FC2ブログ

記事一覧

正中に放て 弓道編 110

2019062116134662b.jpg

正中に放て
-弓道編-
110


アメリカでの練習最終日には、ユンホからインターハイの正式メンバーが発表された。

「中は慶太にする。玉ちゃんは補欠としてチームに参加して。」

「はい!!」

2人の返事は晴れやかだった。

合宿中に限界まで練習を続け、的中を伸ばしたのは慶太。玉子石も的中は良かったが、ユンホは安定感よりも慶太の熱意を選んだ。1年生らしい勢いを、チームの中央に据えようと決めたのだ。

補欠として後ろにどっしりと玉子石が控えると思うと慶太は安心したし、玉子石も悔しがりながらも決定に納得した。

「僕の思いも乗せて弓引いてね。」

「ああ!でも、俺がダメな時は、玉子石よろしくな!」

「任せて!」

固い握手を交わす2人を、ユンホは笑顔で見守った。

「玉ちゃんには、これから1年生のリーダーになってもらいたい。」

「え!慶太君じゃなくて僕!?」

玉子石は驚いたが、慶太は拍手し、他の1年生も大賛成だった。

「1年生もチームらしくなってきたな。お前も立派な主将だ。」

大河の言葉にユンホは首を振る。

「大河先輩が厳しく練習させてくれたお陰です。僕はつい甘やかしちゃって。」

「はは。最近の子は厳しいことに慣れてないからな。でも、東高に入学したからには厳しさも必要だぞ。そうじゃなきゃ、いつか社会で挫折する。」

「大河先輩って……本当は何歳なんです?」

「あん?」

香月にもおっさんくさいとよく言われるがこいつもか……。

「俺は小さい頃から社長にこき使われて社会の荒波に揉まれてんだよ!」

「す、すみません!」

「あーあ。大河は説教までおっさんくさい。」

「か、香月!」

日下部の口を押さえた大河の姿に部員のみんなが戸惑いながらも笑い出し、道場は笑顔に溢れた。


次の日の朝、NY観光を希望した部員達は添乗員さんと共に空港に向かい、チャンミンとユンホだけが別荘に残った。

日下部は最後まで「やっぱり大河と離れるのやだ。」とごねていたが、顧問だからとNY行きのグループに付き添った。
夕方には大河達も自家用ヘリでNY入りすると言うのに、空港行きのバスの前で濃厚なキスを交わした大河と日下部には、もう誰も驚かなかった。

ボストン市内を大河に案内してもらうユンホとチャンミンは夢いっぱい。

「2人とも、夢見るのはいいけど大学合格しないと話にならないぞ。」

「もちろん勉強も頑張ります!」

「頑張ったか頑張らなかったかは自分で決めることじゃない。結果で見せろ。」

意気込むユンホに放った大河の言葉はやっぱりおっさんくさかったが、ご機嫌を損ねたくないのでユンホは素直に頷いた。

「はい。でも、大河先輩は日下部先輩と離れたままでいいんですか?」

「いや。いずれこっちに連れてくる。俺も大学始まったばかりでまだ大変だからさ。来年には実現する。」

断言できるほどに、大河は準備を整えていた。

「正式に東雲大学とうちのカレッジは提携校になったし、交換留学生の候補者としてもう香月の名前はあがってる。」

日下部が交換留学を断るはずはない。
今回の合宿で大河はそれを確信した。
離れることをあんなに寂しがる日下部を見ることができて、大河は内心ウキウキしていたし、自分だってそばに居たい気持ちは増すばかり。

ユンホとチャンミンも、2人の気持ちは痛いほど感じ取っていた。

「じゃあ、僕たちがボストンに来たら、休みの日は一緒に弓引かせてください。」

「ああ。そのための道場だからな。待ってるよ。でもその前に、インターハイ見に行くから。つまらない試合なんて見せたら許さないからな。」

「うへ。大河先輩帰国するんですか!?」

「うへとは何だうへとは!」

天下のMITの庭で追いかけっこを始めたユンホと大河に呆れたチャンミンは、大河先輩は日下部先輩と離れて子供っぽくなったなぁと苦笑いした。

おっさんくさくなんてない。
日下部先輩の前で、必死に大人ぶってたんだろうけど、可愛いとこあるんだ。

日下部先輩もそうだ。
変態だけど可愛い。
可愛いって最強かも。

「僕も可愛さ押し出していこっと。もともと可愛い顔なんだし。あは。」

帰りの飛行機で、やたらと上目遣いして甘えるチャンミンにユンホは面喰らったが、あまりに可愛いのでことあるごとにチューした。

「ぐふふ。やっぱり可愛いって強い。」


アメリカから帰国した後、チャンミンの豹変ぶりは校内で瞬く間に噂になり、ストーカー軍団が甦った。
さらに、シウォンのシム愛も再燃した。

食堂で笑顔を振り撒き、頬杖ついて話を聞いてくれるチャンミンの周りには人だかり。
お盆休みの帰省を取り止めて寮に残る輩までいる。

ユンホはぶりっ子赤ずきんちゃんに翻弄される夏を過ごす羽目になった。

勉強に集中しようとしても、机の端に置かれた手紙の束が目に入る。

「チャンミン……これなに!」

「あ、今日もらったファンレター。」

「ええっ!1日で!?」

「内3通はシウォンだけどね。朝、昼、晩それぞれに。」

「なななっ!」

「ユンホ君が気にする必要ないよ。」

「気になるよ!!」

「まとめて古紙ゴミにするから置いてるだけ。」

「ゴミ……いや、それより!そんなにファン作ってどうするつもり!」

「可愛いを分析してるの。夏の研究として。」

「研究!?」

「そう。可愛さがどれだけ人に好印象を与えるかの比較研究。」

チャンミンはPCを開いてユンホに自慢げに見せた。項目毎に10点満点のランキングが表になっているが、項目に大いなる問題がある。

「潤んだ瞳で見つめる、7点。潤んだ瞳で目線を逸らす、8点。小首を傾げる、5点。髪をくりんと弄る、6点。唇を突き出す、6点。笑うとき両手で口を覆う、7点……って、これなんなのどこまで続くの!!」

「今のところ、袖をつんつんして振り向かせる、からのはにかみの合わせ技が最高得点。反応は表情の変化で読み取ってる。」

チャンミンのデスクには心理学の参考書が5冊並んでいた。

「読んではみたけど、やっぱり重要なのは実践と経験だね。」

天才の考えることは意味が分からない。
頭を抱えたユンホの袖をぶりっ子チャンミンはツンツン引っ張った。

「だって、ユンホ君の家族に好かれたいから。可愛さ極めておこうかと。」

可愛い……なんて思ってはいられない。
これはキャバ嬢の思考だ。
でも、結局萌え萌えしてしまい、ユンホは「もー!!」とチャンミンの肩を揺すった。

「そのままでいいんだよ!そのままでチャンミンは十分可愛いし綺麗だしカッコいいし美しいし!」

「まだ全然駄目。最強の可愛さを身につけて、日下部先輩なみに人々を弄びたいのです。」

「弄ぶ……?」

「もとい、好かれたいのです。」

「…………。」

どうしても楽しんでいる気がしてしまうが、チャンミンの可愛い探求は終わる気配をみせない。

弓道場には見学者とカメラ小僧が溢れ、連日試合のような盛り上がり。

「日下部先輩……。チャンミンのせいでこんなことに……。練習に集中できませんよね。」

日下部はにこにこしている。

「日頃から試合の雰囲気に慣れておくことができていいんじゃない?僕のファン達にも許可出して、来てもらおうかな。」

「へ?ファンに許可出すシステムなんですか??」

「うん。勝手に騒がれると困るから、僕の指令で動くように調教してあるよ。」

「調教……。」

日下部はチャンミンの遥か上を行く「可愛い」の巧者。次の日から日下部ファンまで押し寄せ、東高弓道部はインターハイ並みの観客に囲まれることになった。

ユンホは神聖さを失った道場を嘆いたが、緊張しいの慶太には、インターハイの環境に慣れる良い機会になった。

そして、このチャンミンの可愛い道探求がいずれユンホの命を救うことになるのだが、それはまだ遠い未来の話なのだった。




スポンサーリンク

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ポチっとしてくださる皆様。
心温まります。
ありがとうございます!

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

関連記事
スポンサーサイト



コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

コールドブリュー

Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

フリーエリア

スポンサーリンク