FC2ブログ

記事一覧

メゾン・シムの住人 61

20190717022126b2f.jpg

メゾン・シムの住人
61


チャンミンは朝から緊張していた。

バラで満たされた部屋をウロウロし、テレビの画面をピカピカにしたり、電源ケーブル周りに埃がついていないか確認したり。

室内が完璧と見るや、玄関を出て、丹念に掃き掃除し、庭の落ち葉を拾う。

2階のベランダからムカイが声をかけた。

「チャンミン!クリスマスも掃除?」

「うん。今日お客さんが来るから!」

「へぇ。あ、そう言えばさ、タウン誌の記事の仕事、また頼めるかな。」

「いいの!?」

「南岡の広報誌の記事良かったから、キドさんとこと協力して魚特集したいんだ。料理情報も混ぜて。」

「やる!やる!!」

「OK!じゃあ企画進めとく。」

「ありがとう!!」

幸先よし。
いい日になりそうだ。

お茶菓子は昨日のケーキがあるし、コーヒー豆もジュースも仕入れた。
部屋も綺麗だし、バラは多過ぎて異様だが仕方ない。

今日はヤスエばあちゃんのアパートはクリスマスイベントがあるそうで、キュウタロウの訪問はなし。魚屋も休み。やることがない。

チャンミンはやっぱりウロウロした。



ユノは思いの外早く帰って来た。

「まだ2時前だよ!」

「午後休みにした。早くイチャイチャしたくて。」

「なーっ!何その理由!!」

「昨日の幸せを噛み締めたいから。ね、夕食の前にイチャ……。」

「今は駄目!」

「なんで!?クリスマスは早く帰って来てって言っただろ!?そーゆーことじゃないの??」

「お、お客さん来るから!ユノ格好いい服に着替えて!」

「お客さん??」

「いいから!」

両手をバタバタしているチャンミンにぽかんとして、ユノは首を傾げながらブラウンのニットと黒いスキニーパンツに着替えた。
チャンミンは白いふわもこニットだが、ボトムスはお揃い。

「同じってどうなの。」

「いいだろ恋人なんだから!」

ギャーギャー言い合いしていたらチャイムが鳴って、チャンミンは心臓が飛び出しそうになった。

「はーい。」

ユノが玄関に向かおうとする。

「ちょ、ちょっと待って!」

「お揃いの何が悪い。」

「そうじゃなくて僕が出るから!」

「いいよ俺出るって!」

「ゆ、ユノ!」

ユノは引き続き両手をバタバタしているチャンミンを無視して「はいはい。」とドアを開けた。

そして、固まった。

先にお迎えして、お茶など飲みながら和んだところにユノが帰ってくるシミュレーションをしていたのに予定外の状況だ。
チャンミンはユノの後ろであたふたした。

「ユノ先生……ご無沙汰しております。」

深々とお辞儀したお父さんの横で、レンが恥ずかしそうに俯いている。

「ど、どうぞ!入ってください。」

チャンミンはユノを押し退けて2人を招き入れた。ソファを勧めてお茶の準備に取り掛かった時、ユノが静かに部屋に戻ってきた。

ユノはレンと父親の前に立ち、「あの時はご迷惑おかけして申し訳ありませんでした!」と頭を下げた。

焦って立ち上がった父親も謝罪し、頭を下げ合う。

レンは唇をきゅっと噛んで2人を見上げている。

その時キュウタロウが歌い出した。

「あんあんあん!とってもだーい好きーチャンミーンさーん♪」

何故このタイミングでそれなんだ。
再会が台無しじゃないかキュウタロウ……。

チャンミンは荒んだ顔になったが、レンは大喜びでキュウタロウに駆け寄った。

「わー!やっぱり可愛いねキュウタロウ!やっと会えた。」

「……なんでキュウタロウのこと……。」

呆然とするユノにレンはゆっくり歩み寄る。

「チャンミンさんがユノ先生のことたくさん教えてくれてたから。東京まで会いに来てくれて、毎週手紙くれて。」

はっとしてチャンミンを見つめたユノに微笑みかけ、チャンミンはケーキをカットする。

「僕……ちゃんと中学校行ってるよ。ユノ先生のこと恨んでたけど……でも……どうしてるかずっと気になってた。」

「レン……ごめん。何も言わずに学校辞めて……ごめんな。」

「ひどいよ。毎日一緒に居たのに……突然会えなくなって……。」

「ごめん……ごめんっ!!」

ユノは大粒の涙を落としてレンを抱き締めた。抱き締めたと言うより、しがみついて泣いた。
レンもユノに身体を預け、しゃくり上げて泣いた。

「う……っ……ひっ……会いたかったんだ。ほんとは……会いたかったんだよ先生!!」

「俺も……俺も……会いたかったよ……。どうしてるか……いつも……。雨が降ったら、レンと部屋でゲームしたこと思い出して、晴れたら公園に行ってキャッチボールしたこと思い出して……雪が降ったら……悲しくて!!」

「僕も……雪は……嫌いだ……!ユノ先生の泣いてる顔……思い出すから!」

「クリスマスは……毎年辛かった。」

「うん。僕も。」

「でも……もう辛くない。レンに会えたから。」

ボロボロ泣きながら微笑み合った2人に、父親は頭を抱えて謝った。

「私が悪い。2人を引き裂いてしまって……。」

「お父さんは悪くありません!家族を思えば当然のことです。」

「いえ!私が悪いんです!家庭を顧みず、レンの不登校をそのままにしていたのは私なのに、全てをユノ先生のせいに!あの時……いえ、今まで本当に……、申し訳ありませんでした!!」

ユノは父親も抱き締め、それから3人で手を取り合った。

「あんあんあん!とってもだーい好きー♪」

キュウタロウの歌は終わらない。チャンミンは「もう……」と呟いてケーキを並べた。

「みんなとっても大好きだったんですね。お互いに。」

指についた生クリームをペロッと舐めたチャンミンは、やっぱりユノの妖精だった。
チャンミンが魔法の粉を振り撒いて、ユノの心のしこりを溶かしてくれる。

大切なレンを傷つけまいとしたユノも、家族を守ろうとした父親も、ユノを求めていたレンも、母親だってそう。
みんな好きが拗れて絡まって、頑なになってしまった。

ほどけてしまえば思いは同じ。
大好きだったんだ。

みんなでケーキを食べながら、レンの学校生活の話を聞いた。ユノの学校の話もたくさん聞いた。
話は尽きず、夜まで続いた。

チャンミンはハンバーグを作って振る舞い、レンは「母さんのより美味しい!」とはしゃいだ。

20時近くなり、父親は名残惜しそうに腰を上げた。

「さすがに帰らないと。明日仕事なんです。」

「もうちょっと居たいのに。」

レンは俯いてしまったが、ユノはそんなレンの頭をぐりぐり撫でて、「次は俺が東京に会いに行く」と約束した。

「ほんとに?チャンミンさんも?」

「うん。ご両親が嫌じゃなければ……。」

「もちろんです!妻も……本当は謝りたいって……。みんなでお待ちしてます。」

次の約束ができ、レンは笑顔で車に乗り込んだ。

「チャンミンさんは素敵な方ですね。ユノ先生は幸せ者だ。」

「あ……。」

父親の言葉にチャンミンはたじろいだが、手紙を読んでいるのだから当然2人の関係はバレている。

「実は……それで安心しました。妻のことで年甲斐もなく嫉妬していましたが、これは心配する必要もないなと。」

ユノはくしゃっと顔を歪めて笑う。

「はは……。なるほど。安心してください。俺、チャンミン一筋です。」

「……でしょうね……。」

真っ赤になったチャンミンと笑顔のユノに見送られ、レンと父親は東京に帰って行った。

車が小さくなるまで、ユノはずっと手を振って、海岸通りを右に曲がって見えなくなっても、しばらく遠くを見つめていた。

「チャンミン……。ありがとう。」

前を向いたまま呟いたユノが下ろした手を、チャンミンがそっと握る。

「うん。」

「……俺……情けないな。自分の恥ずかしいとこ、チャンミンに隠して。」

「楽になった?」

「あぁ……。すごく。」

「なら……良かった。」

「チャンミン……愛してる。」

「うん。」

「叫びたいくらい愛してる。」

「……それはやめて。」

「愛してる!!!」

「わーっ!やめて!!」

ユノを引っ張って部屋に押し込んだチャンミンは、今度はユノに引っ張られてベッドに押し込まれた。

「愛してる。」

ユノは凄く小さな声でチャンミンに囁いた。
その掠れた声は、どんな大声よりチャンミンの胸の奥まで届いて、全身に染み渡った。






スポンサーリンク

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ポチっとしてくださる皆様。
心温まります。
ありがとうございます!

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村

関連記事
スポンサーサイト



コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

( Ĭ ^ Ĭ )

私なんて2人ごとマルっと愛してる♡

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

コールドブリュー

Author:コールドブリュー
東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

フリーエリア

スポンサーリンク