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パンタ・レイ 13

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月曜にビュティアスのプレゼンを控えた週末、チャンミンは神経質に爪や髪を弄り、テーブルに置いたメモに視線を走らせてはため息を吐いていた。

CMコンセプトをプレゼンをするのはタダだが、チャンミンも後半、付随するプロモーションプランの説明を任されている。

土曜の晩をヒナミと過ごしていても、プレゼンがぐるぐると頭を回る。

「チャンミン君。聞いてる?」

「あ、ごめん……。」

「食事中くらい、仕事のことは忘れなよ。」

「うーん。まだ暗記できてないから気になって。」

折角ゆっくり2人で週末を楽しもうと思っていたのに、眉を寄せてブツブツ言っているチャンミン。

付き合って2ヶ月記念日はとうに過ぎた。今回は贈り物なし。
1週間ぶりにチャンミンが家に来るからと昼から懸命に作った手料理は、なかなか減っていかない。

「チャンミン君て真面目だよね……。でも、しっかり休まないと、いいプレゼンなんてできないんじゃない?気分転換も必要だよ?」

「……うん。でも……みんな頑張ってるから。ユノさんが考えたプロモーションだし。伝えきれなかったら僕のせいだ……。」

またユノさん。
ヒナミはついため息を漏らした。

「はぁ……。ご飯……もう食べない?」

「食べきれなくてごめん……あ!片付けは僕やるよ。」

食事を殺すピンク色の皿のせいではないが、ヒナミの料理は何か一味足りない。コチュジャンでも足したら食も進むのだが、そんな失礼なことはできない。

食べきれなくて申し訳ないと思いつつ、チャンミンはシンクに立った。

月曜には、大勢の前に立たなければならない。
皿を洗いながらも気が重い。

中堅会社と言えども、ビュティアスの経営陣とマネージャーが勢揃いすると30名にもなる。
そんな人数を前にプレゼンしたことなどない。
身がすくみそうだ。

「なんで僕なんだ……。」

新入社員に大切なプレゼンを任せたユノを、チャンミンは恨めしく思う。

初めての大仕事をユノに言い渡された時、チャンミンは抵抗した。

「ぼ、僕には無理です!」

「そんなことないよ。それに、チャンミンは見映えがいい。相手は美容系の会社なんだ。きっと受ける。」

「難しい用語もまだ覚えられていないのに、プレゼンなんて!」

「この機会に覚えたらいいじゃないか。メインはタダさんがやってくれるんだから、心配いらないよ。」

「ユノさん達のプロモーションプランなのに、どうして僕なんです!?」

横に居たショウタも心配そうに口を挟んだ。

「あの、俺がやりましょうか?」

「ショウタは先方には目新しくないから駄目。フレッシュなチャンミンがいい。ターゲット層と同じ、新入社員の気持ちで提案するんだよ。」

「俺はできれば……ユノさんに話して欲しいです。」

「俺は実年齢より年上に見られるし、説得力より、欲しいのは共感なんだ。チャンミン、やってくれるよな?」

ユノの有無を言わさぬ雰囲気に押され、チャンミンは意図がいまいち理解できないまま、仕方なく頷いた。

「よし。ありがとう。頼んだぞ。」

ユノには明確な狙いがあった。

CMはイメージ重視。

慣れない職場で懸命に働く若い女性が、毎日満員電車に揉まれ、人間関係や取引先からのクレームに傷つきながら家に帰り、ビュティアスの化粧品を手に取る。

7人の小人になった化粧品達が彼女を癒し、最後にリップを塗る。
潤った唇に、タクミ扮する王子様がキスをして、女性を白雪姫に戻すのだ。

CMのために商品レンジにリップクリームを入れることを、このプレゼンの中でタダが提案する。

簡単なことではないだろう。
既存の製品であっても、パッケージの変更など、手間暇がかかる。
販売予測が明確でない中、ビュティアスに追加の出費を了承してもらわねばならない。

ビュティアスの決断を後押しするために一役買うのがプロモーションプラン。
そしてまた、プロモーションはイメージ先行のCMを補う役割がある。

サンプルの大量配布を提案したショウタにユノは首を振り、百貨店の化粧品売り場でたっぷり貰ったサンプルをテーブルに広げた。

「ただサンプルを貰ったって、使ってくれるか分からない。ドラッグストアだって、サンプルなんかたくさんくれるだろ。大手化粧品会社ならまだしも、メジャーじゃないビュティアスのサンプルなんて、埋もれる。」

「でも、とにかく試して貰わなきゃ購入には繋がりません。」

「いかに効果的に試して貰うか……だよ。」

ユノが考えたのは、帰宅ラッシュの時間の活用だった。

「ビュティアスのSNSへのアクセスは、夕方から夜が圧倒的に多い。帰宅途中の電車の中だ。みんな疲れるけど、美容っていう癒しが欲しい時間ってことだろ。だから、サンプル配布するなら、帰宅時。」

「駅とかですか?」

「ああ。企業の多い駅を狙う。」

「でもそれじゃ、ばら蒔きと何が違うんです?要はサンプル配布ですよね?」

「王子様……使うんだ。」

「王子様??」

「モデルを使う。仕事の少ない新人モデルなら、費用は大してかからない。小さなブースを設営して、彼らにサンプルを配布してもらう。持ち帰るだけじゃなく、そこで、サンプルを試してもらう。」

「駅でですか?」

「リップクリームを塗ってもらうんだよ。リップなら、その場で付けられる。」

「なるほど。CMと同じ流れですね?王子様からのリップクリームですか……。でもそのプロモーション、どれだけやるんです?」

「開催箇所は数ヶ所が限界だろうな。期間も1週間程度で済ませたい。」

ビュティアスのプロモーションにかけられる費用は限られている。
大がかりなイベントは出来ない。

ユノのアイデアはいいが、ターゲットに到達する件数が少なすぎるとショウタは懸念した。

「王子様みたいなイケメンに出会ったら、次の日出社して、会社で話題にするだろ。SNSで話題にして貰うのもいい。王子様の写真撮影は自由にしてさ。」

「……そうか。それならハッシュタグでキャンペーンしますか?」

「ああ。それも考えてた。"#駅ナカ王子様"とか、何かアイデア出してくれるか?製品名じゃなくていい。」

「はい!」

「リップクリームだけ売れても困るから、セットでお試し価格にしたコフレも欲しいな。提案に入れよう。」

こうしてユノとショウタは、かなり具体的に練ったプロモーションプランを資料とプレゼンにまとめた。

それをチャンミンが発表する。

ビュティアスのマネージャー陣は若く、女性が多い。ユノがチャンミンを任命したのは、王子様然とした風貌の彼が、懸命にプレゼンする姿に心惹かれて欲しいからだ。

喋りはたどたどしいくらいでいい。

その狙いをユノは敢えてチャンミンに知らせない。自然なたどたどしさでなければ人の心に響かない。

好きな人だからって、ユノは仕事のためなら容赦はしないのだ。

チャンミンにユノからあった指示は、プレゼン当日は眼鏡を外すことと、スーツを新調することだけ。

「プレゼンの指導して欲しいのに……。」

チャンミンは、助けのない中、プレゼン資料とにらめっこする日々を送った。プレゼンを翌週に控えたこの週末は緊張のピーク。

ご飯を作ってくれるヒナミの気持ちは嬉しいが、チームのみんなの頑張りに自分もついて行かねばならないプレッシャーがチャンミンの心を占めていてた。

日曜の朝、ヒナミに止められてもチャンミンは出社した。
誰もいない会議室で、プレゼンの練習をしようと思ったのだ。

しんとしたオフィスに入って、チャンミンは足を止めた。

ユノの部屋には灯りがついていた。




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東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
ホミンのみ。

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