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SPY in the attic 7

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SPY in the attic 7



ユノは努めて冷静に振る舞った。

「内務大臣とセバスチャンは?あれから接触しましたか?」

「いや。接触なしだ。でも伯爵と書斎で何か話していた。」

「内務大臣と懇意なのはセバスチャンじゃなくて父親の方ってことですか……。」

「伯爵は貴族院の重鎮だ。政治家同士、話し込むこともあるだろう。」

「そうですね……。」

ユノは2階の部屋を見ないようにしていた。見たら最後、部屋に押し入って大臣を殴り、警察に突き出してしまいそうだ。

こんな状態じゃ、マックスだって相手にしてくれるはずない。
大人になれ。
マックスの言う通り、プラスのことなんて何もない。マイナスの感情に振り回されて、我を失いそうな自分を押し止めた。

「これ以上ここに居ても収穫はなさそうだな。」

酔っ払った若い男女のグループが庭に出て鬼ごっこを始め、マシューは呆れてため息混じりだ。

「そうですね。俺達の顔がセバスチャンに割れてないってことは、イアンはMI6の情報を裏に流していないのかもしれません。」

「もしくは、セバスチャンは小物で、情報を知らされていないだけか。」

でも、だったらマックスの家を出た朝、ユノを追ってきた男達は何だったのか。

「どうも釈然としません。チームの調査情報を1度擦り合わせたいですね。セバスチャン以外を洗った方がいいのかもしれない。」

「ああ。今夜はもう帰って、明日長官のところに行こう。」

マシューの言葉にユノは頷いた。
ここに居たくなかった。

車に乗り込む直前に一瞬見上げた部屋は、明かりが消されて暗かった。

脳内に再生された、暗がりで絡み合うマックスと大臣の幻覚を振り払うように、ユノは猛スピードで車を走らせてロンドンに帰った。



アパートに戻り、今は何もかも忘れて眠りたいとベッドに入ったユノは、すぐにけたたましい電話の音で入眠を妨害された。

「……はい……。」

「ユノ!今すぐタワーブリッジに行け!イアンが見つかった!」

長官からだった。

「タワーブリッジ?こんな時間にテムズ川ですか?」

「イアンが……川に浮かんでたところを発見された。」

ユノの背中に冷気が走った。

「……彼は、死んで……。」

「ロンドン市警察に話は通した。早急に遺体を確認しろ!」

タワーブリッジのたもとに集まったユノとマシューに、イアンの捜索をしていたベンも合流した。3人は、遺体の惨状に驚愕した。

眼球を片方抉られ、手指も一部損壊。
水に入ってから時間がたったのか、全身の膨張も酷い。

人間とは思えない姿だった。
死体に慣れた警察も、思わず目を背けている。

「何故拷問されてるんだ……。」

スパイと言っても、小説の世界と違っていつも死体と接しているわけではない。ユノ達の主な仕事は情報の収集であって、殺し屋ではない。

ベンは両手で顔を覆った後、気を取り直して死体の脇に膝を落とし、観察を始めた。

ベンはユノと同年代の若く有能なスパイ。ダークブラウンの髪に顎髭を生やしたスタイリッシュな男前で、とてもMI6で働いているようには見えない。

ユノに運動能力は劣るが、頭の良い彼との情報交換は身になることが多かった。
1度エジプトの情報収集で同じチームになる機会があってから意気投合し、ユノとベンはたまに飲みに行く仲だった。

「死んだ後にテムズ川に投げ入れられたとして……。一旦沈み、腐敗して浮かんだ。このどぶ臭い川では腐敗は早いから、数日前。でも、水温が低いから、長く見積もると1週間前ってところだな。」

「死後数日から1週間……。でも、単に投げ入れるなんて、お粗末だな。浮かぶのは分かってるのに。」

「わざとじゃないか?わざわざ発見させて、何か伝えようとしてるとか。敵は動いてる。これは俺達への挑発かも。」

「拷問の理由は何だ。敵はイアンから何を聞き出そうとしたんだ……。」

呻いたユノに、ベンが1冊のノートを差し出した。

「今日、イアンの部屋でこれを見つけた。調査の内容が綴られている。床の下に隠されていたんだ。彼は、1人で調査をしていたみたいだ。」

受け取ったノートを開き、ユノは手早くページをめくる。

「イアンは外務省内にスパイの存在を疑っていた。自分の行動が、ソ連に筒抜けになっている状況が記されている。」

「写真に写っていた男か?」

「まさしく。彼に話した予定がバレて、危うくベルリンでKGBに拘束されそうになったことがあったと。」

ユノは眉をしかめた。

「おかしいじゃないか。どうしてそんな重要なこと、報告せずに1人で調査を?」

「このノートには、恐らく2冊目がある。外務省だけじゃなく、MI6内も疑い始めたところで終わっているんだ。」

ユノはイアンを調査していた何ヵ月かを思い返した。彼はベルリンで仕事をすることが多かった
が、その間に気になる動きはなかった。

ロンドンに戻ってから、彼は秘密裏に調査をしていたってことか。

MI6内に遅くまで滞在することが何度もあったイアン。仕事熱心だと感心していたが、イアンもまた、MI6内で2重スパイを探していたのだ。

「イアンは何かを掴んでた……。核心に迫ったところで、俺が全てを駄目にしたのか……?」

唇を噛んだユノの背中を、ベンがそっとさすった。

東欧諸国でKGBの拷問を目にしてきたマシューも、仲間の無惨な姿に怒りで頬を紅潮させていた。

「やっぱり……最初からイアンが敵の仲間だなんて信じられなかったんだ……。どうしてこんな目に!」

同じ地域を担当していたため、イアンと縁が深かったマシューの怒りは大きい。
彼の怒りが、ユノには自分への怒りに思えた。

後悔で押し潰されそうだ。
イアンを調査していたのに、何も気づけなかった。

会合を撮影したせいで、イアンを窮地に陥れたのは自分かもしれない。俺とグルだと思われたんじゃないのか?

自分はマックスに助けられて無事だったが、イアンは拘束され拷問された。

ユノが甘い夢を見てマックスの身体に溺れていた間も、イアンは苦痛に耐えていたのかもしれない。

あまりに辛い現実だった。
吐き気がした。

ユノはマシューとベンの背中を押し、警察の輪から離れた。

「俺がイアンの調査をしたのは、彼が2重スパイのだというタレコミがあったからです。長官からの直々の依頼だと、上司に聞きました。」

「タレコミってのは、誰から……。」

「確かな筋からだとしか聞かされませんでした。」

マシューは小さく頷いてユノを見つめた。

「情報源が怪しいと?」

「ええ。だから、それを聞きたい。長官に会いに行きましょう。」

3人はMI6本部に向かった。
空は白み始め、ビッグベンの鐘が朝5時を告げていた。

長官は部屋で3人を待っていた。
イアンの遺体の状況を聞いた彼は、拳でデスクを叩いた。

「長官。イアンが2重スパイだというのは、誰からの情報ですか。彼は2重スパイでは無かった可能性が大きい。俺が調査していた間も、東側との怪しい接触などありませんでした。あの会合までずっと。」

「偽情報に踊らされた。いや、罠にはめられたって言いたいのか?」

「はい。誰かがイアンを陥れたのでは?」

長官は煙草に火をつけ、しばらく考え込んだが、半分ほど吸ったところで灰皿に煙草押し付けた。

「誰か、じゃない。」

「は?内部からのタレコミって言うのは、嘘だったんですか!?」

「情報は……ある組織から受けた。」

長官の深刻な眼差しに、ユノは緊張した。

「ユノも、みんなも、これはトップシークレットだ。どこにも漏らすなよ?」

3人は無言で頷いた。

「情報源は、MI5だ。」

「……MI5?」

「MI5の長官からの情報だったんだよ。だから、信じた。」

「そんな……。どうして……。」

ユノは混乱した。





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Re: 可哀想に。

◯◯りんさん、

やーん。訃報にも関わらず、旅気分感じていただけるとは。ありがたや。
私も書きながら旅してます。

今度仕事でオーストリアに行くから、なんか使えたらいいなぁ。
ベルリンは馴染みあるんですけど、東は全然行ったことなくて、プラハも憧れです(〃ω〃)

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Re: root

今更のお返事で申し訳ありません!!遂にSPYも本日最終回を迎えます(;´д`)かなり苦しんで書いた物語。脱力感はんぱない。ユノの葛藤とハラハラが伝わっていたらいいんですけど。

Re: こんばんは。

◯レンさん、

素敵なお仕事されてるんですねー!英語堪能になりたい。私は必要にかられて頑張ってはいますが、めちゃ苦労してます。
そんな方に映画みたいって言っていただけると、幸せでほわーんとします(*´∇`*)

苦しんだ作品が終わっちゃう時はいつも寂しくて、でも今は脱力してます。しばらく抜け出せないかも……。





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東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
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