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正中に放て 弓道編 19

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正中に放て
-弓道編-
19



ユンホは部活の時間に練習ができないからと、毎日部屋でゴム弓を引いていた。

「ユンホ君……俺のせいで、ごめん。」

「チャンミン君は悪くないって!僕……情けないよ。どうして手が出ちゃったのか……。」

チャンミンは、ユンホが彼女と電話していたくらいで冷静さを失い、のこのこシウォンの部屋に行った自分を恥じていたし、ユンホもまた、突然のセクシーシーンに鼻血垂らして興奮してしまった自分を恥じていた。

「ユンホ君、もう少しだけ、左肩下げられる?」

「こ……こう?」

チャンミンが肩にそっと手を添えると、ユンホはドキドキしてしまう。

「そう。肩に力入れ過ぎないで。」

ユンホはゴム弓を引くのをやめ、俯いた。

「ユンホ君?」

「チャンミン君が選んでくれた矢、全然使えない。巻藁の練習で矢を放った時、凄く気持ち良かった。早く、練習したいな……。」

チャンミンも項垂れてしまった。

「ごめん……。」

「大河先輩に、どうしたら許して貰えるかな。」

「そうだね……。正座してるだけじゃ、ダメなのかな。」

大河は、弓を引く以前に大切なことを考えろと言っていた。礼を忘れるなと。

すっかり暗記した礼記射義を、ユンホは何度も反芻した。

「射は仁の道……正しきを己に求む……か。仁は思いやりのことだよね……。」

「周りを慈しみ、感謝を忘れず、争う心を無くして、素直に自分と向き合うこと。意味は分かっても、難しいね……。」

チャンミンの解釈を聞きながら、ユンホは礼記射義の意味を、自分に落とし込もうとした。

弓を引かせてもらえないのは、大河のせいでも、シウォンのせいでも、チャンミンのせいでもない。

自分の心に曇りがあるから、引かせてもらえないんだ。

明日の朝から道場の掃除しよう。
掃除しながら、僕の曇った心を磨こう。道場が塵1つないくらいピカピカだったら、みんなも大河先輩も気持ち良く弓が引けるはず。

「よーし。僕、明日から早起きする。」

「早起き?何するの?」

「内緒だよ!」

「何?教えてよ!」

「チャンミン君……。」

ユンホはへへっと笑ってチャンミンを見つめた。

「な、なに?」

「毎日正座するのはツラいけど、ちょっと嬉しいな。」

チャンミンは首を傾げて目をパチパチさせる。

「嬉しい?どうして?」

「チャンミン君が、敬語を使わなくなってくれたから。」

「あ……。」

チャンミンが初対面の人に使ういつもの手。敬語で作る壁は、気づかぬうちに崩壊していた。

真っ赤になって口をむぐむぐするチャンミンは可愛い。ユンホはこの顔を見るとワクワクしてしまう。

「た……たまたまです!」

「なんだよぅ。いいじゃん!友達でしょ?」

「し、知りません!」

「親友だよね!」

「親友と呼ぶには日が浅い。」

「ユンホ君じゃなくて、ユノって呼んでくれてもいいよ!」

「いや。いいって。」

「いいから呼んでみて!」

ユンホに肩を掴んで懇願され、チャンミンは唇を開けたり閉じたりした。

「ゆ…………ユノ……。」

「ふわぁ……。」

自分でお願いしたくせに、ユンホは頭に血が上って倒れそうになった。

「わっ!ユンホ君?」

「め、目眩が……。」

「きゃーっ!」

肩を掴んだままソファに転がったユンホは、そのままチャンミンを押し倒してしまった。

「ちゃ……。」

真っ赤な顔でクルクルした瞳を揺らし、見上げてくるチャンミン。

ユンホにはシウォンをはじめとした狼軍団の気持ちが何となく分かってしまった。

チャンミン君て……。
ちゅう……したくなっちゃう……。

「チャンミン君!親友の証!」

ユンホは正直に生きる無垢な男子ゆえ、気持ちを偽らなかった。

「ちゅっ!」

ユンホの形の整った唇がチャンミンの頬に派手な音をさせて吸い付き、チャンミンは5秒程気を失った。

「あは。チャンミン君のほっぺってツルツルだぁ。」

頬を押さえてあんぐり口を開けたチャンミンから悲鳴が上がることはなく、更に10秒程経過した。

「ちゃ、チャンミン君!?」

「な、なななな………。」

「な?」

「何をすんじゃーっ!」

ユンホのおでこにチャンミンの頭突きが炸裂し、ユンホの脳にピヨピヨと鳥が飛んだ。

「いっ……いたい……。」

「いきなりチューするとかどーゆーつもり!!」

「だって……日本のアイドルの映像見てたら、ほっぺにちゅうしてたよ?」

「それは演出!ファンサービス!!」

「ええっ!演技なの?韓国のアイドルもよくチューしてるけど、あれも!?ソウルでは普通なのかと……。」

「かかかっ、勘違いするな!」

「ほぇ?」

「男同士でチューはしない!特に日本では、スキンシップもしない!」

「えぇっ。仲良しなのに?手を繋いだり、抱き合ったり、太もも触ったりしちゃ駄目なの!?」

「そう!武井壮!」

動揺のあまり、チャンミンはよく分からないダジャレを吐き出してしまった。

「たけいそう?」

「な、何でもありません。早起きするなら、早く寝たらどうですか。おやすみなさい。」

チャンミンはすたっと立ち上がり、寝室に消えた。

「チャンミン君……敬語に戻っちゃった。」

真面目なユンホはすごすごと部屋に入った後、武井壮について調べ、チャンミンは筋肉男子が憧れなのだろうかと思いながら、腕立て伏せに励んだ。


チャンミンはベッドの上で枕に顔を埋めて暴れていた。

「む、むわーっ!」

「むきゃーっ!」

「ふぐぅー!」

息が切れるまで暴れ、最終的にほっぺに手を当てて丸くなった。

「怖い……ユンホ君に翻弄される自分が怖い……。」

ユンホは人たらしの素質があり過ぎる。
他の男子にチューなどされたら嫌悪感でトラウマになりそうだが、ユンホにチューされて、心が浮わついてしまった。

「冷静に……冷静に……。あれは単なる親愛の証。」

浮かれている時点で自分がユンホを好いていることは明白だったが、チャンミンは懸命に気持ちに蓋をした。

「彼女のいる男にキュンキュンするなんて、洒落にならない。」

チャンミンはある意味冷静で、臆病で、現実的な人間だった。
ユンホへの気持ちを認めたら、自分が傷つくのは目に見えている。

本能的な心の煌めきに方向を見失うのは頭の悪い人間のすること。自ら定めたレールの上を歩き、目的地に達することの方が、チャンミンには大切だった。

「俺は医者になる。命を救う人間が、チューで悶絶してる場合か!」

嫌でも高鳴る鼓動はそのままに、チャンミンは毎日をスケジュール通りにこなした。

朝起きるとユンホは出掛けていて、朝食の時間になっても現れない。

食事を終える頃にやっと汗だくで帰って来て、おにぎり片手に、校舎に向かうチャンミンの警護。

「何してるんだろ……。」

ついユンホのことを考えたがる頭を叩いて、チャンミンは授業に集中した。

休み時間にユンホと虎之介が遊びに来ても、前の授業のノートの見直し。

部活の時間は的だけを見た。
背後で足の痺れに顔を歪めるユンホが視界に入っても、すぐ目を閉じた。

夕食が終われば部屋に籠って勉強。
イヤホンをしているせいで、ユンホが話しかけても気づかない。猫足バスタブの歌も聴こえない。

「なんて心穏やか……。」

ユンホがゴム弓を離す音もシャットアウトしたことで、チャンミンはユンホが日本にやって来る前の生活スタイルに戻っていた。






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Re: No title

◯◯ミンさん、

大丈夫ですかー!?
季節の変わり目と年度の変わり目恐るべし。
早く元気になってくださいね。
きっともうすぐ空気も美味しくなるし。

かくいう私も絶賛仕事中です←コメ返を息抜きに利用(;´д`)

武井壮。ふざけてすんません。

Re: No title

◯◯っこさん、

circleコン、もちろんオーダーしましたー!
観る暇ないから、明日婚の写真集だけ眺めて過ごしてますけど。
ユノの男の顔と、ふとした瞬間すら美しいチャンミンに「ほげーっ」としか感想が出ない。

circleコンはもっと男らしく美しいなんて、もう言葉が出ない自信ありです(〃ω〃)

ああ。
早く4月にならないかな。
もう疲労マックス!!
肌荒れもマックス!!
もうすぐビギイベだというのに、大丈夫か私……。自分磨きの時間が欲しいですー。

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Re: No title

◯◯っこさん、

オンリーの方って、余程ユノなりチャンミンなりが好きなんでしょうね……。嫉妬みたいなんあるのかしら。さっぱり分からないですけど(;´д`)

2人が信頼しあってるのに、どちらかをけなすことがどうしてできるのか不思議です。
どちらも素敵じゃなかったら、東方神起としてあんなに輝いていられるはずないのに……。ま、色んな人がいらっしゃるから仕方ない(T_T)

しかしcircle婚生で観たいです!!

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コールドブリュー

Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

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