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パンタ・レイ 15

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マネージャーとの話は、小気味良く進んだ。

ビュティアスのCM出演に了承をお願いした時点で、ユノがスターライト側の依頼に前向きなことは大前提となり、マネージャーは機嫌がいい。

「で、ユノさんはどんな形でうちに協力してくださるんです?」

それを、ユノはビュティアスのプロモーションの傍らで考え続けていた。
週末も出勤して作ったスケジュール表を取り出し、話し始めた。

「香港のファッションフェスティバルは12月。11月……いや、10月までは今の仕事に集中させてください。10月末になれば大きなプロモーションは終了しますから。」

「では、それまでは待ちましょう。」

「ありがとうございます。準備はそれより前から始めておきます。中国と香港でソーシャルメディアに強いインフルエンサーをリストアップします。彼らをファッションフェスティバルに招待することはできますか?」

「確認してみましょう。インフルエンサーに、ショーでのタクミを発信して貰うつもりですか?」

「はい。あちらでは、日本とはSNSのトレンドが違います。現地のインフルエンサーが効果的です。」

「なるほど。」

「それで、ショーだけでなく、香港入りしたところから密着させてはどうかと。中国でのネットの威力は桁違い。向こうで話題になれば、日本のニュースで取り上げさせます。」

「なるほど。インフルエンサーの選択が鍵になりそうだ。」

「まさに。そこで、うちの香港支店を活用します。夏の間に現地スタッフがリストアップした中から、最終選考は私が。11月には1度向こうに行ってきます。」

「そこまでユノさんが?東方堂の仕事はいいんですね?」

「実は……うちの社長が前向きなんです。社長もタクミには期待してましてね。」

マネージャーはにやっと笑った。

「さすがユノさんは仕事が早い。トップにまで話がいっているとは……。」

「それに私も、ビュティアスのプロモーションでお願いしたいことがいくつか。」

ここからが、今日のユノの本題だった。

詳細なプランでマネージャーを喜ばせ、東方堂への利益を引き出す。

芯は常に東方堂。
その目的がブレないから、ユノは強い。
マネージャーは気にも留めていないが、話の主導権は完全にユノが掌握している。

「お願いとは何です?」

にやけたマネージャーに、ユノはビュティアスのプロモーションにスターライトのモデルを使いたいと申し出た。
ビュティアスの予算に合う、しかし王子様並のビジュアルを持ったモデルが何人も必要だと。

「ふふ。これぞギブアンドテイクですね。面白い。こちらも本腰を入れて協力しましょう。」

「ありがとうございます。その王子様のプロモーションですけどね……どこかでタクミも出没させるなんてどうです?」

「ははは。それは相当な騒ぎになりそうですね。うん……話題性抜群だな……。9月であれば、タクミのスケジュール調整できます。」

「では、明日のビュティアスへのプレゼンが終了したら正式にこの話、進めましょう。タクミに協力して貰うとは言え、契約料はきっちりいただきますよ?見積り、驚かないでくださいね。」

マネージャーは片頬を上げて笑い、握手を求めた。

「それだけの結果を出していただけるならね。楽しみにしています。」

いけすかないマネージャーだが、今の仕事のためにはこれでいい。俺は、ビュティアスのプロモーションを大成功に終わらせる。チームのみんなに、最高の体験をさせてあげよう。

固く握手を返し、ユノは夕暮れに染まる道を地下鉄へと歩く。改札を過ぎ、タクミに連絡を入れようとして、ユノははたと思い出した。

コーヒーまみれのシャツをオフィスに置きっぱなしだ。

「あー。どうしよっかな……。」

シャツは正直どうでもいいが、チャンミンがもう帰ったか気になる。

今更……。
1人で頑張らせるつもりだったじゃないか。
今からどうアドバイスしたって、明日のプレゼンが劇的に変わるとは思えない。

タクミは連絡を待っているだろう。

ユノは、タクミと真剣に向き合おうと思っていた。今夜、抱いたっていい。
愛されることに飢えて、理解してくれる人に傍らに欲しかった。

それでも、ユノの足は会社に向かった。
賭けみたいな気持ちだった。

チャンミンが帰っていたら、すっぱり諦めてタクミと付き合おう。仕事で縁が深まるなら、有名人だからって気兼ねなく会える機会は多い。

あんなに一途に思い続けてくれる可愛いタクミが恋人なら、きっと幸せだ。

でももしチャンミンが帰っていなかったら……。
そしたら、俺はどうしたいんだ?

どうできるわけでもない賭けだった。
叶うなら、オフィスは真っ暗であって欲しかった。

だが、ユノの部屋の前のライトは点灯していた。

チャンミンの姿はない。
テーブルにも荷物はない。

「消し忘れ……か?」

ユノは部屋に入ってシャツを鞄に入れ、1本だけタバコを吸おうとエレベーターホールに戻った。

その時遠くで、人の声がした気がした。
廊下の先の会議室の方からだ。

ゆっくりと会議室に近づきながら、ユノの心臓はトクトクと鼓動を早めた。

扉の前に立ったら、中から聞こえる声がチャンミンのものだと疑いようもない。

「新人ですので、お聞き苦しい点があったら申し訳ありません。お聞きぐるしい……ぐるしい……あー!もう!言いにく!!」

「CMに連動したプロモーションプランの名前は、駅ナカ王子様。オフィスが多い、丸の内、銀座、恵比寿、品川……あとどこだっけ。あ、日本橋などを候補地とし……。」

「サンプルの配布には、モデルを器用して、CMでタクミが着ているものと同じ服装で行います。」

大声を張り上げるチャンミンのプレゼンに、ユノは胸が痛くなる。
頑張っている人の姿は、わけもなく胸を打つのだ。

ユノは堪らずドアを開けた。

「ひいーっ!!」

突然の侵入者にチャンミンは持っていた紙を放り投げて尻餅をついた後、床にお姉さん座りしたまま満面の笑顔になった。

「ユノさん!お帰りなさい!!」

「ふ、ふふ。あははは!」

「……なんで笑うんです。」

「や……はははっ!」

「ちょっともう!笑わないでください!」

「ふふ。驚き方が面白くて。新喜劇みたい。」

「突然入ってくるからですよ!部屋に入るときはノックするものですよね!?」

「はは。ごめん。」

差し出した手を迷いなく掴んだチャンミンを引っ張り上げると、ユノは床に落ちた紙を拾ってぐちゃぐちゃに丸め、ゴミ箱にぽいと投げた。

「わー!!大切なメモなのに!!」

ゴミ箱へと走るチャンミンは、これまたコメディアンみたいなリアクションで手をバタバタさせている。

面白い生き物。
見ていて飽きない。

「新人ですのでって言うの禁止。新人でも、東方堂の立派な社員だ。クライアントには関係ない。」

突然始まったアドバイスに、チャンミンは姿勢を正した。

「あ……は、はい!」

「あと、メモ見るのも禁止。」

「え……ええ!!?無理です!」

「無理じゃない。メモの通り喋ろうとするから分からなくなるんだ。プレゼンのスライド毎に、何を言うべきかは分かってるだろ?」

「……はい……。」

「じゃ、言うべきことをチャンミンなりに喋るだけだよ。」

「そう簡単に言われても……。」

首を傾げたチャンミンにクスクス笑いつつ、ユノはスクリーンの前に立った。

「このスライドで言いたいことは何?」

「え……サンプル配布をどう効果的にするかの説明です。SNSでの拡散や、口コミのことを……。」

「うん。じゃあ、王子様に出会った女性を想像してみて?」

「はい?」

「ねぇ!聞いて聞いて!昨日駅ですっごいイケメンに出会っちゃったのー♪見てよこれー!写真撮って貰っちゃった!」

突然女子トークを真似たユノに、チャンミンはあんぐり口を開けたまま絶句した。




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東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
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