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運命の人 farside編 3

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正中に放て 弓道編 59

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正中に放て
-弓道編-
59


それから数日後の朝、思わぬ事態が起こった。
道場の掃除から帰ったユンホが部屋に入ると、チャンミンが手をグルグル包帯で巻いていたのだ。
ユンホは顔面蒼白になった。

「チャンミン!どうしたの!!」

「な、何でもない。牛乳パックを切ろうとしたら、手が滑ってカッターが刺さっただけ。」

「刺さっただけって!傷は?深いの!?」

「大丈夫だって!保健室行ってくる!」

傷を見せようとせず、チャンミンはユンホを振り切って部屋を出ていった。

包帯を巻いていたのは左手だった。
手の平を怪我なんてしたら、弓が握れないじゃないか。絆創膏で足りない傷だなんて、余程深いのではないか。

綺麗に片付いたデスクの下のゴミ箱の中に、きゅっと固く結ばれたビニール袋が入っている。
それを無理矢理開いたユンホの手は震えた。

血まみれのティッシュが大量に入っていた。

「チャンミン……!」

ユンホは保健室に走った。

「ユンホ君……来なくても良かったのに……。」

項垂れて椅子に座るチャンミンの目は、涙でいっぱいになっている。包帯には血が滲んでいた。

「まだ血が出てるじゃない!」

「ん。」

「痛い?」

「痛みは大丈夫……。」

そんなはずない。
きっとすごく痛いんだ。
とうとうチャンミンの瞳からポロポロ涙が溢れた。

「お願いだよ……僕には平気なフリしないでよ……。」

抱き締めたユンホの胸でチャンミンは泣いたが、先生が入ってくると、鼻水をずずっと啜って顔を上げた。

「ユンホ君……ごめん。大河先輩と日下部先輩……呼んできて。」

ベッドでイチャイチャしていたらしい大河と日下部が部屋から出てくるのには時間がかかった。

ユンホが保健室に戻ると、チャンミンの処置はもう終わっていた。

一針だけ縫ったチャンミンの傷は左手の人差し指と中指の付け根で、弓を握ると大きな負担がかかる場所。

先生から完治するまで弓道禁止が言い渡された。

全国選抜まで、もう2週間もない。
例え試合に間に合っても、練習ができないのでは話にならない。

大河の決断は早かった。

「チャンミンは選手から外す。代わりにユンホが中に入れ。」

「僕!?」

「補欠なんだから当たり前だろ。」

突然のことに開いた口が塞がらないユンホの肩を日下部が叩いた。

「今のユンホの弓なら、みんなも納得だよ。頑張れるよね?」

涙ぐんでいるチャンミンの前で、情けない返事などできない。
ユンホは精一杯の男らしい顔で頷いた。

「僕、やります。」

「よし。今日から立の練習だ。俺も選手の指導に入る。」

「よろしくお願いします!」

背筋を伸ばして一礼したユンホの横で、チャンミンは神妙な面持ちだった。


心配して休み時間の度にAクラスに足を運ぶユンホに、チャンミンは「大丈夫」とばかり言う。
現に授業は問題なく受けていて、笑顔も浮かべているけれど、落ち込んでいるに違いない。

その日、チャンミンは部員の前で謝罪した。

「僕の不注意で怪我なんてしてしまって、申し訳ありません。」

「心配すんなよチャンミン。ユンホがチャンミンの分まで大河先輩にしごかれるってさ!」

2年のリーダー富樫がユンホの肩を掴んでみんなを笑わせた。
九条も「補欠は俺に任せとけ。」と息巻く。

弓道部のみんなの優しさがチャンミンにはツラく、道場の端にぽつんと座って練習を見学した。

1時間以上身動きもせず練習を見つめているチャンミンが、日下部には、泣き出しそうに見えた。

「チャンミン。痛いなら今日はもう帰って休んでな。たまには勉強もサボってさ、痛み止め飲んで寝ちゃいなよ。」

「先輩……。どうして……。」

突然立ち上がり、道場を出たチャンミンを日下部は追いかけた。

「待ってチャンミン!」

「どうしてですか!みんな優し過ぎる!折角選手に選んでもらったのに、僕がバカで怪我したのに責めもせず!!自分が情けないです!!」

「……おいで、チャンミン。」

日下部はチャンミンの肩を抱いて寮に帰った。
ぐずぐず泣いているチャンミンをベッドに座らせ、痛み止めを飲ませると、隣に座って包帯を指差した。

「これ、カッターの傷じゃないでしょ。カッターにしては深すぎる。何で怪我したの。」

優しく頭を撫でられ、チャンミンは白状した。

「彫刻刀……です。」

「へ?どうして彫刻刀なんて……。何か作ってたの?」

「これ……。」

デスクの引き出しの奥からチャンミンが取り出したのは、2つの小さな木の容器。

「ユンホ君に、お揃いのギリ粉入れと巾着袋を作ろうと思って……。」

「手作りで!?」

チャンミンはまたおいおい泣き出してしまった。

「クリスマスプレゼント買うお金がなくて仕方なく!美容院でお小遣い使い過ぎてー!!」

「えぇっ!」

まさかの金欠。これは珍しい。
正直お小遣い制度なんて噂に聞いたことがあるだけで、金欠に悩む学生が居るなど想像だにしなかった。

何しろ日下部は幼い頃から、どれだけ使っても常時残高3000万が維持されている専用カードを与えられていたのだ。

「裏山のケヤキの木を切ってきたんですけど、すごく硬くて!美術の先生に相談したら、研いだばかりの彫刻刀貸してくださって……。」

「それで怪我を……。」

小さな木塊には、穴が開けてあって蓋もついている。木工ドリルでの作業の後、外観を彫刻刀で刻んで整えていたのか。

「素敵なデザインだよ。ユンホ、喜ぶね。」

「先生から左手を彫刻刀の前に置くなって言われてたのに、つい夢中になって……僕……ほんとにバカなんですー!!!」

なんと健気な……。
お金が無くて、手作りでなんて。
そんなこと考える学生、超レアキャラ。

デスクで必死に小さな容器を削るチャンミンの姿を想像し、日下部はきゅんきゅんした。

「……危ない。涎出そうになっちゃった。」

「よだれ?」

「ごめん、何でもない。で、これは後は何すれば完成なの?」

「サンドペーパーで角を落として、ニスを塗ります。あと、穴を開けて紐を通せば。」

「それだったら美術の先生に助けて貰えば出来るじゃない!」

「もういいんです。弓道部のみんなに迷惑かけて、今さらプレゼントなんて作る気になれません。」

日下部は立ち上がった。

「ばか!なす!おたんこなす!!」

「なす……。」

「ユンホがチャンミンの代わりに弓道頑張るんだから、チャンミンもプレゼントは意地でも完成させなさい!!」

日下部は黒目がちな瞳を刃の如くギラリと光らせた。

「これは命令です。」

怖い。
日下部先輩ってほんとはめちゃ怖いんだった。
チャンミンは、怒られて泣かされた日のことを思い出した。
絶対的に、大河先輩よりこの人は怖いのだ。

「は……はいっ……やります!片手でもやり遂げます。」

「よろしい。では今日は大人しくしてなさい。あ、お風呂入るのとか大変だったら、ユンホに手伝ってもらいなね。ユンホにはそう伝えておくから。」

「ひっ!それは!!それだけはー!!!」

チャンミンの叫びを無視して日下部は道場に戻った。

休憩していたユンホが子犬みたいな顔で走り寄る。

「先輩!チャンミンは?」

「ん。痛みがあるみたいだから帰らせた。」

「あぁ……心配だなぁ……。」

「そうだよね。今日は痛くてお風呂とか大変だろうから、ユンホが洗ってあげなさいね。身体の隅々まで。」

「ぶっ!!」

「ユンホがやらないなら僕がやるけど?」

「やっ。やります!僕が!チャンミンの手となります!そして全身を……を……を……わおーーーん!!」

「はいOK。よろしく~。」

ユンホは遠吠えしたまま10分ほど石碑になっていた。




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正中に放て 弓道編 58

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正中に放て
-弓道編-
58


ユンホの調子はずっと良かった。

初心者が連続して中りを出し続けるのは容易なことでないが、元々身体の芯を捉える感覚が身についている上に、少し迷いそうになると、チャンミンが手を添えて感覚を蘇らせてくれる。

選手3名も安定した弓を引いているし、大河の熱血指導を受ける九条の上達も部員の士気を高めていた。

12月になると、山に囲まれた東高周辺は一気に気温が下がり、朝の道場の床は、靴下の布を簡単に突き抜けて冷えを伝える。

ユンホは時間の許す限り、早朝に道場を掃除することを日課にしていた。

「ううー。寒いー。」

お湯で絞った雑巾はすぐに冷たくなって、ユンホの指先にはあかぎれができた。

寝覚めが良い時はチャンミンも一緒に来てくれるが、今朝は寒くてベッドの中で猫みたいに丸くなっていたから、ユンホは起こさないように細心の注意を払って部屋を出た。

「うふ。丸くなってるチャンミン可愛かったなぁ。ジャスミンみたいで……。」

学園祭の後、里親ご夫婦からジャスミンの写真が定期的に何枚も送られてくる。

最初は猫じゃらしで遊んでいる様子や、窓の外をキラキラした目で眺めている写真。

それから寒くなるに従って、抱っこされている写真が増えた。
奥さんの膝で芋虫みたいに丸くなって甘えている写真が、今朝のチャンミンみたいだった。

壁際の床をせっせと磨きつつ、ユンホはチャンミンの寝顔を思い出してはニヤニヤしていた。

「顎、ゴロゴロしてあげたら喜ぶかな……なんて……えへへ……。」

毎日抱き締めて寝るのが当たり前になっているが、何度見てもチャンミンの寝顔は飽きない。
天使みたいにスヤスヤ眠っている時は可愛いし、ものすごくしかめっ面で眠っている時もまた可愛い。

「あー。なんであんなに可愛いんだろ。帰ったらチュウしなきゃ。」

雑巾を干しているところに、朝のランニングから帰って来た虎之介が通りかかった。

「おはようユンホ!さっむいなあ!」

「とらちゃんおはよ!ほんと寒いね!!」

ユンホは寮へと、虎之介と歩いた。

「今度の試合、クリスマスにあるんやって?大変やなぁ。」

「うん。忙しい。試合が23日から25日までで、僕すぐ韓国に帰省しなきゃ。チャンミンも家族に会いにフランスだって。」

「クリスマスプレゼント買ったか?」

「や……まだ。」

「俺はネックレス買った。歌子ちゃんとクリスマスデートして正式に告白すんねん!」

「と、とらちゃん!!かっこいい!!」

僕もちゃんとしなきゃ。
試合も大切だけど、チャンミンとの初めてのクリスマスも重要だ。

虎之介の話に興奮して部屋に戻ったユンホは、着替えていたチャンミンに鼻息荒く襲いかかった。

「きゃーーー!!!」

パンツ1枚で抱き締められてチャンミンは白目をむいたが、ジュニアが反応しそうになったのでユンホを剥がしてそそくさと制服に足を突っ込む。

「ね、チャンミン欲しいものある?」

欲しいもの?
なんだ急に。

「ユンホ君のディープキスです。可能なら、その身体1回自由に隅々まで触らせてください。」……とは言わず、チャンミンは素早く制服を着ると、ハンドクリームを取り出した。

ユンホの赤くなった手にクリームを塗り込んで、上目遣いする。

「欲しい……ものって?」

「何でも欲しいものあげるから。クリスマスプレゼントだよ。」

「別にプレゼントなんて要らないよ。サンタさんって年齢でもないし。」

「ダメだよ。初めてのクリスマスなんだから恋人にプレゼントくらいさせてよ。」

「きゅん……。」

俯いて指先にクリームを塗り塗りするチャンミンの耳が赤い。

「きゅ、急に言われても思いつかない。」

「じゃあ……考えておいて。それとさ、選抜大会終わったら帰省前にデートしない?1日遅れちゃうけど、クリスマスデート。」

デデデ、デート。
い、いい!すごくいい!

試合が終わったら暫くユンホと離ればなれになってしまうことが寂しかったが、楽しみができた。

チャンミンが頷くと、ユンホは晴れやかな笑顔でおでこにキスし、自分も着替えに向かった。

「はぁぁぁぁぁ……。」

キスだけは平気でするんだから。
挨拶のつもりってことあるまいな。

しかし、クリスマスプレゼントなんて何がいいだろう。
ユンホ君とお揃いのものとか持ちたいな……。

「あ……まずい。」

美容院で貯金を使い果たしてしまった。

そもそもチャンミンのお小遣いは月5,000円ぽっきり。東高生徒の中で、確実に1番少ないであろう自信がある。

学生寮生活ではお金など必要ないし、服も十分にある。たまに参考書を買う程度だから、月5,000円で困ってなどいなかったのだが、美容院での数万の散財がここへ来て首を絞める。

「財布……財布……。」

チャンミンは財布の中身を確認して肩を落とした。

財布の中にはたったの3,000円しか入っていない。

待てよ。
デートの行き帰りの交通費は?行き先によってはかなりかかる。
ランチは?ディナーは?

「ど、どうしよ……。」

お小遣いを両親に無心するなど、チャンミンのプライドが許さない。そんなお金でユンホにプレゼントを買うのも申し訳ない。

「おっ……お金がない。」

チャンミンは、東高生徒にあるまじき悩みを抱えた。



夕方、弓道場へと歩きながら、チャンミンはユンホに素知らぬ顔で質問した。

「ちなみにユンホ君は欲しいものあるの?」

「えー。なんだろ。思いつかないなぁ。チャンミンがデートしてくれたらそれだけで幸せだもん。」

「えへ……。」

ダメだ。
ついにやけてしまったが、喜んでいる場合ではない。

「あ、でも、何かお揃いの物が欲しいなー。」

ユンホの言葉にチャンミンは肝が冷えた。

ジュエリーとか無理だぞ。
指輪?ブレスレット?
いやいや。Tシャツすら買うお金ないんですけど!

道場に入って弓の準備をしたユンホは、チャンミンが選んだ矢を撫でて微笑んだ。

「この矢、すごく気に入ってる。チャンミンが選んでくれた矢が頬に当たると、キスしてる気分になるんだ。あ、だから僕、会が好きなのかな。あははー。」

「きゃふ……。」

ユンホの投下する甘い言葉の爆弾は、無の心を境地とする弓道人としては邪道極まりなかったが、チャンミンの顔をトキメキで真っ赤にさせた。

「いちゃつくなら外でやれ。」

鉄仮面になった九条が2人の間に割り込んだ。

「ごめんごめん。」

照れながら弓懸を装着したユンホの手元を見て、チャンミンは呆れた。

「ユンホ君、ギリ粉入れ持ってないの?」

鹿革の弓懸が、滑って弦を離してしまわないよう親指につけるギリ粉は、松脂を煮詰めて水分を取り除き、粉末状にした粉。要は滑り止めだ。

これを弓懸けにつけ、「ギュッ、ギュッ」と親指と中指、人差し指で擦り付ける。

みんな、小さな容器にギリ粉を入れて弦巻(予備の弦を巻いておく丸い用具)と一緒に持っているものなのだが、ユンホは購入時のビニール袋をそのままで使っていた。

「チャンミン君のギリ粉入れ可愛いよね。瓢箪?」

「うん……。て、いや、そうじゃなくて、ビニール袋だと破れるし汚くなるでしょ。」

「そうだけど。別に困ってないし。」

チャンミンはユンホが取り出した巾着の内側を見てどん引いた。

いやだ!きったない!

弦巻などを詰め込んだユンホの巾着袋は、こぼれ出たギリ粉でネタネタしていた。

新しい巾着袋にしたらいいのに。
僕も、そろそろ新調したいと思っていた。

「あ……これだ……。」

次の日の早朝、チャンミンはユンホがこっそりベッドから出て道場に向かったのを確認し、裏山に入ったのだった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

皆様たくさんご心配の声をいただき、ありがとうございます。
熱も下がって普通に仕事してます。いっぱい寝たので睡眠不足がかなり解消されました。

さて、日下部先輩のモデルについてご質問を複数いただいたのですが、実は日下部にはモデルが居ないのです。私の脳内ではアニメキャラみたいな仕上がりになってまして、現実世界にはなかなか見当たらず。

敢えて言うなら、『帝一の國』の光明(志尊淳君)の可愛さと、ティモシー・シャラメ君(写真参照)の美しさを混ぜた様な……。

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え、混ざらない?
……ですよね。

要は私は美青年に目がない変態なのです。

皆様ご自由にキュート小悪魔香月を妄想してください(´ 3`)


明日の正中は朝8:00に投稿しまーす。

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正中に放て 弓道編 57

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正中に放て
-弓道編-
57


ユンホは大河との東京視察旅行が余程楽しかったらしく、スマホに大量に納められた画像を1枚1枚チャンミンに解説した。

「ここはね、森崎ビルが建設中の新しいオフィスビル。エレベーターが20台もあるんだよー。すごくない?」

そう言われてもチャンミンにはぴんと来ない。

「このサイズのビルだったらそんなに必要ないと思ったんだけど、オフィスビルに入る会社の社員さんが、出社するときエレベーターに並ばなくていいようにだって。」

いつもはチャンミンが解説する側だが、ユンホはさすがチョン建設の息子だけあってビルに詳しく、チャンミンは感心した。

「5階まではエスカレーターもあるんだ。エスカレーターって、場所取るしエレベーターの何倍も高いのに!」

「そうなの?知らなかった。」

「でねでね、このビルの周りに遊歩道を作って楓をたくさん植えるんだって!桜はよくあるけど、楓ってのがいいよねぇ。夏は青くて、秋は赤くなるって素敵じゃない?」

いつになく饒舌なユンホの顔がキラキラしていて眩しく、チャンミンは目を細めて頷きながら聞く。

「この庭にできるカフェとお弁当屋さんの屋台、賃料無料なんだよ。」

「へぇ。新しくお店持ちたい人にはいいね。」

「お昼に色んなお弁当選べるでしょ!たくさんのお店に入って欲しいから、敢えて社食は作らないんだ。」

「へぇー。」

「ここ何だと思う?庭に近い1番いい場所だけど、託児所にするんだって。」

「ここが!?ガラス張りですごく綺麗。」

「休み時間にママが覗きに来れるし、一緒に庭でランチもできるって。」

「ふふ。仕事頑張れそうだね。」

「でねでね……!」

ベッドに入ってもユンホの画像解説は終わらなかった。2日間歩き回って疲れたユンホの目はとろんとしているのに、スマホから手を離さない。

「ビルを作るんじゃなくて、街を作ってるんだって……。街が魅力的じゃないと人が集まらないし、テナントが入らないから。何年もかけて……計画するんだ。」

「うんうん。」

「大河先輩の家もすごくて……。海外にも何個も別荘があるんだよ……。アメリカにもあるって……。」

「そっかそっか。」

チャンミンは、ユンホの目が完全に閉じてしまうまで、お母さんみたいな気持ちで話を聞いてあげた。

ユンホ君も韓国で、いつか街を作ったりするのかな。見てみたいな。
緑の林に包まれたオフィス街なんて、素敵だろうな。

そこで一緒に、カフェオレが飲めたら……。
でも僕の人生設計に、韓国に帰る予定はないんだったな……。
ユンホ君とずっと一緒に居られたらいいのにな……。

切なさに襲われたチャンミンを、むにゃむにゃ言いながらユンホが抱き締めて温もりを伝えてくれる。

今夜は冷える。
お互いの体温が混ざり合い、眠気を誘う温度になる。

「ユンホ君……。」

「ん……チャンミ……ン……。」

チャンミンはユンホの胸にぐりぐり頭を押し付けて眠った。

ここに居るのに、なんだかユンホが恋しかった。



また月曜日が来て、変わりばえのない勉強と部活の日々が始まる。

飽きもせず巻藁場で弓を引くユンホを見つめながら、チャンミンは止めがたい疼きを感じていた。

言葉では表現できない、身体の芯を通る力の道。その方向をユンホに伝えたくてウズウズする。

引き分けに入ったユンホの背中と腕の動きに引き寄せられ、気づいたら手を伸ばしていた。

肩甲骨の間にそっと触れたチャンミンの手の平の感触に、ユンホはわずかにびくりとしたが、そのまま会に入った。

「内に入らないで。そのまま広げて。」

腕の下に添えられたチャンミンの両手の動きに合わせ、ユンホの体内のエネルギーが左右に伸びていく。

力が肘まで広がった瞬間、限界を迎えた矢は弦を離れた。

「ドスッ」

重い音とともに揺れる羽根をぼうっと眺めるユンホの残身は少し震えていた。

「……なんか……分かった気がする。チャンミンの熱が、僕に伝わったんだ……。」

「いい、離れだったよ。」

矢を抜き取ろうと巻藁に歩み寄ったチャンミンを、ユンホは後ろから抱き締めた。

「ユンホ……くん?」

「もっと……。」

ん?もっと?
いいんだよ、もっとして。
もっときつく抱いて!

と、声に出しそうになったチャンミンをくるりと自分に向け、ユンホは満面の笑みで続けた。

「もっと弓引きたい!的に向かって引きたい!今の感覚で!!」

あ……そっち。
なるほどなるほど。
ユンホ君は思考がくそ真面目でらっしゃる。

「大河先輩に聞いてみたら?」

「うん!」

尻尾をブンブン振って道場へと駆け出したユンホを見送り、砂利を蹴ってトボトボ歩くチャンミンに向けて、踵を返したユンホ犬が飛んで帰って来た。

「チャンミン!」

「な、なに?」

鼻の穴を広げて興奮気味のユンホの顔が近づく。

「チュッ」

「きゃふ!」

道場の前でチューするなんて無作法な!などとチャンミンが思うはずもなく、足下の砂利道が花の回廊になる妄想を見た。

「チャンミンがいないと僕、困るからね。」

「うん……ん?」

ユンホは喜ばしくも真意不明な言葉を残して道場に入っていった。


ユンホは、大河に連れられて森崎ビルの街づくりを見てから、淡い夢の基礎を作り始めていた。

今の自分に夢が見えないなら、作ればいい。
チャンミンと生きる未来を、自分で設計すればいい。

何を意図してユンホを東京に連れて行ってくれたのか、大河は何も話してくれなかったけれど、世界が広がったことは、ユンホに少なからずプラスの影響を及ぼした。

僕はどうやら建設の仕事が嫌いじゃない。
むしろ、好きだ。
人の生活の場を作るってワクワクする。
そして、チャンミンも大好き。

新しいものを見るたびにチャンミンに語りたくてウズウズした。

チャンミンと夢が見たい。
夢を見つけるために、学生生活を使おう。

そんな前向きな気持ちを与えられた2日間だった。



晴れ晴れとした顔で道場に戻ったユンホは、九条を指導している大河の横に立った。

「なんだ。巻藁練習は終わったのか?」

「はい!今まで感じたことのない会と離れができました。的前で引かせてもらえませんか?」

ユンホに遅れて戻ったチャンミンのピンクに染まった頬を見て、大河は「ふっ」と小さく笑う。

「チャンミン、俺の言いつけ破ったな?」

「むぐっ……。」

大河には何でもバレてしまうから嫌になる。

「まぁ、いい。予定より早かったが、大筋は予定通りだ。引いてみろ。」

促されて的前に立ったユンホは、目を閉じて礼記射義を暗唱し、弓を起こした。
背中に残るチャンミンの手の平の熱の余韻に乗せ、正中から左右に力を流す。

臍を中心として、エネルギーが円を描いて広がっていくイメージ。

流れのままに放たれた矢は真っ直ぐ飛び、的の上の安土にどすっと刺さった。

あれ。
外しちゃった。

困り顔で大河を見ると、彼は満面の笑みだった。

「いいぞユンホ。そのまま、狙いを少し下げるだけだ。続けて引いてみろ。」

次は的の僅か上に刺さり、3本目と4本目は、見事に的を捉えた。どの矢も、左右に振られず真っ直ぐ飛んでいる。

「ユンホの射、見違えるくらい良くなったね。チャンミン、どんな魔法使ったの?」

日下部が驚いて目を見開いている。

「今日、大河先輩の言い付け破ってユンホ君に触っちゃいました。そしたら離れが良くなったんです。これって、大河先輩の魔法ですかね……。」

「は……あはは……。そういうこと。ふふ。」

「な、何ですか!」

「焦らされに焦らされて、やっとユンホの溜まったエネルギーが放出されたわけね。」

「はあ?」

「たまには離れてみるのもいい効果あるねぇ。あ、東京行きもそういうことなのかな……。」

ブツブツ呟いて、日下部は嬉しそうに微笑んでいた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

こんばんは!
気温変化と睡眠不足と移動の多さに身体が負けまして、今月頻繁に寝込んでいるコブです。
まだまだいけると思って何日も徹夜とかしてたけど、もう身体はついてきてくれないのね……と痛感。

頭痛と高熱に苛まれると、妄想はできても文字が書けない!!
で、コメ返がまたもや全然できない事態です。ほんともう、困ったもんだ。許してください。
読み逃げして、幸せいただいてます(〃ω〃)

お詫びと言っては何ですが、大河先輩のモデルであり、日下部先輩が大ファン設定のマット・ボマー氏(実在)は、こちらのイケメンです。

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こんな日本人……しかも高3……いねーよ!!
と思いつつ、この髪と瞳が漆黒であると仮定してモデルにしちゃいました。
皆様のイメージを壊していないことを願う……。

蛇足の小ネタで失礼いたしました。

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運命の人 farside編 2

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farside編 2
- 雲の海 -


撮影のため日本へと発つ日、ソウルは雪を落としそうにどんよりとした重苦しい雲に覆われていたが、会社で合流したドンヘさんの顔は快晴だった。

ウニョクさんとの楽しい旅行前と言った雰囲気を醸し出している。

「日本最近行けてなかったから、行きたかったんだよねー。」

「おいドンヘ。仕事だからな?」

ユノは朝からクールに新作のスーツで決めていた。

今年からクラシックスーツにも力を入れることになって、今日はその取材で経済新聞の記者が来社するのだ。

トムフォードのスーツみたいなメリハリのあるシルエットは、ユノによく似合って色気を撒き散らす。でも、細かなところに遊び心があるから、華奢で女性的な顔の僕が着ても違和感がない。

本当だったら2つの良さを見せるために僕も同席した方がいい取材を、ユノは1人でこなしてしまう。
モデルよりスタイルがいい社長となれば、雑誌社も新聞社もユノが居れば満足。

それを僕が卑屈に捉えてしまうことなんて、ユノは知らない。
その上、スーツのユノに僕が見とれているなんて全く気づいていない。

「しっかりチャンミンを支えろよ。」

「分かってるって!仕事はきっちりこなすから!」

「どうも信用できない……。」

「いつもきっちりやってるじゃん。」

「どこがだ!パリ行きドタキャンしたくせに!ウニョクは出社してるんだろうな!?また引きこもりか!?」

ウニョクさんは出発時間ギリギリになって、2泊3日とは思えない大きなスーツケースを押して作業場から出てきた。

先に送った荷物だけで満足できなかったら困るからと、MVのイメージに合わせて衣装を数着手直ししたのだと言う。

「ウニョクはやり過ぎないか心配だ。はぁ……俺もやっぱりスケジュール調整して行こうかな。」

「ユノは働き過ぎだって!少しは僕らに任せてよ!」

D&Eには数十人しか社員がいない。

広報まで担ってしまう社長のユノに仕事が集中し、秋にバカンスして以来、終日の休みなんて1日も取っていないのだから心配にもなる。

そのくせ僕のスケジュールにはしっかり休みを入れるから嫌なんだ。そうやって僕を大切にしているつもりで、僕の悪い癖を再発させる。

「僕だってユノの力になりたいんだから……。」

卑屈になった僕のしかめっ面にユノは焦った。

「わっ!ごめんチャンミン!チャンミンのことは信頼してるって。日本でもD&Eの人気が出るように成功を祈ってる。」

「……うん。」

「とにかく……気をつけて。空港まで見送れなくてすまない。」

「だーかーらー、そんなの必要ないって!ユノも取材頑張ってね。」

いいと言っているのに、ユノは駐車場まで見送りに来た。

「……チャンミン。スタッフに言い寄られたら股間を蹴るんだぞ……。監督の指示は絶対じゃない。変な要求されたらすぐソウルに戻って……」

「ユノ……今蹴ろうか?」

「……そんな可愛いげのないこと言うなよ。寂しいな。」

ユノが僕の髪に触れたところで、荷物を積み終えたドンヘさんが車のボディをバンバンと叩いた。

「お別れのキスするなら柱の陰でやってくれる?」

「じゃあ、そうする。」

「わっ!」

ぐいと腕を掴まれて引き寄せられ、睨もうとした時にはもう唇を奪われていた。

「ん……。」

強引に舌を入れられて下半身が疼いてしまう。

「ちょ……もぅ……。」

「はぁ……離したくない……。」

僕をきつく抱くユノは沈痛な面持ちだった。

「自分は平気で1週間の出張とか行くじゃない。」

「自分が行くのはいいんだけど……残される側って結構ツラいな。」

「ふふ。」

少しは僕の気持ちも分かるといい。
毎回僕は寂しくて、心も身体も痛いんだ。

「ユノ目が疲れてる。ちゃんと睡眠とってね。」

「チャンミンもね。毎日、仕事終わったら電話すること。それがなきゃ俺は眠らない。いいな?」

「撮影なんて深夜になることもあるから却下。先に寝て。」

「そんな……。」

「ふふ。嘘だよ。終わらなくても、合間に電話するね。」

「チャンミン……。」

チュッチュッと唇を合わせる甘いキスを繰り返していたらクラクションが鳴った。

「時間切れ!出るよ!」

ウィンドウから顔を出したウニョクさんに笑われ、ドンヘさんにはため息を吐かれながら、僕は日本に旅立った。


ソウルの空を覆っていた黒い雲を抜けてしまえば、眼下に広がるのは地平線まで終わりのない真っ白な雲海。

雲の下の海が高波であろうと、暴風が吹き荒れていようと、全て隠してしまう。

「ユノは相変わらずチャンミン溺愛だね。」

窓の外の景色をぼうっと眺めていると、前列のシートからウニョクさんが顔を覗かせた。

「ちょっと困ります。過保護で。」

「あは。束縛されて疲れない?」

「まぁ……今のところは大丈夫です。ところでウニョクさんとドンヘさんて、付き合ってるんですよね?エリーさんのファンって、どういう心境で?」

「は?ドンヘと僕が?付き合ってないよ?」

「えぇ!?いっつも一緒じゃないですか!同棲もしてるんじゃ!?」

ドンヘさんがかぶりを振って顔を出した。

「友達以上恋人未満。俺はウニョクのこと大好きだけど、全然構ってくれないんだよ。」

「ドンヘだって可愛い女の子好きじゃん!」

えへへと笑い合うドンヘさんとウニョクさん。

これはとんだ勘違いをしていた。
壁のない人達ではあるが、好みにも壁がなかったとは。

「なんか……お2人って何でも受け入れてる感じで素敵です。僕が女の子も好きだなんて言ったら、ユノは大変なことになりそうです。」

「あいつ、チャンミンのこととなると異常だよな。探し求めたミューズに出会えて、頭おかしくなってんじゃない?」

ウニョクさんが吹き出した。

「あはは。確かにね。ユノの監視のないところで撮影するのチャンミン初めてでしょ。今回は思いきって自分を出していいからね。」

そう言われてみれば、撮影はいつもユノがカメラマンさんの背後でラスボスみたいに腕組みしてるけど、今回は居ない。

変な気分だ。

到着までの機内、僕は送ってもらったエリーの新曲を、歌詞を読みながら何十回もリピートしてイメージを膨らませた。

エリー自ら作詞した美しくも切ないバラードは、卒業シーズンに発売するには最適な楽曲だった。

若かった恋の記憶。
大人になった女性が、忙しい日々の中で、望郷にも似た淡い青春の記憶を甦らせるのは、桜の季節だけ。

記憶と現実が行き交う叙事詩の世界観を表現するために、映画のようなMVを制作することになっていた。

エリーが主人公を演じ、僕の役は青春時代の恋人。

僕にできるんだろうか。
20代の僕が学生服も着なきゃならない。
滑稽にならないといいけど。

曲を聞けば聞くほど、何故僕が指名されたのか不思議になった。イメージと合わない気がする。

エリーの声は澄んだナイチンゲールのようでいて、どこか切ない。琴線に触れる歌声を持っている。

美しい見た目だけでない実力と、プロ意識の高さが評判だとウニョクさんが力説していた。

怖い人だったらやだな。
通訳は用意してもらっているけど、スタッフさんとのコミュニケーションも心配だ。

空いたままの通路側の席を見つめ、僕はユノと出会った時の光景を描いた。

「ふふ……。」

あんなに格好よく仕事をこなす人が、窓側が怖いなんて可愛い。

あの時、あの座席に座らなかったら。
僕はユノに出会わなかった。
……そう思ったら寒気がした。

僕は考えるのをやめて、ユノが見ることのない窓枠の中の景色を眺めた。
飛行機が高度を下げ、雲との距離が近づいて行く。

この果てしない雲海の下にどんな世界が待っていても、やるしかない。

ユノが居なくても、大丈夫。





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正中に放て 弓道編 56

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正中に放て
-弓道編-
56


早朝の飛行機で羽田に飛ぶため、ユンホは5時に寮を出て行った。

久々の1人の生活。
今日ばかりは自分を甘やかすことにして、チャンミンは昼前まで睡眠を得た。

「はぁー。よく眠れた。」

美容院の予約は15時。
大河の運転手がベントレーで送ってくれると日下部が言っていたから、出発まで時間がある。

チャンミンは道場へ向かった。

「あれ。チャンミンも今から?」

道場では日下部と九条の他に、何人かの1年生が練習していた。

「みんな……休みなのに。」

「今年の1年生はみんな熱心で気持ちがいい。教え甲斐ある。」

ユンホも、ゴム弓を鞄に詰めて行った。
経験が長いからって、自分もうかうかして居られない。

黙々と弓を引くチャンミンに付き合って、日下部はぎりぎりまで指導してくれた。

弓道をがむしゃらに続けていると、自己流の射になってしまうことがあるが、正当な射を身につけた日下部が常に確認してくれることで、チャンミンはどんなに練習しても教本のように美しい射を保つことができる。


美容院への車中、チャンミンは深いため息を吐いた。

「ユンホ君にも日下部先輩みたいに教えられたらいいんですけど。」

「あは。ユンホはまだ自分の射がない段階だもの。教えるのは難しいよ。」

「でも、大河先輩に指導係を用命されたのに。」

「あぁ……大河ね……。」

日下部は視線を外に向けてから、眉をひそめてぽつりと呟いた。

「絶対何か企んでる。」

「へ?」

「ユンホのこと。チャンミンを指導係にしたのもそうだけど、突然東京に連れてくなんて。意図のないことしない人なんだよ。あー、気になる。」

大河の話題が出たのを逃さず、チャンミンは本題に突入した。

「そそそ、そ、相談なんですけど。いや、相談と言うか、アドバイスと言うか、ああ!」

動揺して髪をぐちゃぐちゃにしたチャンミンに日下部は若干びくついた。

「な、なに?」

「あの、その、日下部先輩は、大河先輩と……。」

「うん?」

「おっ……男同士の………せ、せせせ。」

「ああ。セックス?」

「ひえーーー!!!」

髪を振り乱してシートに頭をバンバン打ち付けるチャンミン。暫くすると、おでこをシートの皮革に付けたまま動かなくなった。

「ちょ……生きてる?」

「……お恥ずかしい質問をいたしました。」

「やだな。恥ずかしいことじゃないよ。不安でもあるの?」

日下部の声が優しく、チャンミンは潤んだ瞳を上げた。

「どうしたらいいか分からなくて。」

「ユンホはしたがってるの?」

「それが、さっぱりで。」

「え……そうなの?この前エロいキスしてたじゃない。」

「いいえ、いつも恐ろしいほどにさっぱり切り上げるのです。」

「へぇー。凄い精神力だね。で、チャンミンは押し倒されたいと……。」

「そ!それもまた違うんです!!」

日下部は「あはっ」と笑ってチャンミンの肩に手を置いた。

「分かる分かる。怖いよね。」

「先輩ーーー!」

理解者を得て頬が緩んだチャンミンだったが、日下部は悪い顔で片頬を上げた。

「でも……すっごく気持ちいいよ。」

「なっ!」

「はまったら抜け出せないから、今はまだやめといたら。手や口でしかしない人も多いしね。」

「お、お口!!」

日下部は大河に似て、なかなか食えない性格だった。ふんふん鼻歌を歌っている。

「でも、まあ、いつか必要な時が来たら言って。特製ローション分けてあげるよ。」

「ひゃ!!」

マッサージオイルでは飽き足らず、そんなものまで配合しているとは。
相談する人を間違えたかもしれない。

挙動不審に目線をさ迷わせ、返事に窮しているチャンミンを日下部は可愛いなぁと悶えた。

「ごめんごめん。あんまりウブな反応するから楽しくなっちゃった。」

「先輩……。」

涙目のチャンミンは可愛すぎる。
ユンホが手を出さない気持ちが分からないでもない。

「あんまり焦らずに。そういうのはさ、お互いの気持ちが一緒にならないと良くないから。ユンホが慎重なら、待ってればいいんじゃない?」

「そんなもんでしょうか。」

「まぁ、突然襲われたら困るから、特製ローションは用意しておくね!」

「ろ……。ちなみに……先輩は付き合ってどれくらいで?」

「ん?それ聞いちゃうの。」

チャンミンの顔がぐいっと近づいて日下部は仰け反った。

「わ、分かった言うよ……。」

ごくりとチャンミンの喉が震える。

「まあ、付き合って1……ヶ月くらいだったかなぁ。」

「ぬわっん……!!」

チャンミンはシートに倒れ、膝を抱えて小さくなってしまった。

あらら。
本当は1週間なんだけど、嘘ついて良かった。真実を知ったら泡でも吹きそうだ。

「ま、人それぞれだから……チャンミンとユンホはゆっくり愛を育んだら?」

チャンミンの耳には日下部のアドバイスはもう届いていなかった。

ユンホと付き合って3ヶ月。
かなりの遅れだ。

このままプラトニックラブで高校生活を終えるなんてことあるまいな。
ユンホ君の巨大なあれは怖いけど、何もない方がもっと怖い。

せめて手とかお口の領域には到達しなければ。

洒落た個室の美容院に入って髪を弄られている間も、チャンミンは如何にしてユンホと愛を育むかばかりシミュレーションしていた。

裸に猫耳エプロンで悩殺とかどうだろう。
いや、頭おかしいか。

お風呂に一緒に入るとか?
や、床が大変なことになりそうだ。
滑って転んで事故にもなりかねない。

ここはやはり安全第一。
ベッドでキスからの……。

『チャンミン……そんなにキスしたら唇がおかしくなっちゃうよ。』

『じゃあ、別のところにキスしてあげる。』

『えっ!?わーっ!ダメだよそんなとこ!』

『ペロペロ。』

『あぁ……チャン……そんな……。』

『ペロリンチョ。』

『ああぁー!』

『からのパックンチョ。』

『わあぁ!!変な気分になっちゃうぅ……!!』

『ユンホ君……大きくてお口に入らなくなってきた……。』

『ど、どうしよう!成長が止まらない!ぐんぐんグルト!』

だ、ダメだ!
なんのこっちゃ!
ジャックと豆の木じゃあるまいし、そんなに成長されたら困るじゃないか!!


「はい。完成でーす。」

チャンミンの錯乱は美容師さんの声で無事終わりを迎えた。

少しだけ髪を明るくし、トリートメントでサラサラヘアになったチャンミンを、お姉さんオーラを放つ男性美容師はベタ褒めする。

「すっごく綺麗になったわぁ!」

「ストレートパーマしなくても、こんなにまとまるんですね。」

「綺麗な髪だから、トリートメントしっかりして、ストレートアイロンかけるだけで十分よ。毛先だけ、こんな感じで少し巻いてもいいし。」

アイロンで最後の仕上げを施され、ヘアカタログの表紙を飾れそうな自分が鏡の中に居る。

「前髪長いままにしたけど、大丈夫?勉強の邪魔にならないかしら。」

「大丈夫です。」

チャンミンはサラリと斜めに下ろされた前髪を耳にかけてみた。

「いいわぁ!その仕草大人っぽい!」

「えへ。」

先に終わっていた日下部も様子を見に来て、頬を染めて喜ぶ。

「こうして見るとチャンミンてほんと美人さんだね!」

「そんなぁ……。てへ。」

調子に乗ったチャンミンは、シャンプーとトリートメントとアイロンを購入し、貯金していたお小遣いを使い果たした。

ただ、その甲斐はあった。

日曜の夜帰って来たユンホが、チャンミンを見るなり心臓を押さえて赤くなったのだ。

「チャンミン……なんか……凄く綺麗になってない?」

よっしゃー!





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正中に放て 弓道編 55

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正中に放て
-弓道編-
55


長い熟睡を得て朝から清々しいユンホの横で、チャンミンはスパイさながらの鋭い視線で大河と日下部の様子を窺っていた。

大河が席を立ったタイミングで日下部の元へと早足で向かう。

「先輩。この間仰ってた美容院に連れて行ってもらえませんか。2人でお話したいこともあって……。」

「あぁ。丁度僕も行きたかったんだ。今週末、部活休みだから土曜日にでも行く?」

「ん?休みなんですか?」

「うん。大河が家に用事があって東京行くんだって。ユンホを連れて行きたいから休みにするみたいだよ。」

「へ?ユンホ君を?」

さっきまでチャンミンの座っていた椅子に座り、ユンホに話し掛ける大河の姿があった。
ユンホは驚いた顔で大河を見た後、こくんと頷いた。

「ほら。決まったみたいだね。午前中は自主練したいから、午後に予約しておくよ。」

「はい。諸々ご教示ください!」

「う、うん?」

日下部は怪訝な顔をしていたが、大河が戻って来たため、入れ違いでチャンミンはユンホの隣に戻った。

「ユンホ君、週末東京行くの?」

「うん……。突然でびっくりだよ。森崎ビルを見せたいって言われて。国は違うけど同業者だから。お互い知っておいた方がいいだろうって。」

「へぇ……。」

「でも、森崎ビルの事業には前から興味あったんだ。大河先輩が色々案内してくれるなんて、いい機会だから行ってくる。」

「そう……だよね。ユンホ君は、チョン建設を継ぐんだもんね。」

「うん……。」

微妙な沈黙が流れた。

「ぼ、僕はね、週末日下部先輩と美容院行く約束したんだ!」

「あ、うん。そっか。チャンミンがこれ以上可愛くなったら困るなあ。」

話を逸らしたチャンミンに、ユンホはほっとした。今はまだ将来の話なんてしたくない。話せることなど何もないのだ。

「髪、明るくしようかな。」

「黒髪も好きだけど、チャンミンの顔なら茶髪も似合いそうだね。」

「えへへ。でも、少しだけね。袴が似合わなくなると嫌だから。」

東高は勉強と部活が厳しい分、髪型や恋愛に関する校則は至極ゆるい。

ファッションデザイナーなど美容系の息子も入学しているから、たまに仮装大賞かと見紛う化粧で歩いている学生も居る。

「あの。ユンホ君はどんな髪型が好きなの?」

「んー。長さは特にないけど、ストレートが好きかなぁ。」

「……へぇ。」

あ、危なかった。
完全にふわっふわのパーマかけるつもりだった。

チャンミンは急遽ストレートへと方向転換することにした。


週末までの放課後、ユンホは相変わらず巻藁で練習を続けていた。チャンミンも相変わらず1mの距離を保つ。

ユンホはそんなチャンミンに違和感を覚えて集中できない。

「チャンミン先に帰ってていいよ。僕、もう少し自主練していく。」

チャンミンだって、本当はユンホの男らしい腕に触れたいのだが、大河に何度も触るなと釘を刺されてモヤモヤしていた。

「うん……東京に行く準備はできてるの?」

「まだだけど、1泊だけだし、すぐできるよ。」

本当だろうか。

ユンホは9時過ぎまで練習し、お握りを頬張りながら部屋に帰って来た。
バスルームでガチャガチャ派手な音をさせて荷物の準備をしているユンホのせいで、さっぱり勉強に身が入らない。

「チャンミーン。このヘアワックス借りていいー!?」

「もう……。」

バスルームを覗くと、床に歯磨き粉やらパンツやら散乱している。

「ユンホ君のヘアワックスあるでしょ!!」

「だって……蓋が見当たらないんだよぅ。」

「もーーー!!」

結局チャンミンが準備をする羽目になった。

「はい。スキンケアとヘアブラシと歯磨きセットはこのポーチの中。」

「そんなのホテルに備え付けがあるよ。」

「勿体ないでしょ!環境のことも考えて!下着と靴下はここね。着替えはこれ!」

「え。ジャケットなんていいよ。荷物増えるし。」

「ダメです。森崎ビルの息子と一緒に行動するんだから、相応の服装をしてください。」

「はい……。ん?ちょっと待って、明日は赤いパーカー着て行こうと思ってたけど……。」

「明日着る服はハンガーに掛けてあります!あと、充電器関係はこのエコバッグの中。向こうで買い物する時は、この袋を使えばいいから。それと、ここのポケットにビニール袋が入ってるから、洗濯物入れに使って。」

ユンホは目を白黒させた。

「チャンミンって、何でもできちゃうんだね。」

「こんなの当たり前。」

そんなことはない。
旅慣れてなければ、何を持って行くかでまず悩んでしまう。

チャンミンのスピーチ原稿を思い浮かべ、幼い頃から荷物のパッキングなどしていたのだろうかと想像した。

「ね。チャンミンの小さい頃の写真ある?」

「何、突然。」

「見せて!」

チャンミンは唇を尖らせ、小さなアルバムを持って来た。

「家のアルバムから抜き取って来ただけだから、少ししかないよ。」

「はふ!!」

表紙をめくり、ユンホは夢を見ているかのようなフワフワした気持ちになった。

なんて可愛いんだろ。
唇と瞳が今のままじゃないか。

世界各国で撮影された家族写真の真ん中で恥ずかしそうに笑うチャンミン。

「お父さんとお母さん、優しそう。」

「そうでもないよ。父は厳しい。勉強ばっかりさせられて、癖になっちゃったくらいだもの。」

「そっかぁ。お父さんのお陰で、今の秀才チャンミンになったんだね。」

アルバムをめくり、1枚の写真を見つめてユンホは手を止めた。

「これは、どこの国?」

「これはソマリア。」

「え!?リゾート地かと思った!海……綺麗。」

淡いブルーの海をバックに、現地の少年に囲まれてチャンミンが笑っている写真。家族写真とは違い、全員が白い歯を見せて大口開けて笑っている。

「紛争地でもどこでも、人生経験だって連れて行かれたから。」

チャンミンは懐かしそうに、遠い目をした。

「どんなに治安が悪くて貧しい場所でも、不思議なくらい生活って普通なんだよね。これ、海でみんなと遊んだ時の写真。楽しかったなぁ……。」

「チャンミン……この写真、僕にくれない?」

「へ?別に……ネガは家にあるし、いいけど。」

ユンホは写真を自分の手帳に挟んで胸に抱いた。

「ありがとう。大切にする。」

「う、うん……。」

もっと可愛い写真もあるのに。
何故にバカ笑いしてるそれなんだ。

小首を傾げているチャンミンを、ユンホは急に抱き締めた。

「きゃふっ!」

「チャンミン……大好き。」

ずっきゅーーーん!!

チャンミンの胸に何本も矢が刺さった。
優しく微笑み、ユンホは静かに唇を合わせる。

「あ…………ん。」

下唇が押し付けられてチャンミンの唇が開いたところで、ユンホはもう1度ぎゅっと抱き締めて顔を離した。

耳まで真っ赤になったチャンミンの伸びきった髪を毛先までいとおしそうに撫でたユンホは、「さて、寝よっか。」とチャンミンの部屋に入って行った。

す、寸止めかい!!
ディープキスせえへんのかい!!

喉まで出かかる虎之介ばりの突っ込みを、チャンミンは何とか飲み込んだ。

「ふぅ……。」

何だかマジな雰囲気だったのに。
ユンホの精神状態が理解できない。
でも、押し倒される心の準備は出来ていないから、ある意味助かった。

その夜も当然の如くユンホに羽交い締めされ、チャンミンはほとんど眠れなかった。

「日下部先輩……助けて……。」

このままでは、ユンホの立派なあれを受け入れる前に、不眠症で死ぬ!!





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

明日は朝8:00に投稿します。

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正中に放て 弓道編 54

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正中に放て
-弓道編-
54


試合を想定した立の練習をしていた日下部が、道場の入り口で腕組みしている。突如チャンミンを奪われてお怒りモードだ。

「もー。急に何が始まったの?」

ふふっと笑った大河の顔には茶目っ気が溢れている。

「大河……なんだか楽しそうだね。」

「俺も日下部を見習って、少しは楽しむことにしたよ。残された時間も少ないしな。」

「……何の悪巧み?」

「そんなんじゃない。くそ真面目なユンホにも、弓道を楽しんで欲しくてね。」

「チャンミンと2人きりにして?恋と弓道は別じゃなかったの?」

「恋なしに俺の弓道はなかった。それが真実だって認めるよ。香月に追い付こうと必死に弓を引いた3年だったんだ。お前が居たから、ここまで来れた。」

「大河……やめてよ……。」

大河は日下部の髪をいとおしそうに撫でた。

「残された時間で、俺の全部を後輩のために注ぐ。あいつらを必ず全国選抜で優勝させたい。手伝ってくれるな?」

「……そんなの……聞くまでもない。」

「ありがとう香月。」

微笑む大河は眩しい。
アポロンのような深い眼差しに、日下部は今さらながら見惚れた。

ああ、イケメン。
憧れの俳優マット・ボマーにそっくりなんだよな。
こんなに理想的な男前、日本では大河以外に出会えると思えない。

ダメだ。
泣いちゃいそうだ。

「少しだけ休憩してくるね。」

日下部はユンホとチャンミンを覗き見して気分を高めることにした。
足元を流れる空気の冷たさに秋を感じるが、巻藁場は春うららに違いない。

ところが日下部の期待とは裏腹に、ユンホとチャンミンの間にほがらかな雰囲気は無かった。

凛と弓を引くチャンミンの後ろ姿をユンホが食い入る様に見ている。

「会から離れの感じ、分かった?」

残身(ざんしん:離れの後、両手を開いた姿勢)の形でちらりと視線を送ったチャンミンに、ユンホはぽかんとした。

「ん……?え?」

「ちょっと……見てなかったの?」

「み、見てたよ!僕もやってみるからダメなとこ教えて?」

チャンミンの後ろ姿が狩猟の女神アルテミスみたいだ、などと思いながら道着の下の肩甲骨の動きを透視していました……とは口に出さず、ユンホも弓を引く。

いつもなら二の腕の下に手を添えてくれるチャンミンは、1mほど離れた位置から眺めている。

「会で止まっちゃってるよ。ゴム弓で練習したの思い出して。引き分けが終わっても、左右に伸び続けるんだ。」

「そうしてるつもりなんだけどなぁ。」

「もう1度引いてみて。」

チャンミンは今度は背後に立った。
後ろから見られるのはどうも緊張する。
やっぱり手は添えてくれない。

矢を放って振り返るユンホに、チャンミンは思案顔で顎をさすった。

「んー。僕が『今っ』て思ったのより3秒は遅いね。」

「そ、そんなに?」

「呼吸で数えてみたら。癖になっちゃえば安定するかも。」

「……分かった。」

10射ほど矢を放つが、どうも上手くいかない。

「一呼吸早くできたらいい感じだと思うんだけどなぁ。ね、僕が前で引くのに合わせてみて。」

試してはみたが、無理に合わせたせいでユンホの矢はこぼれて落ちてしまった。

「チャンミンごめん。1人で練習させて。」

ユンホはチャンミンの時間を自分のために割かせるのが申し訳なくなってしまった。
いつも密着して過ごしているチャンミンとの微妙な距離間も落ち着かない。

「……分かった……。」

寂しそうに巻藁場を出たチャンミンの前に、日下部がぬっと現れた。

「わっ。先輩!いつからそこに!」

「僅か30分ほど前から。」

「そんなに!」

「まあいいじゃない。それよりチャンミンたら、どうしてユンホと距離保ってたの?」

「あぁ。大河先輩に言われたんです。1m以上近づくな、身体に触れるなって。」

「はぁ?」

意味が分からない。
大河は何を狙っているのだ。



その夜、日下部は大河の部屋のベッドでゴロゴロしながら尋ねた。

「やっぱり何か悪巧みしてるんでしょ。」

「何の話だ。」

「ユンホの指導のこと。」

「ああ、あれか。別に悪いことじゃない。ユンホのため、ひいては弓道部のためだ。」

「距離を保つことが?そんなの意味あるの?」

「俺の経験に基づいた指導方法なんだよ。まぁ、見てろ。」

デスクでPCを睨んでいた大河は、画面を日下部に向けた。

「ところで、香月の部屋に貼ってあるポスターの男はこいつか?」

「あ!マット♪あぁー、もぅ、ほんとイケメン!」

PCに駆け寄った日下部に眉をひそめつつ、大河は「ふうん」と頷いた。

「何?愛しのマットがどうしたの。あ、大河ったら嫉妬してる?」

「……俳優に嫉妬なんてするか。」

大河はにやっと笑った。

「なに……。やっぱり悪巧みしてる顔。」

「まだ内緒だ。」

「何。気になるよ。」

「香月。俺はお前を諦めないからな。」

「たい……が……。」

「なぁ香月。愛してるよ。」

ぼんっと赤くなった日下部に口付けた大河はそのままベッドに雪崩れ込み、甘い夜を過ごした。

大学の準備はどうなっているのかと突っ込みたいところだが、この2人を一般的な学生の物差しで計ることはできないのだ。

3階での熱いベッドとは一味異なり、1階ではチャンミンがユンホの抱擁に耐えていた。
首筋にあたるユンホの寝息の熱さで蒸し風呂状態。

肌寒い季節になったとは言え、羽毛布団の中はユンホの体温でほかほかの春の陽気。そこに汗っかきのチャンミンが入ったら、亜熱帯と化す。

ひたすら巻藁練習を続けて疲れたのか、ユンホは珍しく先に寝てしまったのだが、チャンミンが勉強を終えてベッドに入ると、むにゃむにゃ寝言を言いながら羽交い締めしてきたのだ。

「拷問だ……。」

両足でカニ挟みされ、完全にあそこが当たっている。

『ユンホ君のあそこ、大きかった?』

歌子の言葉が脳裏をかすめた。

成長した場合の大きさはいかばかりか、チャンミンにも気になるところ。

ずりずりと手を動かし、ユンホの脇腹をつねってみた。

「むうー。」

小さく唸っただけで、起きる気配なし。
チャンミンはごくりと唾を飲み、肝心の場所に手を伸ばした。

さわっと触れる柔らかい感触。
ユンホは幸せそうな寝息を吐いている。

よし。
次行ってみよう……。

再度手を伸ばしたチャンミンは驚愕した。

おっ、おっ!
大きくなってる!!
不感症かと危惧していたが、軽く指で触れただけでこの反応。超敏感じゃないか。

チャンミンは指先でトントンと先端をつついてみた。微かな刺激で、更に質量を増すユンホ。

すごーい。
ぐんぐん育つ!
どこまで育つかな。

自分の倍のサイズはありそうなところまでユンホジュニアを育てたものの、チャンミンはふと冷静になった。

朧気な妄想の内は良かったが、リアルに触れて想像すると恐ろしい。

これ受け入れるのって……僕だよな……。
ユンホ君を僕が組み敷いて……?
うーん。
それはなんかイメージできない。
となると、僕のあそこにこれが……。

「……無理だ。死んじゃう。壊れちゃう。」

急いで手を引っ込めたチャンミンは、そのまままんじりともせず夜を明かした。

男同士で付き合うって、どうしたらいいのか。
キスだけなんて耐えられない。
でもセックスは断じて無理だ。

「うぅ……。悩ましい。」

こんな悩みを相談できるのは日下部だけだ。
朝食の時間になると、チャンミンは食堂へと急いだ。





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運命の人 farside編 1

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新作?続編?のご案内

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皆様こんばんは。
今日は暑すぎてうんざりですね。

そんな夜に、更に暑苦しい新作のお知らせです。

5大ドームツアー発表に浮かれ、その晩突発的にお話を思いつきました。

昨年夏に人生初めて『その探偵、恋は専門外につき』なる推理小説(←あくまで)を書き始めた時、同時に書いていたのが『運命の人』と言う、くそエロ小説です。

今読み返すと、とんでもなく拙くて目眩がするのですが、そこんとこは「ま、いっか」と放置し、続編を書いちゃいます。
リアル東方神起と違って、いい加減な性格なもので。


新作タイトルは『運命の人 -farside編-』
farsideは月の裏側を意味しています。

バカンス編の後、フランスから韓国に帰国した2人の生活を描きます。
帰国したと言っても、私、全く韓国の知見がないので、すぐ旅に出させてしまいますけどね。

なお、フランスでのイチャイチャについては『運命の人』をご覧ください(どエロ警報発令しておりますので、そこんとこ許容していただける方のみ)。


『正中に放て』もまだまだ続いていますので、新作は週2回くらい更新できたらなぁという曖昧な予定で見切り発車します。

10話くらいを目標にしている短編です。
短編詐欺になって自分の首を絞めないよう、ほんとに短編目指します。

本日20:00に1話をアップします。
いきなりのR18スタート。

正中の2人が全然ラブに至らないのでね……。つい。

舞台の季節は冬ですが、熱中症気味の2人を楽しんでいただけたら嬉しいです。

ではでは、宜しくお願いいたしまーす。




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プロフィール

コールドブリュー

Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

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