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メゾン・シムの住人 37

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メゾン・シムの住人
37


聖母は壁際に寄り、「どうぞ」と腕を伸ばした。

「え……。」

まさかの腕枕。
想像と真逆の構図にぱちぱち瞬きしたユノは、「早く」と促されてチャンミンの胸に抱かれる形になった。

戸惑ったが、髪をよしよしと撫でるチャンミンの手は滑らかで心地好い。あやされる子供の気持ちはこんなだろうか。

「運転疲れましたよね。ゆっくり寝てください。あ、煙草はもう2度と吸わないでください。禁煙しないとキスしません!」

「チャンミンさん……母さんみたいだな……。」

「ふふ。これでも歳上なんで。甘えていいですよ。」

ユノには甘えた記憶がほとんどない。
いつも厳しい母の前で、いい子にしていた。
迷惑をかけないように、優等生を貫いた。

「ユノ君は本当にそれがしたいの?」
「我が儘言っていいんだよ?」

頼まれる前に察して手伝いをするユノに、小学校の担任の先生はよく聞いたものだ。
いつも周囲の目を、評価を気にしていた。

バカみたいに突っ走ったのは、新任教師になった時。でも、その結果は散々。
世田谷東小学校を辞めた時、母が亡くなった後で良かったと思った。人生初の挫折を、知られなくて済んだと。

でも本当は、甘えたかった。
膝小僧を擦りむいたら泣きたかった。
友達と喧嘩したら、抱きしめて欲しかった。
頭を撫でて、慰めて欲しかった。

チャンミンに一目惚れしてからの素直な自分が、ユノは好きだった。本来の自分を見つけた感覚。
今の自分なら、甘えられる。

「じゃあ……甘えます。」

ユノがそう言うとチャンミンは破顔し、唇をムニっと噛んでにやけた。それから顔を引き寄せて抱き、「嬉しいです」と満足そうに呟いた。

甘えられて、喜んでくれるなんて。
母さんにももっと、甘えれば良かったのかな。

ぎゅっと顔を埋めるユノの頭を、チャンミンは眠るまで撫で続けた。



次の日、ユノとチャンミンはヤスエばあちゃんの見舞いに出掛けた。
4人部屋の窓側のベッドで寝ていたヤスエばあちゃんは、白髪を逆立てる勢いで怒っていた。

「うちの息子の薄情もんが!キュウタロウ買ってきたのは自分のくせに、今更取り上げようってんだよ!!」

「うん……。アパートの話、聞いたよ。」

「なんだいあの子、チャンミンちゃんにも話したのかい。わたしゃまだまだ大丈夫だよ!キュウタロウが天寿を全うするまで死ねるもんですか!!」

「でも……また入院とか、こんなことがあったら……。今回はたまたまお盆だったから息子さん達来れたけど……。」

「キュウタロウは息子みたいなもんなんだよ!滅多に会いにも来ないあの子より……キュウタロウの方がよっぽど……。」

涙ぐんで言葉が出なくなり、窓の方にぷいと顔を向けてしまったヤスエばあちゃんの肩を撫で、チャンミンは後ろめたい思いにとらわれた。

僕が飼うと言えば解決する話。
自分がユノさんと自由に出掛けられなくなるのが嫌なだけ。

病室を出ると、チャンミンは廊下をとぼとぼ歩いた。

「僕が飼ってあげたいです。」

「人生……じゃないか………キュウタロウのこれからの生活にも、チャンミンさんの生活にも関わる決断を簡単にしちゃ駄目です。」

肩を落としたチャンミンを助手席に乗せ、ユノは日向町とは逆方向に車を走らせた。

「理科のヨコタ先生に会いに行きましょう。植物だけじゃなく、生き物全般詳しいから。」

「夏休み中なのに……申し訳ないです。」

「チャンミンさん。自分のことみたいに苦しまないでください。俺も、そういうとこあるから分かります。でも、もう1人で悩むのは辞めたんです。闇雲でいいからどんどん相談して、色んな人に助けてもらいましょう。ね?」

「ユノさん……。」

ユノの微笑みにほっと胸が休まり、チャンミンはペットボトルのお茶を飲んで、「ユノさんも飲みます?」と差し出した。

「か、間接キッス。」

「ちょ……散々キスしてるくせに!」

「興奮します。」

「もー!」

ケラケラ笑ったチャンミンの頬にユノは手を添えた。

「可愛い。笑った顔、好きです。」

「ふぐっ!」

喉から変な音が出たチャンミンにユノは大笑いした。

「ほんと可愛い!!」

チャンミンは両手で顔を覆って恥じらったフリをしたが、その下で涙が出そうなのを堪えた。元気がない自分を笑わせてくれるユノに、感動した。


休日にも関わらず喜んでユノとチャンミンを迎え入れたヨコタ先生は、2人の話を聞いて「そうか……」と頷きながらコーヒーを勧めた。

「インコやオウムには、50年、100年生きるものもいるからね。高齢な飼い主さんが飼えなくなったり亡くなったりって、そんな話最近よく聞くな……。」

「ええ……。悲しいことですね。」

ため息を吐いたユノがコーヒーをごくりと飲み、チャンミンもつられて飲んだところで、暗い空気を一蹴するようにヨコタ先生は膝にポンと手を置いた。

「でも、九官鳥だったのは不幸中の幸いかもね。」

「幸い……?」

チャンミンは首を傾げた。

「うん。最近、九官鳥ってあんまり見ないでしょ。」

「あ、そう言われてみれば、昔はよく飼われてましたけど……。」

「ワシントン条約で保護されるようになったことや、環境破壊とか色んな理由があってね、九官鳥は今や超希少種なんだよ。」

「えっ。キュウタロウってそんな価値のある鳥だったんだ……。」

驚いて目をぱちくりさせているチャンミンにヨコタ先生は微笑んだ。

「まさに。欲しくても手に入らないお宝生物。ヤスエおばあちゃんに定期的に会わせてくれる条件を付けて、近隣で飼い主希望の人を探してみたら?保護団体の人に、九官鳥は新しい家族がすぐ見つかるって聞いたことあるよ。」

「キュウタロウの……新しい家族……。」

チャンミンの頭の中で、キュウタロウが「カァ!」と鳴いた。

「チャンミンさん。ヤスエばあちゃんに話してみましょう。これからも会えるなら、ばあちゃんだって寂しくない。」

かくしてユノとチャンミンは、キュウタロウの家族探しを始めることになった。

とは言え、ツテがなくては難しい。ヤスエばあちゃんが渋々出した条件もかなり厳しかった。

「毎日会いたいって……さすがに無理じゃ……。」

「……まぁ、まずはやってみましょう。当たって砕けろですよ!」

「はぁ……。」

まずはメゾン・シムの住人からあたることにしたが、反応はチャンミンと同じだった。
出掛けられなくなるし、毎日ヤスエばあちゃんに会わせるとあっては生活に無理が生じる。みんな働いているのだから当然のことだ。

1番真剣に悩んだのはキドだった。

「キュウタロウが居なくなったらうちの店はまた閑古鳥……。」

九官鳥の次は閑古鳥……。
シリアスな状況ではあるが、ユノは思わず吹き出した。

「ユノさん……笑ってる場合じゃありません。」

「じゃあキドさんが飼ったらいいじゃありませんか。」

「私は生き物は飼ったことがないんです。毎日ヤスエばあちゃんを訪問する暇もないし。」

キドは包丁を置いて、まな板の上の太刀魚と見つめあった。

「うちにもバイトに来させてくれる人を探してもらえませんか。」

「な!」

条件は更に厳しくなった。
ムカイが日向町のタウン誌に広告を出したらと提案してくれたが、条件を書き連ねてみて、チャンミンはペンを放り投げた。

「こんなのあり得ない!みんな好き勝手言いやがって!!ヤスエばあちゃんを毎日訪問して、魚屋にバイトに行かせるのが条件なんて!アホか!!」

ユノは条件もさることながら、妖精チャンミンの暴言にびくついた。

「……し、詩吟ができるとか、カラスの警戒音が真似できるとか……キュウタロウの凄いところをアピールして……。」

「詩吟とカラスって!喜ぶ人がいますか!」

「う……。まぁ……とにかく掲載だけはしてみましょう……。」

2人は全く期待できない里親募集広告を、次号のタウン誌に掲載してもらうことにした。




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コメント

笑っちゃいました!

毎日楽しく読ませて頂いてます。今は特にメゾンシムのお話が好きで、更新されるのを毎日楽しみにしてます。
このお話はいつもおかしいんですけど、今日は特におかしくて笑っちゃいました!
コブさんは、とってもお忙しいみたいですね。東方神起のお二人よりも忙しいなんて、どんなお仕事なんですか?
お体に気をつけて、頑張ってくださいね!

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Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
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