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メゾン・シムの住人 55

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メゾン・シムの住人
55


チャンミンはユノにリラックスした土日を提供した。甘やかしてくれるチャンミンに、ユノは子供みたいに我が儘をたくさん叶えてもらった。

「チャンミン、アイスクリーム食べたい。」

「昼にも食べたじゃない。」

「夜のアイスは苺味がいいな。」

「ふふふ。もう。はい、どうぞ。」

「食べさせてください。」

「病人じゃないんだから自分で食べなさい。」

「じゃあ、食べさせ合いしよう。」

いつもと違ってやたらと甘えるユノは、外では無理をしているのだろう。
アイスを口に入れてはキスしてくるユノに、チャンミンは優しく応えた。

チョコレート味と苺味のキスにまみれた週末が終わると、チャンミンは月曜日から行動を起こした。

朝から工事の担当者と打合せし、今日は遅くならずに帰ってくるユノのために夕飯を仕込む。
魚屋のバイトは昼に変更してもらって小一時間商店街で過ごした後、電車に乗って海辺のレストランを目指した。

ハルトとナギサに、ユノの過去について聞くためだ。彼らは知っている。そうじゃなきゃ、ユノと付き合うことになった時、あんなに感謝したりしない。

インスタのコメントを見たハルトは、深いため息を吐いた。

「こんなことになるから、ちゃんと話すべきだって言ったのに……。」

ナギサが心配そうにカフェオレとクッキーを出して椅子に座った。

「ユノ君……チャンミンさんにも話してないのね。そんなに恥ずかしいことじゃないのに。」

「あいつ、優等生過ぎるんだよ。全部自分のせいにしてさ、自分が傷つけばいいと思ってる。でも、傷つくのはあいつだけじゃないんだ。あいつを好きな人が傷つく。それを分かってない。」

「あの……全部聞かせてもらえませんか。」

秋の海は淡いブルーを紺色に変え、波打ち際には人気がない。砂浜に降り立った鳥が打ち上げられた海草をつついている。

物悲しい景色を暫く眺め、ハルトはユノの東京での教員時代の話を静かに語った。
レンとその家族との悲しい別れと、南岡へユノがやってきた経緯を、チャンミンはただ事実として受け入れた。

カフェオレのカップに指を添えたまま、話が終わるまで何も言わず、表情ひとつ変えずに聞いた。

「じゃあユノは何にも悪いことなんてしてないんですね。」

ハルトが話し終わってから、ようやくカフェオレに口をつけたチャンミンに、ナギサが優しく頷く。

「そうよ。ユノ君のこと信じてあげて。」

ハルトはチャンミンを真っ直ぐに見つめ、首を軽く振った。

「ユノが過ちを犯したのだとしたら、善人過ぎることだな。」

「善人過ぎること……。」

「ユノは良かれと思ったんだろうけど、本当のことを伝えなかったことで、ユノを勘違いしている人だっているだろ。それが、勘違いしてる人にとって幸せなのか不幸なのか、俺には分からない。」

「そうですね。レン君やクラスの子供達は、ユノが居なくなった後どうなったんでしょう……。」

ユノのお陰でレンの両親は助かっただろう。本当なら、母親の醜聞だ。
でもレンにとっては……。
ユノを慕っていた少年の傷は深いはず。憎んでいるかもしれない。


チャンミンはアパートに戻り、2号室で世田谷東小学校の資料を探した。
知りたいのは、生徒の住所。だが、目的の物はなかなか見つからなかった。

「ダメだ。ヤスエばあちゃんのとこ行かなきゃ。」

キュウタロウをママチャリに乗せて坂を下る。と言っても乗っているのはキュウタロウだけで、チャンミンは早足で自転車を押す。キュウタロウに激しい振動を与えたくない。

こんな時、車があればいいのにと思うが、チャンミンはペーパードライバーで10年以上ハンドルを握っていない。

「チャンミンちゃん。秋なのに汗だくじゃないか。外はそんなに暑いのかい?」

談話室で待っていたヤスエばあちゃんは唖然とした。

「ぜぇ……ちょっと小走りしたから……。」

キュウタロウにフルーツを食べさせるヤスエばあちゃんの姿に、チャンミンは微笑んだ。
癒される。

「忙しいのかい?走ってくるなんて。」

「うん。ちょっと色々調べてて。」

お茶を啜るヤスエばあちゃんにチャンミンは尋ねた。

「ユノがメゾン・シムに越して来た頃のこと覚えてる?」

「あぁ。覚えてるよ。びっくりするくらい男前だったからね。でも……。」

「でも?」

「今ほど明るくなかったね。たまにしんどそうな顔でアパートをフラフラ出て行ってた。悩みでもあるのかと思ってたけど、あんたのじいちゃんと仲良くなってからは、笑顔が晴れやかになって、今とあんまり変わらない。」

ユノは祖父には悩みを打ち明けたりしていたんだろうか。辛かったことも、何でも話せる心の拠り所みたいに。
できれば自分もそうありたい。

「ユノ君がどうかしたのかい?」

「うーん。心の闇みたいなもの、抱えてる気がして。付き合う前から気になってたんだ。突然泣いたり、雨に打たれたり。僕には何も話してくれないんだけど。」

「そうかい……。確かにユノ君はお手本みたいにいい子だから、悩みとか、情けないこととか、外に出せないのかもね。」

「僕はそれ、解き放ってあげたいんだ。小さいの頃からしっかりしてたみたいだけど、本当は凄く子供っぽい人なんだよ。甘えん坊で。」

「チャンミンちゃん……。愛だねぇ。」

「えへへ。」


メゾン・シムに戻ってからも、チャンミンはレンの住所を探したが、一向にそれらしいものは見つからない。世田谷東小学校に関する資料を、ユノは写真以外持って来なかったようだ。

思いきってチャンミンはテミンに電話した。

「チャンミンさん!何か分かりました!?」

「ええ。ユノは不倫なんてしてません。ユノのことをよく知ってる先輩に聞きました。」

事情を説明すると、テミンは安堵のため息を漏らした。失恋した相手のことを心配するなんて、ピカチュウはなかなか可愛い奴だ。

「良かった……。でも、だったら否定すればいいのに……。」

「そこなんです。ユノはなんて言うか……いい人であろうとし過ぎてるような……。」

「あぁ……分かる気がします。ユノ先生は優しくて、いつも完璧で、学校では弱いところも、失敗も、全然見せません。なんか怖いくらいです。」

「やっぱり……。」

「あ、こっちのことは僕に任せてください。事実じゃないなら黙ってられません。噂は僕が否定しておきます。最近子供達の見送りに学校まで来るお母さんが増えたんです。あれ、絶対ユノ先生狙いですよ。あわよくば不倫したい的な!」

「なっ!」

「安心してください。僕のキュートな笑顔で否定すれば、お母さん達はいちころです。」

「キュート……。」

可愛い奴だと思ったのは間違いだった。やはりいけすかない。だが、頼り甲斐はありそうだ。

チャンミンは電話した当初の目的を思い出した。

「テミン先生、学校のつてで、世田谷東小学校卒業生の住所録を手に入れられませんか?」

「住所って……チャンミンさん知ってどうするんです。まさか、会うつもりですか?」

「ええ。ユノが何もしないなら、レン君がどうしているか僕が調べます。」

「会って……どうするんです。」

「本当のことを知らないなら伝えます。」

テミンは絶句した。
チャンミンは気にせず続ける。

「テミン先生って、車の運転できます?」

「は?僕はアメリカ人ですよ。日本では運転したことありません。」

「残念……。では、住所の件宜しくお願いします。」

「分かりました。」

電話を終え、チャンミンはユノの車のキーを手に取ってクルクルした。

住所が分かったとして、電車で東京に行くのは遠い。
新幹線の駅に出るまでに1時間半もかかり、しかもこだましか停止しない駅なのだ。世田谷に到着するには4時間近くかかるだろう。

車で行けば高速で3時間かからない。
今後の生活のためにも、運転できた方がいい。

その晩帰って来たユノは、チャンミンが車を借りたいと言い出して目をぱちぱちした。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

皆様。
いつもメゾン・シムの住人達を可愛がっていただきありがとうございます。

クライマックスに入ったこのお話、残り7話で完結となります。
来週のこの時間には完結してるんだなー、と思うと嬉しくもあり切なくもあり……。

残り1週間、引き続きどうぞ宜しくおねがいいたします。

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ポチっとしてくださる皆様。
心温まります。
ありがとうございます!

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No title

えー!後7話なんですね〜( ´༎ຶㅂ༎ຶ`)メゾンシム!!ユノを助けるためにユノの過去と向き合うチャンミンに愛を感じました( ੭ ˙꒳​˙ )੭♡ピカチュウといつの間にか仲良くなってタッグを組んでユノを助けてあげてね♬︎♡

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コールドブリュー

Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
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