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パンタ・レイ 43

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43


月曜から金曜日まで続く品川駅でのイベントが3日目になっても、ユノがチャンミンを誘ってくることはなかった。

木曜の昼、ケイコは仏頂面したチャンミンにランチに連行された。

「この時間どこの店も混んでるわよ。外のベンチでもいいんじゃない?」

「外暑いじゃないですか。日焼けするし、蚊もいるし。僕、虫嫌いなんです。」

女子か!
と突っ込みたいのを我慢し、不機嫌なチャンミンに従ったケイコは、韓国焼肉店にて外より熱く煮えたぎる豆腐チゲをフウフウしながら、チャンミンの愚痴を聞くこととなった。

おあつらえ向きに個室に仕切られた店内。
チャンミンは早速本題に入った。
週末はラブラブだが、平日は味気ないユノについてだ。

「どう思います?なんか、週末婚みたいじゃないです?」

「婚……。」

「日曜の夜には帰らされるんです。『送るよ』って、それとなく!!折角同じ職場なんですよ!?一緒に帰るとか、朝一緒に家を出るとか、憧れるじゃないですか!?」

「ぶっ!」

新婚気分か!
と突っ込みたいところだが、ケイコは年上女性らしく妖艶な笑みをたたえ、豆腐チゲを白米に乗せてかっこむチャンミンを見つめる。

「今週はもう耐えられなくて!ビュティアスの社員さんて女性が多くて、みんなユノさんのことハートの目で見てるんですよ!特に広報の女の子!SNS確認する度にユノさんに密着してっ!」

「まぁ、ユノ君がモテるのは今に始まったことじゃ……。いいじゃない、ゲイなんだから。心配ないわよ。」

「人間何があるか分からないじゃないですか!おっきい胸にムラっと来ることもあるかも!」

それは君だろ!
と突っ込みたいかけた喉を押さえ、ケイコはとうもろこし茶を啜った。

ひとしきり拗ねて落ち着いたのか、チャンミンは憂鬱なため息を吐いて眉を下げた。

「それに……過労も心配なんです。イベントの後、ユノさん会社に戻ってるんじゃないかと思うんです。今朝出社したら、昨日の夕方にはなかったコーヒーカップが置きっぱなしだったから……。」

念願の恋人ができても、ユノのワーカホリックは変わらないものかと、ケイコも眉を下げた。

「ユノ君の働き過ぎは会社としても良くないわね。私の方でも手を打っておくから……それより……。」

ケイコは豆腐チゲランチのお盆をずいっとずらして前のめりになった。

「ユノ君が平日チャンミン君を呼ばないのは、気を使ってるんじゃないかしら。会社にバレないようにって。ゲイであることをひた隠して来た人だもの……。」

チャンミンはスプーンを鍋に差し込んだまま、しゅんとした。

「そう……ですよね。男同士ですから、僕だってみんなにバレるのは困ります。」

「うん。ユノ君のことだから、チャンミン君のためにってのもあるんじゃない?チャンミン君が働きにくくなるのは、ユノ君も嫌でしょ。」

「けど……。でも……。付き合ってばかりだから、もっと傍に居たいって……思っちゃいます……。」

かっ、かーわーいーいーーー!!!

ケイコは危うくチゲ鍋を抱えて小躍りするところだった。

ユノとチャンミンが無事付き合うこととなり、ケイコの興奮は実のところ小康状態に入っていた。
付き合うまでが萌えるのであって、いざラブラブになったら面白さは半減。

ところが、チャンミンのユノへのベタ惚れ具合ときたら……想像を遥かに上回る。

ケイコのやる気に再び火が着いた。

「今夜泊まりたいって言ってみたら?」

「…………がっついてるみたいじゃないです?」

「はぁ。両思いのくせに何言ってるの。チャンミン君も男なら、押してみなさいよ。」

「は。」

「部屋に押し掛けるとか、追いかけるとか、押し倒すとか。」

「押し……。」

「会いたくて来ちゃった……なんて付き合いたての恋人に言われたら、興奮するでしょ?」

チャンミンの鼻の穴がパカッと開いたので、ケイコはほくそ笑んだ。

良し。いい感じ。
ここは腕の見せ所だわ。
夜までに、下準備はしておいてあげようじゃない。

ケイコはランチ後、総務部へ向かった。



果たしてその夜、品川駅にケイコは現れた。
客引きをしていたチャンミンが駆け寄る。

「ケイコさん。どうしたんです。」

「様子見に来てあげたんじゃない。で、今夜もユノ君からお誘いなし?」

「……何も言ってきません。」

「ふむ。じゃあやっぱりチャンミン君が動くしかないわね。みんなが解散したら、帰らずこっそり待ってるのよ。」

「え。家の前で待ってるんじゃ駄目です?」

それだと私が萌えシーン拝めないのよ!
とは勿論言わず、ケイコはチッチッと指を振った。

「ユノ君が深夜まで会社に居たらどうするの。尾行してばったり出くわすのよ。」

「えー。上手くできる自信ないです。」

「ホームでとか、ユノ君が乗った車両に飛び乗るとか、何とでもなるでしょ。ユノ君、きっと喜ぶわよ。」

唇をムッと噛んでしばし視線をさ迷わせた後、チャンミンはこくんと頷いた。

「その意気!さてと、折角来たから私も王子様体験させて貰おうかな。」

萌えシーン目撃に燃えるケイコがブースに入ると、何人もの女性客が王子様衣装のイケメンと向き合って化粧品の説明を受けていた。

奥に居たユノは、知らない女性とスマホを見ながらクールに会話していたが、ケイコに気づくと満面の笑顔になった。

「ケイコさん!来てくれたんですか。」

「お疲れ様。盛況ね。」

「お陰さまで、累計400名動員しました。」

「今夜は何時まで?」

「21時です。今日中に目標の500名突破できたら最高なんですけど。」

「終わった後、会社に戻るつもりじゃないでしょうね?」

「……直帰しますよ。さっき、突然総務部長に呼び出しくらって怒られたんです。やたら、俺の勤務状態把握してて……。」

よしよし。
よくやった総務部長。
謎めいた力を持つケイコの裏工作は、速攻で実行されていた。

「よーし!私も手伝うわ!」

「いいんですか!?」

「もちろんよ。目標達成できたら、明日が楽になるでしょ。ユノ君の働き方改革、私も応援したいもの。」

ケイコのスキルは人並み外れる。東方堂に勤務してうん十年の経験が冴え渡った。

チャンミンを超える勢いで次々と女性がブースへと誘導され、ケイコに刺激されたチャンミンも負けじと声がけする。おかげでブースは大わらわだ。

チャンミンが訴えた通り、ユノは仕事に集中しているようで、たまにブースから出て来てもビュティアスの社員と話すだけ。

だが、話しながらも周囲に視線を走らせ、必ずチャンミンを視界に捉え、ブースに戻る時には微笑んでいる。

「ふふ。優しい顔しちゃって……。」

ユノの微笑みには、目の中に入れても痛くないとでも言いたげな愛が溢れていた。

めちゃくちゃ愛されてるじゃないチャンミン君。

安堵したケイコは、終了時間の少し前にブースを離れ、家路についた……と見せかけ、ホームにスタンバイした。

ユノの行動はおよそ把握できている。
ブースの片付けは20分もあれば終わり、その場でチームは解散。直帰するからには、京浜東北線の下りに乗車。家に近い改札を通るだろうから、車両も目星はつけられる。

「あぁ……ワクワクするわ。」

ケイコの読み通り、30分ほどするとエスカレーターをユノが降りてきた。
ユノと少し距離を取り、チャンミンが鞄で顔を隠しながら尾行している。

明らかに怪しいが、幸いユノはスマホをタップしながら電車を待っていて、チャンミンにもケイコにも気づいていない。

チャンミンは自販機に隠れ、何やら奇妙な動きをし始めた。

左手に鞄を抱え、右手でちょいと何かを引っ張る素振り。それから、小首を傾げてにっこり。

ケイコは吹き出しそうになるのを堪えた。

チャンミンはケイコの提案通り、同じ電車に乗って驚かせようとしているに違いない。ユノの後ろから乗り込み、スーツをちょいと引っ張り、「ユノさん。会いたくて来ちゃった♪」の練習をしている。

「チャンミン君……貴方やっぱり逸材だわ……。」

ケイコの期待は高まるばかり。

ところが、電車がホームに入ってきて、いよいよチャンミンが動こうとした時、階段を駆け降りる小柄な女性が「ユノさん!」と叫んだ。





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東方神起 ユノとチャンミンが大好き。
脳内妄想をこっそり綴っています。
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