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SPY in the attic 8

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SPY in the attic 8



国外の秘密情報を扱うMI6に対して、MI5は国内の情報を扱う内務省管轄の保安局。

そのMI5が何故イアンをスパイだと?
半年も前に?
どうしてMI5が出てくるのか分からない。

ユノはイアンが残したノートをめくった。

「当時、イアンは外務省職員を疑い始めています。奴が疑われていることに気づいたとしても、MI5には何の関係も……。」

いや、待てよ。
セバスチャンか。

発覚を恐れた外務省職員が、仲間のセバスチャンを通じてMI5の管轄大臣である内務大臣に相談したなんてことは……。偽情報を流してイアンを陥れるには、MI5はうってつけだ。

ユノはこめかみを押さえた。

馬鹿げている。それじゃ、内務大臣までグルになってしまう。

「おい、ユノ。何を考えてる。情報が足りない状況での憶測は良くないぞ。」

マシューが肩を掴んで妄想から引き戻した。その通りだ。情報が少ないと、真実を見誤る。

「外務省を調べている2人から何か報告はありましたか?」

「仕事上で怪しい点がないかはまだ調査中だ。ただ、やたらと羽振りがいいらしい。」

「怪しいですね。」

金に目がくらんで情報を流しているのか。

「2冊目のノートはどこに。敵の手に渡っていないといいが……。」

ベンが呟いた。

マシューは長官とMI5へ出かけ、ユノとベンはノートの行方の手がかりを求めてMI6内を走り回った。

さすがに眠気に襲われてアパートに戻ったのは夜だった。

アパートのキーをポケットから取り出して階段を上ったユノは、ドアの前に置かれた紙袋に気づき足を止めた。

「くそ……。」

マックスはもう会わないつもりか。
服を受け取って、この出会いを無かったことにするなんてできない。

内務大臣やセバスチャンとの繋がりがあるマックスは、最早偶然出会っただけの男娼ではない。

調査対象。

マシューにもベンにも言えないままの彼の存在は、自分が調べるしかない。
ユノは紙袋を掴んで車を走らせた。

パディントン駅周辺は夜でもまだ往来が多かった。マックスの家の前の道に差し掛かり、ユノは見覚えのある黒い車を目にして咄嗟にハンドルを切るのをやめた。

スーツ姿の男性2人が乗っている。
先日ユノを追ってきた2人と同じかは定かでないが、確かに車はあの時のものだ。

「なんでまだこんなところを張ってるんだ……。」

道路の反対側から様子を窺うが、男達は談笑している。スパイらしからぬ雰囲気に、ユノは首を捻った。

KGBでないのは確実だ。
緊迫感に欠けている。

「あいつらも調査する必要があるな。」

コーヒーとサンドウィッチ片手にマックスの家の前の通りを眺めている男達の視線を横目に、裏道に入って車を停め、ユノはビルの間を抜けてアパートの外階段を上った。屋根登りはすっかり慣れたものだ。

「煙突掃除人にでもなった方がいいかもな。」

音もなく屋根を伝い歩き、マックスの部屋の中を覗く。部屋は暗闇で、人影はない。
窓の鍵は開いていた。

滑り込んだ屋根裏部屋には、ユノの唾液を刺激する料理の匂いが充満していた。
下のキッチンから物音がする。

階段が軋みそうで階下に行くのは躊躇され、ユノは紙袋を窓際に置くと、ベッドに腰掛けた。

ラベンダーのサシェが枕の中に忍ばせてあり、鼻を寄せると仄かに香る。
自分のプレゼントした香りに包まれて眠っているとは、随分いじらしいことをしてくれるものだと、ユノは嬉しくなった。

「眠いし……腹減ったな……。」

ユノは横になって階下の音に耳をすませていた。日常生活の音が、荒んでいたユノの心に染みた。

うとうとしかけた頃、ギシギシと階段を踏む音がして、マックスが屋根裏部屋に入ってきた。

真っ暗な部屋の明かりをつけることなく、デスクに置いてあったシガレットケースを掴む。

窓からの薄明かりにぼんやり浮かんだ紙袋を見つけ、マックスは窓に駆け寄った。
バンっと大きな音をさせて開き、身を乗り出して辺りを見回す。

面白い。
ユノはこみ上げる笑いを必死で殺し、肩を震わせた。

だが、愉快な震えは、マックスの次の行動で愉楽の身震いに変わった。

マックスは紙袋からユノのシャツを取り出し、ため息を吐いた後、俯いてぎゅっと抱き締めたのだ。

心臓を掴まれ、息が止まった。
マックスの表情は分からなくても、ユノが居なくて落胆しているようにしか見えない。

「ユノ……。」

か細いマックスの呟きは、ユノに確信を与えた。

そんなに寂しそうな声で名前を呼ぶのか。
ベッドから飛び起きて、ユノはマックスを背後から抱き締めた。

「ひっ!」

一瞬ひきつったマックスは、すぐにユノだと気付き、烈火の如く怒り始めた。

「心臓止まるかと思っただろ!窓から出入りするのも、勝手に潜むのもやめてくれない!?」

ジタバタしたって、さっきの可愛い様子は全て見させてもらった。ユノはマックスが愛しくて堪らなかった。

「鍵開けて待ってたんじゃないのか?」

「ちがっ……開いてたのはたまたまだよ!」

「俺が居なくて寂しそうだったくせに。」

振り向かせて見つめたマックスの瞳は潤んでいた。薄明かりでも、彼の大きな瞳は煌めく。

ユノは夢中でキスした。

「ユ…ノ……。」

「ん……はぁ……。」

甘くてとろけそうなキスは、客とするものとは違うはず。ユノはそう信じた。

内務大臣に抱かれたマックスの身体の線の細さを抱擁した腕に感じれば感じるほど、ふつふつとぶり返す嫉妬と嫌悪感。

だが今はそれを表に出すタイミングではない。
ユノはマックスの髪を優しく撫でて、甘えてみせた。

「お腹すいた。何か作ってた?」

「シチューでよければ一緒に食べる?」

マックスはユノの手を引いてキッチンに降りた。

小さなダイニングテーブルの上にシチューとバケットを用意し、向かい合って座る。

「どうぞ。召し上がれ。」

口に入れると、野菜の甘味が広がり、ユノは思わず微笑んだ。

「美味しい。すごく美味しい。」

「ふふ。良かった。」

すぐに完食してしまった皿にシチューを注いでくれるマックスの細い腰に目を奪われつつ、ユノは室内を観察した。

キッチンは調理直後にも関わらず無駄なものが置かれていない。良質な調理器具が壁に整然と並んで、小さなレストランのようだ。

食器はシンプルな白だが、ウェッジウッドのボーンチャイナ。カトラリーはミントンで統一されている。

「随分いいものが揃ってるんだな。」

バケットをシチューに漬けて頬張ったマックスは、眉を少し下げた。

「品定めしないでよ。貰い物。」

プレゼントかよ。プレゼントがこんなに統一して揃えられるなんて、随分入れ込まれている客が居るのだろう。

ユノは表に出そうになる嫉妬をシチューと共に飲み込んだ。

食後はコーヒーをポットに入れて屋根裏に持ち込み、煙草をくゆらせながら好きな音楽とか食べ物とか、どうでもいい話をした。

屋根裏部屋のデスクチェアにユノが座り、膝の上にマックスを横抱きする窮屈な姿勢が、くすぐったくて楽しい。

「ソファくらい置いたら?」

「要らないよ。1人だしベッドで十分。」

「俺は?」

「はぁ。入り浸るつもり?」

「当然。俺は君に目をつけた。絶対逃さないからな。こうなったらMI6の意地を見せてやる。」

「深入りしないでって……。ろくなことないよ。」

「抱きつきながら言っても説得力ゼロだぞ。」

長めの襟足をよけて首筋にキスを落とすと、マックスは肩をすくめてふっと笑う。

清純な少女のような微笑みに見とれてしまう。

ユノは身体だけじゃなく、マックスの心に深く入りたかった。敢えて早急に求めず、恋人みたいな時間を過ごした。





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Re: なんだか、

◯◯りんさん、

明治神宮、よく通りすぎるのに、入ったことのない神秘空間です。
神社仏閣大好きなんですけどね、いつか攻略したい。

ただいま、今日で終わるSPYの原稿を微修正して、余韻に浸ってます。
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Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

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