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パンタ・レイ 12

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12


毎日遅くまで働き、ビュティアスへのプレゼン内容が固まった日の夜、ユノは久しぶりにケイコと近所のイタリアンで落ち合った。

「仕事頑張ってるみたいね。」

「ええ。楽しくて。でも……毎日チャンミンの帰りが遅いって、ヒナミさん嘆いてないです?帰れって言っても帰らないから、会う時間取れてるのか心配で。」

会って早々、ユノはヒナミの様子を気にかける。

ケイコは理想と程遠い展開に、がっくり肩を落とした。

「チャンミン君、いまいち?好みと違った?」

「いえ……ケイコさんの目は確かですね。悔しいけど。」

「え?」

「ケイコさんの思惑通り、好きになりましたよ……。」

「なっ、何ですって!!?」

だったらどうして恋敵の心配なんてしてんのよ!

テーブルに前のめりになったケイコの勢いに押され、椅子に背中を押し付けたユノは、自嘲気味に笑っている。

「凄くいい奴ですよチャンミンて。会社の女性陣がヒナミさんの悪口言ってるの聞いて、拳震わせて怒ってました。俺……不埒な気持ちで見てるのが恥ずかしくなってしまいました。」

「だからって最初から諦めてるみたいなこと言って!好きならなんで!?」

「俺の気持ちなんて、迷惑なだけですから。彼女を大切にしてるチャンミンには、不要です。幸い仕事は楽しいですし、そばで見てるだけでいいです。」

なんてこと!!
理想の攻めキャラが完璧な相手に恋に落ちたと言うのに、諦めると!?

「そんな弱腰でどうするの。自分の幸せはいいの!?」

「……ケイコさん……俺の恋は実らなくていいんです。」

「どうしてそんなこと……。」

「チャンミンのこと、可愛くて仕方ないんですよ。兄の様に慕ってくれているみたいだから、そのままで十分です。」

「ユノ君て……どうしてそうなの……。彼女が居るからとか、弟みたいだからって……逃げてるだけじゃない!ノンケ美青年を追いかけたいんじゃなかったの!?」

ユノは首を静かに振り、にっこり笑った。

「口ではそんなこと言ってますけど、理解なんてされませんよ。俺は……理解されない存在です。」

絶句するしかなかった。

これが本当のユノだとケイコは気づいた。
明るく温かい笑顔のユノに騙されていた。

本当は、たくさん苦しんで、自分を肯定できずに居る。
理想的な容姿と人格を持っているのに、自信がない。
存在意義を仕事だけに求め、突っ走ってきた。
それがユノだ。

ワイングラスを持つ手に力が入る。
ユノの顔をじっと見つめるケイコに、ユノはいつも通りの笑顔を向けた。

「恋心を隠すのには慣れてます。俺はね……その分仕事に打ち込んできました。お陰で仕事では成功してます。それでいいんです。そう思わせてください。」

「ユノ君……。私……勝手に盛り上がってごめんね。でも……ユノ君には幸せになって貰いたいの。」

「ふふ。ありがとうございます。チャンミンはまだ新入社員で、これから東方堂で頑張って貰わないと。俺はそれをサポートします。」

ユノには、奥手と言う言葉では片付けられない葛藤が心の内にあった。

格好いいユノ。
出来る男のユノ。
そうあることで、ユノは心の均衡を保っていた。

疲れていたのだろう。
「10分だけ……」と壁に凭れて眠ってしまったユノを前に、ケイコはワイングラスを握った。
握ったものの、もう飲む気はしない。

理想のBLカップルを拝みたいなんて、軽い気持ちで盛り上がってしまったが、ずっとゲイとして生きてきたユノは、重い足枷をずるずると引き摺って生きている。

「私……何も分かってなかったのね。情けない。」

これじゃ、相談相手失格だ。

会社にバレてもいいとユノが腹を括っているのかなんて、聞かなくて良かった。
そんな風に思えるわけがない。
普通じゃないと言うだけて、生きにくい社会だ。

自分だって、BL漫画が生きる糧であるなど、同僚にバレたくはない。

ユノがゲイだと打ち明けてくれたことの重みを、ケイコは今更ながら実感した。

何故だか分からないが、ユノは自分を信頼してくれている。
嬉しいじゃない。

馴染みの店員が、何も言わずテーブルにコトリと置いてくれた水を一口飲み、ケイコは深呼吸した。

ただ、ユノに幸せになって欲しい。

最高にいい男なのよ。
いいえ。違うわね。
いい人間。
男とか、女とか、そんな区分はどうでもいい。

無防備に口を開けて眠るユノの姿は、少年の様に無垢だ。

絶対に分かってくれる素敵な恋人と幸せになって貰わなきゃ。

香港の金髪モデルは、仕事を頑張るユノに寄り添えなかった。だからユノは冷めたんだ。
本当の彼を理解して、仕事に打ち込むしかないユノを癒してくれる人。
彼を自由にしてくれる人。

「私にできることって……何があるの。」

そう自問するケイコに答えは見えない。

チャンミンがユノを受け入れてくれたら最高だけれど、チャンミンが女性を好きなのだってそれは自由だ。

「はぁ。もう、呪いでもかけてゲイにしてやりたいわ……。陰陽師でも目指そうかしら……リンビョウトウシャ……カイジンレツザイゼン……。」

真面目に悩んでいるつもりでも、ワインの影響でふらつきながらブツブツ呟くケイコは、すれ違う人々に恐怖を与えながら夜の町を家路についた。

こんな夜はBL漫画でも読んで萌えをチャージしたい。だが、お気に入りのワタリドリの作品は、セリフを暗記するほどに読み込んでしまった。

そろそろ新作が読みたいところ。
だが肝心のワタリドリは最近、スランプに陥ったと悩んでいる。連載中の作品は完結に向かっているが、新作の発想が湧かないと言うのだ

「陰陽師の恋とかどうかしら……。和装なんて萌えるわ。チャンミン君似合いそう………そうよ……チャンミン君!」

ケイコは突如、歩みを止めて電柱に手を置いた。

「だ、大丈夫ですか?」

吐きそうな酔っ払いに見えたのだろう。
後ろを歩いていた会社員が声をかける。

私としたことが……。
うっかりしていたわ。
ユノ君にばかり発破をかけても駄目よ。
変化させたいのはユノ君の方じゃないじゃない!

「そうよ……。彼を……。」

ワタリ先生!
妄想が花開くいいモデルが居ます!!
あのビジュアル。
どんなBL漫画の登場人物より可憐な超絶美形!!
ワタリ先生だって、あんな子を見たら、スランプ脱出よ!!

ついでにチャンミン君に、こちらの世界を見せてあげようじゃないの。

「ふふふ。うふふふ。」

電柱に寄りかかって笑い出したケイコに戦慄し、会社員は小走りで逃げて行った。



ケイコは帰宅後、チャンミン開眼計画を練った。

まずはチャンミンとの距離を詰め、一緒に食事する仲にまで到達するのだ。

現状、チャンミンとはヒナミ以外の接点がない。計画のためとあればヒナミを使わない手はないが、別れさせるためにヒナミ経由でチャンミンと仲良くなるのはさすがに非情と言うもの。

毎日話していれば、情も湧く。
ケイコは何でも明け透けなく話すヒナミのことを、ちょっと可愛いやつだと思い始めていた。別れては欲しいが、傷つけたくはない。

「はぁ……。ユノ君の優しさが移っちゃったみたい。どうしよ……。」

ヒナミとは関係なく、チャンミンと仲良くなるには……。

「あ!韓国!」

これだ。
これしかない。

ケイコは韓国語入門を数冊ネットで注文し、韓流スターをネット検索しまくった。韓流好きを偽り、チャンミンに接近することにしたのだ。

韓流好きとあれば、役作りには好きな俳優かK-POPスターが不可欠だが、その選考は難航した。

「はぁ。みんな同じような顔に見える。年のせいかしら。」

ケイコは悩みに悩んだ結果、個性的な顔ゆえすぐに見分けがつく俳優を選んだ。

「仕方ない。納得行かないけど、今日から私はチェ・シウォンのファンよ。」

かくして、ケイコの計画は、秘密裏にスタートした。





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No title

いつも素敵なお話し、本当にありがとうございます🙇
毎日楽しみに読ませて頂いています。
パンタ・レイ、最っ髙です(笑)
私はすっかりけいこな気分です(笑)
面白くて、噴き出すBLって初めてです!
スパイ、や、探偵や、職人や、バイヤー?な二人も大好きです(*^^*)
パンタ・レイの二人に目が離せませんm(__)m
ケイコ、頑張れ(笑)更新楽しみにさせて頂きますm(__)m

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東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
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