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正中に放て 弓道編 21

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正中に放て
-弓道編-
21



さっきまでユンホの胸の中でおいおい泣いていたくせに、チャンミンは素の状態で抱き締められると叫んでしまう癖があるらしい。

「うふ。チャンミン君てほんと可愛いね。」

チャンミンをぐいぐい左右に揺らして抱き締めるユンホ。

それを、道場の外から歯ぎしりして見つめている影があった。

「ゆ、許さん……。俺のチャンミンを……。」

食堂に現れないチャンミンを探して校内をさ迷ったシウォンは、はらわたが煮えくり返る光景に遭遇してワナワナ震えていた。

「決闘だ。決闘を申し込んで、こてんぱんにしてやる……。」

更にその姿を後ろから観察していた虎之介は、にやけた。

「おもろいことになってるわ。チャンミンは可愛くてええ感じやし。シウォン先輩が競ってくれたら、ユンホもその気になるかもしれへん……。」

虎之介は、歌子に連絡を入れた。

『週末にうちの高校で弓道の試合あるから、観に来ない?』

すぐ返事があった。

『今週末は部活があるの!チャンミンのこと、しっかり監視しといてね!』

なんや……。
つまらん。

歌子に会えないことを嘆いた虎之介だったが、その代わり、海を渡って1人の女子がやってくることを、この時はまだ知らなかった。



次の日の早朝、一緒に道場の床を磨いているチャンミンとユンホの元に、大河がやって来た。

「おはよう。見事に綺麗だな。床に朝日が映ってる。」

「おはようございます先輩。練習ですか?」

「いや。」

大河はユンホの前に膝をつき、ぽんと肩を叩いた。

「ユンホ。今日から弓を引いていいぞ。」

「えーっ!ほんとですか!?」

「ああ。それと、1年生の代表はお前にする。」

「へ?」

きょとんとするユンホの腕をチャンミンが掴んだ。

「ユンホ君!凄い!」

「何が?どういうこと?」

「学年のリーダーは、将来の主将候補だよ!」

「へ!僕が!?」

「そうだよユンホ。お前なら安心だ。厳しくして悪かったな。」

大河の黒髪にオレンジの朝日が反射して、ユンホは見とれた。

「仲間を守ろうとする気持ちと、誰かを恨むことなく、みんなのために道場を磨く気持ち、どちらも持っているお前が、いつか主将になる日が楽しみだ。」

「僕が、大河先輩みたいに主将に……。」

「期待してるよ。あ、でも、いくらチャンミンを守りたいからって、猫パンチは駄目だぞ。」

ユンホとチャンミンは顔を見合せ、うふふと笑って肩を寄せた。

「はー。大河はいいとこ持ってくよねぇ。」

「あ。日下部先輩。おはようございます!」

日下部が拗ねた顔で道場に入ってきて大河を小突いた。

「大河ったら、最初からそのつもりだったわけね。」

「まあね。これは、個別のリーダー試験。」

「だったら僕には言ってよ!」

「香月に言ったら、すぐバラすだろ。お前は優し過ぎるんだよ。」

「バカ……。言ってくれたら喧嘩せずに済んだじゃない。」

「……怒った顔も好きなんだ。」

「も……もう!」

見つめ合う大河と日下部からピンクのオーラがむんむんと出ている。視線の絡まりに大人のエロスを感じ、ユンホは大きく目を見開いた。

「ゆ、ユンホ君!今日は掃除は終わりにしよう!」

チャンミンはユンホを引っ張って道場を後にした。ユンホはピンクオーラにあてられて興奮気味だ。

「大河先輩って格好いい!あんな男になりたい!僕、大河先輩を目指す!!」

「ユンホ君が……大河先輩に……?」

ユンホを大河に、自分を日下部に重ね、エロスたっぷりに見つめ合う姿を思い浮かべたチャンミンは、ぼんっと赤くなった顔を隠そうと、床を拭いていた雑巾で顔を押さえた。

「わ!間違えた!」

「ええーっ。チャンミン君何してるの!?」

「えっ。ちょっと鼻水が。」

「もう。雑巾で拭いちゃだめだよ。はい。ティッシュ。」

ティッシュも常に持っているのか!
ポケットをぽかんと見つめたチャンミンに、ユンホは少し赤くなった。

「女の子みたいかな?田舎のおばあちゃんに毎日言われてたから癖になっちゃって。ハンカチ持ったか、ティッシュ持ったか?って。」

「ううん。ありがとう。貰うね。」

「拭いてあげるよ!」

「ふがっ……やっ……やめて!」

ユンホとじゃれ合って歩くのはくすぐったい。
でも楽しい。
ウキウキして自然と笑顔になってしまう。

チャンミンは浮かれて、しばし忘れていた。
鬼頭のことも、ユンホの彼女のことも。



週末の土曜日、西園寺学園弓道部員を乗せた大型バスが東高の門をくぐり、道場横の駐車場に到着した。

出迎えた東高弓道部員一同に、西園寺学園の主将が挨拶する。

チャンミンの視線から、ユンホはすぐに鬼頭が分かった。

上下黒色の胴着袴を身につけた西園寺学園の中でも、際立って体格がいい少年。

高校生の域を超えた鬼頭の筋肉質な身体。筋トレを欠かさないユンホと比較しても、上腕も胸板も倍はありそうだ。

あんなのに細っこいチャンミンが襲われたら、とても逃げられそうにない。

「鬼頭君て、ごついんだね。」

チャンミンは驚いていた。

「前はあんなんじゃなかったのに。相当鍛えたのかな……。」

鬼頭は1年をかけ、チャンミンを負かす射手になり心を奪うべく、肉体作りから取り組んでいた。

挨拶が終わると、鬼頭はチャンミンに歩み寄った。

「チャンミン……久しぶり。」

体つきに似合わず、つぶらな瞳を潤ませて鬼頭は握手を求める。

おずおずと差し出したチャンミンの手を両手で握り、鬼頭は真っ赤になった。

「俺、あれから頑張ったんだ。今日は負けないから。」

チャンミンの手を離す気配のない鬼頭に、ユンホは握手を求めて引き剥がした。

「はじめまして。東高1年生のユンホです。チャンミン君とは寮が同室なんだ。」

「ど、同室!」

鬼頭の分厚い唇がひきつる。

「鬼頭君、試合に出るんだってね。すごいな!僕はまだ初心者で、的前に立ったことなくて。勉強させてね。」

ユンホの屈託ない笑顔に、鬼頭はほっと表情をゆるめた。

「お、おう!」

それぞれの主将から掛け声がかかり、鬼頭から離れてチャンミンははあーっと息を吐いた。

「大丈夫?」

「うん。大丈夫。」

ユンホが気にかけて見ていてくれる。
鬼頭の存在は億劫なものではあるが、チャンミンは案外落ち着いていられた。

ユンホは2年生の先輩と共に西園寺学園の一同を案内し、試合の準備に勤しみながら、鬼頭から視線を外さないようにしていた。

チャンミンは高等部に入ってから初めての試合だ。落ち着いてみえても、きっと緊張している。雑音に惑わされず、弓に集中させてあげたいとユンホは願った。

試合が始まる前、ユンホは最後まで巻藁練習をしていたチャンミンに声をかけた。

「チャンミン君。」

「なに?」

「何も考えなくていいけど、もし集中できなくなったら、目を閉じて一緒に礼記射義を暗唱しない?」

「一緒に……?」

「うん。心の中で。チャンミン君が目を閉じたら、僕も一緒に唱えるから。」

チャンミンはユンホを見つめ、瞳を揺らした。

「うん……。分かった。」

「抱き締めたいんだけど、今抱き締めたら叫んじゃう?」

「だ、抱き締めなくていい!」

「なんで。応援のハグだよ。」

「結構です!」

道場に戻ろうとするチャンミンに手を伸ばし、ユンホは矢尻を薬指と小指で握っている右手をきゅっと握った。

弓懸をしていてユンホの手の温もりは伝わらなくても、チャンミンにはその思いやりがしっかり伝わった。





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Re: No title

◯◯っこさん、

リアルが素敵だから妄想も羽ばたくんですよねー。ほんと2人に感謝です。
あんな素敵な人間が生きる世界に乾杯(〃ω〃)
プロフィール

コールドブリュー

Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

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