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運命の人 farside編 最終話

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運命の人 farside編 18

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farside編 18
- 虹の入江 前編 -


行為が激しければ激しいほど、僕が幸せを感じてしまうバスタイム。
今夜も至福の時間はユノの腕の中で実現する。

今後の仕事の予定を楽しそうに話すユノの声が、お湯の蒸気と壁の反響で普段より柔らかく聞こえて、心地好い。

「スーツの新作発表パーティー開催が決まったよ。」

「どこで?」

「東京でやる。」

「えっ?店舗もないのに?」

「スーツ置いてくれるセレクトショップが見つかったんだ。銀座の人気店だよ。その近くのイベント会場を借りた。」

「凄い!銀座って、僕が撮影したとこだよ。目抜通り沿いにガラス張りのオシャレなブティックがたくさんあって、見てるだけでドキドキしたなぁ……。」

「百貨店が並んでる通りだろ?その1本奥の通りのショップ。」

「そんなところ、いつの間に探してたの?」

「チャンミンが撮影で行った時、ドンへとウニョクに頼んでね。エリーのMVに使われるのが分かってたから、話が早かった。」

「ユノ……それがあったから同行許したの?」

「あはは。俺が単なる付き添いに2人も行かせると思うか?チャンミンなら1人でも出来るだろ。」

「……まったくユノは……。」

もう驚く素振りは見せまい。
ユノは僕の恋人だけど、仕事上はやり手社長だから。
こんなの当たり前……。

「驚くなよチャンミン。なんとパーティーにエリーが来てくれるんだ。チャンミンとランウェイ歩いてもらうから。」

「ええっ!」

驚かないと思ったそばから驚かされた。

「チャンミンのおかげだよ。斎藤さんて事務所の方も協力してくれた。新曲のプロモーション兼ねて盛大にやるから、メディアもたくさん来るぞ。」

ユノは明るい声のトーンを落として、「でも」とため息混じりで僕の首筋にキスした。

「俺、準備で今月は東京ばっかりになる。1ヶ月は向こうで暮らす。」

「……僕……仕事たくさん入っちゃってるよ……?一緒に行けない……。」

「ああ。今回はチャンミンと同行ってわけにいかないけど……。でも、時間できたら帰ってくるから。」

「うん……。」

ユノに時間なんてできないだろう。
やるとなったらとことん突き詰める人だから。
ソウルから指示すればできる仕事でも、直接目で見て肌で感じて判断したいんだ。

「なに?寂しい?」

「……うん……。」

「チャンミン……そんな可愛いこと……。行きたくなくなるな。」

「ねえ!僕が空いてる日は東京に行っていい?1泊……日帰りでもいいから!!」

振り返った僕の目を、パチパチ瞬きして見つめ返し、ユノはごくりと唾をのんだ。

自分でも驚いてる。
こんなに甘えた言葉が口をつくなんて。

「チャンミン……。」

僕をぎゅっと抱き締めた二の腕の収縮した筋肉が、ユノの興奮と喜びを如実に伝える。

「会いに来てチャンミン……。待ってる。」

「うん。飛んでいく。」

約束通り、ユノが日本で仕事している間、僕は毎週東京に飛んで行った。

どんなに疲れていても、ユノは空港までタクシーで迎えに来て、ホテルまで僕の手を握って離さない。

ホテルに着くなり抱く日もあれば、ベッドに入るなり泥のように眠ってしまう日もある。

でも、タクシーの中でユノの指がきゅっと絡まる瞬間だけで、日本まで飛んでくる価値があると僕には思えた。

「どんだけ好きなんだろ……ふふ……。」

安心しきった顔で眠るユノの寝息を聞いていると、凪いだ海の浜辺で寝転んでいる気になる。
僕が隣にいることでユノがぐっすり眠れるなら、毎晩だって飛んできたい。

パーティーの進行の打ち合わせに同行した時、久しぶりに会った斎藤さんは呆れていた。
ユノは毎晩寝る暇も惜しんで働いてると。

「社長なのに腰が低くて真面目で……。ちょっと心配になるくらいです。」

「ユノは自信がつくまで準備して、努力する人なんです。でも何でも自分でやっちゃうから、ほんとは会社のためにならない」

「……手厳しいなチャンミン。」

ユノは進行表にメモをとりながら唇を尖らせた。

「あはは。皆さん仲がいいですよね。ドンヘさんとウニョクさんも気さくな方だし。」

「D&Eでは社長が誰より虐げられてますよ……。あ、ここ、エリーさんが登場するところの演出なんですけどね……。」

仕事中のユノはカッコいい。
次々と指示を出し、周りを動かす。

こんなユノが、僕がソウルに帰る時には抱きついて離れない駄々っ子になるんだから、虜にならないわけがない。

ずっとそばに居てあげたいって、思わせる。

僕はパーティーが待ち遠しかった。

本当なら緊張しそうなのに、その日を指折り数えて楽しみにするなんて、僕らしくない。
これもユノが変えたことなのかと思うと、心がじんわり温かくなった。




パーティー当日、ユノはグレンチェックのスリーピーススーツを着ていた。重くなりそうな濃いグレーの生地でも、桜色のチェックのラインが春を感じさせる。

ウニョクさんが今日のためだけに作った僕のスーツは、エリーが着る予定のドレスと同じ薄墨桜色の生地で、ユノのスーツともマッチする。

「チャンミン。今日も誰より綺麗だよ。」

こっそり耳元で囁いて、僕をにやけさせるユノも、誰より綺麗。

パーティー会場は、桜並木をイメージした装飾が施されて、中央のランウェイには銀座の目抜通りがプロジェクションマッピングで映し出される。

D&Eのスーツを着て、街を闊歩したい。
そう思える演出だ。

人工的に作られた環境だけど、リアルなイメージと直結する空間。スーツで勝負をかけたユノらしいアイデアだった。

「チャンミンさん、また今日は雰囲気が違うね!なんと言うか……一段と……。」

「美しいでしょ?」

エリーと一緒に会場入りした斎藤さんにユノが答えて、僕は真っ赤になった。

僕が買ってきたシルバーのピアスをしているユノの顔を凝視して斎藤さんも顔を赤らめた。

「……ユノさんがチャンミンさんの……。」

「わっ……ちょっ……それは内緒!」

「あら。何の話?」

ずいっと顔を寄せたエリーは、春の妖精みたいに可愛かった。

「エリーさん。やっとお目にかかることができました。今日はよろしくお願いします。」

挨拶したユノに、エリーは目をぱちくりさせた。

「何なのD&Eって。デザイナーも社長もイケメンだなんて!うちの事務所にもこんなハンサムな人がいたらなあ……。」

「おじさんですみませんね!!」

拗ねた斎藤さんにみんな大笑い。

楽しい……。
パーティーが始まる前から心が弾む。

ユノと仕事できることが楽しくて仕方ない。

「ね、ユノ。今夜は、最高の夜になるね。」

「当たり前だ。」

ユノは僕の肩を抱いて耳打ちした。

「俺とチャンミンのパーティーは朝まで終わらないからね。」

「……あっ。」

顔を離す瞬間、軽く耳に触れたユノの唇。

僕はもう、パーティーよりその後が楽しみになってしまった。
楽しみが次から次へと増えていく。



何百人もの招待客が見守る中、ショーが始まる。

次々とランウェイを歩くモデル達の凛々しくも美しいスーツ姿にみんな目をキラキラさせて見惚れている。

僕の出番は最後。
エリーをエスコートして登場した時の会場からの割れんばかりの拍手と、誇らしげなユノの笑顔。

エリーの歩幅に合わせてゆっくり歩き、ターンして振り返ったら、D&Eのスーツ姿のモデル達がずらりと並んでいて、目が潤んだ。

天井から舞い落ちる桜の花びらのコンフェッティ。

そうだ。
ここは春爛漫の目抜通り。

緊張の面持ちの新入社員にも、徹夜明けの中堅社員にも、初恋のセンチメンタルを抱えたスターにも、誰にも平等に訪れる春。

D&Eのスーツを纏えば、誰もが背筋を伸ばして闊歩したくなる人生のランウェイ。




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テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

運命の人 farside編 17

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運命の人 farside編 16

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farside編 16
- 賢者の海 前編 -



僕らはベッドの上でイチャイチャして過ごした。

「ねぇ。ユノって、日本のこともよく知ってるの?」

ユノが折に触れて使う『十六夜月』という言葉をためらいがちで美しいと解釈するのは、日本の昔からの考え方だ。
僕がそれを知ったのは、最初にユノに言われた後に調べてから。

どうしてユノがそんな表現を知っているのか気になっていた。

「……目標だったからね。D&Eを世界に羽ばたかせようと思ったら、まず日本だろ。でも、上手くいかなくて。先にヨーロッパで人気が出たんだ。」

「もしかして、だからウニョクさんとドンヘさんて日本に馴染みがあるの?久しぶりだって言ってたけど……。」

「そうだよ。もうかなり前のことだけど、間借りして店舗も出したことがある。でも、D&Eは安くないし、大人が着るコンセプトの服ばかりだから、韓国のブランドってだけで苦戦して……。」

「じゃあ……エリーさんのMVって大きなチャンスじゃない!日本でも売れるきっかけにできるんじゃない!?」

「ああ……だから、断れなかった。モデル以外の仕事なんて話があった時点で断りたかったけど、できなかった。」

「だったら最初からそう言ってくれれば………。」

僕は口をつぐんで、ふふっと笑ってしまった。

そんなこと聞いていたら、僕のプレッシャーはもっと大きかっただろう。

ユノは僕に選択権をくれた。
あれは僕がやると、自分で決めた仕事。
選択した僕の負担になるようなこと、ユノは一言も言わない。

僕を信じて、敢えて陰で支えることに徹してくれた。僕には考えも及ばないくらい、大人で配慮のできる人。

シウォンさんと悪ふざけする浅はかなユノも、思慮深くてカッコいいユノも、どちらもユノなんだ。

「昨日は腹が立ったけど、ユノにもバカなとこあるって分かって良かった……かな。裏側を見た気分。」

「裏側……かな……?裏も表も意識したことないけど……。無意識にチャンミンには隠してたかも。バカな俺のこと。」

それは、僕も同じだよ。
ユノに一途な僕も、以前の僕も、どちらもシム・チャンミン。

人には色んな面があって、見る方向が違えば見える姿も違う。十六夜月も、裏側から見たら、案外ふてぶてしい姿だったりして。

「月の表面には色んな海とか山とかあって模様に見えるけど、裏側ってどんなだろう……。十六夜月の裏側を見ても、ユノは僕を幻滅しない?」

ユノは首を大きく横に振った。

「月の裏側は表とは全然違うんだ。」

「そうなの?」

「ああ。前に写真を見た。表みたいに海がたくさんないから、全体的に凸凹の丸って感じ。」

「凸凹か丸かどっち……。」

「ははっ!それがさ、写真によって全然印象が違うんだよ。陰影の影響や距離で見た目なんて変わるものだろ。」

「写真によってモデルも服も見た目はがらっと変わるもんね。」

「そうだろ……。もし月の裏側が地球の方向いてたら、ツルツルの球体に見えるんじゃないかな。凄く綺麗な……。」

ユノは裏側を晒して浮かぶ月を眺めるみたいな遠い目をしていた。

「俺も実際は大バカヤローなのに、チャンミンに一夜限りでも抱かれたいと思われたんなら、ラッキーだったな……。」

「ふふ。僕もラッキーだった。実際は淫乱なのに、ユノには奥ゆかしいって思われてたんだもんね。」

「騙されてたなぁ。」

「僕も騙されてたなぁ。」

僕らは鼻をこすり合わせてクスクス笑った。

「でも、やっぱりチャンミンは奥ゆかしくて賢明で美しい人だよ。」

「ユノにとっての僕がそうなら、それが本当ってことにしておいて。僕にとってのユノも、やっぱりカッコよくて頼れる大人ってことにしとく。」

「あ、1つ肝心なの忘れてた。チャンミンは……エロい。」

「ユノも、どエロでしょ。」

「異議なし。」

「ふふふ。僕も異議ありません。」

お互いエロいけど、その日は封印して、ただ抱き合って過ごした。

様子を見にきたドクターとシウォンさんにこの世の終わりみたいな顔をされても、僕はユノの隣に居座ってベタベタしていた。


愛は人を愚かにするけど、人を愛する気持ちは尊い。

愛があるから、過ちを許せる。
許すほどに、愛が深まる。

騙したことも、泣かせたことも、許してあげる。


なーんて、僕が慈悲深く思っていられたのは次の日の朝までだった。

嵐をもたらした低気圧が去った後、再開された撮影で、ユノの切れ長の目はどんどん細くなり、遂には線になった。

非難めいたその視線は、シウォンさんと並んでカメラに収まる僕に向けられている。

「……まさかと思うけど不機嫌?」

休憩の合図と共に尋ねた僕を、ユノは豹みたいな鋭い目で睨んだ。

「当たり前だ。シウォンと目を合わせるなって最初から言ってたのに全然言うこときかずに!さっきの上目遣いはなんだ!!あんな顔してたら襲われるぞ!!」

「はぁあ!?」

「気づいてないとは言わせない!シウォンと俺の趣味は似てるんだ。あいつはチャンミンに惚れてんだから!」

「ユノ……。いい加減にして……。」

自分のしたことを棚に置いて、よくもまあ。

人は甘やかされると増長するのだ。
僕が甘かった。
簡単に許すべきじゃなかった。
これは、教育的指導が必要だ。




「チャンミン。もうそろそろ……。」

「ダメなものはダメ。」

「もう何日してないと思ってる。チャンミンだってしたいだろ。我慢は身体に良くないぞ。」

我ながら情けない話ではあるが、ユノへのお仕置きをどうしてやろうか思案した結果、導き出されたのはお預けを食らわすことくらい。

「僕を傷つけた人に、鳴かされるなんて嫌だね。」

「いい声で鳴かせるからさぁ。な?とことん優しくするって。チャンミンがして欲しいこと何でもする。」

「…………。」

「下僕のように尽くすよ。とろける快楽欲しくない?」

「…………。」

「天国にお連れします。王子様。」

「…………却下。」

「お、お姫様?」

「却下!!」

危なかった。

フランスから戻って、はや5日。
身体を合わせることのない日々は、今日で10日目を迎える。

セックスどころか、抱き締めることすら許していない毎日は葛藤の連続だ。

僕だって我慢している。
お仕置きは僕にとっても苦行。

「なんて強情な姫だ……。」

「じゃ、僕はパックして寝ます。」

「チャンミン!!頼むから抱き締めるだけでも!」

「おやすみなさい!」

僕は自室のドアをきっちり閉めて鍵をかけた。
ユノと同じベッドでなんて寝たらすぐ襲ってくるから、僕のアパートそのままに荷物が持ち込まれたこの部屋で暮らしている。

洒落っけも色気もない白いシーリングライトの下でパックして、ベッドに腰掛けても両目はつい扉を凝視する。

高級なマットに慣れてしまった背中は、横になりたがらない。

あの扉の向こうの廊下を挟んだ寝室には両手を広げてもシーツにしか触れない大きなベッドがある。

寝室の間接照明が壁で上映してくれる影絵は1日の終わりをしっとりと演出する。
ユノの影が僕の影にキスするシーンは、何度見ても胸をきゅんとさせる。

あそこで眠りに落ちたい。

「……ダメだぞ。僕は教育中なんだから。」

先生って疲れる仕事だ。
しつけする親って大変だな。
お仕置きされる方も辛いけど、する側の方がしんどい。

「はあ………。」

眠れそうになかった。

一杯だけ強いお酒を飲んで、脳を鈍らせて寝てしまおうと思い、僕はブランケットを肩に巻いて部屋を出た。

寝室の扉の前で中の様子を窺うが、人の気配もしないほど静かだ。
ユノはもう寝てしまったんだろう。

ヒタヒタと廊下を歩いてリビングのドアを開けると、真っ暗な中にぼんやりと小さな明かり。

ユノはソファにぽつんと座っていた。




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運命の人 farside編 15

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farside編 15
- 東の海 -


「こんな天気の中、1時間以上外に居たって?正気の沙汰じゃありませんよ。しかも、中国の着物羽織ってただけで?」

「……日本です……。」

「いくら健康な男性でも、体温が奪われれば身体は機能しなくなるんです。アルコールを飲んだ後と言うのも良くない。」

年配のドクターは、「ふう……」とため息を吐いて聴診器を外した。

「低体温症ですね。対応が早くて軽度ですんだのは良かった。体温は上がってきていますし、心配ないと思いますが……。こんな無茶、もう絶対にしないでくださいよ!」

「すみません……。」

悪いのはユノのはずなのだけど、怒られて僕は項垂れた。


温室で倒れたきりユノが全く動かなくなって、僕は我に返り、屋敷に駆け込んで助けを求めた。

シウォンさんとドンヘさん、使用人がユノを担ぎ上げて運び、ウニョクさんがユノの濡れて冷えきった身体を乾かして毛布でぐるぐる巻きにした。

僕はずっとユノの名前を泣き叫んでいたらしい。正直あまり記憶がない。

全部後でドンヘさんに聞いたことだ。

シウォンさんの家の馴染みのドクターが来た時には、僕は毛布にくるまったユノを抱き締めてい泣いていた。

「このまましっかり温めてください。明日また様子を見に来ます。」

「はい……。夜分にご迷惑おかけしました。」

ドクターに続いてみんなが部屋を出て、シウォンさんだけが残った。

「チャンミナ……俺の顔なんて見たくないだろうけど、ユノのこと、勘違いしてるとこもあるだろうから伝えたくて。」

シウォンさんは謝罪し、ユノから離れない僕にちょっと微笑んだ。

「ユノに久々に会って、やたらと自慢されたよ。チャンミナはどんな時も期待を超える人で、恋人って以上に、信頼できるパートナーだとかのろけてさ。」

「そんな……。」

僕には思いもよらない。
いつも仕事中は不安でたまらないし、ユノが褒めてくれて、初めて安心する情けないやつだ。

「その割には、いつも心配そうに僕の仕事監視してますけどね。」

「それは違うよチャンミナ。どんなことするか、何を考えてるか、見逃したくなくて困るって。どんなチャンミナも見ていたいけど、そうもいかないのが悩みだとさ。」

「は……。」

僕は赤面してしまい、恥ずかしさを隠そうと怒った顔を作った。

「だ、だとしても、信頼してる恋人を騙すなんて、酷いじゃないですか……。」

「それはさ……ほんとに、俺も申し訳ない。あんまりユノが自慢するから、俺が言い寄ったら靡くんじゃないかなんて冗談半分にからかったから……。躍起になっちゃったんだよこいつ。」

シウォンさんはため息を吐いて、呆れ顔で眠っているユノを覗きこんだ。

「ユノはさ……チャンミナは身体で解決なんてしないって豪語してたよ。無理難題に直面しても、ちゃんと上手く乗り越えようとするに違いないって。賢くて強い人だから。」

「は……。」

「今日の件はお仕置きとか言ってたけど、俺に見せつけようとしたんだよユノは。チャンミナがどんなに素敵な人か。」

「買い被り過ぎですよ……。僕、ユノが思ってるほど真面目ながんばり屋じゃないです……。正直ちょっと……考えちゃいましたし。」

「だろ!?俺もユノがあんまり自信満々だからムカついたよ。」

シウォンさんはクスクス笑い出した。

「でも、さっきのユノ……ふふ……。本当は不安だったんだろうなぁ。淫乱な子なんじゃないかとか言っちゃってさ。俺には自信満々なフリしてたくせに。ははは。」

「ふふ……。」

つい笑った僕の髪に手を伸ばそうとして、シウォンさんは真剣な顔になって拳を握った。

「キスしたこと……俺は謝らない。キスしたいくらい魅力的な人だよ君は。」

「シウォンさん……。」

「ほんとに……ユノの恋人なのが憎らしい。」

「あ……。」

シウォンさんは僕の手をぐいっと掴んで甲にキスして、「おやすみ」と部屋を出て行った。


やだな。
本気なんじゃないかと勘違いしちゃうじゃないか。

僕はしばらく1人で赤面していた。
心なしかユノの頬も赤い。

「ユノ……?もしかして……起きてる?」

僕の呼びかけに睫毛がぴくりと動き、ユノはゆっくり目を開けた。

「ユノ!!」

毛布でぐるぐる巻きのユノは、僕に大人しく抱きつかれて神妙な顔をしている。

「……ごめんチャンミン。」

「もう、ほんとに色々勘弁して……。」

「すまなかった……。許してくれなんて言えないことだよな。」

「今はその話はいいから……。」

「ずっと……抱き締めててくれる?」

「仕方ないから……温めててあげるよ。でも、ちょっと毛布が邪魔。」

僕は裸になってユノと一緒に毛布の中にくるまった。ユノと僕の皮膚を通して熱が移動し、同じ体温になっていく。

「チャンミンの身体って、温かいな。」

ユノが甘えて僕の胸にすり寄るのが可愛く、いとおしい。

僕を騙したことは許せないけど、でも、ユノの身に何かあったらと考えたら、今はもう、息をしてくれるだけで良かった。

生きててくれれば。
それだけで。


ユノの胸が上下して呼吸する。
その動きにすらじーんとする僕は、何をされてもユノから離れられない。

ユノだってそうでしょう。
僕はユノが万が一浮気したら逃げるタイプだけど、ユノは謝りながらも、地の果てまで追いかけて来そう。

それで無理矢理キスして押し倒されたら、僕はきっと抱かれてしまうんだ。

だって僕、淫乱だからね。

「ねぇユノ。ユノの勘は間違ってない。僕ね、割と誰とでもやれちゃうタイプだったよ。」

「だっ……!」

ユノは絶句した。

「ユノに初めて抱かれた時も、パリの一夜の思い出でいいと思ってた。」

ユノの切れ長の目は真ん丸になった。
そんなに驚かなくてもいいじゃないか。

「そんな刹那的な恋しかしたことなかったから。何故か年上の男性によく誘われるんだよね。学生の頃からそうでさ。モデルになったばかりの頃もよくカメラマンさんに……。」

「チャンミンやめてくれ。聞かせるな。」

「ううん。聞いて。ユノに飛行機でキスされた時だって、D&Eの社長だから受け入れたのかもしれない。」

「……肩書き……か……?」

「でもそれからの毎日は……。あんなに……あんなにもっ…………胸が締め付けられるような思い……したことなかった!」

ユノに恋した時の気持ちが、僕の身体にまざまざと甦る。

「キスしただけの人のことが忘れられなくて、毎日、毎晩、月の満ち欠けみたいに心が変化して、暗闇になったり、満月になったり……。」

恋の痛みに抉られて、心の表面はざらざらとした凹凸だらけ。

まるで、月の表面みたいに。

「俺は……今でもそうだよ。」

ユノはぽつりと呟いた。

「今でも毎日恋に落ちる。チャンミンが見せてくれる顔が毎日新鮮で、今日もまた好きになった。」

「キレたのに?」

「ああ……。情けなくてカッコ悪い俺を見せてしまったけど、あんなに怒ってくれて、愛されてると痛感したよ。」

ユノは僕の頬に何度もキスして、柔らかく笑っていた。
安心したら、急に睡魔に襲われる。

「眠くなってきちゃった……。色々ありすぎて疲れたのかな。」

「ああ。眠ってチャンミン。」

ユノが腕枕してくれる。
シルクみたいにすべすべの胸に抱かれて、眠りに落ちる直前、ユノは耳元で囁いた。

「やっぱりチャンミンは俺の十六夜月だよ。」

それ……僕にはぴんと来ないんだ……。
でも……なんか……すごく幸せ。



夢も見ない深い眠りから覚めた次の朝、窓の外はまだ雲に覆われ、ビュービュー風が吹いていた。

でも僕の前には、東から昇る太陽があった。

それは目覚めたユノの笑顔。
僕の心に温もりを与える朝日。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本日より、毎晩20:00更新します。

私の感情が高ぶって書き足さない限り、金曜日に最終話の予定です。

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正中に放て 弓道編 84

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正中に放て
-弓道編-
84


さっき九条の胸で「パパ……」と呼んでいたジェーペ。

今まで一緒に寝ていた時も、ユンホのことをパパのように思っていたのだろうか。

チャンミンはトランプを片付けながら虎之介の説明の続きを求めた。

「九条が線香のにおいしてたのは、パパを意識して?」

「せや。いつも白檀の香りがするんやて。さすが香老舗の社長。」

「でも、なんでそのお父さんと引き離されちゃったの?」

「うーん。ジェーペは引き離されたとか言うてたけど、俺は大人になれってことやと思うけどな。久々に日本に来たおかんが、おとんにべったりなジェーペを見て衝撃を受けたんやと思うわ。」

「はーん。」

チャンミンは合点がいった。

あのユンホ君もびっくりの派手派手デザイナー。息子のファザコンぶりに危機感を覚え、全寮制の東高に入学させたってところだろう。

3人はユンホの部屋の扉をそっと開けて九条とジェーペの様子を覗き見た。

猫ちゃんに頬を寄せスヤスヤ眠るジェーペはいいとして、九条は仰向けて腹に愛しい少年を乗せた冷凍マグロ状態でブツブツ呟いている。

「ぽんぽこ……。狸のぽんぽこ。」

金狸様への感謝の言葉のようだ。

「金狸教の熱心な信者が増えて良かったね。」

ウフウフ笑うチャンミンも、金狸様と虎之介に感謝した。
おかげで今夜はユンホと2人で眠れる。

「虎之介君。ありがとう……。」

虎之介を玄関まで見送り、チャンミンは頬を染めて握手を求めた。

「へへ。俺も楽しんでるから気にせんどって。趣味みたいなもんやから。今夜はユンホに思いっきり甘えたらええわ。ハサミは封印やで。」

「う……うんっ……。」

いつか虎之介に恩返しできる時が来るだろうか。日下部先輩や大河先輩にも……。

チャンミンはみんなが助けてくれる喜びを噛み締めつつ、自分も人の力になりたいと強く願った。


シンクでグラスを洗っているユンホの背中にきゅっと抱きついたチャンミン。

ユンホは「ふふっ」と笑って手を拭くと、チャンミンの手を握ってキスした。

「さ、僕らも歯磨きして寝よっか。」

「うん!!」

ユンホはチャンミンをぎゅっと抱き締めて眠った。

チャンミンはテロテロパジャマを着るのを忘れたし、全然エッチじゃない夜だったけれど、身体中の細胞が「にゃーにゃー」歌っているみたいに幸せな夜だった。



次の日、朝食後のお茶を啜っていると、高校球児みたいに日焼けした坊主頭の少年が食堂に入ってきた。

彼は明らかにハーフ顔のジェーペを発見すると、にっこり白い歯をみせて笑い、走ってきた。

「君がジャン-ピエール黒磯君!?」

ジェーペは目をパチパチさせている。

「俺、松尾慶太!慶太って呼んで!今日から同じ部屋に入るんだ。」

「けいた君……ぼ、僕はジェーペ。」

「えへへ。ジェーペかぁ。可愛いね!俺、本州に来るの初めてなんだ!よろしくね!」

ぎゅっと握手されてジェーペは微笑んだ。

長崎の小さな島からやってきたと言う慶太は、男らしい黒い眉毛と小麦色の肌に、真っ白く澄んだ目とキラキラの歯が印象的な好青年だった。

「僕も……日本にはまだ3年しか住んでなくて、分からないことたくさんあるんだ。」

「じゃあ、俺が分かることは何でも聞いて!一緒に頑張ろうね!あ、でも、俺が分かるのは山と海のことばっかりだけど!」

明るい慶太の笑顔とはきはきとした態度に、ジェーペもすぐ打ち解け、2人は仲良く部屋に入っていった。

「これで今夜からはジェーペも落ち着くかな。」

「そうだね。龍くんには残念なお知らせだけど。」

案の定、九条は切ない目でジェーペの後ろ姿を見送っているが、彼の諦めの悪さは日下部への恋心で実証済みだから心配ないだろう。



その日の弓道の練習中、道場に慶太が見学にやって来た。

「僕、弓道部志望なんです。島でも父に習ってやってました!」

「へぇ!入部試験は明日だけど、大丈夫?」

「はい!凄く厳しいって聞いたので、山と砂浜を走って特訓してきました。」

これは期待できそうだ。
しかも経験者。

試験ウェアは恐ろしく似合わなそうだけど、特訓の成果を発揮してもらおう。

微笑んだチャンミンに、慶太は頬を赤らめた。

「あの。チャンミン先輩の弓、好きです。」

「え?」

「インターハイの動画、YouTubeで何回も見ました!日下部先輩とチャンミン先輩の弓が好きなので、お2人に会えるなんて夢みたいです。」

「えへ。」

チャンミンはすっかり慶太が気に入った。
日下部も慶太の短い髪が可愛くて仕方ないようで、ツンツンして遊んでいる。

「先月まで坊主だったんです。今伸ばしてるところで……。」

丸刈り坊主を挟んできゃっきゃしている女子みたいな日下部とチャンミンに、ユンホは眉をひそめた。

「チャンミン!部活中だよ!!」

主将らしく頑張って注意してみたが、2人は全く意に介さない。
ユンホは躍起になった。

「日下部先輩!市長杯の出場メンバーに指導をお願いします。チャンミン早く準備!!」

「はーい。」

「はいはい。」

「返事は、はい!」

くっそー。
主将の威厳が全然通用しない。

富樫がユンホの肩をぽんと叩いた。

「大河先輩も最初から何でもできたわけじゃないから。楽しい雰囲気もいいんじゃない?」

「富樫せんぱーい!」

「で、明日の試験は大河先輩と同じメニューでやるのか?」

「いえ。チャンミンと相談したんですけど、ちょっと変えようかと。」

試験内容を聞いた富樫は、ユンホらしいと微笑んだ。

「熱意と体力だけじゃなく、人となりが見たいんだな。」

「はい!」

「よし。試験の準備は俺がしておいてやる。ユンホは市長杯の練習しとけ。試合で強さを見せることも、主将の大切な仕事だから。」

「せんぱーーい!」

「はは。大河先輩に頼まれてるからさ。俺にはちゃんと頼れよユンホ。」

富樫は大河から、事細かくユンホのサポートを指示されていた。

富樫だけじゃなく、大河の存在はユンホの周囲に色濃く感じられる。

日々の練習スケジュールや、アメリカの大学入学に必要なポイントをまとめた資料など、大河は多くをユンホに残した。

その上、毎日ウザイくらいLINEに連絡が入って、寂しさを感じる隙もない。

内容は主に日下部のバイト就活状況のリサーチだ。

『まだ始めてないか?』

『今探してるみたいです。大学と弓道があるから、夜勤か単発のバイトを。コンビニか、道路工事の交通整備か、スーパーの試食スタッフとか仰ってました。』

『男が多い職場はダメだ!コンビニと交通整理は却下!!』

『本人に言ってくださいよー。』

『俺には何のバイトするか教えないつもりなんだよあいつ!!』

はあ……。
思わずため息が漏れてしまう。

ユンホは夕食中、大河への返信に追われた。
今頃NYは朝の5時。
おじいちゃんなみの早起きだ。

『スーパーの店員なら許してもいいだろう。だが、土日は男性も増えるからダメだ!!』

『分かりました……。それとなくお伝えしておきます。』

家庭教師のバイトもしたいと日下部は言っていたが、密室で2人きりなんて大河が発狂しそうなので伝えることすらしないでおいた。


「日下部先輩は大河先輩と離れて正解だよ。」

「何、急に。」

デザートのシャーベットをすくいながらチャンミンが首を傾げる。

「束縛がすごい。」

「ああ、バイトのこと?」

「うん。ああしろこうしろって。」

「ふふ。心配なんだね。」

「あ、チャンミン明日の衣装の準備出来た?」

「うん!15人分ばっちり!」

チャンミンはホットパンツの加工を無事終えていた。

ウサギの耳付きパーカーを見たユンホは、試験参加者がちょっと羨ましかった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

皆様おはようございます。

今週ちょっとだけ、『正中に放て』お休みのお知らせです。

『運命の人 farside編』が佳境に入り、今週最終回の予定につき、金曜日までこちらの更新をストップします。

いやね、あちらがエロ過ぎて脳が腐れております←朝から何を言ってるのやら。

『運命の人』は今晩から毎晩アップします。

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正中に放て 弓道編 83

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正中に放て
-弓道編-
83


「トントン」

扉を叩く音にユンホが玄関へ向かう。
チャンミンは急いでベランダを覗いた。

いつから待っていたのやら。
虎之介はにやりと笑って親指を立て、部屋に入って行った。

ユンホとリビングに入ってきたジェーペは、もう眠そうな顔をしている。

「ユンホ先輩……今日はパジャマが違う……。」

「うん。猫ちゃんトレーナーはさっき汚しちゃって。」

ユンホの蛍光イエロートレーナーにジェーペは目をシパシパさせた。

「うっ……ママンみたい……。」

「目が痛いでしょ。僕はもう慣れたけどね。」

チャンミンがよく分からない自慢をしたところで、ご陽気なやつらが隣の部屋からやって来た。

玄関のドアを開けると、虎之介は声を張り上げた。

「チャンミン!トランプせえへん!?」

「トランプ……。」

これはまた何とクラシックな遊びのお誘い。
マジシャン並に器用な手つきでカードをシャッフルしながら虎之介はリビングへ入っていく。

その後ろに猫ちゃんトレーナー姿の九条が続き、チャンミンは仰け反った。

何故にそれ!
しかも線香臭いぞ!
一目惚れの相手の前では絶対に着たくない服装じゃないか!

猫ちゃんトレーナーを常用しているユンホのことは棚に置いて、白い目を向けるチャンミンを察知した九条は、きりっと振り返った。

「むかつくからその目はやめろチャンミン。俺だって着たくないけど、金狸様のお告げだからやむを得ないんだ!」

「お告げ……。」

と言うことは、虎之介の作戦で着せられているのか。

ふぅん……。楽しみになってきた。


「おっ。ジェーペもおったんか!」

虎之介のわざとらしいびっくり顔は心なしか狸に似ている。

突然の騒々しい来訪者にびくついたジェーペはユンホの背に隠れた。

「ジェジェジェ……ジェーペ君。こんばんはっ!」

恥じらいつつ前に出て挨拶する九条のもじもじしたお尻を眺めてチャンミンは吹き出しそうになったが、意外にもジェーペは満面の笑顔になって九条に近づいた。

「あーっ!かわいい!みんなこのトレーナー持ってるんですか?これも制服?」

こんな制服があってたまるか。
冷えたコーン茶をグラスに注ぎつつチャンミンは舌打ちした。

あれが制服だったら即刻退学してやる。
む、待てよ。でもユンホ君気に入ってるから喜んで授業受けそうだな。
もし一緒にAクラスになれたら……。

チャンミンの脳内に全員ピンクトレーナーの教室が浮かんだ。
猫ちゃんが30匹並んでいる。

『チャンミンの隣の席だなんて嬉しいなー。』

『こらユンホ君。ちゃんと黒板見て!』

『だってチャンミンの横顔可愛いんだもん。睫毛が揃ってて綺麗だよねー。僕のお腹の猫ちゃんも、チャンミンのこと可愛いって言ってるよ。』

『そんにゃこと……。』

『ほら。世界一可愛いにゃーんって!』

『嘘にゃ。』

『本当にゃーん!』

教壇の先生が教科書を叩く。

『チョン君!にゃんにゃん言っている暇があったら教科書を読みなさい!22ページから朗読!』

『あ!はい先生!!…………わ、吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いて…………ニャーニャー。』

『にゃーにゃー。』

チャンミンが呼応したら九条が続く。

『ニャーニャー。』

クラス中がニャーニャー合唱を始めた。
先生まで左右に揺れてニャーニャー。
みんなで肩を組んでニャーニャー。
なんて楽しい学校生活。
にゃんて幸せAクラス。


「にゃーにゃー♪」

「チャンミン!」

「にゃーにゃーにゃー♪」

「チャンミン!!!」

「……はっ!」

九条が宇宙人を見つけたかの様な顔でチャンミンの前に立っていた。

「何ニャーニャー言ってんだよ!お茶運んでいいか?」

「あ。ありがと。」

ユンホがトランプに興奮しながら手招きしている。

「チャンミンおいで!みんなで金たぬきんして遊ぶよ!」

「金たぬきん??」

なんだその卑猥な名称の遊びは。

「大阪では、ババ抜きじゃなくて金たぬきんなんだって。ほら、金狸様のカード!」

ユンホは金狸のシルエットが描かれたカードをヒラヒラ嬉しそうに見せた。

ばかな。
そんな遊戯文化は大阪にはないぞ。
あるとしても辻家のみだろ。

チャンミンは当然かのようにユンホとジェーペの間に座り、みんながテーブルを囲んだところで金たぬきん大会は始まった。

金たぬきんのルールはババ抜きとは逆だった。
最後まで金狸様を持ち続けたものが勝者だ。

通常のジョーカーのカードに金色のシールを貼って作られたらしい金狸カード。
その輝きが黒目に映るので、みんな必死に相手の瞳を見つめながらカードを選ぶ。

ユンホは分かりやすい。
チャンミンが金狸に手を伸ばすと眉が八の字になるからすぐバレる。

チャンミンもチャンミンで、金狸の腹の出っ張り具合ににやけてしまい、場所を察したジェーペにすぐさま奪われた。

ジェーペの瞳を見つめる九条はなかなかカードを選ばず、優に3分は見つめ合っていた。

「龍くん早くー!」

「お、おうっ。」

九条の顔は真っ赤で、虎之介は始終にやにやしている。

金たぬきんは大いに盛り上がったが、5ラウンド目ともなるとジェーペの瞼は半開きになった。

もう23時を回っている。
そろそろおねむの時間だ。

九条と向かい合ってカードを差し出しつつ、船を漕ぎ始めたジェーペ。
ふわふわの栗毛頭が遂にはかくんと垂れ、九条の胸に頭突きする形になった。

「ジェジェジェ……。」

ジェーペを胸に迎え入れた九条の口角はデレデレに下がっている。

「ん……パパ……。」

ジェーペは九条の猫ちゃんトレーナーをきゅっと握りしめ、幸せそうに眠ってしまった。ベッドに連れて行こうとしても、トレーナーを離さない。

「もう起こすのは可哀想や。九条、そのまま添い寝せえ。」

「そ、添い寝っ!」

「ユンホのベッド貸してやってくれるか?」

「もちろん!部屋は汚いけどシーツは綺麗だよ!」

虎之介はガッツポーズしたいのを我慢して冷静に指示を出し、ジェーペと九条を寝かせる。

完璧にシナリオ通りや。

「いい夢見ろよ!」と扉を閉じた虎之介を、キラキラ瞳を輝かせたチャンミンが羨望の目で仰ぐ。

「虎之介君て……神様?」

「やー。金狸様のおかげや。」

「違うでしょ!虎之介くんのシナリオでしょ?」

「へへ。ジェーペが色々話してくれたんや。それでシナリオが作れたわ。」

虎之介はベッドの2人を気にして小声になり、ユンホとチャンミンをソファに座らせた。

「ジェーペな、おとんと引き離されたんやて。」

「お父さんと?誰に?」

「おかんや。」

ママンがパパを引き離す?
首を傾げたチャンミンときょとんとしているユンホに、虎之介は語る。

ジェーペは有名デザイナーの母と、日本の老舗お香会社の長男との間に生まれた子供。

フランスで香水について学んでいた父は、世界中を飛び回る母に代わっていつもジェーペのそばに居てくれた。
母は不在でも、たくさんの優しいお手伝いさんと父のお陰で、寂しさなど全く感じなかった。

「でも会社の社長をしてたじいさんが亡くなっておとんが継ぐことになって、一緒に日本に来たんやって。」

ユンホが「お母さんは?」と尋ねた。

「フランスに残ったって。」

「離ればなれかぁ。」

「しかも、いつも一緒に寝てたペットの猫もフランスに置いてくることになって、ジェーペはおかんよりそっちが悲しかったって言ってたわ。」

なるほど。
それでパパは甘やかしに甘やかし、夜は猫代わりに一緒に寝てたのか。

チャンミンは何だか切なくなってしまった。




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運命の人 farside編 14

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farside編 14
- 泡の海 -


暗がりに立ったユノの顔は青白く、でも目は血走っていて、窓をガタガタ揺らす突風に吹かれたみたいに髪が乱れていた。

ユノはズカズカと大股で僕に歩み寄り、ぐいと腕を掴んで抱き寄せた。

「なんでチャンミンが泣いてんだよ!!」

「喜びこそすれ、まさか俺の誘惑に泣いちゃうとは思わず……。」

「お前!ほんとに襲ったんじゃないだろうな!」

「いや……未遂……かな。」

「おっ、襲おうとしたのか!?話が違うだろ!!」

僕はユノの胸に埋めていた顔をあげた。

話……とはなんの話だ。

にやにやしているシウォンさんと、いきり立っているユノの顔を交互に見つめ、涙がピタリと止まる。

「ちょっと待って。どういうこと。ユノ、僕がここに来たの知ってたの?」

「あ……えーっと……。」

「いつから隣の部屋にいたの!」

「さっき……や……ちょっと前?」

「酔って寝てたんじゃ!?」

「うとうとしてたらチャンミンが居なくなってて焦ったけど……あれくらいで泥酔はしないって……。」

ユノは頭をポリポリして、わざとらしく困ってみせる。
僕の眉はつり上がった。

こいつら。
僕をはめたのか?

「俺は嫌だって言ったんだけどね。ユノがチャンミナにお仕置きしないといけないって言うから。いやぁ、心が痛んだよ。紳士として恥ずべき行為をしてしまった。」

「はぁ?」

シウォンさんの言葉を信じたくないけど、残念ながら現実だ。

お仕置きって。
エリーさんとのキスのお仕置きってことか?
どこから嵌められてた?

「チャンミンがキスなんて減るもんじゃなしとか言うからだぞ!」

ユノが僕の肩を掴んで前後に揺するから思考が纏まらない。

「不安になったんだ!まさか誰とでもしちゃう淫乱な子なんじゃないかと。」

「僕が……淫乱………。」

絶句した。
あながち間違っちゃいないのがむかつくけど、それは昔の話。

シウォンさんに誘惑させて、僕を試したのか。
こんな子供じみた悪ふざけに乗るシウォンさんもシウォンさんだ。

彼は僕の睨みから微妙に目を逸らしてスーツの袖を摘まんだ。

「あ、そうそう。モデル受けるのは構わないよ。スーツの裾合わせもしたし。」

「いつの間に……。」

「他のモデルが見つからなければ俺に頼みたいってユノに言われてすぐに。取引先の社長にも許可は取ったから。」

「じゃあ……僕が頼みに来た時には話はついて……。」

「ユノの予想通りチャンミナが来た時は笑いそうになってヤバかったなぁ。同じこと考えるんだね。」

「…………。」

信じられない。
こっちは必死だったのに。
一晩俺のものになれなんて条件出されて、罪悪感にすら苛まれながら撮影をこなし、さっきまで苦しんで……。

「酷い……。僕を疑うなんて……。ユノは僕の何を見てるの!?それにっ!前に過去は問わないって言ってたじゃないか!未来だけ見るって!」

「ごめんチャンミン!つい……だよ。ほら、出会いが出会いだったし、俺出張多いし。」

「だからって浮気するとでも!!?D&Eを盾にするみたいなやり方汚いよ!!僕はユノの玩具じゃないし、どうしてキスまでされなきゃいけないんだよ!!」

「……は?キス……?」

ユノはぶるっと震えてシウォンさんを振り返った。
シウォンさんが「まぁまぁ」と手でユノを制止する素振りに緊迫感がなく、僕の苛立ちを加速させる。

「だからユノ……未遂だって。ほら、あれだ。演出だよ。」

「し、したのか?」

「まぁ。俺にも甘い汁がないと……。」

「シウォンーーー!!」

取っ組み合いを始めた2人を僕は暫く眺めていたが、その子供じみた光景は、遂に怒りを頂点に押し上げた。

「ふ、ふざけんな……。ふざけるなお前ら!!!」

許せなかった。

出来心でしていいことじゃない。
運命の人だと言ってくれたのに、信じてないのはユノの方じゃないか。

僕は部屋を飛び出し、そのまま玄関まで走った。

扉の外は暴風雨で、みぞれ混じりの氷が肌を叩きつける。

「チャンミン!!!」

背後のロビーにユノの叫び声が響いて、僕は無我夢中で逃げた。

風も雨も痛かった。
真っ暗でどこを走ってるのか定かじゃない。
気づいたら、林の中で木立を掻き分けていた。

コートも着ていない僕の薄いシャツはすぐにびしょ濡れになって裸も同然だった。

木々の隙間にぼんやり灯りが見える。
かなり走ったつもりだったけど、近づいてみるとそれは別荘の奥にある温室の明かりだった。

頭に血が上っていても、風邪をひいてはいけないと冷静な自分が片隅で囁き、僕は扉を開けた。

広い温室の中は空調がきいていて生暖かく、花の匂いが充満している。

ビュービューと吹く風の音をとても遠くに感じながら、所々に設置された淡いオレンジ色の照明を頼りに僕はフラフラと通路を歩いた。


温室の中央には小さなガラスのテーブルセットがあった。
都合よくブランケットが置かれていて、身体をくるめそうだ。

目が慣れて周囲がよく見える。
色とりどりの花に、僕は囲まれていた。

こんな時でも、D&Eの服がぐちゃぐちゃになるのは嫌だ。濡れたシャツを脱いで綺麗に伸ばして椅子に掛け、僕は腰を下ろしてぼーっと南国の赤い花を眺めていた。


1時間も経った頃だろうか、扉を開く音が聞こえた。
ジャリっと地面を踏む足音が近づいてくる。

「チャンミンいるのか?」

小さく声を発したユノ。

僕は背を向けた。
意地でも目を合わせたくない。

「チャン……ミン……。」

テーブルの向こうに立ったユノはもう一度呼び掛け、反応しない僕の前までゆっくり移動した。

花だけを見ている僕の足元にユノが跪いたら、花の香りを含んだ空気が動いて、ユノの身体が発する冷たい蒸気と混ざった。

ユノはびしょ濡れで、膝に置かれた手は真っ白く震えてるけど、いい気味だと僕は思った。

「触らないでくれる。蹴りたくなる。」

「……蹴ってくれ。」

「蹴って許せるなら蹴ってるよ!!僕がシウォンさんに本気で身体差し出したらどうするつもりだったわけ!?軽蔑して別れるの!?」

「チャンミン……ごめん…………すまない。そんなことになるとは思ってない。久しぶりにシウォンと話してたら楽しくて……ふざけただけなんだ……。」

膝を抱え込んで顔を埋めたユノを、僕は払いのけて立ち上がった。

「僕はそんなに信用できない!?ユノが嫉妬するのって、僕を信じてないからなの!?」

「信じてる。チャンミンは俺を裏切らないって信じてる……。」

「信じてるなら騙す意味なんてないでしょ!!」

「信じてるから、チャンミンがどんな風にシウォンをかわすか見てみたくて……。」

「こんなことされて、ユノだったらどう思うの!!どんな気持ちになるか思い至らないの!?信じてるならっ、信じてる大切な人だからこそ…………!」

僕は嗚咽で言葉を紡げなくなった。

視線の先に、季節外れのクレマチスが咲いている。

僕の胸に青紫の花を挿してくれた、あの時のユノと、目の前で濡れ鼠みたいに震えながら悲痛な顔で僕を見上げるユノが、同じ人だと思いたくない。

浴衣の裾が地面に広がって、汚れてしまっているのが視界の隅に見えた。


愚かだ。

恋は人をこんなに愚かにする。


僕の手を掴んだユノの指の冷たさに一瞬驚いたけど、僕はそれを振り払った。
その勢いでユノのかじかんだ指はパタンと地面に落ちる。

ユノは身体に力が入らないみたいだった。

スローモーションに見えた。
ユノの身体がぐらりと揺らいで、頭がかくんと垂れて、それから、前のめりに倒れた。
泡みたいにふわりと頼りなく、音もなく。

ユノの背中と広がった裾が大輪のクレマチスを地面に描いた。
袖から覗く白い腕がメシベのようで、異様に美しかった。





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正中に放て 弓道編 82

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正中に放て
-弓道編-
82


4月に入っても川の字地獄に苦しめられるチャンミンは、その荒んだ心を入部試験で遺憾なく発揮することにした。

ユンホでは優し過ぎて判断に苦しみそうだと思い、自ら試験監督を買って出たのだ。

日下部が用意したウサギの耳つきパーカー(ノースリーブ)に短パンと言う全方位激寒な衣装にハサミを入れ、ホットパンツに加工する。

パンツをザクザク切っている間はストレスが発散できる。

部屋に遊びに来た虎之介は、鬼気迫るチャンミンのハサミ捌きに絶句した。

「チャンミン……何してんねん。」

「あははっ!楽しいなぁ!この裁ちハサミ、最高に切れるよ!」

「……そのまま色んなもん切りそうな勢いやな。」

「そうだね!ユンホ君のあそこも切れそうだ!あはははっ!」

く、狂っとる。
猟奇的彼女や。
ん?彼氏か?
あーっ、どっちでもええわ!!

虎之介は逃げたくなったが、浪速男子の意地でソファにどすんと座った。

チャンミンは今までなら悩みは日下部に打ち明けて解消していたのだが、寮を出てしまった現状ではタイミングがなかなか合わず困っていた。

道場で会っても、毎夜悶々としている話をするまでに至らず、チャンミンのストレスは溜まる一方で、心を蝕む。

「チャンミンどないしたんや。ユンホとなんかあったんか?」

ふむ。
日下部先輩とは違うタイプだが、虎之介君なら僕の鬱憤に同調してくれそうだ。

チャンミンは虎之介に悩みをぶちまけることにした。

「虎之介君……実は最近毎夜……。」

「ま、毎夜?」

「子守で疲れきってます。」

「子守り……おっ、お前ら!子供できたんか!!?」

「……ちゃうわ!!」

大阪弁が移ったチャンミンは、かくかくしかじか、ジェーペを挟んだ川の字ナイトについて嘆き伝える。

虎之介は話を聞き終えると「ふふん」と微笑んだ。

「もっとはよ俺に言えばええのに。虎之介様が助けたるわ。」

「え!?どうやって!?」

「金狸様に任せなさい。」

「金狸……。」

「よしチャンミン、ジェーペが今夜部屋に来たら、ベランダから合図せえ。応援に駆け付ける。」

「へ?」

「まぁ、任せとき。」

虎之介は颯爽と部屋を出た後、食堂でジェーペを捕まえた。
シナリオを練るには、事前調査が欠かせない。


ジェーペリサーチを終え、虎之介は今度は自室に戻って金狸様を神棚から下ろすと九条の前にどんと置いた。

「九条。金狸様からのお告げがあったから今から伝える。」

「なんだって!?お告げ?」

「ああ。弓道部入部試験の時のトレーナー持っとるか?」

九条の脳裏に忌まわしき記憶が甦る。
ピンクの猫ちゃんトレーナーで下界まで走った挙げ句、池で凍えたあの日。

「もう見たくないから、どっかにしまったような……。」

「今夜あれが必要になる。すぐ探せ!」

九条はクローゼットに駆け込んだ。

10分程クローゼットでドタバタしていた九条は、1年間押し込まれていたせいで猫ちゃんの眉間にシワが寄ったトレーナーを掲げて出てきた。

「あったぞ!」

虎之介は防虫剤臭いトレーナーをくんくんと嗅ぎ、「悪くないけどもう一押し」と呟くと、金狸様の前で束の線香を燃やした。

「祈祷するで。」

もくもくと煙立ち上るリビング。

「お、おい、警報器大丈夫か?」

「そのトレーナーで煙をあおいで散らせ。」

窓を開ければいいんじゃないかと思いつつ、金狸様への祈祷と信じて九条は必死でトレーナーをぶん回した。

九条が汗だくで倒れるまでぶん回しは続き、床に落ちたトレーナーを広げて虎之介は満足げに頷く。

「完璧や。シワも伸びたな。」

「はぁ……はぁ……で……祈祷は終わりか?」

「後は風呂に入って身を清め、これを着るんや。」

「いっ、嫌だ!なんでこれ着るんだよ!」

「お告げを信じれば、可愛いジェーペ君がお主の胸に舞い降りるであろう。」

「き、金狸様!!」

「うむ。信じるものは救われる。腹を撫でよ。」

九条は金狸の腹に抱きついてスリスリした後、バスルームに消えた。

「よし。次はユンホやな。」

隣の部屋ではユンホがバスタイムを終えて猫ちゃんトレーナーでホットミルクをふぅふぅしている。

チャンミンはバスタイム中のようだ。

タイミング完璧や。
虎之介はほくそ笑んだ。

「どしたのとらちゃん。」

「おうユンホ!ホットミルクうまそうやな。」

「とらちゃんも飲む?」

「ほな、一杯もらおか。」

居酒屋みたいな会話を経て、レンジで温めたホットミルクを差し出したユンホに、虎之介は勢い良く手を伸ばした。

「わーっ!」

「おわ!!ごめんユンホ!!」

虎之介の手に当たったコップはユンホの猫ちゃんトレーナーに大きなミルクの染みを作った。

「あちちちちっ。」

「大丈夫かユンホ!はよ脱いで着替え!!」

ユンホはバスルームに駆け込んだ。

「きゃーーーー!!!」

バスルームからチャンミンの悲鳴が聞こえたが、これもまたOK。

虎之介は悠然と部屋に戻り、コートを着こんでベランダにスタンバった。



バスルームではチャンミンが胸を隠してバスタブからユンホの裸を凝視していた。

「ミルクこぼしちゃってさぁ。今夜は猫ちゃんトレーナー着れないや。」

パンツ1枚になったユンホがちらりとチャンミンを見て頬を赤らめる。

「チャンミン……僕も……もう1回入っていい?お腹まで汚れちゃって。」

「はわっ……うっ……うん……。」

まさか突然のラブラブバスタイム。

先に出ようかと思ったが、それだと湯から出る時にラブリーチャンミンが鮮明なLEDライトに照らされることになってしまう。

チャンミンは膝を曲げてユンホを迎え入れた。

「えへへ。チャンミンとお風呂入るの、夏合宿以来だね。」

「うん……。」

ピンクに染まったチャンミンが膝を抱えて小さくなっているのが可哀想で、ユンホは思いきって腕を掴んで引き寄せた。

「僕にもたれたら、狭くないよ。」

「きゃふっ!」

ユンホに抱えられる体勢になって、チャンミンは目眩がした。

こっ、腰に生ユンホ君が!!!

ユンホは上機嫌でチャンミンの肩に顔を寄せる。

「ゆっユンホ君!」

「なに?」

「な……なんでもない……。」

裸で後ろから抱き締められるってこんなに胸がきゅんとするんだな。

もうお風呂から出ないとジェーペが来るのではないかと思ったが、チャンミンは離れたくなかった。

ユンホときたら、チャンミンの濡れた襟足が可愛くてチュッチュとキスし始めた。

ああ……反応しちゃう……。

「はぁ。幸せ。出たくないなぁ。最近チャンミンを抱き締めて寝てないから……。」

「ん……僕……ちょっと寂しかった……。」

本当はちょっとなんてものじゃなかったが、お兄さんの余裕と甘えの中間を取った結果は良好だった。

チャンミンの言葉はユンホの心臓にハートの矢を命中させたのだ。

「チャンミン……。どうしよ。今夜は抱き締めて寝たいな。」

「ジェーペ君……来ちゃうよ?」

「うん……。そうだね……。」

ユンホはため息を吐いて、ゆっくりチャンミンから離れて湯を出た。

引き締まった白いお尻が綺麗。
バサッとバスタオルをはたいて腰に巻いたユンホの仕草が男らしく、チャンミンはバスタブの縁に「はあ……」と額をつけた。

もう我慢ならない。
ユンホ君とくっついて居たい。

「あ……。」

そう言えば、虎之介君が助けてくれると言っていたな。

チャンミンは金狸様を信じてみることにして、お風呂から出るとジェーペの到着を待った。






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正中に放て 弓道編 81

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正中に放て
-弓道編-
81
*品のない展開となっておりますのでご注意ください。


怖がるチャンミンを守ってあげなければとの使命感と、雷に打たれたような刺激との狭間でユンホは揺れていた。

「ユンホ君。」

チャンミンはダメ押しとばかり首に腕を絡めた。

テロテロパジャマはチャンミンの輪郭を如実にユンホに伝え、腰を抱き締めたらあんまり細くてキュンとしてしまう。

ピシャッ!

稲光が部屋を照らしたのと同時に、ユンホは堪らず口づけた。

「あっん。」

「怖くないよ。キスしててあげる。」

「ユンホくん……。」

「わっ!」

チャンミンはここぞとばかり怒濤の攻めをみせた。ユンホに胸元をすり寄せ、すねを足先で撫でる。

ぼ、僕、誘われてる?襲われてる?
それならそれでペロペロしちゃおっかな。

雷鳴が興奮を後押しし、意を決したユンホはチャンミンの露な胸元に吸い付いた。

「あっ!ユンホ君……っ!そんな!」

「チャンミン……大きな声出したら隣に聞こえちゃうよ。」

「んっ……外は嵐だもん。平気だよ!」

押せ押せのチャンミン。
煽られている気はするが、ユンホもこうなっては我慢できない。

チャンミンがその気ならペロペロナイトへの突入には、何の障壁もない。
4月には僕も2年生。
そろそろ大人の階段を上ってもいい頃だ。

ユンホはチャンミンのパジャマに手をかけ、3つ目のボタンを外した。

チャンミンの素肌はパジャマの生地に負けないくらいスベスベ。

「チャンミン……綺麗。」

「ユンホ君も……。」

お互いにボタンを外し、肌を合わせてぎゅっと抱き合ったら稲妻も雷鳴もこの部屋には届かない。

すべすべの肌を重ねる感触にユノの下半身はむくむくと成長した。チャンミンのあそこも反応している。

「チャンミン……。」

優しく呼び掛けて手を伸ばしたら、チャンミンは「んっ」と目を潤ませて、しがみつく。

ああ。
可愛い。
大切に触って感じさせてあげる。

チャンミンも震える手を伸ばしてユンホの中心に触れ、見つめ合いながらお互いに悶えた。

パンツ越しに触れ合うだけでも、快感で全身が収縮して波打つ。
首をすくめて吐息を漏らすチャンミンは可憐だ。

「チャンミン可愛い。可愛い……。」

ユノの甘い囁きがチャンミンを溶かし、大胆にさせる。

「ユンホ君……好き。」

「大好きだよチャンミン!」

「うん!大好き!!」

甘い稲妻に打たれるように、ユノもチャンミンも限界まで感じていた。

「で、出ちゃうかも……。」

「僕も!」

仰け反って露になったチャンミンの喉仏にユンホが舌を這わせたのと同時に、チャンミンは「あん!」と叫んで青春の欲を放ち、ユノもその光景に興奮が頂点に達した。

「はぁ……はぁ……。」

肩で息をしているチャンミンを抱き締め、ユンホは嬉しくてにやにやが止まらない。

「僕達、大人の階段上っちゃってるね。」

「うふふ。またパンツ汚しちゃったけど。」

「お風呂入る?」

「うん。」

「一緒に……入っちゃう?」

「う……うん……。」

「やったーーー!!!」

ユンホのテンションは更に上がり、チャンミンを抱き上げてバスルームに向かった。

バスルームの扉を開けようと手を伸ばして、ユンホはふと動きを止めた。
彼の動物的感が、何かの気配を察知したのだ。

耳をすますと、小さな嗚咽が聞こえた。

ユンホとチャンミンは顔を見合わせた。
誰かが泣いてる?

恐る恐るドアを開き、ユンホは「わっ!」と驚いてしゃがみこんだ。

「ジェーペ君!どしたの!?」

「うっうっ……怖いよぅ……雷ぃ……。」

涙をポロポロ落とし、ジェーペが膝を抱えて震えている。

チャンミンが廊下に出ると、ジェーペはその脚にしがみついた。

「チャンミン先輩!!助けてー!」

「わあっ!」

膝を抱えられ、青臭い香りがバレないかとハラハラしつつ、チャンミンはジェーペを部屋に招き入れてソファに座らせた。

「ジェ、ジェーペ君。大丈夫だから!ちょっと待ってて!」

「ううーっ!1人は無理ですぅー!」

あーもう!!
高校生になるくせに何だ!!

チャンミンはパンツの汚れを気にしつつ、クローゼットからダイオウグソクムシの人形を引っ張り出すと、ジェーペに「これ抱っこしてて!」と渡してバスルームに駆け込んだ。

ユンホとのペロペロナイトを経て、ラブラブバスタイムに突入するはずが、なんてことだ。

1分でシャワーを浴びてトレーナーに着替え、チャンミンがリビングに戻ると、ジェーペはユンホに髪を撫でられながらホットミルクを飲んでいた。

くっそー。
その男のパンツの中にはベタベタのミルクが入ったままだぞ少年!!

「ユンホ君!シャワー浴びてきて!」

ユンホを引き剥がしてバスルームに追いやり、チャンミンは鼻息荒くジェーペの隣に座った。

「雷苦手なの?」

「うう……はい……。いつもパパと一緒に寝てたから……今夜は1人で……我慢できなくて!!迷惑かけてごめんなさい!!」

パパと添い寝だと!?
とんでもなく甘やかされて育ったらしい坊やだ。ファザコンか?

可愛いと言えば可愛いが、なんだかやっかいな香りがプンプンする。でも、ダイオウグソクムシを受け入れてぎゅっと抱いている点は評価しよう。

雷雲は少しずつ離れている。
雨足は弱まっているし、雷鳴もさっきまでの勢いはない。
少し待ってジェーペを部屋に帰らせよう。

チャンミンはそう思ったのだが、現実は厳しかった。

バスルームから出てきたユンホはショッキングピンクの猫ちゃんトレーナーに着替えていた。

なぜそれ……。
衝撃を受けたチャンミンに、ユンホは更なる衝撃の提案をした。

「ジェーペ君1人じゃ寂しいでしょ。今夜はみんなで一緒に寝る?」

ジェーペは飛び上がってユンホに抱きついた。

「いいんですか!?嬉しい!!」



何故だ。
今夜はユンホ君と甘い余韻に浸りながらキスして眠る予定だったのに。

ユンホとチャンミンの間にジェーペ。
しかもジェーペの手がユンホの猫ちゃんトレーナーを握りしめている。

ベッドに入ると泣き疲れてすぐ眠りについたジェーペの栗毛の向こうにあるユンホの微笑みが苦々しい。

『かわいいね』

ユンホの唇がそう動いて、チャンミンは般若顔になる手前で目を閉じた。

ダメダメ。
心の小さいやつだと思われたらいけない。

今夜は大きな進歩があったのだから、良しとしようじゃないか。
明日にはまたくっついて眠ればいい。
チャンミンは先輩の余裕を装って一晩を耐えた。


ところがそれからも、1人では眠れないとのたまい、ジェーペはユンホとチャンミンの部屋に入り浸った。

さすがに我慢の限界だ。
ジェーペの天使のように可愛い顔が悪魔に見えてきた。

チャンミンは般若顔でユンホに詰め寄った。

「ユンホ君!いつまであの子と寝るつもり!!」

「僕もこんなつもりじゃなかったんだよぅ。同室の子がまだ入居してないからさ。可哀想じゃない?それまでの辛抱と思って……。」

「いつ!同室の子はいつ来るの!!」

「知らないけど、入学式の前には来るでしょ。」

「なにっ!!僕これ以上は無理!!」

「うーん。ベッド狭いよね……。チャンミンゆっくり休めないなら、僕の部屋のベッド使う?」

「なっ!」

そしたらユンホ君とジェーペが2人で眠ることになるじゃないか。
断じてそれは許せない。

「それはできません。」

「そ、そっか……。僕の部屋汚いもんね。じゃあ、僕が部屋に戻ろうかな。あ、でもチャンミンとジェーペ君が2人で寝るのは恋人としてちょっと……。」

「……だから…………アホなの?」

「ちゃ、チャンミン??」

「いいです!川の字でいいです!!3人で仲良しこよし!!」

「うんうん。仲良しはいいことだよね♪」


川の字地獄だ。




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テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

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