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メゾン・シムの住人 27

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メゾン・シムの住人
27


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6月30日(日) 0:30
晴れ


昨日、正確には今から10時間30分前。
ユノさんとキスした。

キスの感触が久しぶり過ぎて、理解するのに時間がかかってしまった。
キスってあんなに柔らかくてフワフワするものだったか。

前にキスしたのはいつだった。
あの金髪美女は……妄想の中の記憶か。
あの黒髪のモデル……あれも妄想か。
あの巨乳は……いや、あれも妄想。

僕のファーストキスはいつだ。
全く記憶にないが、幼稚園の頃だったような。

いや、今それはどうでもいい。
直近の記憶を探ると、ショッキングなことに、大学生の時に数週間だけ付き合ったあの子が最後だ。

大変だ。
10年ぶりのキスだ!!!
そりゃこんなにドキドキもするはずだ。

男性とのキスとか絶対無理と思っていたのに、ふわぷる感覚への衝撃が勝った。いいとか悪いを判断する以前の問題。

何しろ、ユノさんの唇ときたら……。
あれは、なんと言うか……。

禁断の果実。

1度知ってしまったら2度3度と欲しくなる魅惑の味。

って!!何を言っているのだ僕は。
告白の返事もしていないのに唇を奪われるなんて、脇が甘い!!相手は男だぞ男!!

冷静になれシム・チャンミン。動揺しているだけだ。1晩眠れば元通り。妄想と区別がつかなくなるさ。


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翌朝目覚めたチャンミンは、ベッドで仰向けになったまま唇に恐る恐る触れた。
ユノのふわぷる感触は、彼の脳と唇に鮮明に刻まれたまま。

「……あれだ。唇は体性感覚に優れるから。うん。昨日の今日だからな。」

だが、時間経過と共に薄れると予想した記憶は、日を重ねるごとに鮮明になった。
気付けは指で弄ってしまい、数日もすると、チャンミンの唇はカサカサになった。


「チャンミンちゃん。その唇どうしたんだい。接吻のし過ぎかい?」

「せ、せっぷん!」

チャンミンは廊下掃除の最中に白目を剥いた。
あながち間違ってはいないところがヤスエばあちゃんの恐ろしさだ。
接吻はし過ぎていないが、意識はし過ぎている。

「酷く荒れてるじゃないか。軟膏塗ってるんだろうね?」

「……軟膏……?」

「水飴でも塗ってツルツルにしておかないと、次に接吻する時困っちゃうだろ。」

「次なんてないよ。」

「ふぅん。前はあったんだね。」

「うっ……。」

また唇を弄って視線を逸らしたチャンミンに「イヒヒヒ」と笑い、ヤスエばあちゃんは詩吟の会に出掛けた。

ヤスエばあちゃんのアドバイスに従ったわけではないが、カサカサ唇を救済するため、チャンミンは掃除を中断して潤いたっぷりリップスティックを購入しに商店街へ走ったのだった。

「チャンミン。唇ベタベタしてるぞ。」

掃除を再開したチャンミンに、部屋から出てきたムカイが話しかけた。

「ん?そう?」

「あぁ。それより読んだよ7月号の記事。あれ、ユノ君だろ?」

「そう。よく分かったね。」

「あのスタイルは分かるよ。写真も文章も良かった。」

「ほんと?」

「うん。市役所の人も褒めてたぞ。」

「へへ。良かった。」

上機嫌で掃除を終えたチャンミンは、タイムリーに南岡市役所の広報誌担当者から電話を受けた。興奮気味の担当者は、明朝打ち合わせしたいと言う。

朝の電車は億劫だ。
満員電車に乗り込まねばならない。

「たまには早起きするか。」

担当者との約束は9時だが、チャンミンはゆったりモーニングと読書でもしようと、6時台の電車に乗るべく唇にねっとりリップを塗って眠るのだった。


ところでユノはと言うと、チャンミンにキスしてしまった日から、ことあるごとに自分を責めていた。

「ユノ……お前って男は……少しの我慢もできないのか……情けない。」

ブツブツ呟いていつも通り駅に到着したユノは、ホームに妖精を発見した。

こんな早くに何故。
まさか、俺の通勤時間を狙って?
いや、あり得ない。
チャンミンさんが俺の乗る電車を知るはずなんてない。

赤面したユノは、キス以来面と向かって会うことがなかったチャンミンの横顔をホームの柱に隠れてチラ見した。

「あぁ……可愛い……。」

唇を突き出したり食んだり。

自分とのキスを思い出しているのかとユノはドキドキしたが、実際のところ、チャンミンはさっき塗ったリップクリームを広げているだけ。

恥ずかしくて話かけられそうもないと、ユノは1つ離れた乗車口から電車に乗り込み、幸い空いていた車両の1番端の席をゲットした。チャンミンはユノに気づくことなく、反対側の奥に座って見えなくなった。

発車間際、ユノの乗った乗車口にモエが駆け込んできた。ぐずり気味のカエデを抱え、汗だくの彼女。ユノはすぐさま席を譲った。

「モエさん!カエデちゃんと出勤!?」

「それが、今日会社でイベントがあってどうしても早朝出勤しなきゃいけなくて。この時間だと日向町では預かって貰えないから南岡駅にある託児所を予約してあるの。でも、朝からカエデがご機嫌斜めで……。」

「それは大変だね。」

「こんな時に限ってぐずるんだもん。困っちゃうわ。」

静かな車内で会話する2人にチャンミンは気づいたが、キスを思い出して赤面してしまい、そっと身を隠した。

「やだ!!帰るぅーー!!」

「カエデ。静かにしてよ!」

カエデがモエの膝の上でバタバタし、隣の中年会社員が眉をしかめる。
ユノはカエデを抱き上げて百面相するが、カエデはユノの胸にしがみついて泣き出してしまった。

そりゃ嫌だよな。
こんな早く起きてお出かけなんて。
チャンミンはカエデを撫でてあげたい気持ちを抑え、ユノをちらちら見ていた。

暫くしてカエデは眠ったらしく、モエの膝に戻された。静かになった車内では、半数以上の人が眠りに落ちている。

チャンミンも、ついユノを見てしまう自分に「じろじろ見ちゃ駄目だ」と言い聞かせて目を閉じ、そのまま少し眠った。
数十分後、突如カエデが号泣するまでは。

いつしか乗客が増え、カエデの様子が席からは見えない。チャンミンは思わず席を立って車両の反対側を目指した。

「カエデごめんっ!」

ぎゃん泣きするカエデにモエは必死で謝っている。どうやら、眠りに落ちたモエの額がカエデの頭にヒットしてしまったらしい。

車両中の注目がモエとカエデに集まり、反対側の席で眠っていた男性が舌打ちし、声をあげた。

「ガキ連れて朝から電車乗るなよ!迷惑だって分かるだろ!」

男性の横まで来ていたチャンミンは怒号に驚き歩を止めた。

モエは泣きそうな顔でカエデを抱き締めるが、泣き止む気配がない。

「こっちは毎日仕事で疲れてんだよ!俺の貴重な睡眠時間返せ!!」

なんて横暴な。
何か言い返してやりたいが、動けずに立ち尽くしたままのチャンミンが唇をぎゅっと噛んだ時、ユノが振り返った。
ユノは、柔らかい微笑みを浮かべていた。

「ほんとに、嫌になりますね。」

突然の賛同者に男性は怪訝な顔をしつつ頷く。

「全くだ。」

「数十分の貴重な眠りを妨げるなんて、勘弁して欲しいですよね。」

「あぁ。」

ユノはぐっと腰を屈めて男性を見据えた。
その顔にもう微笑みは無く、射る様に細めた瞳で男性を刺していた。

「でも、貴方の数十分の眠りを妨げられた痛みと、彼女の痛みは比較にもなりません。24時間頑張っている彼女と、数十分の睡眠では。」

味方と思いきや敵になったユノを男性は睨んだ。

「ここは公共の場だぞ。静かにするのが当たり前だろ。」

「そうですね。ここは公共の場です。貴方のベッドじゃないし、子供に泣くなと言える場でもない。」

「なんだお前!気持ち悪いな!!」

厄介なやつと思ったのだろう、男性は次の駅に着いた途端、電車を飛び降りて行った。

ため息を吐いて男性を見送ったユノは、見守ることしかできずにいたチャンミンに恥ずかしそうに笑いかけた。

「チャンミンさん。おはようございます。」

その時チャンミンの身体を襲った痺れは、大きかった。
恋以外では説明がつかない、痺れだった。




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コールドブリュー

Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

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