FC2ブログ

人生は夢だらけ

20180903021418f1b.jpg



皆様。
予定外にこんばんは。

明日のゆく年くる年の後に新年のご挨拶を投稿するつもりだったのですが、急遽変更!
1日前倒して現れました。

年末に爆弾情報を投下されたチャミペンおよびホミンペンの皆さん、ご無事ですかー!?

木っ端微塵になってないですかー?
涙をこらえて、「推しが幸せならいい」って、大人ぶってませんか?
まだ結婚だけは絶対しないでーって、訴えたいの我慢してませんか?

ツラいときはツラいって吐き出していいんですからね!
大掃除も、お節作りもサボっちゃいましょう!

コブはこれを言い訳に大幅手抜きすることにしました。換気扇掃除してない。窓ガラスも磨いてない。今日やろうと思っていた仕事も明日に先送り。

仕事の方は非常にまずいけど……。
まあ、そんな時もありますよね!



ところで、皆様気になってらっしゃるかと思い(なってないか)、この場でご報告したいのですが、コブの妄想の方は全く影響がございません。

何なら今日も書いてます。
ちょっと凹んでるフリしてみましたが、大掃除も仕事も、妄想に忙しくてサボってるだけです。

ユノさんと違い、ピュアで真面目な心持ち合わせてなくてほんとごめんなさい。変態ぶりが鬼神レベル。

元々、誰かを好きになればショックを受ける事もあると覚悟して妄想世界を楽しんでおります。
好きを分散させるリスク回避対策もがっつり行っている故、すらりと受け流してしまいました。

精神状態に大して変化なし。

だって、こんな時のために、空想や妄想の能力って存在するのだと思うんです。

現実には叶わないことがたくさんあるけれど、酸いも甘いも含めていとおしいのが東方神起。


20191231001323db5.jpg


チャンミンたら、こんなに可憐で美しいのですもの。我らが世界一のイケメンであり、いい男なユノさんの隣に並べるのは、チャンミンしか居ない。
よって、腐れ妄想するなと言う方が無理←本人達も分かってますわよね(笑。

この並びが最強♪
20191231001418ccb.jpg



ところで、コブの敬愛する歌姫は椎名林檎さんで、彼女が本日紅白で歌う予定の『人生は夢だらけ』は私の応援歌です。

この曲に、明日も前を向いて歩こう……と何度背中を押して貰ったことか。

有名な曲なのでご存知の方も多いでしょうけど、折角こんなタイミングで私の大好きな曲が演奏されるから、聴いてもらえたら嬉しいなぁ。

たまたま今日もこの曲聴きながらドライブしてて、改めて「なんて素敵な曲……」とうるうるしてました。

あ、わたくし、NHKの回し者じゃないっすよ。
YouTubeで公開されているMVも素晴らしいので是非ー!


さて、2020年の始まりは新作から。

1月1日20時よりスタート予定です。

今回は王道のBL設定を目指してみました。
爆イケ会社員だけど恋愛対象が男なユノさんと、女子より可愛いくせに、美女に目がないノンケ新入社員チャンミンさんの恋の物語。

こんな設定の物語をガシガシ書いている途中だったから、報道に「わーっ!被せてこないでー!」と思ったのですが、これもまた人生。私の自由……と言うことで……お許しください。

こんな時にホミン妄想話なんて読む気が起きないよ!と思われる方もいらっしゃるでしょうね。

いつか、ただ楽しく読める日が来てくれたらな、と願っています。

作品の詳細は、今度こそ新年になってから紹介させていただきます。

心穏やかに、とはいかないかもしれないけど、もうすぐに新しい年はスタートします。

たくさん色んなことに挑戦する年にしたいし、絶対そうします!

皆様にも、どうか素晴らしい2020年が訪れることを祈っています。

それに、必ずや、そんな1年を東方神起の2人は用意してくれてますもの。

楽しみです。

あ、仕事片付けたい願望が湧いてきた。
よっしゃ。ちょっくらお仕事頑張ってから、お話の続き書こうかな。

ではまた年明けに♪




続きを読む

スポンサーサイト



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

夢の途中 おわりに

20191201222354453.jpg



夢の途中。
最後までお付き合いありがとうございました!!

楽しんでいただけましたでしょうか。

クリスマスには完結させたいと思っていたので、珍しく予定通り!
更に珍しく、R18で終わらなかった(笑

この後、バスルームで指輪のはめあいっこなどして、イチャイチャ熱い夜を過ごすであろうお2人のことは描かずにおきます。

何だか、そっとしておいてあげたくなったんです。
スターの秘密の恋ですものね(←今更よく言うよ)。


『シムドール』と『夢のたもと』の続編を今回同時に書いたのは、私的には年末クリアランスみたいな位置付けでした。

シムドールは中途半端になっていたハネムーンを今年中に片付けたかったのと、夢のたもとは、何名もの方から続編希望をいただいていたけど書けずにいた作品へのチャレンジ。

どちらも他と比べると拍手もランキングポチも少ない作品だったので、「これじゃないかなぁ?」と正直不安でした。

でも、イベントやステージを拝見する度、「こうすればもっといいのに……」「あそこで何でああしちゃうかな……」と毒を吐きつつ、制約のある中で夢の世界を作り上げる大変さにも思いを馳せておりましたので、思いきって書いてみようかと。

結果、無謀なチャレンジだった……。
分からないことが多すぎる~。

とは言え、この作品を書いていたお陰でステージを色んな視点で見ようとする意識が芽生え、ライブを楽しむポイントが増えたのは個人的に大きな収穫でした。

よって、不人気でも結果オーライ!!と自分を励まして2019年を終えまーす。


コブのクリスマスイヴは、がっつり仕事です。
今日中にケーキを食べることすらできないだろうな……。

これをアップする頃は確実にまだ働いてます。
ぶっちゃけフラッフラ。
眠い。
足も棒。
無茶苦茶なスケジュールにトン活をぶっ込んだ自分のせいなんですけどね。

働くの大好きだし、全部自分の選択ではあるのですが、限界を超えると、心の狭い人間になりたくなる。今そんな時期。

人によって許容力や時間の捉え方に差があることは致し方ないが、年末のこれと言って実のない挨拶訪問に時間を取られたり、明らかに自分より仕事量の少ない同僚の愚痴や弱音を聞いていると、アホらしくてイライラしちゃうのです。

そんな時、黙して苛立ちを抑えるんですけど、後から「大変だね。」と言ってあげられなかった自分のちっちゃさに、自己嫌悪。

そんな私の現状が、『夢の途中』のユノさんに少々反映されました。
自己嫌悪ユノさん。

人間だもの。
凹む時もあるよね……。

と、相田みつを氏みたいに呟いたところで、何が言いたいかといいますと、明日から年内いっぱい、更新をお休みします!!

それでもって、さっぱり帰らぬ主を待ち続けてくれているシーグリ(言い過ぎました。開く余裕がないだけで、帰ってます。たまには。)を早く舐め回したい!!

あんなチャンミンさんとか、あんなユノさんとか……。
いつか扉絵にする日を夢見て激写したい(その光景は完全な変態)!

だってこのビジュアル。

20191224212450083.jpg


美し過ぎる修道士が、教会に懺悔に来た、やんちゃだけど実は純粋な青年と恋に落ちてしまったのですか?

この寝転んでるシム修道士の鼻腔には、芝生にしては長すぎる草(←言い方)の香りだけでなく、シムさんに会うために走って丘を上ってきた(注:教会は丘の上にある設定。あ、妄想ですよ?)であろうユノさんの頭皮の香りまで届いておりますよね?

きっとあったかい香りがするんでしょうよ!

コブは変態なので、フェミニンなヘアースタイルのチャンミンより、ベリーショートの方が萌えます。

こんな修道士が実在したら、人徳ある聖職者が欲望の悪魔に心を巣食われてシム修道士を地下聖堂に連れ込み……。

ああっ!
いけない!
問題発言。

様々なものを冒涜しかけました。

もう中身をご覧になっている皆様には、「いまだに何を興奮してるんだこの変態は……」と思われていることでしょう。

お許しください。
だって、シーグリ閲覧を自粛し、作品執筆を優先していたのです。
もう、妄想の扉の蝶番がバカになってます。


そんなわけで、大掃除しながら心静かに(?)妄想の旅にでかけた後、2020年は新作でスタート予定です♪

残念ながら、新作の舞台は教会ではございません。が……タイトルはこっそり明らかにしています。

詳細は2020年までお待ちください~。



さてさて、2020年はどんなトン活できるかなぁ。

いよいよ丸っと15年を経た東方神起が、どんな驚きをくれるか楽しみですね♪

沖縄旅行したいなぁ……。
そんな暇あるかなぁ……。
国立競技場とかやってくれないかなぁ……。
2020年も、間違いなく最高にカッコいいんだろうなぁ。

来年もすぐにたくさんの楽しみがあるなんて、トンペンは幸せ。
冒涜しかけた神に感謝します。


少し早いですが、皆様には、本年中のご愛顧に心より御礼申し上げます。

では、また新年にお目にかかります。

どうぞ、良い年をお迎えください。



続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

夢の途中 24

20191201222354453.jpg

~最終話~


ユノは事細かに指示を出し続けた。

チャンミンが前奏を弾き始める。

ユノはこの曲を何度も聴いている。
既に懐かしいと思えるほどだ。
夜ギターを抱えて歌うのも、鼻歌も、ずっとこれだった。

前奏の途中で照明を落とし、チャンミンにスポットライトをあてる。観客がライトを点灯し、それが天井席まで広がっていく。

AメロからBメロに入ったら、真ん丸い月をライトで作り、天井までゆっくりと上げる。

1サビに入る頃には、天井に朧月が昇った。

観客が揺らす光は、夜風に揺れる菜の花。

菜の花畑の真ん中で子守唄を奏でるチャンミンを、ユノは最初スクリーンに映すことはしなかった。

あまりに美しい情景を、しばし堪能して欲しい。子守唄だから、目を閉じて聴いたっていい。

ゆっくりと身体を揺らしてチャンミンの弾き語りに酔いしれるユノの元に、ミノが小走りで到着したのは、1サビの終わりだった。

彼には更なる災難が待っていた。
ユノが耳元で、ちょっと笑いながら囁く。

「ミノさんこれ持ってタワー登って。腰に縛り付けるから。俺が持てたらいいんだけど、ちょっと自分で手一杯。」

「はっ!?何て??」

「だから、これ、上から飛ばすんだ。」

「……紙吹雪は掃除が大変だから却下になったのに。」

「あはは。堅いこと言わずに。俺掃除するからさ。」

ふ、ふざけんな!
笑いながら言うことか!?
こんな高いとこ登るの絶対やだ!!

とミノは叫びたかったが、チャンミンの歌声の邪魔はできないし、あっと言う間に腰に命綱を巻かれ、袋をぶら下げた無様な格好にさせられた。

「お、重い!」

「まぁまぁ。両手でしっかり梯子握ってれば大丈夫。じゃ、上で。」

ユノは左手を痛めているとは思えないスピードで、タワーを上り始める。

マジか。
あいつ全然反省してないじゃないか。
相変わらず滅茶苦茶だな。

「くそ……。」

ミノが鬼の形相でタワーを上り始めたのを見下ろし、にっと笑ったユノには、手の痛みなんて微塵も感じられなかった。

握力は弱くても、ちゃんと動く。

コンサートの間は、こんな魔法がかかる。
アーティストも観客も、スタッフですら、痛みや、苦しみを忘れる。

これだから、俺はこの仕事が好きだ。

「マカベさん、準備できました?」

「できた。お前のGOを待ってる。」

イヤホンから聞こえたマカベの声は、上擦っていた。

ここでようやく、ユノはスクリーンの両サイドにチャンミンを映すよう指示した。

脚を組んで、ちょっと背中を丸め、旧友と語り合うかのように微笑んで歌うチャンミンの全身像。

家のソファで歌っているみたいな、リラックスした姿だった。



これで本当にツアーが終わるんだな。

チャンミンは、花畑の真ん中で、何もかもから解き放たれた気持ちで歌っていた。

本当はユノと一緒にホテルの部屋で乾杯してそのまま……とか、スタンバイ中にこっそりキス……とか、不埒な妄想をしていたけれど、それは未来の夢にとっておこう。

今は、ここが目的地。

チャンミンは、最後のサビの前の間奏で、ぐるりと菜の花畑を見渡した。

叶わないこともたくさんあった。
それでも、いいツアーだった。
ユノの夢を、みんなに見て貰うことができた。

さすがユノは分かってる。
朧月まで用意してくれるなんて。

月を見上げたチャンミンの顔に、何かがヒラヒラと舞い落ちる。

え?
思わず声をあげそうになった。

薄い黄色のコンフェッティ。
リビングのテーブルでユノがせっせと作り続けていたモンシロチョウが、チャンミンの頭上を舞い踊っていた。

どこから?
一体どうやって?

それを確認することは、センターステージで弾き語りをするチャンミンにはできなかったが、その方が良かった。

もし、スピーカーのてっぺんでユノとミノが降雪機用に設置してあった送風機を使い、蝶を風に乗せているのを見てしまったら、顔面蒼白になってギターがあらぬ音を発していただろう。

観客はうっとりと情景に酔っていた。

温かいギターの音色と、優しく話しかけるようなチャンミンの歌声。
風にそよぐ菜の花畑は地平線まで広がる。
そこに舞う蝶を、月明かりがキラキラと照らす。

歌い終えたチャンミンは、ギターの弦をキュッと押さえ、それからはにかんだ。

「みんなありがとう。おやすみ。いい夢を。」

チャンミンが囁いたのと同時に照明が落とされ、スクリーンも真っ暗になった。
ドームに再び明かりが戻ったとき、そこにチャンミンの姿はもうなかった。

代わりに、何万もの蝶がメインステージの下から風にのって舞い上がり、アリーナを飛び交った。


夢を見た。

観客の誰もが、そう思った。



アンコールの最後でチャンミンとユノが作り出したのは、まさに夢の光景だった。

夢の後、観客が退場するまでタワーの上でミノの小言を聞くうち、無理したユノの腕はずきずき痛み出した。
それから、ミノに助けて貰いながら、木から降りられなくなった猫みたいな感じで、何とかタワーを降りた。

降りてからも、紙吹雪の掃除と言う夢とは程遠い現実が待っていたが、ユノはずっと幸せだった。

この世界に生きる幸せを、噛み締めていた。



チャンミンは、日が変わる前に帰って来た。

「あれ?打ち上げは?」

「今日は軽く。マカベさん達バラシで忙しいし、また日を改めてやるから。」

「……そか。俺もバラシ手伝いたかったんだけどさ、追い返された。」

「その手じゃね。邪魔になるだけだね。」

「疲れただろ?お風呂入れるよ。」

「身体は疲れてないけど、精神的な疲労を感じてる。誰かさんのせいで。」

言葉の端々に毒を感じる。

「ちゃ、チャンミン?まさか……不機嫌?」

ユノを睨んだチャンミンの瞳は潤んでいた。

「ミノから全部聞いたから!無茶しないでよ!!その手であんなとこ登るなんて!!バカなの!?」

「いや、ほら、いい演出だったと思うんだけど……。」

「ユノに何かあったら演出もなにもないんだよ!!」

「ごめん。ごめんて。」

「心配させないでよ!」

チャンミンはユノの胸にぽすんと収まると、「許さない」と呟いた。

「……チャンミン?」

「次はこんなこと、許さないから。」

「次?」

「来年の秋。5大ドームツアーするからね。まだトップシークレット。」

「……すごいじゃないか!!おめでとう!!」

目を輝かせたユノに、チャンミンは口を尖らせた。

「な、なに。喜ぶことだろ?」

「まだ喜べない。ユノが舞台監督してくれなきゃ喜べない。」

チャンミンが危惧していた通り、ユノは眉を下げた。

「俺じゃダメだよ。今回失敗したんだし。」

「そんな泣き言は許さないよ。次はずっとそばに居て、最初から最後まで、離れないで。ユノじゃなきゃできない。僕の心の内を読んで、あんな情景を作り出すこと。」

「でも……マカベさんで良くない?俺サポートするし。」

困り顔のユノに、チャンミンは少しも譲る気なんて無かった。
じっと見つめる意思の固い瞳。

「これは僕の正式なオファー。夢を作ろうよ。ユノとじゃなきゃ、嫌なんだ。」

チャンミンは、鞄からずっと渡せずにいた指輪をついに取り出した。

「……今すぐに返事しなくてもいい。まだ先の話だし。ユノがこれからも僕の舞台監督で居てくれるなら、これをはめて。はめてくれないなら……す、すっ、好きな体位なんてしてあげないから!!」

ぼっと赤くなってバスルームに駆け込んだチャンミンを、ユノはぽかんと見送った。

なんだそりゃ。
セックスはいいのか?
別れるとか言い出すんじゃないかと思いきや、やたらと甘い条件だ。

「……可愛過ぎるんだよ……まったく……。」

ユノは指輪の箱を開けて、黄色く輝くダイアモンドに息を呑んだ。

さっきドームに広がった菜の花の光を集め、凝縮した結晶。
そんな輝きだった。

あの景色は、忘れられない。
きっと、この指輪を見る度に思い出す。

「スターの願いは叶えないとなぁ……。」

ユノは服を脱ぎ、真っ裸で左手の薬指に指輪をはめた。

感動もそこそこに怒られたから、少し拗ねたフリをしてみたけれど、はじめからチャンミンのお願いを断るつもりなんてない。

自分が勝手に走り出したリレーだ。
チャンミンはバトンを繋いでくれた。
今度こそ、傍らで支える。
それは、ユノの夢でもある。

指輪を見たチャンミンが、お風呂でどんな反応をするか。

アンコールはまだ終わってない。
チャンミンはもうスタンバイ完了して俺を待っている。

今から、俺だけのためのツアーファイナルを見せて貰おうじゃないか。

「ふふ。」

にやけたユノは、翌朝、床に脱ぎ散らかした服を見たチャンミンにみっちりお説教されるであろうことなど気にもとめず、意気揚々とバスルームへ向かった。






夢の途中
~夢のたもと 続編~
(完)


続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

夢の途中 23

20191201222354453.jpg



ユノはスタンド席の後方から開演を見届け、バルコニー席からも、2階席の最上段からもステージを確認した。

観客はステージに夢中になっている。

スクリーンの真ん中に映るチャンミンの顔の美しいこと。

微かなはにかみ、髪の乱れ。
アップになるとこめかみに浮かぶ汗や睫毛の震えまで見えて、歓声が上がる。

両サイドには全身像と、バンドメンバーの様子も映し出される。

「あぁー!!もう!!脚長い!!」

「あの腰!!セクシー!」

「抱きたい!!」

「ほんと!抱かせてー!」

女性ファンの奇声には若干首を捻るものもあるが、夢中になっているのだから良しとしよう。

スタンドからの確認を終えると、ユノはアリーナに降りた。

高さがある分、後方からでも何とかスクリーンを確認することができる。

アリーナをすり鉢状にできたら……。
これはユノがドームでいつも感じること。
現状ではとても実現できる時間も予算もないが、いつかは……。

やりたいことは、まだまだある。
俺の夢は、こんなもんじゃない。

「ふふ。楽しくなってきた。」

知らずと笑みを溢し、ユノはPAブースに向かった。

もう、セットリストは秋のパートを終え、冬の弾き語りへ移ろうとしていた。

センターステージにギターが2本置かれる。
1本は予定通りの、マーティン。
その横にあるのは、昨日まで部屋にあった、ボロボロのギターだ。

「あのギター……使うの?」

「えっ!ユノさん!来てたんですか?」

小声で尋ねられた音響スタッフは、ユノの登場に驚いた後、今朝突然チャンミンが使いたいと言い出したのだと、首をすくめる。

1曲弾き語りを終えた後、チャンミンは予定になかったMCを始めた。

「僕の友達を紹介します。」

抱えたボロボロのギターを撫で、大きく深呼吸する。

「これ、みんなに話したこと無かったんだけどね、僕は……小さい頃、心を開ける友達も居なくて、凄く、孤独だった。」

会場はしんと静まり返った。

「でも、このギターが友達になってくれて、歌を歌ってる時だけは、孤独じゃなかった。このギターが、僕を音楽と出会わせてくれた。」

チャンミンは、ギターに話しかけるみたいに語り続ける。

「僕は、ただ、普通の、平凡な大人になりたかった少年だった。歌手になんて、ほんとはなりたくなかった。でも……。」

顔を上げたチャンミンの瞳は潤んでいて、その煌めきがスクリーンに映し出される。

「みんなが僕の歌を聴いてくれて、孤独な時とか、凹んだ時とか、何でもない夜とか、そんな人生の一瞬に寄り添わせてくれて、元気が出ましたとか、明日も頑張れます、とか言ってくれる。今も……こんなにたくさんの人がここに居てくれて、僕は……。」

静かな声で話していたチャンミンは、声を張り上げた。

「僕は、歌手になって良かった!!ありがとう!!!」

瞳から溢れた涙が幾筋も頬を伝った。
客席からすすり泣く声が聞こえ、音響のスタッフも泣いていた。
それから、大きな拍手がチャンミンを包んだ。

恥ずかしそうに笑って手の甲で涙を拭ったチャンミンは、ギターを抱え直した。

「今から歌うのはラブソングだけど、これ、みんなへのラブソングだからね。」

ユノはドームを見渡し、とんでもない人に恋をしたのだと改めて感じた。

やってくれるよ……。
観客全員、恋する顔になっている。
東京ドームが、愛で溢れていた。

この後降った雪は、まるでチャンミンからの贈り物みたいに頭上に落ち、アリーナの観客の視線を天に向けた。

チャンミンがステージから居なくなっても、舞い散る雪に見とれる人々。

降雪機と送風機は照明器具の隣に設置されていて、照明に照らされた雪が白いカーテンを作り、スタンドからの景色も絶景だった。

「チャンミーーーン!」

「大好きーーー!!!」

そこかしこから上がる声は、ステージの下に居るチャンミンにも届く。

その声に励まされ、チャンミンはアンコールまで突っ走った。

ドームから溢れんばかりの拍手と歓声は、チャンミンが最後の挨拶をして、規制退場の案内が始まっても止まることがない。

「もう1回、出て、いいですか?」

ステージ袖で尋ねたチャンミンに、マカベは頷いた。

挨拶だけと思っていたマカベは、チャンミンがボロボロのギターを手にしたことに一瞬絶句し、「ちょ、チャンミンさん!」と叫んだが、この時にはもうチャンミンはステージに駆け出していた。

再びの登場に沸く観客。
安堵の表情で讃え合っていた音響チームに、ユノは叫んだ。

「まだ歌うつもりだぞ!」

「え?」

ギターを携え、チャンミンがセンターステージに向かっている。

「おいおい。マジか!?」

PAチームのリーダーはブースを飛び出した。
チャンミンは、ステージの下に到着した彼に、何か話しかける。

「チャンミンが新曲を歌う。マイク準備する!!」

イヤホンから聞こえた声。

ユノには分かった。

あの曲。
朧月の菜の花畑。
俺を思って作った子守唄を歌うつもりだ。

脳内に、鮮明なイメージが見えた。

ユノは左腕を支えながら走り出した。
何かに突き動かされるように、するべきことが次々と浮かぶ。

「ミノさん!ミノさんいまどこ!?」

これまで無言だったユノの声がイヤホンに響き、スタッフはざわついた。
ミノは、嫌な予感がした。

「……楽屋の廊下だけど?」

「さっき運んでもらった段ボールの中の袋、全部持ってきて!!」

「はあ!?全部!?」

「その辺のスタッフ総動員!ミノさんは1つ持って、上手のディレイスピーカーのとこ来て!残りはメインステージの下の送風機の横にスタンバイ!」

ミノは今日も被害者だ。
サンタクロースが担ぎそうな大きな袋を抱え、アリーナ後方のタワーまで走る羽目になった。


何が始まるのかと期待する観客に、チャンミンはセッティングの時間を稼ごうと語りかける。

「折角出てきたから……新曲を歌っちゃおうかな……なんて。」

悲鳴と拍手がわき起こった。

「突然お願いしちゃったから、ちょっと待ってね。ふふ。音響さん焦ってんの。」

バタバタとセンターステージにマイクと椅子がセットされ、チャンミンは「ごめんね。」と言いながら腰かけた。

「この曲は、春の菜の花畑をイメージして作った子守唄なんだ。今日、みんなが幸せな夢を見られるように、願いを込めて。それで……みんなにお願いがあります。」

ポンポンと弦を弾きながら、チャンミンは悪戯っぽく笑っている。

「僕が歌い始めたら、ステージの周りに居る人達から順に、携帯のライトつけて欲しいんだ。それを、天井席のみんなまで、どんどん広げてください。」

観客はバタバタと鞄を漁り出した。

「今回のツアーで、本当はみんなにペンライト渡したかったんだけど、ちょっと、大人の事情で……って……つまり予算が足りなくて……。ふふ。でも最後だし、僕の我が儘を叶えて貰おうかな。みんなが作った菜の花畑、僕に見せてください。」

このツアーが始まるずっと前。
ユノが語ってくれた夢のイメージを、チャンミンは胸に抱いてきた。

『ドームの中心にチャンミンが1人、ギター抱えて歌ってる。リズムをとる足元から、レンゲの花が咲いて、同心円状に広がっていく。客席はレンゲ畑になって、天井まで広がる。』

レンゲではなく菜の花になったけれど、チャンミンはユノの夢の絵を描こうとしていた。

ユノには、分かる。
僕が何をしたいか。
今、僕の思いを演出に反映できるは、ユノしか居ない。

スマホを握りしめる観客を見渡し、そして、その先に居るユノの姿を認め、確信とともに、チャンミンはじっと見つめた。

ユノは、大きく頷いた。

ほら。
やっぱり分かってくれた。
最高の舞台監督だ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

明日、最終話です。

チャンミンにも、ユノにも、皆様にも、素敵なクリスマスイヴが訪れますように♪



続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

夢の途中 22

20191201222354453.jpg



最終日の朝、チャンミンは午前中には家を出た。

開演は5時。
スケジュールでは昼過ぎの合流で良かったのだが、音響に相談したいことがあった。

玄関まで見送りに来たユノが、「また後で。」と言ってくれる喜びを噛み締める。

「今日は久々にデレた顔してるなぁ。」

ミノも今日ばかりは呆れ顔を封印し、嬉しそうににやけた。


ドームに到着するや、チャンミンは家から持ってきたギター片手に音響スタッフの元へと急ぐ。

「チャンミンさん、マジっすか?」

「うん。これ、僕の友達なんだ。ステージに上げてあげたい。1曲でいいから。」

「うへー。年季はいってますね。じゃあ、先にその曲のリハさせてください。」

「ありがとう!!」

マーティンの逸品に合わせたマイクの調整を、音響スタッフは嫌な顔ひとつせず、ボロボロのギターに合わせようと作業に入る。

「これお客さんに聴かせるのか?」

途中からやって来たイタニが渋い顔をするのを、チャンミンは笑顔でやり過ごした。


ユノは、お昼過ぎに家を出て、電車を乗り継ぎ東京ドームを目指した。
都営地下鉄の水道橋駅から、既に周辺に集まったたくさんのファンを眺めながら歩く。

4月も末の昼下がり、コートを脱いで縁石に腰かける人々は、みんなワクワクした顔をしている。

物販で購入したパンフレットを開き、チャンミンの写真に騒いでいるグループ。
手鏡で化粧を直す人。
色違いのツアーTシャツを着た恋人達。

チャンミンがデザインしたネックレスをしている人もちらほら見かける。

物販には長い列ができていた。

「今、何分待ちですか?」

最後尾に立っていたスタッフに尋ねると、「んー。45分くらいですかね。」と首を捻る。

ユノは、スタッフパスを首にかけ、最後尾の客から順に声をかける。

「あと40分くらいですから。」

「あ、はい。」

「何買うか決めました?」

「え……。Tシャツと、ヘアバンドは買います。」

「フレグランスもいいですよ。部屋で使ってもいいけど、俺、今日服につけてるんです。」

パーカーを広げてパタパタするユノに、女の子達がワーキャー言いながら顔を赤らめる。

「ちょっと荷物になるけど、お勧めです。チャンミンさんも毎日つけてるそうですよ。」

「か、買います!」

「私も!!」

そばに居た誘導スタッフが、ユノの真似をして声をかけ始めた。

列のそこかしこが賑やかになる。

「ね、今のスタッフさん超イケメンじゃない?」

「チャンミンよりタイプかも……。」

そんな会話は聞こえないフリをして、ユノは後楽園側のゲートへと向かった。

観客が入場する前のドームに入る瞬間の胸の高鳴りを楽しみ、まずは客席からステージを眺めた。

まだ最終のリハーサル中。
幕で隠す前の巨大スクリーンを前にし、ユノは身震いした。

美しいアーチを描き、見事にドームと一体化している。

やばいな。もう泣きそうだ。

PAブースに立つイタニの姿。
センターステージで何か指示を出しているマカベ。

フロアを行き来するスタッフに自分が含まれないことを、辛いとは思わなかった。
こうして俯瞰で眺められることが、2度とない特別な時間に思える。

リハーサルが終わってスクリーンに幕がかけられ始め、ユノは関係者のエリアへとゆっくり移動した。

既に汗だくのチャンミンは、楽屋に入ってきたユノに、何故か頬を赤らめた。

「なんで今更恥ずかしがるわけ?」

ミノの声は無視だ。

手をぎゅっと握り、「楽しみにしてる。」と微笑んだユノに、チャンミンは躊躇なく抱きついた。

「わーっ!もう勘弁して!!」

両手で顔を覆ったミノが楽屋を出て行ったのを確認し、ユノは優しいキスをする。
キスにとろけてしなだれかかったチャンミンは、甘えた顔で囁いた。

「ユノ……。今日、アンコールはアリーナに居て。」

「ん?なんで?」

「最後の挨拶の時、ちゃんと近くで見守って欲しいから。」

「ふふ。分かった。そばに居るよ。PAブースあたりで観てる。」

「うん。」

「じゃ、俺はそろそろ。ヒチョルさんと待ち合わせしてるから。」

「分かった。じゃあもう1回だけ。」

唇を尖らせたチャンミンの可愛さときたら。
1回と言わず、緩急をつけてユノは5回はキスした。

楽屋を出るユノに、チャンミンは「廊下のボード見てみて!」と声をかけ、シャワールームに入っていった。

「ボードって、あれか?」

差し入れのお菓子が並ぶ長机の隣に置かれたボードを前にして、ユノはぎゅっと唇を噛んだ。
そうしないと、涙が溢れそうだった。

『ユノみたいに、がむしゃらに行こうぜ!!』

そう大きく書かれた汚い文字はマカベのもの。
その周囲に、他のスタッフが書き込んだ文字が並ぶ。

「自分にできること、常に探します!」
「お客さんの笑顔のために頑張るぞ!!」
「思い付いたら即行動します。」
「チャンミンさんが最高に輝くメイクします!」
「工程表、あと100回読み込む!!」
「地平線まで届く音、響かせます。」

ユノはたくさん居た。
何人ものユノが、ステージを支えていた。

「くそ……。最高じゃないか……。」

我慢しても溢れた涙を拭いたユノの肩に、マカベがそっと手を添えた。

「ユノ。いいチームを作ったな。お前の姿勢、みんな理解してるぞ。」

「師匠……。」

「師匠って呼ぶなって恥ずかしい!それと、これ、しとけ。」

マカベはスタッフ用のヘッドセットを差し出した。

「俺は……。」

「これ、各チームのリーダーに繋がってるから、気になることあったら指示を出せ。みんな、そうしてる。少しでも良くしようって、知恵を出し合ってるんだ。」

じゃな、と手を振ったマカベは、スタッフ控え室の前で立ち止まった。

「そう言えばユノ!この段ボール何なんだよ!一応持ってきたけど!!」

「あ……。」

最近もチャンミンがツアーで留守の中、暇を持て余して作り続け、段ボール5箱にもなってしまった蝶のコンフェッティ。
家に置くには大量過ぎて、ユノは会社に持ち込んでいた。

「すみません!これは今回使わないもので。」

「はぁー!?チャンミンツアー用って書いてあったからわざわざ俺が車で持ってきたんだぞ!」

「すみません!」

「邪魔だからどっか片付けとけ!」

片手使えないのに酷い……。
ユノは、さっきの感動を返して欲しいと思いつつ、マカベが控え室から放り出した段ボール箱を、ミノに手伝って貰って廊下の隅に置いた。

これが、この日のアンケートで最も高い評価を得る、感動的なワンシーンを作り出すことになろうとは思いもせず、ユノはそれからヒチョルと合流し、暫しの間、ドームの売店で買ったスナックなどつまみながら開演を待った。

「ユノ。俺は勝手に楽しむから、自由にしていいぞ。」

関係者席に座ってからも、そばに立って他愛ない会話を続けていたユノを、ヒチョルは気遣う。

「じゃあ、お言葉に甘えて会場内チェックしてきます。」

「ふふ。仕事熱心だな。」

「やっぱり……ここに来ると血が騒いで。」

「おう。お前らしく、な。」

「はい!じゃあ、また今度感想聞かせてくださいね!」

早足で階段を登るユノの後ろ姿は、精悍。

もっともっと、登れよ。
天井突っ切ってさ。
何たって、お前には天女みたいな男がついてる。

ヒチョルは、昔を懐かしみ、ちょっと泣きそうになって眼鏡で隠した。

でも、開演したステージに巨大なスクリーンが姿を現した時、結局眼鏡では隠せないくらい泣いてしまった。





続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

夢の途中 21

20191201222354453.jpg



東京公演1日目。

チャンミンはユノにスタッフ用のパスを渡して家を出た。

ユノは来るとは言わなかったし、ヒチョルのために用意したチケットは明日の千秋楽のものだったから、なんとなく来ない気はしていたが、それでも期待した。

どこかからユノが見届けてくれているのではと、ライブ中もやたら会場を見回した。

「チャンミンと目が合った。」と喜ぶファンが急増して結果としては良かったが、チャンミンの機嫌は優れない。

「ミノ……僕は薄情ものに恋していたのかも。」

ステージを終えたチャンミンの嘆きに、ミノは大きく頷いて同意する。

「気づくのが遅いな。」

「あ?」

ミノはこのツアー中、イタニから熱烈アプローチされた恨みを、ここぞとばかりに晴らした。

大阪の夜など、危うくホテルのバーで唇を奪われかけたのだ。
東京に帰ってから、襲われる夢にうなされる程のトラウマ。

イタニのタイプであるユノが居たら、こちらへの被害は少なかったはずだ。

「前からそうじゃないか。初めて結ばれた日に姿を消すなんて、冷徹じゃなきゃできない。ユノさんは酷い男だ。」

「む、結ばれた日……。」

酷い男呼ばわりよりもそちらに反応し、チャンミンは赤面した。

「……そ、そうだよね。酷いよね。」

「そうだぞ!冷徹人間だ!人生賭けるほど愛する恋人が東京ドームのステージに立ってるのに、観に来ないなんて、普通の精神じゃない!!」

「人生賭けるほど……愛する……。」

耳から湯気が出そうになった。

「氷の男だな!!」

「そこまででは……ないけど。」

家を出る時、「頑張って」と言いながら熔けるように熱いキスをくれたユノを思い出し、チャンミンは拗ねるのがバカらしくなった。

「帰ります……。」

「よし。送るよ。」

ミノはできるマネージャーだ。
ユノを落としつつ、チャンミンの気持ちは上げる絶妙な会話。

実を言うと、ミノはユノに頼まれていた。
夕飯を用意して待っているから、ライブが終わったらさっさとチャンミンを帰してくれと。

チャンミンがマンションの駐車場からエレベーターに乗ったのを見届け、ミノはしたり顔で頷いた。

明日は千秋楽。
きっとユノは、チャンミンにリラックスした幸せな夜を与えてくれるだろう。

「羨ましいなぁ……。」

2人が「あーん」とか夕食を食べさせあっている光景を妄想しながらミノは家路へとついたが、実際マンションの上層階には、そんな甘い光景は広がっていなかった。

玄関に入ってまず、チャンミンは鼻を摘まんだ。
ドームで嗅いだ爽やかなレモンと真逆の、ムッとする異臭。

「なんの臭い!?」

リビングに駆け込むと、ピンクのヒラヒラエプロンを身につけたユノが、シンクの前で項垂れていた。

シンクの中には、ぼろ雑巾みたいな形状の黒こげた物体が入ったままのフライパン。
水を張ってあるが、プンプン臭う。

「鯛が……。」

「鯛!?」

「オーラス前だから、めでたい食事で励まそうと思って。」

このぼろ雑巾は鯛だったのか。
焼いた魚を水に浸けたら臭うのに。

「ちょっとどいて!」

黒焦げた鯛をフライ返しで削ぎ取り、ペーパーナプキンで包んでビニール袋に入れてから、チャンミンは項垂れているユノを睨んだ。

「僕を放置して、鯛と戯れてたわけ?」

「……レモンバターソテーにしようと……。」

「はあ?」

「サラダも……作ったんだ。前菜に……スープも。スープは飲めると思うんだけど……。」

コンロに乗った小さな鍋に、不揃いな野菜の細切れが入った気持ち悪い色のスープがあった。

「隠し味にケチャップとソース入れてみた。」

スープにソース。
斬新だ。
床にバラバラ野菜が落ちているのはこれのせいか。

「豪華にフルコースのつもりだったんだけど……。」

「ユノ……。」

「バターって、なんであんなに真っ黒になるんだ?油だろ?」

この惨状を見るに、夕方から悪戦苦闘していたのだろう。
左手はまだ使い物にならないのに。
エプロンの紐が縦結びになっているのはそのせいだろうか。

チャンミンはシンクに両手を置いて息を吐き、ユノの目前に迫った。

「ユノ。」

「……はい。」

「苦手なことを頑張らなくていいよ。」

「チャンミンが走ってくれてるから、チャンミンの代わりにご飯作ろうとしたんだけど、駄目だなぁ。俺。」

気持ちは嬉しいが、ズレている。
仕事中はあんなにカッコいいのに、なんとも残念な人だ。

腰にぎゅっと抱きついたチャンミンは、今更ながら、ピンクのエプロンと、男らしいユノの胸板とのアンバランスが酷すぎると笑い出した。

「違うんだぞ!ピンクのヒラヒラは敢えて選んだわけじゃなくて、近くのスーパーにこれしか売ってなかったんだ!」

「エプロンなら、そこの引き出しに入ってる。」

「そこにあったのか。探したけど見つからなくてさ。」

「ふふ。お腹すいた。サラダ食べる。」

「スープ温める!ご飯も炊いてあるから!!座って待ってろ!」

スープは無しでいいんだけどな……。
張り切ってテーブルを準備するユノを、チャンミンは頬杖をついて眺めた。

これはこれで幸せかも。
でも、やっぱりユノはステージのたもとに居てくれないと。
ヒラヒラエプロンより、スタッフTシャツが似合う。

「う……ん……飲める。」

「意外とうまいだろ!」

うまくはない。
スープは魔術的な味だった。
こんなに単品の白米を美味しいと思うことも稀だ。

チャンミンがご飯をお代わりしたため、ユノは喜色満面だったが、ご飯と塩だけだったら3杯は食べられた。魔法のスープは余計だ。

「ユノ。明日は打ち上げあるから作らなくていいからね。てか、もう2度と作らなくていいから。」

「ああ。明日は俺も、出かけるから。」

「え?」

「ライブ。観に行く。」

「ほんとに!?」

「行くよ。最後のチャンスだろ。」

「どこで!どの辺で観てる?」

「どうかな。ヒチョルさん案内してから、会場の色んな場所から観ようと思ってる。」

「そっか。そうだよね。うん。それがいいね。」

チャンミンはそれからずっと、ユノが話しかけても上の空で、何か考えているようだった。

今夜は性欲の方は大丈夫なのだろうか。
ユノはチャンミンの様子を窺っていたが、お風呂上がりにギターを抱え、「納得行かなかったところを練習するから先に寝て」と言う。

「チャンミンも寝た方がいい。もう練習は十分だろ。」

「明日が最後なんだよ。やりたいようにさせて。」

致し方なく見守るユノだったが、最終的に、集中したいから1人にしてくれと寝室に押し込まれた。

「そばに居ろって言ってたくせに……。」

優しく抱き締めて、チャンミンの疲れと緊張を癒そうと思っていたのに、寂しく布団を温めることになってしまった。

「スターの気分は一般庶民には分からない……。」

ユノはぼやきつつ、それでもチャンミンが練習を終えるのをじっと待った。

結局チャンミンが寝室に入ってきたのは3時過ぎで、ユノが枕を抱き締めてしゅんとしているのを見て心底驚いた声をあげた。

「起きてたの!?」

「何の力にもなれない俺が、先に寝れない。スタッフでもないし、ご飯もろくに作れないし、邪魔になるし。」

「ユノ……。」

もう……。
そんなはずないじゃないか。
子供みたいなこと言って……。

チャンミンはユノの頭を抱え、よしよしと撫でた。

「ユノって、全然イメージと違ったなぁ。」

「……呆れた?」

「ううん。ピュアで可愛い。」

きっと僕は、子供みたいにピュアなユノだから、心底惚れちゃったんだ。
はじめは大人なユノに甘えたいばかりだったけれど、今は、甘やかして、子守唄を歌ってあげたい。

真っ直ぐで偽らない。
そんなユノが、微笑んで眠れるように。

チャンミンが髪を撫でてすぐ、ユノは眠りに落ちた。眠いのに我慢して待っていてくれたのだろう。

「ほんと……好きだよ……。僕には、ユノが必要なんだ。」

チャンミンの囁きをユノが聞くことはなかったけれど、次の日、ドームを訪れたユノは、チャンミンだけでなく、チーム全員の愛を受け取ることになる。





続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

夢の途中 20

この記事を閲覧するにはパスワードが必要です
パスワード入力

夢の途中 19

20191201222354453.jpg



ヒチョルは、頬を濡らすユノの背中に手を添えて見守っていたが、ユノの涙の水量が落ち着いてきたところで、「あぁ、そうか。」と手を叩いた。

納得した顔でウンウン頷いているヒチョルをユノは訝しむ。

「なにが……そうかなんです?」

「そうだよユノ。チャンミンさんがユノに固執するのって、そういうことだよ。」

「そう?」

「そりゃユノはカッコいいけどさ、スターが何年も待ち焦がれるって、どうも納得いかなかったんだよなぁ。」

「……俺もいまだに信じられません。」

「チャンミンさん、どうしてもお前が欲しいんだろうなぁ。お前が作ったステージなら、愛する人が作った場所ならさ、どんな大地より安心して踏み出せるだろ。」

ユノはまばたきし、それから涙を拭いた。


チャンミン……。

チャンミンは、自分のために俺を欲してくれたのか?
単なる恋じゃなく、仕事としても。
自分がスターであるために?

家で甘える可愛いチャンミン。
ステージで輝くチャンミン。
どちらのチャンミンも、俺を求めてくれてる?

じゃあ俺は……チャンミンが1番俺を必要としている時に、一体何をしてる。

ユノは顔を上げた。

「ヒチョルさん……。俺、チャンミンに会いたくて仕方ないです。」

「わっ!急にノロケ!?」

「今すぐ抱き締めたい。」

「ぶっ!」

ヒチョルは噎せてナプキンで口を覆い、顔を赤くした。

「だったらもう帰れ!!」

「ヒチョルさんは?まだ帰らないんです?支払いは……。」

「俺はいいから。早く帰って安心させてあげろよ。支払いはお礼に東京ドーム公演のチケットでも手配してくれたら許す!!」

チケットは冗談のつもりだったが、ユノは真剣な表情でヒチョルに頷いた。

「……頼んでみます。ヒチョルさんは、昔も今も、俺の恩人です。」

「なんだよ照れるな。もう行けって!」

「はい!!ご馳走さまでした!!」

走り去ったユノをポカンと眺め、それからヒチョルはくすくす笑った。

変わらないな。
無茶で、ちょっとバカで、最高にいい男。
チャンミンさんは見る目がある。

笑いながら口に入れた酒は、随分美味しかった。



ユノの居ないリビングのソファで、チャンミンは、ボディの一部がボロボロに剥げたギターを抱えて小さくなっていた。

秋のアルバムに向けて作りかけの曲が数曲ある。
来月には編曲者に渡すつもりだったのに、遅々として進んでいない。

旧友とも言える懐かしいギターの弦をつま弾いてみても、ユノを思って作った子守唄ばかり奏でてしまう。

「今日も遅いな……。」

このままユノが遠くに消えてしまう気がして、頭を振る。

帰って来なかったらどうしよう。
いや、そんなはずない。
ユノはそんな無責任な人じゃない。
何年も離れていても、大丈夫だったじゃないか。

ぐるぐると回る楽観と悲観の渦に飲み込まれそうになり、ギターをぎゅっと抱き締めた時、玄関から物音がした。

やたらとばたついた音だ。

「チャンミン!!」

息を切らせたユノがリビングに飛び込んできて、チャンミンはギターにすがりつくみたいに抱えたまま静止した。

「嫌になる!腕が痛くてうまく走れないんだよ!」

片手で懸命に脱いだコートを床に放り投げ、ユノは滲んだ汗もろとも前髪をかき上げた。

カッコいいユノだ。
男らしくて真っ直ぐな瞳が、チャンミンを捕らえる。

ギターのネックを握る手がびくっと動き、「ビン!」と音がした。弾かれるようにチャンミンは口を開く。

「痛いのに………走っちゃ……駄目だよ……。あと、床に服脱ぎ捨てるの、やめてって。」

ユノはふっと笑った。

「今日は許して。チャンミンに、会いたくて、抱き締めたくて……待てない。」

きゅうっと心臓が喉まで上がってきそうになった。
ユノはチャンミンの抱えるギターを奪ってソファに立て掛け、右腕を肩に回し、それから思い切り抱き締めた。

「……ユノ……?」

「チャンミン愛してる。」

「……っ。」

息の根を止められそう。
呼吸を乱したチャンミンの喉にキスして、ユノはぐりぐり頭を擦り付ける。

チャンミンは大人しくユノにされるがままだった。

疑い深くなってしまった心と身体が、急な抱擁と愛の言葉に対応しきれない。

「……何かあったの?」

「何も。何も変わらない。俺はずっとチャンミンを追いかけてる。」

困り顔のチャンミンを見つめるユノの瞳は、とても優しかった。
春の木漏れ日のような慈愛に満ちた眼差し。

「追いかけてるなんて……。ここに居るじゃない。」

「そういう気持ちで、夢を追うよ。」

ユノが「夢」と言葉にしてようやく、チャンミンは安堵のため息を漏らし、抱き締め返した。

「ユノの夢は……変わらないんだね?終わってなんてないよね?」

「まだ成し遂げてもないのに、終われないよ。」

「……ユノ!!」

涙ぐんですがり付いたチャンミンの頭を、ユノはぐっと腕で抱えて顔を埋め、「ごめん」と何度も囁く。

大切な時にごめん。
いじけててごめん。
そばに居なくてごめん。
不安にさせてごめん。

たくさんのごめんが、チャンミンには伝わった。

「ほんと……ごめん。俺、凹んでた。自分が情けなくて、周りのみんなが羨ましかった。」

チャンミンは首をフルフルと左右に揺らす。

「当たり前だよ……。あんなに頑張ってたんだから、心が折れたって仕方ないよ。」

「凹んでるのは、俺だけじゃないのに。チャンミンだって辛かったよな。なのにステージに立って……ほんと……すごい人だよ。尊敬する。」

「そんなこと……。ただ、ユノが心折れてる時は、僕が走らなきゃって思ってただけ。お互いに、そうするしかないでしょ。」

「強いな……。チャンミンは折れなさそう。」

「ユノと出会った頃はボッキボキに折れてたよ。今も、気を抜いたら折れそう。」

「こんなに細いもんな。また少し痩せた?」

ユノに放置され、チャンミンの食欲は落ちていた。ご飯を作る気力も湧かず、栄養補給はツアーのケータリング頼み。

抱き締めるユノの身体も、前より厚みが減った気がする。

「ユノも痩せた。」

「チャンミンが作ったものじゃないと、美味しさが半減でさ……。」

「それじゃ困るよ。僕が折れて転んだ時は、ユノが走ってくれないといけないんだから。支え合って、走ろ……。」

「……それだとリレーになってないか?」

ユノはヒチョルが「同じレーンを走ってない」と言った言葉を思い出し、くすっと笑った。

同じレーンは走ってる。
でも、走るタイミングは違うかもしれない。

チャンミンの願いを俺が具現化して、舞台にして渡す。チャンミンはそこに立つ準備をして、舞台で輝く。
リレーみたいに、繋ぎあって、ゴールを目指す。
確かに伴走より、リレーの方がしっくりくるな。

「チャンミンが転んだら、取り敢えず救護室に連れてって、キスして抱き締めてから走りに行くよ。」

「……すごい時間ロスだね。」

「別に競争してるわけじゃないからいいだろ。」

「あ。そっか……。ん?いやいや、じゃあなんでリレーしてるの??」

「知らないよ!チャンミンが言い出したんだろ!」

「リレーって言い出したのはユノだよ!」

「ふっ……ははっ……。」

「もうっ……ふふふっ……。」

笑い出したら止まらなくなって、2人はソファに転がってお腹を抱えた。

それからゆっくりお風呂に入ったら、もう幸せな2人に戻っていた。





続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

夢の途中 18

20191201222354453.jpg



大阪公演の評価もすこぶる高く、東京公演を前に、チャンミンは事務所から来年の5大ドームツアーの構想を聞かされた。

それに合わせ、初のベストアルバムの発売の企画まで立ち上がっていた。

「年末にアルバム出すでしょ。それだってまだ曲が揃ってないのに……。」

情報過多だ。
まだ春。
来年のことまで考えられない。

「今度こそユノさんにやって貰おう。惚れ直したって言うか、惚れてないけど、その……チャンミンがユノさんを愛してる理由がさ、今回のツアーで改めて分かったんだよ。」

「気づくの遅いよ。」

「今回のツアーの成功は、ユノさん無しには有り得ない。次こそ、最後までやりきって貰おう!!」

ミノは張り切っている。

だが今のユノでは、舞台監督のオファーを受けてはくれないだろう。

チャンミンは、微笑みながら心で泣いていた。

ユノは2人の夢から途中下車しかけている。
夢を見させたのはユノなのに。
ユノが一緒に目指してくれないなら、それはもう夢ではない。

チャンミンは、どこにも捌け口のない不安と、遠い未来へのプレッシャーを、心の奥に仕舞い、ステージをこなしていた。



ユノは自分が許せずにいた。

仕事で許されない失敗をしたことだけではない。
師匠の期待に応えられなかった自分にも、チャンミンのそばに居ることを避けてしまう自分にも、ほとほと嫌気がさす。

そんなユノに懐かしい人から連絡が入ったのは、大阪ドーム公演が終わり、東京ドームでの千秋楽まで1週間を切った月曜の昼下がりだった。

「ユノ!!何で連絡くれないんだよ!夢叶ったんだろー!?お祝いくらいさせろよ!!」

スマホから聞こえたのは、ユノがバイトしていたクラブのオーナー、ヒチョルの声だった。

「チャンミンさんのツアーのニュース見たぞ!お前が勤めてる会社が舞台担当してるんだろ!凄いじゃないか!!」

「それ……俺はもう担当してないんです。」

「……なんだよ。え?まさかフラれたとか?」

「や……違うんですけど……。」

「なんだ。暗いな。」

察しの良いヒチョルは、ユノを食事に誘った。ユノの沈んだ声から、話を聞いてやろうと思ったのだ。


次の日の夜、麻布十番の洒落たレストランの個室で先に飲んでいたヒチョルは、ユノが腕に装着した固定用のサポーターを見て、何も言わず立ち上がって椅子を引いた。

「仕事中に……骨折してしまいました。今リハビリ中です。」

「だったら酒はやめとくか。ソフトドリンクにする?」

「一杯だけ、飲ませてください。」

得意でもないビールを流し込むと、苦味が口内に広がってユノは「あー。」と口を歪めた。

「無理して呑むなよ。酒に失礼だ。」

「すみません。」

体内に入ったアルコールで血管が開き、左手がじんじんと痛む。
ユノはそれでもビールのグラスを掴んで一気に飲み干した。

「ヒチョルさん、今日クラブは?」

「今日は若手に任せてきた。俺が居ると若いやつ伸びないから。店舗増やそうと思っててさ、店長候補を育ててんの。」

「すごい。順調ですね。」

「ま、ね。いいお客さんついてるから。で、ユノのその、世捨て人みたいな暗い表情の理由は?俺には今さら隠すことなんてないだろ。」

今の仕事に何ら関わりがないヒチョルは、聞き手として絶妙な存在だ。

チャンミンと出会った時のことも、ユノの夢も知るヒチョルに微笑まれ、甘えたくなった。

チャンミンとの再会や、ツアーを任されたこと、事故のこと、チャンミンがステージに立つ姿を観ることができない今の自分。

食事にも手をつけず、ユノは全てさらけ出し、それから緑茶を注文した。

「そっか。辛かったな。」

料理を小皿にのせ、フォークを頼んだヒチョルは、昔と変わらずやることにそつがない。

「まあ食べろよ。ここ、旨いぞ。」

「……うまいです。」

「だろ。」

口の中に入れたらほどける柔らかいチキンと、甘味を感じる野菜がたくさん入ったキッシュ。
メインにオーダーされたビーフも、締めのリゾットも美味しかった。

でも、チャンミンが作ってくれた雑炊の方がユノの好み。

家庭的で、甘えん坊なチャンミンがそばに居てくれて、ユノは一緒にと言うより、手を引いて走っている気になっていた。

だが、ネットのニュースでチャンミンの活躍を目にすると、やはり手の届かない遠い世界の人のように思えてしまう。

「俺……チャンミンにまだ追い付けてなかったんです。チャンミンが居たから、きっと上司も俺を引っ張り上げてくれて、経験も浅いのに舞台監督を任せてくれただけなのに。」

「はは。そりゃ、簡単に追い付けるわけない。」

ユノの告白に対して、ヒチョルはあっけらかんと答えた。

「チャンミンさんは、お前に出会った時からスターだった。何年も先を行ってる。一生追い付けやしないよ。そもそも、お前はチャンミンさんと同じレーンを走ってやしないんじゃないのか。」

「……へ?」

ユノはきょとんとした。

「ユノはスターになりたいわけじゃないだろ。お前は汗かいて、這いずり回って、そうやって苦しんで、チャンミンさんを輝かせる。」

「……はぁ。」

「おい。」

覇気のないユノの指先をヒチョルは叩いた。

「いってぇ!!怪我人に何するんです!」

「師匠のことも、引っ張り上げてくれたって言うけどな、新人に上司は完璧さなんて求めてねぇんだよ。がむしゃらにやってくれたら、それで十分。」

「がむしゃら……に。」

「お前に任せてくれた師匠の期待をさ、ユノは裏切ってない。上司ってのはな、敢えて苦労させてんだよ。引っ張り上げてなんてないんだ。突き落として、這い上がるのを期待してんだよ。」

「そういう……もんですか。」

「俺なんて、部下は数えるほどしか居ないけど、それでも、人の上に立つって並大抵の精神じゃやってらんないぞ。」

ヒチョルが言いたいことは、ユノにも身に覚えがある。

会ったこともないバイトに、意思を伝えるにはどうしたらいいか。
経験のあるチームに溶け込むにはどうしたらいいか。

悩みながら過ごしてきた。

「誰かに任せるって、結構なストレスですよね。」

「そりゃそうだよ。自分でやったらできるのに、失敗覚悟で他人に任せるんだから。」

ユノが頼った時、マカベはいつも嬉しそうに引き受けてくれた。
そこに大きな愛情と、きっと不安もあったのだろう。

ユノにやらせてみないかと、チャンミンに提案した時、マカベがどんな気持ちだったか。
それこそ、清水の舞台から飛び降りる覚悟で、ドキドキしていたかも。

事故にあった時、誰よりも早く飛んできて、救急車を呼び、「心配いらない」と、仕事を引き継いでくれた。

任せた自分を、責めているかもしれない。

「俺だけじゃ、ないですね……。」

「ん?」

「師匠も……自分を許せないでいるだろうなって……。」

「そうだろうな。」

それでも、穴を開けず、不安など微塵も感じさせず、チャンミンを支えてくれている。

「ふ……。なんか……。俺……。」

ユノの瞳が、溢れそうな涙で潤んだ。

「情けないなぁ。自分だけチームから外れて、凹んで……。」

ヒチョルは席を立って、ユノの隣に移動し、そっと肩を抱く。

「チャンミンさんなんて、もっとしんどいんじゃないか?スターって、巨大企業の社長みたいなもんだろ。」

「社長……?」

「例えだよ例え。なんて言うか……どんなに出来の悪いスタッフが用意した舞台でも、信じて、立つしかないだろ。底無し沼だろうが、火の海だろうが、立たなきゃならない。そこで転んでも、自分の責任にされてさ。」

ステージに凛と立つチャンミンの姿を思い、ユノはボロボロ泣いた。

事故があってから、初めて流した涙だった。




続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

夢の途中 17

20191201222354453.jpg



初日のステージは感動の連続だった。

巨大スクリーンは、観客の入場時には幕が張られていて全貌が見えない。照明が落ち、真っ暗になった瞬間、幕は落とされた。

スクリーンの下縁に沿って一筋の光が浮かび、光は上へと広がっていく。
光の洪水が上縁まで到達し、スクリーン全体を染めて初めて、観客はその巨大さに気づく。

悲鳴と完成と拍手。
チャンミンが登場する前から、圧倒され泣き出す観客。

チャンミンは舞台袖のモニターでその光景を見ていた。

ここにユノが居たら、ユノも泣いたかな。
きっと泣くよね。
こんなに美しい光景なんだから。

「ユノ……。」

思わず口に出して名前を呼んだ。

「チャンミンさん。」

背後に居たマカベには聞こえていただろう。背中をポンと押され、チャンミンは微笑んだ。

「行ってきます。」

「はい。行ってらっしゃい!」

ステージに上がった瞬間、チャンミンはチャンミンではない、何か別の浮遊物になった感覚に囚われる。それは、観客が入ったステージの上でだけ感じることのできる感覚。

重力から解放され、風に舞う蝶のように、身体が軽い。

ユノが描いた世界を、チャンミンは見事に現実にした。

チャンミンだけでなく、スタッフもそうだった。
ユノがここに居ないことが、彼らの団結を固くし、ユノのメッセージを完璧に観客に伝えようと必死だった。

映像、照明、音響、空調、特殊効果。
全てのタイミングは、工程表と寸分違わず実行され、観客を夢の世界から逃さない。

ミノは、会場内を移動して観客の反応を観察した。
名古屋ドームの5階席に上がって、そこから眺める景色に息を呑んだ。どのエリアからの眺めより絶景だった。

こんなに遠くからでも、スクリーンに映るチャンミンはくっきりと大きい。
そして、音に臨場感がある。

秋のセットリストに入り、スクリーンに観客の姿が写し出された。

最初はアリーナ、それからスタンド。
2階席から5階席まで。

ミノの立っていたあたりの観客が画面に映り、歓声が上がる。

みんな、瞳をキラキラ輝かせて手を振っている。
その様子をスクリーンを見上げて確認したチャンミンが、今日1番の満面の笑顔を見せた。

ミノははっとした。

双眼鏡を覗いていないから、みんなの瞳が輝いて見えるのだ。

観客にチャンミンが見えるから、チャンミンも観客の笑顔を見ることができる。

観客のためであり、チャンミンのため。
ユノのアイデアは、呆れるほど一貫していた。

「ユノさん。あなたって人は……ほんとに……。」

ここにユノは居る。
確実に、存在する。

涙が溢れた。

ミノはスタンドを離れ、階段を駆け降りた。

本番中でも構わない。
関係者席を見回し、見学に来ていた事務所社長の座席に歩み寄って耳打ちした。

「5大ドームツアー。やりましょう。」

社長はにっと笑った。

「私も今、それを考えていたよ。これは……やらなきゃ駄目だ。」

新しい夢は、ユノとチャンミンが知らぬところで、もう動き出した。



翌日のネットニュースには、いくつものライブレポートが上がった。

「シンプルな演出で際立った圧倒的世界観」
「間違いなく最高峰のステージ」
「音と光の洪水」
「地平線を見た」
「ドームを味方にした」
「見なければ後悔する」
「四季を体現するチャンミンの表現力」
「チャンミンは単なるアーティストから稀代のエンターテイナーへと進化した」
「誰よりも観客の笑顔が弾けていた」

そんな賛辞がずらりと並ぶ。

SNSの反響も、アンケート結果も、今までの比ではなかった。

「チャンミン凄いぞ!!」

「何が?評価なら見たよ。」

「物販!昨日の物販の売上!5000万突破!!」

「わ。いつもの倍?まぁでも、お客さん多いし初日だもんね。アイドルだと、1億超えることもあるってユノが言ってた。」

ミノは興奮して震えていたが、チャンミンは至って飄々とストレッチしている。

「おい!少しは喜べよ!!」

「喜んでるよ。でも、まだ途中だから。」

ユノがここに居たら、チャンミンは有頂天になって、達成感を味わえたかもしれない。

でも、ここは通過点。
だからこそ、冷静だった。



2日間の名古屋ドーム公演を終え、ラジオ局への出演をしてからチャンミンが東京に戻ると、ユノはキッチンでお茶を淹れようと悪戦苦闘していた。

「ユノ早かったんだね。」

「ああ、お帰り。午前中に追い出されたから。最近て、ゆっくり入院もさせてくれないんだな。」

ちょっとそこまで買い物に行ってきた後みたいな、捕らえ所のない会話だった。

片手で茶筒を開けようとしてユノは肩を落とす。

「こんなことで苦労するなんて。参ったな。」

「僕がやるから。」

「疲れてるのにすまない。」

「それ、いつ取れるの?」

ユノの左腕は、ギプスで固定されてはいないが、包帯で肘から手首まで覆われている。

「数週間は固定しとかなきゃいけないんだって。こっちの病院紹介して貰えたから、細かいことは明日行って聞いてみる。リハビリもしなきゃならない。」

「病院行くなら送ろうか。僕明日休みだよ。」

「やめてくれよ。1人で行けるって。」

「……お風呂ってどうするの?」

「明日から入っていいって言われたけど、手首は手術してるから、タオルで拭くくらいかな……。臭くなったらごめん。」

「ふふ。今週は東京だから一緒に入ろ。あ、でも僕、来週末は大阪公演なのに。」

「大人なんだから、何とかするって。俺のことなんか気にしないでツアーに集中して。」

「痛い?」

「凄く。でも大丈夫。」

手首のみならず、ユノの肘は赤黒く腫れていて、見た目だけでも辛そうだ。

それなのに、1人でできるとか、大丈夫だとか、そんなことばかり言うユノ。

まるで、昔の自分を見ているみたいだった。
全く大丈夫そうじゃないのに、「大丈夫」と微笑んでいた自分。

「ユノのステージね……素晴らし」

「チャンミン……。」

「……かった……。」

「チャンミン……ほんとにすまない。」

ツアーの話をしようとすると、ユノは唇を噛んで痛みに耐えるような顔になった。

公演を観に来て欲しい。
観たら絶対に分かる。
ユノがしてきたことは間違いではなかったと。
守ってくれたディスプレイは観客を感動させていると。

それに……。
平気な素振りをしていたって、チャンミンだって本当はユノにそばに居て欲しかった。

だが、誘いたくても、ツアーの話になると辛そうな顔で謝罪するユノに遠慮したまま、日は流れた。

ユノはリハビリと会社の往復を繰り返す。

左手の握力はほとんどない。
取り戻すには何週間もかかる状態。

右手も普通に使えはするが、元々左利きのユノには不自由な生活だった。

それでも出社し、チャンミンのツアーで忙しい他の社員のサポートをしている。

電話応対や事務処理を請け負い、新入社員かのように働く。

家に帰ったらチャンミンが甲斐甲斐しく世話を焼き、ツアー中のスターに何をさせているのかと虚しくなる。
その状況が耐え難く、夜遅くまで会社に居座っては、使いもしない蝶のコンフェッティを作って時間を潰したりした。

そのまま、大阪公演のため、チャンミンはユノを残して家を出なければならなかった。

大阪に到着しても、ユノがこっそり来てくれないかとチャンミンは期待した。

でも、ユノが来ることはなかった。




続きを読む

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

コールドブリュー

Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR