しかし……町は不穏な空気です。夏頃からおかしかったのですが、お伝えせず申し訳ありません。」

「私は感じなかったが……。」

「ユンホ様にはみなも隠すのです。どうも不安です。」

僕にも不安は伝わっていた。
人々の苛立ちが、僕に向かって突き刺さる。
それが、日に日に切迫する感触。


あの晩、王宮は松明と武器を持った人々に囲まれた。

「巫女を出せ!」
「晴れ乞いをさせろ!」
「本当に国王の巫女なら私たちの前で力を証明しろ!」
「あやかしの巫女だ!」
「ユンホ様をたぶらかしやがって!」
「忌まわしい巫女!」

言葉の暴力は一晩中続いた。
もう、それ以上ユノに聞かせたくなかった。

明け方、僕は決心した。

「ユノ、僕は行くよ。」

ユノは即座に首を横に振った。

「駄目だ。みんな我を失っているだけだ。私が説得するから。」

「無駄だよ。みんな我を忘れてなんかいない。ユノに愛されて世継を作らせない僕は悪者だもの。みんなにとってはそれが真実でしょ。今ユノが何を言ったって、惑わされてると思われるだけだよ……。」

僕には何の自信もなかった。
でも、ユノを説得した。

「期限を6日以上にして貰えたら、期限より前に雲を払えるかもしれない。僕の力を見たら、みんなも僕のことを認めてくれるんじゃないかな。」

ドンヘさんは僕に同意した。

「ユンホ様、ここは一旦チャンミンの言う通りにしましょう。ユンホ様に何かあることだけは避けたい。ここで大人しくしていてください。」

「そんなことできん!」

怒りに震えるユノをウニョクさんとヒチョルさんがなだめるが、ユノは首を横に振り続けた。

「ねえ。ユノ……。」

僕はユノの頬に手を添えた。

「僕はユノの巫女だから、あなたのように国民に愛される巫女になりたい。これは良い機会だと思いましょう。僕にやらせて。」

みんなの前だけれど、僕はユノにくちづけた。
ユノは押し黙った。

「交渉してくる。」

ドンヘさんが出ていき、代わりにシウォンさんが駆け込んできた。

「ユンホ様。人々が武器を持っていることが気になって武器庫を見てきました。武器が無くなっています。ジウも居ません。」

「ジウが……。」

「煽動しているのはジウかもしれません。彼は先代の血を絶やしてはならないと頑なに……。」

ユノは僕を抱き締めた。

「俺が至らなかった。人々の心情に気づきもせず!みんなに分かって貰えるようにもっと時間を割いていれば!」

「もう十分です。あなたにこんなに愛されて、幸せに酔っていました。後は自分で何とかします。」

不安を殺して微笑む僕を、みな無言で見守っていた。


ドンヘさんが戻ってきた。
俯きがちな視線から、交渉が僕にとって良い結果に終わらなかったことは一目瞭然だった。

「祈祷は禊の泉で行う。期限は5日。5日目の朝までに雨が上がらなければ……チャンミンにはユンホ様の前から消えてもらうと。こちらの付き添いは……1人だけ。もちろん、ユンホ様以外で。」

「そんな条件はのめない!」

ユノは叫んだ。

「さもなくば、押し入って巫女を殺すと言っています。」

ドンヘさんの言葉にシウォンさんが頭を抱えた。

「我々には護衛部隊も武器もない……。」

僕はもう決めていた。ユノと離れて祈祷に行くなら、付き添いは彼しかいない。

「キュヒョン。一緒に来てくれる?」

キュヒョンは泣いていた。
泣きながら、「仕方ねえなぁ。付き合ってやるよ!」と笑った。

着物を着替え、始めてこの王宮に来た時と同じ衣装で僕は中庭に立った。

門へと進む途中、ユノが言葉にならない叫び声をあげて僕を抱き寄せた。

「チャンミン!いやだ!行くな!!」

子供みたいに泣くユノがいとおしかった。

ユノは腕を伸ばして、傍らの山茶花の白い花を摘み、僕の髪飾りに差した。

僕の髪に触れ、首を引き寄せてくちづけた。

「どうしようもなくなったら、俺の名前を呼べ。助けに行く。俺の前から消えることなど、許さない。」

僕は返事はしなかった。
呼ばないだろうと思ったから。

ユノを傷つけたい人なんて居ない。
ユノは安全だ。

でも、僕を必死で守ろうとする姿なんて見せて、国民からのユノへの尊敬が薄れるのは嫌だった。

僕が外に出て門が閉まった時、ユノの叫び声がした。

「あああああ!!!チャンミン!!!!!」




祈祷の場が、ユノに出会い、一生愛すると告げられた場所だったのは救いだった。
幸せな時を思い出せた。

僕は泉の畔でキュヒョンと祈祷の準備をした。
冷たい雨が降り続いていて、冷えた指先が震えた。それが寒さによるものか、恐れによるものか分からない。

僕の力でも、5日は厳しいと分かっていた。
この雨は10日続くはずの雨だった。既に祈祷は終えて限界を越えている。

5日後に止むか、可能性の薄い賭けだった。

泉は人でごった返している。
人の入るべきでない場所に雑念が溢れ、気が乱れている。

「気が悪いな……。」

キュヒョンが呟いた。

「でも、やれるだけやってみるね。」

キュヒョンの瞳からもう涙は溢れていなかったけれど、ずっと嗚咽を堪えていた。

「チャンミン……俺の自慢の弟。お前は奇跡の巫女だろ。必ずできるよ。」



「あんなに綺麗な方が悪い人なの?」

東屋の屋根の下で僕を見ていた小さな男の子が父親に尋ねた。

「ユンホ様の心を乱したんだ……。綺麗な外見に惑わされるな!」

「違うよ!僕が綺麗って言ってるのは、心のこと!」

男の子は、僕が縫った足履きを身に付けていた。家族に貰ったのかな。僕が作ったものが誰かを温めたなら、良かった。

僕は男の子に、唇だけで「ありがとう」と言った。

男の子は頬をぱっと染めて「ほら、綺麗!」と喜んだ。

ユノの言っていた学舎が町にできたら、将来こんな子が国王になれるかもしれない。


ユノは間違っていない。
惑わされたわけでもない。
元々、世継に国を継がせるつもりなんてない人だったんだ。

僕は、ユノの望む未来のために、祈るよ。





2018092313285671c.jpg

続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

祓い屋リノベーション 36

この記事を閲覧するにはパスワードが必要です
パスワード入力

祓い屋リノベーション 35

この記事を閲覧するにはパスワードが必要です
パスワード入力

祓い屋リノベーション 34

祓い屋リノベーション
34
~トンバン国~



初霜が降りる頃、僕が毎晩作り続けた足履きは千足を超えた。

ユンホ様が1日と空けず僕に夜伽を求めるので、思っていたより時間がかかってしまった。

最初に完成した足履きを差し上げた夜のユンホ様は凄かった。
獰猛に僕を抱いた。

身体中をきつく吸われて、僕の身体は斑模様になってしまった。

「椿の花だ!」とユンホ様は喜んだが、僕には蛇の模様に見えて恥ずかしかった。

それからも、ユンホ様はよく印をつけた。
首まで赤い印を付けられて、祈祷の時以外は首巻きが僕の必需品になってしまった。


風邪をひかないようにと、薬草を煎じた薬を持ってきたシウォンさんは、敏感に首の印を察して満足そうだ。

「お盛んなようで良かった。」

「今思えば、シウォンさんのお陰です。」

「ユンホ様はご自分のことより国や他人を優先する方だから、自分の巫女のことくらいは、我が儘になって欲しかったんですよ。」

「シウォンさんて……聡明で素敵な方なんですね。」

「惚れました?」

シウォンさんは僕ににじり寄った。

「ふ、触れるのは禁止ですよ!」

「巫女。国王と一緒に居ると、辛いこともあるでしょう。」

「今のところは幸せです。」

「不安、と言った方がいいかな。」

胸の内を覗かれたようで、僕は俯いた。
シウォンさんは、優しく微笑んだ。

「私はね、愛の形に決まりなどないと信じている。頭の固い人達が何を言おうと、ユンホ様と巫女ならこの国を変えてくれるのではないかと、夢を見ているんです。」

「愛の形……ですか。」

「巫女の気持ちを、応援している人も居ること、忘れないでください。」

シウォンさんの言葉は温かい。
でも、僕は指先が冷えるのを感じた。

いつか不安は現実になるのだろう。
だからシウォンさんは僕を励ましたんだ。


僕は不安を忘れようと、一心不乱に足履きを縫い続けた。

様子を見に来たウニョクさんは、僕の手捌きに感心した。

「チャンミンさんは針子になれますね!」

「でもまだ目標の二千足に遠く及ばなくて……。」

「うふふ。内緒にしていましたが、私や仲間も空いた時間を使って縫いましたよ。今日、千足になりました。」

「え!ウニョクさん!ありがとうございます!」

僕が嬉しくてウニョクさんに抱きついたところで、ユンホ様が部屋に入ってきた。

「なっ、何をしている!!」

「ユンホ様!ウニョクさんが手伝ってくれて、足履きが二千足出来ました!明日から町の人々に配りに行っていいですか?」

「チャンミン……町のみなのために毎晩縫っていたのか?」

「はい。でも高齢な方の分しか出来ませんでした……。」

「チャンミン……」

ユンホ様が僕を抱き締めたのを見て、ウニョクさんは微笑んでそっと部屋を出て行った。



次の日、僕はまず王宮で働く人達に足履きを渡した。喜んで、その場で履いてくれる人もいた。

武器を管理するジウさんは、先代の国王の時代から王宮に仕える古株で、彼に足履きを渡すと鼻で笑われた。

「武術を極める者は、寒さなど感じません。軟弱な巫女の作った物は必要ない。持ち帰ってください。」

ジウさんは僕を毛嫌いしていた。

毎晩のように喘ぎ声が漏れてしまっていて、ユンホ様が僕にご執心なことは、王宮の誰もが知るところとなっていた。

ユンホ様は国王。
世継を作ろうとせず僕ばかりを愛でることに、不安を露にする家臣は何人かいた。

未来の国の安泰を思えば、僕は不安の根源。

それでも、国王がお望みなのだからと自分に言い訳し、僕はユンホ様から離れることができなかった。
ユンホ様が僕しか抱かないことに、優越感さえ感じていた。



大きな荷台に足履きを積んでいると、ヒチョルさんが声を掛けた。

「チャンミンさん!俺の新作を使ってくれ!」

ヒチョルさんは木材を使って何でも作ってしまう。

「この台を馬に引かせるんだ。後ろの輪が回って、台は自動で動く。こうすれば、馬に乗ったままでたくさんの荷物を運べる。」

「またヒチョルの発明か?」

ユンホ様が馬を連れて来た。

「自信作ですよ!これがあれば、運搬が画期的に楽になります。」

「さすがヒチョル。もっと馬を繁殖させて増やさないといけないな。シンドンに頼んでおいてくれ。」

繁殖か……。
僕にはその能力がない。

ユンホ様の家臣はみな優秀だ。
国の豊かな未来のために知恵を注いでいる。

末永い繁栄のためには、世継が必要。
みんなの世継への期待を思い、僕は心に霜が降りるような冷気を感じた。

「チャンミン?行くよ?」

ユンホ様は僕を馬に乗せ、町に連れていってくれた。

「僕もユンホ様のように馬に乗れるようになりたいです。」

「チャンミンには俺がいるからその必要はないだろ。抱き締めて乗せられるのは嫌か?」

「ずっと一緒に行動するわけにもいかないですから。」

「何故だ。離れるなと言っただろう。チャンミンは俺のそばで巫女の仕事に集中しろ。馬のことは俺に任せればいい。1人で何でもやろうとするな。分担すれば、出来ることは広がる。」

妻は娶らないのですか?
僕の面倒ばかりみている訳にいかなくなるでしょう?

喉まで出かかる言葉を、口にすることはできなかった。
言葉は人を縛る。
口にしてしまい、現実になるのが怖かった。



「巫女様がご自身で?」

「凄く丁寧な縫い方!」

「こりゃすごい。指先まで温まるぞ!」

町の人は足履きを見て驚いた。

「すごいだろ!私の巫女は慈悲深くて器用なんだ。」

ユンホ様の自慢気な様子は恥ずかしいが、人々が喜んでくれて、僕の心は癒された。

町の人が配布を手伝ってくれて、あっと言う間に残り少なくなった。

前に会った裸足の老婆の元を訪れようと近所の人に尋ねると、思いがけない返事が返ってきた。

「婆さんは数日前に死んだよ。」

案内された老婆の家は、今にも崩れそうなあばら屋だった。

「おばあさん……。」

老婆の幽霊が、ユンホ様に貰った布を抱き締めて家の前に座っていた。

ユンホ様を見つけると、老婆は駆け寄って手を握った。ユンホ様は膝まずいてその手をそっと包むと、肩を抱いて背中をさすった。
まるで幽霊に触れられるかのように優しく。

老婆はユンホ様の肩に顔を寄せて泣いた。

「やっとお会いできた……。」

「おばあさん。久しく会えずにすまなかった。病気だったのか?寂しくなかったか?」

老婆は深い皺に覆われた顔の奥に埋もれた瞳でユンホ様をじっと見て、微笑んだ。

「寂しくなんてありませんよ。ユンホ様に布を貰ってから、町の人が優しくなって毎日会いに来てくれてね。」

「そうか……。」

「倒れて寝込んでからも、様子を見に来てくれて。ありがたかった。」

「俺ももっと早く会いに来たら良かったな。」

涙ながらに話す老婆の姿に、僕は泣けてきた。
もっと早く足履きを作り終えていたら、死ぬ前に会えたかもしれないのに。

「ずっと孤独だったが、ユンホ様がわしの人生にもう1度人の温かさを与えてくれた。ありがとう。」

ユンホ様の目から涙が溢れて頬を伝っている。

ああ。
なんて優しい方。

人の気持ちに寄り添って、痛みを分かち合える人。国民にも、動物にも、幽霊にも愛されている。

老婆は、ユンホ様の涙が濡らす頬に骨と皮ばかりになった手を添えて、くしゃっと笑った。

「最期にユンホ様にお礼が言いたかった。願いが叶って、もう思い残すことはない……。」

老婆はそう言うと、静かに目を閉じた。
身体から光が放たれる。

美しい光。
人の魂が、大地に戻り溶け込む光になる。
粉々になって、広がって、自然に帰る。

光が通り過ぎる瞬間、僕の身体が軋んだ。
突き刺さる痛み。

「うっ……」

まずい。いつもより痛みが大きい。
立っていられない。

「チャンミン!!」

地面にうずくまった僕をユンホ様が抱き止めて揺する。

「チャンミン大丈夫か!?おい!」

だめ、揺すらないで。

「うああ……っ」

「チャンミン!しっかりしろ!」

身体の奥まで痛みに侵食され、骨まで痺れる。

「あああっ……ユンホさ……まぁ……」

「チャンミン!チャンミン!!」

ユンホ様の声が遠のく。

僕の意識はそこで途切れた。





2018092313285671c.jpg

続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

祓い屋リノベーション 33

祓い屋リノベーション
33
~トンバン国~



「ユンホ様。いい加減にしてください。チャンミンが飢えて死にます。」

3日目の朝、キュヒョンが扉を叩いた。
天蓋からちらりと覗くと、キュヒョンは呆れ顔。ドンヘさんが後ろで湯気を立ち上らせて赤面している。

2人が持ってきた食事の香りに、僕は寝床から転げ落ちた。

「チャンミン!無事か!?」

「ご……ご飯………!」

僕を抱き上げて寝床に戻すと、天蓋の透かし布を振り払ってユンホ様は颯爽と歩いた。

透かしの向こうに見える丸裸の後ろ姿が勇壮で、見惚れた。

「ユンホ様!いくら長年欲求不満だったからって、仕事を放置して快楽に興じるなんてどうかしてます!いや、この際仕事はどうでもいい……よくそんなにやり続けられますね!色欲魔か!!」

「すまないドンヘ。長年想像だけは逞しくなっていたが、遥かに上回って目眩く体験で……。人生で初めて我を忘れてしまった。」

「だから女を用意しますと言っているでしょう!」

キュヒョンがなだめる。

「ま、まあ、今はまずお食事をとってください。足りなかったらお呼びください。外で待っていますので。」

しゅんとして戻ってきたユンホ様は、抱えていた膳を置き、僕にすりつぶした果物の汁を飲ませた。

「すまなかった……。」

僕はユンホ様に抱きついた。

「謝らないでください。私は幸せです!」

「……僕って言わないのか?可愛かったのに。」

「あ……僕……あ、私、そんなことを?失礼をお許しください。」

「ユノと呼んでくれないなら、せめて俺の前では僕と言って。」

ユンホ様の拗ねた顔はかわいい。
とても国王とは思えない。
そんな顔を僕に見せてくれることが嬉しかった。

「僕、お腹空きました。」

ユンホ様はぱあっと朝日が輝くように笑って、ご飯を食べさせた。

「はい。あーん。」

「あの。自分で食べられます。」

「いいからいいから!次は何が食べたい?」

ユンホ様は甘い。
甘過ぎて身悶える。

ユンホ様から与えられる食事は、自分で食べるより何倍も美味しく感じた。

5人前食べて、やっと僕のお腹は落ち着いた。
ユンホ様も3人前食べた。

疲れてはいるものの、意外にも僕の身体は普段通りだった。いつもと同じに動ける。

湯殿でしげしげと僕を眺め、ユンホ様は首をかしげた。

「チャンミンの身体はどうなっている?辛くないのか?」

「自分でも不思議ですが、全く。」

「チャンミンは、奇跡の巫女だったか……。」

「え?」

「トヨから聞いたことがある。国王のために必要な全ての能力を持ち、身体まで王に沿うように生まれる巫女がいると。」

「そんな話信じられません。でも、身体のことだけは信じます。本当に、ただもう気持ち良くて……。」

「チャンミン!また抱きたくなるだろ!」

ユンホ様は湯からザバッと立ち上がり、仕事をしてくると言って去って行ったが、すぐ戻ってきて僕にくちづけた。

「チャンミン。死ぬまで俺から離れるな。定められたことだからではないからな。俺の望みだ。」

僕は気を失いかけて、しばらく湯に沈んだ。



2晩も放置していた結界を修復した後、王宮の祭壇で国の平和を祈祷した。

いつも修行ではおなざりにしていたが、ユンホ様と国のために、心を注いだ。

部屋に戻ると、見知らぬ男性が衣装棚に服を並べていた。

「あ、チャンミンさん?初めまして!ウニョクです。」

「ああ!衣服の担当の方ですね。」

「そう。もう冬になるから、暖かい着物を揃えて来ました。」

厚手の綿でしつらえた着物や、毛皮の上着。襟巻き。

「これは何ですか?」

「足に履いてみてください。生地の端切れで作ってみたんです。」

筒状のものに足を入れると、つま先から温かくなった。

「すごい!端切れでこんなものが作れるなんて、ウニョクさんは天才です!」

「あはは。チャンミンさんが可愛い方で嬉しいです。トヨは服装に無頓着だったから、作りがいがなかったけど、俄然やる気が湧きます。」

ウニョクさん自慢の衣装を眺めながら、僕は町で見た裸足の老婆を思い出した。
冬が来て、高齢な人達は寒さに震えないだろうか。

「ウニョクさん、王宮には端切れがたくさんあるのですか?」

「ありますよ。ここで働く人の衣装や装飾は全て王宮内で作っています。何かに使えるかと思って倉庫に積んであります。」

「あの!この足履きの作り方を教えてください!」

「それを知ってどうするのですか?」

「たくさん作って町の人にあげたいんです。」

「えっ。トンバン国には1万もの人が住んでいるんですよ?」

「高齢な方だけでも!こんなに温かくなるなら冬の寒さが少しでも楽になるでしょう?足元からの冷えは身体に悪いですから。」

ウニョクさんは呆気にとられた顔をしていたが、僕を連れて作業場へ案内した。

「これが針。鉄で作られていて、指に刺さるから気をつけて。この糸を通して縫います。1つ作って見せますね。」

ウニョクさんは倉庫から端切れを何枚か持ってきて小さな刃物で大きさを整え、器用に針で縫った。

「わぁ……すごい。もう出来た!」

感動する僕にはにかむと、ウニョクさんは道具箱を1つ僕にくれた。

「差し上げます。巫女の仕事も忙しいでしょうから、お部屋で暇な時間がある時にやってみてください。分からないことがあったら、私はほとんどこちらに居ますので、呼んでください。」

柔らかい生地の端切れを大きな袋いっぱい貰い、僕は部屋に戻った。



「チャンミン、何をしてる?」

夜にやって来たユンホ様は、部屋中に散らばる端切れを避けてとんとんと跳ねて来ると、机で針と格闘している僕の横に座った。

「チャンミン!指から血が出ているじゃないか!」

「僕が下手だから刺してしまって。」

ユンホ様は僕の人差し指を掴んでぱくっと咥えた。

「ひえっ!」

「いって。」

ユンホ様は自分の指先をしげしげと眺めた。

「あれ。針が刺さったかと思った。」

「ユンホ様!痛みを受けとる能力が?」

「さあ。そんなこと今まで無かったぞ。まあいい。寄こせ。」

卑猥な視線を向けて指を舐められ、僕の身体は痺れた。

「はぁ……ユンホ様……」

腕にしがみついた僕は、慌てて離れた。

「申し訳ありません!血がついてしまう!」

「いや、汚れていないぞ。」

自分の指を見て、僕は驚愕した。

「傷が……ない……」

今さっき刺したばかりの傷が、跡形もなく消えていた。僕の指を掴んで見つめたユンホ様も驚いていた。

「まさか……。信じられない。巫女の力か?」

「違います!今まで傷が無くなることなどありませんでした!ユンホ様の力です!」

ユンホ様は他の指にも唇を寄せ、全ての傷を消した。

見つめ合い、どちらともなく笑った。

「チャンミンが素晴らしい巫女で良かった。俺の力を高めてくれる。ところで、針と端切れで何をしている。」

「内緒です。できたら1番にユンホ様に差し上げます。」

ユンホ様は不思議そうに僕の作業を眺めていたが、次第に何度も欠伸を噛み殺し出した。ろくに眠らずにずっと愛し合っていたから、僕もさすがに眠くなってきた。

「今夜はゆっくり眠ろう。」

ユンホ様は僕を寝床に連れていった。

「あの。夜伽をしない時も一緒に寝るのですか?」

「もう離れるなと言っただろう。毎晩共にする。」

ユンホ様は僕を腕の中に抱き止めて眠った。

すうすうと安らかな寝息。
ユンホ様の横顔。
少しだけ開いた口元。
優しい時間。

幸せを感じると同時に、恐ろしくなった。
ユンホ様が妻を娶る時、僕はこの場所を失うんだ。


キュヒョンの言った通りだ。
惚れてはいけない人。

でももう手遅れだった。

僕の頭は、どうしたらユンホ様のためになれるかばかりを考え、身体はユンホ様と触れ合うことを求めていた。

僕は、ユンホ様を、お慕いしていた。

心を完全に奪われてしまった。




2018092313285671c.jpg

続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

コールドブリュー

Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR