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正中に放て 弓道編 17

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正中に放て
-弓道編-
17


ランチの後、真面目に試合を観戦し始めたユンホとチャンミンから離れ、歌子は聞き込み結果を報告した。

「虎之介君……チャンミンはクロよ。」

「やっぱりな。ユンホを見る目が乙女過ぎると思ってたんや。」

「でも、友情だと思ってるのか、思いたいのか、恋心だと自覚することを避けている感じ。」

「なるほど。ややこしいな。」

突然、歌子は虎之介の両手を握って見詰めた。

「う、歌子ちゃん?」

「虎之介君……。」

チュー未経験男子虎之介の脳内に、歌子の唇が迫ってくる妄想が花開いたが、もちろんそれは現実にはならなかった。

「チャンミンがユンホ君への気持ちに気付かないように、導いてあげて!」

「あ……え、チャンミンを?」

「その方がチャンミンのためよ。だってユンホ君、女の子が好きでしょ?」

「まあ、彼女おるしな……。」

「チャンミンは友達少ないから、ユンホ君が仲良くしてくれて、きっと変に意識してるだけよ。一時の気の迷いで、ツライ思いさせたくないの。チャンミンは大切な幼馴染だもん!」

「歌子ちゃん……なんて優しいんや。」

「お願いね、虎之介君。」

歌子の潤んだ瞳に見惚れ、虎之介は意を決した。だがその決意は、歌子の願いとは真逆だった。

俺は優しい天使の歌子ちゃんを必ずゲットする。そのためにも、ユンホにはチャンミンとラブラブになって貰いたい。

ライバルにはこのマウンドから退席していただこうではないか。

虎之介は微妙に近すぎる距離で試合を観戦するユンホとチャンミンの後ろ姿にほくそ笑んだ。

待ってろユンホ。
可愛い赤ずきんちゃんは、お前のもんや。

ぱっくりいただくなり、守るなり、自由にしたらええ。お前らは、早いとこできてしまえ!


それからと言うもの、虎之介はチャンミンと会う度、ユンホがいかに格好いいか力説するようになった。

更に、教室ではユンホにチャンミンの人気ぶりをユンホに説いた。

ユンホの話をするとチャンミンは小鹿みたいな目で唇をはみ、チャンミンの話をするとユンホは我がことのように微笑む。

虎之介の思惑は案外簡単に達成されるのではないかと思えたが、この2人は、なかなかに手強かった。



月曜日の部活の時間、来月行われる練習試合のメンバーが発表された。

1年生から選ばれたのはチャンミンただ1人。

「僕なんかでいいんですか?相手は京都の西園寺学園。東高のライバルなのに……。」

不安そうなチャンミンに大河は優しい眼差しを見せた。

「チャンミンは中。後ろに香月と俺が居るから、安心して引けばいい。」

「そうだよ。噂だと、西園寺の中も1年生だって。」

日下部の言葉に、チャンミンはがっくり項垂れた。

「あいつか……。」

東高と並ぶ金持ち私立高の西園寺学園。中等部時代から、弓道部では何度も試合をしたことがあった。

チャンミンが苦手とする少年が、西園寺学園には居たのだ。



「チャンミン君!お風呂お先!」

その夜、フワフワモコモコの白いルームウェアに身を包んだユンホが部屋に声をかけると、チャンミンは机に突っ伏していた。

「ど、どしたの!?頭痛い?お腹痛い?」

「あ、大丈夫です。ちょっと嫌な思い出が甦って……。」

「なに?部活の時からチャンミン君元気ないよね。僕に話してよ。」

前髪を下ろし、黒い瞳を揺らしてピレネー犬の様な無垢な白さでチャンミンを見上げるユンホ。

ああっ……。
かわええ!
ワシャワシャ撫でたい!

こみ上げた衝動を抑えるため、チャンミンは苦い記憶を語り始めた。

「今度試合をする西園寺高の1年生に、鬼頭ってやつが居て……。」

鬼頭はチャンミンの熱烈なファンだった。
はじめはライバル中学の弓道部員同士、たまに試合で会うと話す程度の仲だった。

だがそのうち、まだ幼く妖精のように可憐だったチャンミンに、鬼頭はイカれてしまった。

「毎日のようにメールが届くようになって、休みの日は東中まで会いに来ることも……。」

「わざわざ京都から?」

「ええ。一緒に練習しようって。」

「それだけ?」

「いえ……。ぼ………僕の……。」

「チャンミン君の?」

「ぼ、僕の……ファーストキスを……。」

「ききき、キス?」

「鬼頭に奪われたんです……。」

「奪わ……わわわ、わんっ……!」

ピレネー犬は床に転がった。

「突然抱きしめられて逃げられなくて……。何しろ俺は当時からヒョロヒョロだったから。」

「そそそ、それから?」

「殴ったら泣かれて、いつか俺より弓道が上手くなってまた奪いに来るって言って走り去っていきました。それから1年近く会っていません。」

「その鬼頭君が、今度の練習試合に来るの!?」

「多分。俺の勘が当たっていれば。」

大変だ。
赤ずきんちゃんを狙う狼は、他校にまで居るのか。

ユンホはフラフラと身体を起こし、王子様みたいにひざまずいた。

「だ、大丈夫だよチャンミン君!」

「う……うん……。」

「僕がそばに居て守るから!チャンミン君の唇は奪わせない!」

真っ白な王子様による、プロポーズみたいな宣言。

チャンミンは仰け反りそうになって椅子から立ち上がり、バスルームに逃げた。

「はぁ……はぁ……。何あれ。犬か王子かはっきりして……。」

鏡に映った自分の真っ赤な頬を、チャンミンは手の平で覆った。

「俺はときめいてなんかない!」

心臓がドキドキして止まらない。
顔は赤みを増し、手の平で隠せないほどに広がった。

「ユンホ君……。」

休み時間に虎之介が言っていた。

「ユンホって格好いいよなぁ。王子様みたいにチャンミンを守ってくれてるもんなぁ。あんないい奴、見たことない。男でも惚れるわ。」

確かにいい人だ。
確かにめちゃくちゃ可愛くて、格好いい。

「王子様……。」

チャンミンは湯が跳ね飛ぶのも気にせず、バスタブに飛び込んだ。

「だぁ!違う!違うぞ!人たらしの男に翻弄されてなるものか!」


チャンミンがバスルームでお湯相手に悶絶している頃、ユンホはチャンミンの部屋でフリーズしていた。

「ちゅう……チャンミン君の……初チュウ……。」

チャンミンが鼻息荒い少年に袴姿で羽交い締めにされ、唇を奪われる光景を思い浮かべるユンホ。

生暖かいものが、ついっと唇の上を走った。

「わっ。鼻血!」

白モコウェアに垂れた鼻血を拭き取り、ユンホはフラフラと寝室に入った。

「興奮しちゃった……。」

恥ずかしい。
男同士のキスに興奮するなんて。
これじゃ、狼達と一緒だ。

「おらは狩人。狼はあずさ2号に乗ってどこかへ旅立ってしまえ!」

勤勉なユンホはチャンミンの古典的ギャグについて調べたらしい。

「8時ちょうどの~!!あずさ2号で~!!わたしはわたしはあなたから~!」

興奮を全力の歌にかえた。

「……ん?だめだ。おらが旅立っちゃ駄目だ。」

それにしても、サランちゃんとのチューを思い出しても鼻血なんて出ないのに、チャンミン君のチューを妄想して興奮した自分は何なのか。

ユンホは焦ってスマホを取り出した。

「さ、サランちゃん!サランちゃんに電話しよ!」

驚くことに、日本に来てからユンホは彼女に電話をしていなかった。

数回のコールの後、電話を取ったサランはギャン泣きした。





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Re: No title

Kさん、

お返事遅くなってごめんなさい!
鬼のような忙しさに、「ヤバイよヤバイよ」の呟きが止まりません。
でも、楽しんでいただけて兎に角嬉しい(*´ω`*)
ファンなんて言われると、会ったら抱き締めるから気をつけてください。

Re: No title

◯◯っこさん、

私もヤバイ忙しさ!!!
なかなかお返事できなくてごめんなさい(T_T)
コメントには萌えてますから~!

今は良くても、なかなかくっつかない2人にイライラしちゃうかも。
いつかは幸せにしますので待っててくださいね(〃ω〃)


Re: ....穏やかじゃないねぇ

◯子さん、

近くで彼らを見てたら、私イライラしてぶちギレそうです。
頭と頭を掴んでチューさせそう。

あずさ2号な日々は続きますがどうか呆れないでお付き合いをば……(;´д`)
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コールドブリュー

Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

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