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SPY in the attic 6

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SPY in the attic 6



「どうして……ここに……。」

一瞬幻覚を見ているのかと思った。
こんなに生々しく色気のある幻覚なら、ずっと見ていたい。

そう思えるほど、マックスが心に侵食して絡み付いていることを、ユノは自覚した。

ベージュの生地に黒いショールカラー。
マックスが身に付けると、タキシードがドレスに見える。華やかで匂い立つ。

ユノが気づいたのとほぼ同時に、マックスもユノの姿を認めて目を見開いた。それから顔をしかめ、人波を縫って外に出て行った。

「ちょっと、外します。」

内務大臣の動きを注視しているマシューに断り、ユノはマックスを追った。

玄関前の噴水を回り、マックスは小走りで迷路状に入り組んだ庭園を抜ける。

追い付いて欲しいのか、欲しくないのか。
どちらともつかないスピードで彼は木立の中を進み、ユノの手が届きそうになると鹿のように身を捩って逃げた。

奥のバラ園まで来て、マックスはようやく足を止めた。

「……MI6って、国内でばかり仕事してるの?」

大輪のバラに顔を寄せて匂いを嗅ぎ、振り向いたマックスを引き寄せ、ユノは胸に抱いた。

「毎回毎回、ドラマチックに登場してくれるよな。」

「屋根から登場する人には負けるよ。」

「こんなことが続いたら、恋に落ちない方が不自然だ。」

「……恋だなんて。」

「嘘じゃない。俺の心臓の音、聞こえるだろ。」

胸に耳をあて、マックスは悲しい微笑みを浮かべた。

「こんな偶然、生涯に何度もあることじゃない。運命だと思いたくなる。」

「……ごめん。そんな甘いもんじゃないよ。今夜も仕事なんだ。呼び出されてね。」

「誰?貴族?」

「それは言えない。」

この手に抱いているマックスが今夜誰かに抱かれるなんて、耐え難い。

「やめろよ……。嫌だ。そいつ殺すから教えて。」

「物騒な冗談やめてよ。ユノも、こんなところで仕事?誰を調べてるの?」

「それは言えない。」

「ふふ。もう……お互い様じゃない。」

マックスは視線を落として、儚げに微笑んだ。
ユノは両手でマックスの頬を掴み、夢中で口づけた。

「ん……ふぅ……。」

何度も角度を変えて求め、芯まで蕩けるほど熱く、息継ぎもままならない激しさで、2人は唇を合わせ続けた。

キスの最中、マックスと視線が絡んだ。
マックスの瞳は潤み、ユノを求めている。それなのに、胸に刺さるような悲しい眼差しだった。

遠くから女性達の笑い声が聞こえ、マックスはユノを押しやって離れた。

「もう戻らなきゃ。」

「なぁ。このままいっしょにロンドンに帰ろう。体調悪くなったとか、言い訳なら何とでもなるだろ。」

マックスは軽く首を振っただけで、ユノの言葉を受け流した。

「今度服を返しに行くよ。いつなら部屋に居る?」

「最近は仕事でほとんど帰ってなくて……。夜中くらいしか部屋に居ない。」

「じゃあ、部屋の前に置いておく。」

「そんなの駄目だ。取りに行くよ。」

「あの家には来ないで……。」

「なんで……。」

「仕事してるところに鉢合わせしたら嫌だ。見て欲しくない。」

「待てよ!」

マックスはバラの茂みを背に後退りし、ユノが掴んだ腕をゆっくりと剥がした。

「僕に深入りしない方がいい。」

「もう手遅れだ。」

「会いに行ったりして、僕が浅はかだったね。僕なんかを求めても、ユノには何のプラスもないよ。嫌な思いしかさせられない。リスクだって大きすぎる。」

「プラスとかマイナスとかそんなことどうでもいい。惹かれてるんだ。」

マックスは何度も首を振った。

「駄目だよ。ほんとに、駄目だ。僕はどうかしてた。遊びじゃないなら、もう会わない方がいい。服は誰かに届けさせる。」

「嫌だ!お前が返しに来ないなら服なんかいらない!」

ユノがもう一度掴もうと伸ばした腕をかわし、マックスは走り去った。

「俺は……そんなの、嫌だ。」

会えないのも、今夜彼が誰かに抱かれるのも、嫌だ。

マックス。
お前だって、俺に会えて嬉しそうだったじゃないか。
あんなセックスして俺の身体に忘れられない快楽を刻んでおきながら、深入りしないでだと?

「ふざけるな……。手遅れなんだよ。」

ユノはマックスが嗅いでいたバラの花を握った。指先にトゲが刺さってぷくりと血液が丸い玉を作る。
それでも、ユノはバラを握り締め、手の平まで垂れた血をそのままにした。



ユノが戻った頃には、広間ではダンスが始まり、一層華やかな雰囲気が広がっていた。

壁際で下を向いていたマックスに、セバスチャンが何か話しかけている。

「おい。あの美形の男、誰だか知ってるか?」

マシューの問いにユノは首を振った。

「知らないな。」

「異様に美人だな。セバスチャンの知り合いか?1度会ったら忘れられない顔だが。」

「そうだな……。ちょっと後をつけてみるよ。」

止せばいいのに、ユノは広間を出たマックスを尾行した。

マックスは階段を上がり、2階のホールで立ち止まって左右に繋がる廊下を眺めた。それから床に視線を落とし、左の廊下に進む。

長い廊下の先まで、一定のスピードで歩く後ろ姿を、ユノは階段横の銅像の陰から見つめた。

マックスは背後を確認し、扉を開けてするりと中に消えた。

一番奥のそこが今夜のマックスの仕事場。
部屋の中で行われる行為は、1つしかない。

階段のホールで、ユノは暫く椅子に腰かけて項垂れていた。

通りかかった召し使いが心配そうにユノに近づく。

「お客様。ご気分がすぐれませんか?」

「……失礼。ちょっと酔いをさましてました。トイレはこの階にありますか?」

立ち上がったユノに安堵の表情を浮かべ、召し使いは階下へと誘おうとする。

「こちらの階はゲストルームですので、下の階のバスルームをお使いください。」

ゲストルーム。
要は寝室だろ。
改めて言葉にされると胸くそが悪い。

誰が相手だ。
貴族のボンボンか。まさかセバスチャン?
でもそれならゲストルームを使う必要もない。

知りたくない気持ちと、知りたい気持ちが葛藤した。

俺はバカだ。
知って何になる。

ユノは重い足取りで階段を下りながら、1階のホールで柱に身を潜めるマシューの姿を他人事のよう眺めた。

マシューの視線の先には、内務大臣が居た。

広間の喧騒を抜け、大臣は階段を上る。
踊場でユノとすれ違った顔は、ユノがテレビなどで見知っている爽やかで精悍な彼ではなかった。

右手に持ったブランデーのグラスに視線を向け、頬を紅潮させたにやけ顔に、ユノはごくりと唾を飲み込んだ。

こいつだ。
マックスの今夜の相手は、こいつだ!

この男が、あの美しい身体を今から我が物顔で舐め回し、喘がせ、押し入る。

大臣のくせに。
犯罪だぞ。

自分がマックスとしたことは差し置いて、ユノは怒りに震えた。
バラのトゲに刺された指先が痛んだ。

階段の下まで降りたユノと交代に、マシューが大臣の後を追う。

ユノはそのまま玄関から外に出て、取り出した煙草を吸った。

マックスが入った部屋はカーテンが閉められ、緩いオレンジの光が漏れている。中の様子は外からは分からない。

煙草を踏みつけたユノの元に、マシューが歩み寄った。

「大臣は奥の部屋に入った。今夜は泊まるようだな。」

「……そうか。」

「さっきの美形の男は?」

ユノは一瞬言葉に詰まった。
これは仕事であって、関係が疑われる情報を伝えないわけにいかない。
でも、言えばマックスの身が危険に晒される。

ユノは反対側の部屋を指差した。

「向こうの部屋に入った。」

この夜ユノは、MI6に入って初めて、嘘をついた。




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Re: ダメじゃない!

◯◯りんさん、

激務につき返事遅くてごめんなさい!

翻弄されるユノスパイもかっこいいからお許しを。
ヒリヒリしてる方がユノさんも燃えることでしょう!

色々起こりますが、ちょっとずつ明らかにしていきますねー。

Re: No title

◯◯ミンさん、

切ない雰囲気出しつつも、なかなかの頻度でイチャイチャさせますからご辛抱をー!!!

Re: No title

◯◯っこさん、

あーん。゚(゚´Д`゚)゚。
泣かせてごめんなさい。なんて……簡単には辞めさせませんけどね。鬼。

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Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

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