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パンタ・レイ 14

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14


あれ……。
ユノさんも出社してる?

そっとテーブルに鞄を置き、中の様子を窺おうとした時、コーヒーカップを手にしたユノが出て来てチャンミンは驚いた鹿みたいにジャンプした。

「ぎゃ!!」

「わっ!!チャンミン!!」

ユノが急停止して激突は回避されたが、コーヒーは大きく波打った。

日曜でもきっちりスーツに身を包んだユノのカッターシャツの胸から臍のあたりまで、茶色い染みができる。

「ひっ!ユノさん!コーヒー!!」

「あー。やらかした……。」

「ああぁ。ごめんなさい!!」

ティッシュを取ろうと部屋を振り返ったユノの手をやおら掴み、チャンミンは走り出した。

ぎゅっと手を握る細い指とチャンミンの後ろ姿にユノの心臓はバクバクと暴れた。
そんな状況でトイレに押し込まれ、足元に跪かれたら動揺を隠せない。

濡らしたペーパータオルを握り、胸元に顔を寄せて染みを取ろうとするチャンミンを見下ろすユノの頬は赤くなった。

普段着のチャンミン。
今日は眼鏡をかけていない。
無造作にかきあげただけの黒髪が一部おでこにかかって揺れている。

なんて綺麗な睫毛をしているんだ。
唇を尖らせるから、キスをせがむみたいな形に見えてしまう。

フードのついた黒いパーカーはだぼついていて、袖を捲ると細い手首が露になった。
その手がシャツを引っ張ってズボンから引き出そうとする。

あ、まずい。
ご奉仕される妄想が……。
そのままズボンまで下ろして、俺を咥えて……。

「チャンミン!自分でやるから!!」

ユノはすんでのところでチャンミンから逃れた。「クリーニングに出すからいい。」とか言い訳を並べて、染みが残るまま自室に戻り、呼吸を整える。

やばかった……。
チャンミンは危険だ。

ゲイじゃなくても危ない妄想に走る男子も居るのではないか。
抱き締めたくなる魔性とでも言おうか。

「はぁ。参った……。」

ロッカーから替えのシャツを取り出して着替え始めたところで、チャンミンがドアを叩いた。

着替え中だからと断る前に、チャンミンはひょっこり顔を出した。

ユノは上半身裸。

「あっ!ご、ごめんなさい!!」

「いいよ。男同士だろ。入って。」

恥ずかしいのを我慢して平静を装うユノとは違い、チャンミンはPCを抱き締めて入り口でモジモジした。
シャツを脱いだユノの背中の美しさに見とれてしまったからだ。

広い肩と、無駄な肉のついていない肩甲骨。
真っ直ぐな背骨の両脇の筋肉。
ウェストは適度に絞られ、白い肌は妙に艶かしい。

こんな人に愛される女性は幸せだろうな、なんて、男でも考えてしまう。

バサッと音をさせてシャツを着たユノはボタンを留めながら振り返った。

「どうした?」

「ユノさんて彼女居ないんですか?」

「は?」

突然の質問に赤面したのはチャンミンの方だった。脈絡もなく、つい口を出てしまったことに焦る。

そんな顔で恋人の有無を聞かれて、ユノは素直にときめいた。
誰だって期待してしまう。

「な、なんだよ急にそんなこと。」

「や、あ、あの、ユノさんてめちゃくちゃ格好いいから!」

身体中の血流が乱された。

好きな男なら居る。
チャンミンだよ!

そう叫びたい。

「はは。悲しいかなフリー。週末も仕事してるやつなんて、呆れられるだけでね。」

「それでも!付き合いたい人なんてたくさん居ますよ!」

「……っ……チャンミン。」

2人きりのオフィス。
今日ここにチャンミンが来たのは、神様からのプレゼントなんじゃないか。
気持ちを伝えろと、背中を押してくれてるんじゃないか。

ユノはネクタイ結びながら、ゆっくりと入口へ歩いた。

「……チャンミン……俺は……。」

「モテモテですよね。ヒナミも、東方堂はユノさんのファンだらけだって言ってました。」

「……は……。」

彼女の名前を出されて、ユノの眉は歪んだ。
昇ったところを叩き落とされた感覚に、急激に身体が冷える。

「そんなことより、なんだった。」

「へ?」

きょとんとしたチャンミンの愛らしい瞬きが、わざとらしく見えた。

「用事があって来たんだろ。なんだ。」

突然ユノの声のトーンが下がったことにチャンミンは焦る。

「あ、あの!明日のプレゼン……見ていただきたいんです。アドバイスいただけたら……。」

「いいよ」と言おうとしても、ユノの口は動かなかった。

手助けしたい気持ちとイライラが混在して悲鳴を上げる身体が、チャンミンの要望を受け入れることを拒んだ。

「悪い。俺、今からちょっと出かけなきゃならないんだ。」

ユノはこの日、タクミのマネージャーと会う約束をしていた。

待ち合わせまでにプレゼン練習を1回見るくらいの時間はあった。
だが、イライラの方が勝った。

兄みたいな存在でいいとケイコには言いながら、期待して、彼女の話をされただけで傷つく自分への苛立ちを、チャンミンへの苛立ちに置き換えてしまった。

「帰ってきますか?」

「……何時になるかも、帰るかも分からない。」

「……僕、夕方まで居ると思うんで、もしそれまでに帰ってきたらアドバイスください!」

「日曜なんだから、早く帰れ。練習なら家でもできるだろ。じゃ、俺出掛けるから。」

「あ、はい……。行ってらっしゃい。」

俯いたチャンミンの横をすり抜け、予定より早く会社を出たユノは、地下鉄のホームでベンチに座り、大きなため息を吐いた。

冷たくしてしまった。
勝手に欲情して、勝手にムカついた。

チャンミンは悪くない。
俺の心が身勝手なだけだ。
全然平気じゃないのに平気なフリをして、徹底できずに綻びが生じる。
そんな自分が嫌になる。

「情けないなぁ。」

頭を抱えたユノのポケットでスマホが振動した。

タクミのマネージャーからのメッセージだった。

『撮影が長引いて、これから事務所に戻ります。約束、30分遅らせてください。』

待ち時間が長くなった。
スターライトプロモーションに近いカフェで時間を潰す間、ユノは頭からチャンミンを排除してタクミのことを考えるようにした。

「日曜もドラマの撮影か。あいつ頑張ってるな……。」

曜日感覚の薄い自分のことを、きっとタクミなら理解してくれるだろう。
最近は会社が厳しくて徹夜なんてしないし、土日に出社するのもこっそりとだが、ゾーンに入ったら本当は寝ずにでも働きたい。

忙しい有名人と付き合う方が、俺には合ってるんじゃないか?俺より忙しい人なら、「仕事と僕とどっちが大事なの!?」なんて責められることもないだろう。

だとしたら、タクミは可愛くて、一途で……。
正直、抱こうと思えば抱けるし。
いや、むしろ、最高の相手なんじゃないか。

真剣に、考えてみるべき時かもしれない。

そんなことを悶々と考えた後、事務所に入ったユノを出迎えるマネージャーの背後から、タクミは興奮気味に走ってきた。

「ユノさんがなんで?!今日、日曜なのに!」

「仕事の打ち合わせだよ。俺の空いてる時間に合わせて貰ったんだ。」

「だったら教えてよ!」

「はぁ。そうやって騒ぐからだろ!お前を送ってから会う予定だったんだけどなぁ。間に合わなくなって予定が狂った……。」

マネージャーの呆れ顔には目もくれず、ユノを一直線に見つめて喜ぶタクミは可愛い。

「打ち合わせって?CMのこと?僕も入っていい?」

「ダメだ。明日も撮影なんだからもう帰りなさい。タクシー呼んでるから。」

「えぇー。折角会えたのに……。」

拗ねてマネージャーを睨むタクミが、その日のユノには堪らなく愛しく見えた。

それが、甘い行動にユノを走らせる。
下を向いたタクミの横を通り過ぎる時、ユノは耳元で囁いた。

「後で連絡するよ。」

タクミははっと顔を上げ、「待ってる」と声に出さず唇で答えた。




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東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
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