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メゾン・シムの住人 26

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メゾン・シムの住人
26


その週の土曜日、チャンミンはユノの部屋の前をウロウロしていた。

ユノに告白されてから2週間足らず。
チャンミンのユノに対する感情は、男とか女とかそんな次元を超え、羨望に近いものに変化していた。

彼を知れば知るほど、計り知れない魅力の持ち主だと分かる。

断れない。
とても答えを出せない。
恋でないとしても、ユノに告白されたなんてことは、奇跡に思えた。

期限が迫り、チャンミンは混乱した。

もしこの混沌とした感情が恋だったとしたら、ユノを振ることは人生最大の失敗になるだろう。

かと言って、30年普通の男として生きてきたチャンミンが、突然同性を好きになるなんて事態、短期間で受け入れられるはずもない。


今ユノは部屋に居る。
朝のランニングから戻り、それからは出て行ってない。
庭の掃除をして見ていたから確実だ。

チャイムを押すとユノはすぐ出て来て、ドアを開けるやごくりと唾を飲んだ。

「チャンミンさん………。」

緊張の面持ちのユノは返事に来たと勘違いしている様子。チャンミンは焦った。

「違うんです!」

「違う……?」

「お願いがあって来ました!」

「あの……ここじゃあれなんで、中にどうぞ。」

玄関先でと思ったが、ユノに誘われるまま、チャンミンはリビングに入った。

「麦茶でいいです?」

「あー!すぐ帰りますから!!」

「そんなこと言わないでくださいよ。あれからゆっくり会えてないし、寂しかったんです。」

「……僕も……。」

「え?」

心の声が漏れてしまった。

「ぼっ、僕も色々考えたんですけど、まだ、まとまらなくて、それで……返事の期限を延長して欲しいんです!」

ユノは麦茶をテーブルに置く手を止め、瞬きした。

「ええ……全然構いません……でも……。」

真っ赤になっているチャンミンに見とれ、ユノも真っ赤になって持ってきたばかりの麦茶を飲み干した。

「それ、嬉しいです。俺のこと、可能性ゼロじゃないんですね。」

『ハーフハーフです。浅田真央選手みたいな心境です。』と、胸の中で会見を開いたチャンミンも麦茶を飲み干した。

「大切な友人だと思ってます……から……。」

「悩ませて……すみません。」

若干シリアスな空気が流れたところで、チャンミンのお腹が「キュルル」と鳴った。

「お昼まだですか?俺、今からカップラーメン食べようと思ってたんで、一緒にどうです?」

「いえ……帰ります。」

立ち上がろうとしたチャンミンの手をユノは掴んだ。

「もう少しだけ、居てくれませんか。」

ななななななななーーーー!!
なんだこの状況!
ユノさん口説きモード入ってる!

雨に濡れてもいないのに髪が暴発しそうになったチャンミンは、目眩を覚えてソファにぽすんと落ちた。

「たまには不健康なものも美味いですよ!カップラーメン、何味がいいです!?とんこつ?味噌?えーっと、これは……あっさり塩?焦がし醤油もありますよ!」

「塩……で……。」

衝動的告白を経て、捨てるものも守るものも無くなったユノは、チャンミンと離れたくない気持ちを思い切り解放した。

「ん……美味しいです。」

「でしょ!?チャンミンさんの手料理には負けますけど。」

向かい合ってカップラーメンを食すシュールな状況はさておき、唇を尖らせて麺をすするチャンミンにユノはドキドキした。

告白の返事待ちの身分だと言うのに、キスしたくて堪らない。

ユノに見つめられて居心地が悪くなったチャンミンは、早々にカップラーメンを完食し、ソファから立ち上がった。

「御馳走様でした。7月中にはお返事したいと思います……。では…お邪魔しました。」

「はい……。」

しゅんとしたユノの顔に心が痛む。
部屋を出るのが悪いことみたいに思えてチャンミンはユノの顔を見ないよう、俯いた。

「チャンミンさん!」

玄関に向かうチャンミンをユノは追いかけた。
振り向いたチャンミンは、森で迷った子鹿みたいな目でユノに尋ねた。

「あの……僕の何が好きなんです?」

「それは……。」

好きの説明は難しい。
でも、この説明次第で返事が左右されるかもしれない。
ユノは審判を前にした被告の気持ちで口を開いた。

「……言葉では説明が難しくて、俺の気持ちを全部伝えることはできません……でも……そうですね……まず、見つめているだけで幸せになります。初めて会った時から、素敵な人だと……。」

「はあ。」

チャンミン裁判長は抽象的な答えは求めていないらしい。

「チャンミンさんがホウキ持って、『お帰りなさい』って迎えてくれたら仕事の疲れがぶっ飛んで、メゾン・シムは我が家だって思えて……。チャンミンさんの作る料理は俺の理想そのままで……。特にカレイの煮付けとガトーショコラは感動しました!あ、でも全部!!全部感動してます!刺身のツマにも感動します!」

途中からユノは止まらなくなった。

「外見がこの世のものとは思えない可愛さなのは最初から驚いてましたけど、でも俺が好きなのは見た目だけじゃなくて……。一緒に居るとドキドキするのに落ち着くんです。あの部屋は、よく大家さん……チャンミンさんのお祖父さんと過ごした部屋で、どこか懐かしくて。チャンミンさんにも、そんなほっとする温かさを感じます。」

遂にユノはチャンミンの手をとった。
びくっとされてもお構い無しに、強く握って訴える。

「山の上でチャンミンさんが泣いた時、俺、心に触れた気がしました。大家さんを……懐かしい人を思い出して泣けるって、とても美しいことだと思うんです。チャンミンさんは美しい人です。だから俺!!」

チャンミンは耳から首まで真っ赤で、呼吸がままならなかった。
早いとこ、この手を振り払って扉の外に出ないと酸欠で倒れそう。

でも、ユノの思いはチャンミンの胸を幸せな動悸で満たしていて、この時間が終わらないで欲しいとも思った。

「まだまだあります……。掃除が丁寧で、食事中に俺が飛ばしたものとか、何気なく拭いてくれて、エプロンが似合って……俺、あのレースがついたグレーのエプロン好きです。えっと、それと……。」

「も、もう大丈夫です!」

「ダメです!まだまだあるんです!ヤスエばあちゃんとも、キドさんとも、ここの住人みんなと仲がいい。カエデちゃんも懐いてる。」

「それはユノさんだって……。」

「俺はここに住んでもう長いけど、チャンミンさんは違うでしょ。チャンミンさんは人に好かれるんですよ。俺だけじゃない、みんなチャンミンさんが好きです。」

ユノの顔が近い。
真っ直ぐにチャンミンを見つめる黒目には何の淀みもなく、通った鼻筋が美しかった。
どんなに自分を好きか、必死で言葉を紡ぐ唇の輪郭は明瞭で、チャンミンはその口元に視線を奪われる。

少しずつ近づく唇に違和感も感じず、見つめていた。

「でも、みんなより…俺が1番、チャンミンさんを好きです……。」

そうゆっくり動いたユノの唇は、チャンミンの唇に重なった。

数秒のキスの間チャンミンは、さっきまでハキハキ動いていたユノの唇が、キスしたらこんなに柔らかいんだなと驚いていた。

「あっ……。」

目が合って、ユノは焦った。

やってしまった。
あんまり見つめられて、吸い寄せられてしまった。

「す、すっ、すみません!!!」

「いえ……。では……お邪魔しました。」

無表情で部屋を出たチャンミンは、外の空気に触れた瞬間ふらついた。

「あ……。」

キスされた。
なんか、ふわっと。

唇に指を添え、感触を思い出す。
脳みそが回って、裏の林の木々が風もないのにザワザワ揺れている。

「目が……回る……。」

チャンミンが廊下を走り、階段を駆け下りる音を聞きながら、ドアの向こうでユノはずるずると床に膝をついた。

「俺の……馬鹿……。」





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東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

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